11 / 18
Ⅳ.
第二話
しおりを挟む
「…………此処だと誰が聞いているか解らないから、学校じゃない方が良いな。
僕が指定した場所に来てもらっても良いかい??」
「…………指定した場所??何処に来いって言うんですか??」
「仕事の後だから遅くなってしまうけれど、来週の金曜日の夜八時に俺の家に来てもらえると助かるな」
先生にそう告げられた瞬間、祥子は思わず身を固める。
警戒の様子を見せたその瞬間に、先生がとても寂しそうな声色で囁いた。
「…………君が話したいことは、俺と白鹿の事だろう?そんなに警戒しないで貰って良いかい?
…………俺も彼女の事はとても辛いから…………彼女の事を話が出来ると助かるな…………。
……………とても、大切だったから。彼女の事は…………」
祥子は先生がそう言った瞬間に、ほんの少しだけ安堵する。
この人は自分とマキナの関係性を認めようとしていると感じた時、祥子は少し恥ずかしい気持ちになった。
なんだ、マキナはちゃんと愛されていた。先生にとても大切にされていた。
勇気を出して先生に話に行って良かったとさえ祥子は思う。すると先生は祥子に対して、ある事を言い出した。
「ちゃんと帰りは君を家まで送るからさ、だから詳しい話は其処でも良いかい??
有難うね、彼女の事をこんなに思ってくれて…………。
俺も彼女の事だけは誰かに聞いて欲しいと思っていた所だったから………。
でもどうか、彼女の為にも秘密にしておいてくれるかい??これ以上面白おかしく報道されるのは辛くてさ………」
先生の言う通りに女子高生連続殺人事件は今、メディアで恰好のネタにされていた。
一部の心無いメディアは、売春が原因で殺されたと言う始末だ。
面白おかしく報道されたくない気持ちはよく解る。
それにマキナがそんなふしだらな子では無い事を、祥子が一番よく知っていのだ。
「………言わない!!大丈夫だよ!!
っていうか………先生が悲しんでないって思って………ホントごめん………。
アタシ、めっちゃ誤解してた…………」
余りにもすんなりと祥子を受け入れる先生を見て、祥子の良心が痛む。
この時に祥子は先生の愛を、疑ってしまって申し訳なかったとさえ思っていた。
けれど夜の20時に家を出る理由を作るのは、今の状態だととても難しい。
何せ殺人鬼が外を出歩いている世の中だ。それに祥子は金髪のギャルなのだ。
夜の20時に出歩いて心配されない訳がない。
祥子の心は完全に、怒りの方向から心配の方向に変わっていた。
マキナの為にも今の先生の話を聞いてあげた方が良いだろうし、祥子自身もマキナの話をすべきだと思っている。
祥子は家から出る正当な理由を懸命に考えていた。
その時にふと祥子の頭を過ったのは、ドルーリーの姿である。
「あ、先生。アタシ今、一人じゃ家から出して貰えなさそうだからさ、犬の散歩って形にしたいんだぁ。
大型犬連れてきても平気…………???躾してるし大人しい子なんだけどさ………」
祥子はそう言ってから、申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
すると先生はケラケラ笑い、祥子にこう告げた。
「ああ、うちはペットも問題ないし、壁が分厚いみたいでね。
何をしていても周りには音が聞こえないみたいなんだよ。連れておいで?」
祥子は先生に微笑み、化学準備室からバタバタと出て行く。
晴れ晴れとした祥子の後ろ姿を見送りながら、先生は冷ややかな笑みを浮かべた。
夜20時過ぎ。夜の住宅街は花金と言えど、自棄に静まり返っている。
変装したマキナは先生の同行を探るために外に出ていた。
無難な服とマスクと帽子を着用し、先生の住んでいるマンションの駐車場を見て回る。
夜の駐車場にはちゃんと先生の車が停まっていた。
長らくこの助手席に座っていたと思い胸を痛めながらも、マキナは懸命に気持ちを切り替える。
これが自分の思っていた通りだったとしても杞憂だったとしても、結果がきっちり出たらこの恋を忘れよう。
マキナはそう心に決めていた。
流石に平日は動きがない事を確認しつつも、まだ新しい事件は起きていない。
女子高生連続殺人事件に関しては全く規則性を感じない。
金髪ロングのギャルが狙われること以外何も解らないのだ。
マキナが先生の事を探るようになって、もう一週間の日の時が過ぎていた。
明日になったらもう世間は週末だ。先生の仕事は休みの筈である。
恋人の時間があった分、マキナは彼のスケジュールを良く理解していた。
『明日になったら、先週みたいに昼から張ろうかなぁ………アタシと逢ってた時間って、確か何時も14時からだったな』
マキナは懸命に辛い気持ちを抑えながら、恋人同士だった頃の事を冷静に思い返す。
あの日々はとても楽しかった。それに幸せだった。
あの時に襲われたりしていなければ、まだ変わらずに先生と一緒に居られたのだろうか。
夜空をぼんやりと眺めながらマキナは思う。
余計な事を考えてはいけない。こんな事を考えた所で、今更未来は変わらない。
マキナはそう自分に言い聞かせながら、頭を左右に振る。
もう家に帰ろうと思ったその時、マキナの視界に見慣れた制服が飛び込んできた。
赤いチェックのスカートに真っ赤なリボン。カーディガンはピンク色。
マキナが使っていたものと同じローファーの足元は、白いルーズソックス。
その制服の女の子は金色の髪を靡かせながら、先生の住んでいるマンションの前に佇んでいた。
その傍らにはとても大きな犬がいる。周りを見回すその仕草には見覚えがあった。
其処にいるのはどう見ても、祥子以外の何者でも無かった。
祥子の姿をこの敷地内で見たマキナから、一瞬にして血の気が引く。
どうして今こんな時間に、祥子は此処に居るのだろうとマキナは思う。
祥子の傍らにいるドルーリーが尻尾をゆらゆらと揺らしている。その時にマキナとドルーリーの視線が合った。
ドルーリーがバタバタとマキナ目掛けて走ってこようとしているのを見て、慌てて物陰に身を隠す。
この時にマキナはドルーリーだけはどうしても誤魔化せないと察した。
『ちょっと待って!!!なんで!?!?!?なんでこんな事になってんのぉぉぉぉ!?!?!?』
マキナが心の中で叫んでいると、マンションから見覚えのある男が出てくる。
スーツ姿ではなく私服を着た先生が、祥子に向かってパタパタと手を振った。
それに対して祥子は微笑んで手を振り返したのだ。
先生と祥子の一連の行動を横目に見ながら、マキナはある事を思う。
まさか先生は祥子とも只ならぬ関係だったのだろうかと、その時に誤解をしてしまっていた。
先生と祥子がマンションの中に消えてゆくのを見ながら、マキナは唯々焦りだす。
万が一先生と祥子が何かあったとすれば、その現場だけはマキナは見たくないと感じた。
頭の中で色々な事を考えながらも、マキナは先生の住んでいる部屋のベランダに回る。
最悪の場合は家に帰って、失恋ソングでも颯斗のパソコンで調べようとマキナは思っていた。
ほんの少しだけ助走をつけながら走り、勢いよく飛び上がる。
マキナの身体はいとも簡単に空中に浮き、先生の家のベランダの手すりにしがみ付いた。
『これ…………マジでヤバイ。魔法みたい………』
マキナはそう思いながら物陰に息を潜める。
部屋に灯りが灯るのと同時に、ドルーリーがバタバタとガラス戸目掛けて駆けてきた。
窓ガラスを引っ搔くドルーリーを横目に、マキナは苦笑いを浮かべて唇の前に指を立てる。
するとドルーリーは急に静かになって、尻尾をパタパタ振り出す。
部屋の中から祥子の声が聞こえてくると、マキナは身体を屈ませた。
「…………ドルーリー、何か其処にいるの??もしかして、マキナいたりするのかな…………??」
しんみりと語る祥子の声を聞きながら、マキナは思わず吹き出しそうになる。
まさか幽霊ではなく本体が其処にいるとは、流石に祥子も想像出来ないに違いない。
すると先生が祥子に向かってこう言った。
「…………そうかもしれないな…………マキナは俺の傍にいても、おかしくないと思うから…………」
祥子の前で自分の名前を呼ぶ先生に対し、マキナは息が詰まりそうになる。
思わず泣きだしそうになった瞬間、祥子が今にも泣きだしそうな声で囁いた。
「アタシも先生の傍に、マキナいるって思います。アタシ、実は先生とマキナのデート見た事あったから……。
めっちゃ大事にして貰ってて良かったって、思ってました…………。
アタシ、マキナと先生の幸せ壊した人、許せないんです…………!!」
マキナが先生と付き合っていた事を、祥子が解っていた事実に言葉を失う。
すると静かになっていた筈のドルーリーが、いきなり小さく唸りだす。
少し構えるかの様にしながら、真っ直ぐに何かを見つめている。
すると先生はなだらかな声で囁いた。
「…………マキナはね、俺にとっては理想そのものだったよ。
素直で可愛くて疑う事を知らなくて、屈託ない表情で笑う…………あの笑顔が、とても大好きだったんだ………」
マキナの心の中に最後のデートが浮かぶ。先生の手の温度も甘い声色も、何もかもが甦って涙が溢れる。
けれどしんみりとした空気の中で、マキナの耳には更に唸り声が響く。
窓から見えるドルーリーは、歯を剥き出しにして何かを睨んでいた。
ドルーリーがこんなに唸るところを、マキナは初めて見た。
冷静になったマキナは、先生の言葉に更に耳を傾ける。すると先生はこう言い放った。
「だからね、マキナのいろんな顔が見たくなったんだよ………死にゆく表情だってさぁ!!!」
マキナはこの時に、自分を殺した犯人が椿山先生だった事に気が付いた。
僕が指定した場所に来てもらっても良いかい??」
「…………指定した場所??何処に来いって言うんですか??」
「仕事の後だから遅くなってしまうけれど、来週の金曜日の夜八時に俺の家に来てもらえると助かるな」
先生にそう告げられた瞬間、祥子は思わず身を固める。
警戒の様子を見せたその瞬間に、先生がとても寂しそうな声色で囁いた。
「…………君が話したいことは、俺と白鹿の事だろう?そんなに警戒しないで貰って良いかい?
…………俺も彼女の事はとても辛いから…………彼女の事を話が出来ると助かるな…………。
……………とても、大切だったから。彼女の事は…………」
祥子は先生がそう言った瞬間に、ほんの少しだけ安堵する。
この人は自分とマキナの関係性を認めようとしていると感じた時、祥子は少し恥ずかしい気持ちになった。
なんだ、マキナはちゃんと愛されていた。先生にとても大切にされていた。
勇気を出して先生に話に行って良かったとさえ祥子は思う。すると先生は祥子に対して、ある事を言い出した。
「ちゃんと帰りは君を家まで送るからさ、だから詳しい話は其処でも良いかい??
有難うね、彼女の事をこんなに思ってくれて…………。
俺も彼女の事だけは誰かに聞いて欲しいと思っていた所だったから………。
でもどうか、彼女の為にも秘密にしておいてくれるかい??これ以上面白おかしく報道されるのは辛くてさ………」
先生の言う通りに女子高生連続殺人事件は今、メディアで恰好のネタにされていた。
一部の心無いメディアは、売春が原因で殺されたと言う始末だ。
面白おかしく報道されたくない気持ちはよく解る。
それにマキナがそんなふしだらな子では無い事を、祥子が一番よく知っていのだ。
「………言わない!!大丈夫だよ!!
っていうか………先生が悲しんでないって思って………ホントごめん………。
アタシ、めっちゃ誤解してた…………」
余りにもすんなりと祥子を受け入れる先生を見て、祥子の良心が痛む。
この時に祥子は先生の愛を、疑ってしまって申し訳なかったとさえ思っていた。
けれど夜の20時に家を出る理由を作るのは、今の状態だととても難しい。
何せ殺人鬼が外を出歩いている世の中だ。それに祥子は金髪のギャルなのだ。
夜の20時に出歩いて心配されない訳がない。
祥子の心は完全に、怒りの方向から心配の方向に変わっていた。
マキナの為にも今の先生の話を聞いてあげた方が良いだろうし、祥子自身もマキナの話をすべきだと思っている。
祥子は家から出る正当な理由を懸命に考えていた。
その時にふと祥子の頭を過ったのは、ドルーリーの姿である。
「あ、先生。アタシ今、一人じゃ家から出して貰えなさそうだからさ、犬の散歩って形にしたいんだぁ。
大型犬連れてきても平気…………???躾してるし大人しい子なんだけどさ………」
祥子はそう言ってから、申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
すると先生はケラケラ笑い、祥子にこう告げた。
「ああ、うちはペットも問題ないし、壁が分厚いみたいでね。
何をしていても周りには音が聞こえないみたいなんだよ。連れておいで?」
祥子は先生に微笑み、化学準備室からバタバタと出て行く。
晴れ晴れとした祥子の後ろ姿を見送りながら、先生は冷ややかな笑みを浮かべた。
夜20時過ぎ。夜の住宅街は花金と言えど、自棄に静まり返っている。
変装したマキナは先生の同行を探るために外に出ていた。
無難な服とマスクと帽子を着用し、先生の住んでいるマンションの駐車場を見て回る。
夜の駐車場にはちゃんと先生の車が停まっていた。
長らくこの助手席に座っていたと思い胸を痛めながらも、マキナは懸命に気持ちを切り替える。
これが自分の思っていた通りだったとしても杞憂だったとしても、結果がきっちり出たらこの恋を忘れよう。
マキナはそう心に決めていた。
流石に平日は動きがない事を確認しつつも、まだ新しい事件は起きていない。
女子高生連続殺人事件に関しては全く規則性を感じない。
金髪ロングのギャルが狙われること以外何も解らないのだ。
マキナが先生の事を探るようになって、もう一週間の日の時が過ぎていた。
明日になったらもう世間は週末だ。先生の仕事は休みの筈である。
恋人の時間があった分、マキナは彼のスケジュールを良く理解していた。
『明日になったら、先週みたいに昼から張ろうかなぁ………アタシと逢ってた時間って、確か何時も14時からだったな』
マキナは懸命に辛い気持ちを抑えながら、恋人同士だった頃の事を冷静に思い返す。
あの日々はとても楽しかった。それに幸せだった。
あの時に襲われたりしていなければ、まだ変わらずに先生と一緒に居られたのだろうか。
夜空をぼんやりと眺めながらマキナは思う。
余計な事を考えてはいけない。こんな事を考えた所で、今更未来は変わらない。
マキナはそう自分に言い聞かせながら、頭を左右に振る。
もう家に帰ろうと思ったその時、マキナの視界に見慣れた制服が飛び込んできた。
赤いチェックのスカートに真っ赤なリボン。カーディガンはピンク色。
マキナが使っていたものと同じローファーの足元は、白いルーズソックス。
その制服の女の子は金色の髪を靡かせながら、先生の住んでいるマンションの前に佇んでいた。
その傍らにはとても大きな犬がいる。周りを見回すその仕草には見覚えがあった。
其処にいるのはどう見ても、祥子以外の何者でも無かった。
祥子の姿をこの敷地内で見たマキナから、一瞬にして血の気が引く。
どうして今こんな時間に、祥子は此処に居るのだろうとマキナは思う。
祥子の傍らにいるドルーリーが尻尾をゆらゆらと揺らしている。その時にマキナとドルーリーの視線が合った。
ドルーリーがバタバタとマキナ目掛けて走ってこようとしているのを見て、慌てて物陰に身を隠す。
この時にマキナはドルーリーだけはどうしても誤魔化せないと察した。
『ちょっと待って!!!なんで!?!?!?なんでこんな事になってんのぉぉぉぉ!?!?!?』
マキナが心の中で叫んでいると、マンションから見覚えのある男が出てくる。
スーツ姿ではなく私服を着た先生が、祥子に向かってパタパタと手を振った。
それに対して祥子は微笑んで手を振り返したのだ。
先生と祥子の一連の行動を横目に見ながら、マキナはある事を思う。
まさか先生は祥子とも只ならぬ関係だったのだろうかと、その時に誤解をしてしまっていた。
先生と祥子がマンションの中に消えてゆくのを見ながら、マキナは唯々焦りだす。
万が一先生と祥子が何かあったとすれば、その現場だけはマキナは見たくないと感じた。
頭の中で色々な事を考えながらも、マキナは先生の住んでいる部屋のベランダに回る。
最悪の場合は家に帰って、失恋ソングでも颯斗のパソコンで調べようとマキナは思っていた。
ほんの少しだけ助走をつけながら走り、勢いよく飛び上がる。
マキナの身体はいとも簡単に空中に浮き、先生の家のベランダの手すりにしがみ付いた。
『これ…………マジでヤバイ。魔法みたい………』
マキナはそう思いながら物陰に息を潜める。
部屋に灯りが灯るのと同時に、ドルーリーがバタバタとガラス戸目掛けて駆けてきた。
窓ガラスを引っ搔くドルーリーを横目に、マキナは苦笑いを浮かべて唇の前に指を立てる。
するとドルーリーは急に静かになって、尻尾をパタパタ振り出す。
部屋の中から祥子の声が聞こえてくると、マキナは身体を屈ませた。
「…………ドルーリー、何か其処にいるの??もしかして、マキナいたりするのかな…………??」
しんみりと語る祥子の声を聞きながら、マキナは思わず吹き出しそうになる。
まさか幽霊ではなく本体が其処にいるとは、流石に祥子も想像出来ないに違いない。
すると先生が祥子に向かってこう言った。
「…………そうかもしれないな…………マキナは俺の傍にいても、おかしくないと思うから…………」
祥子の前で自分の名前を呼ぶ先生に対し、マキナは息が詰まりそうになる。
思わず泣きだしそうになった瞬間、祥子が今にも泣きだしそうな声で囁いた。
「アタシも先生の傍に、マキナいるって思います。アタシ、実は先生とマキナのデート見た事あったから……。
めっちゃ大事にして貰ってて良かったって、思ってました…………。
アタシ、マキナと先生の幸せ壊した人、許せないんです…………!!」
マキナが先生と付き合っていた事を、祥子が解っていた事実に言葉を失う。
すると静かになっていた筈のドルーリーが、いきなり小さく唸りだす。
少し構えるかの様にしながら、真っ直ぐに何かを見つめている。
すると先生はなだらかな声で囁いた。
「…………マキナはね、俺にとっては理想そのものだったよ。
素直で可愛くて疑う事を知らなくて、屈託ない表情で笑う…………あの笑顔が、とても大好きだったんだ………」
マキナの心の中に最後のデートが浮かぶ。先生の手の温度も甘い声色も、何もかもが甦って涙が溢れる。
けれどしんみりとした空気の中で、マキナの耳には更に唸り声が響く。
窓から見えるドルーリーは、歯を剥き出しにして何かを睨んでいた。
ドルーリーがこんなに唸るところを、マキナは初めて見た。
冷静になったマキナは、先生の言葉に更に耳を傾ける。すると先生はこう言い放った。
「だからね、マキナのいろんな顔が見たくなったんだよ………死にゆく表情だってさぁ!!!」
マキナはこの時に、自分を殺した犯人が椿山先生だった事に気が付いた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
静寂の星
naomikoryo
SF
【★★★全7話+エピローグですので軽くお読みいただけます(^^)★★★】
深宇宙探査船《プロメテウス》は、未知の惑星へと不時着した。
そこは、異常なほど静寂に包まれた世界── 風もなく、虫の羽音すら聞こえない、完璧な沈黙の星 だった。
漂流した5人の宇宙飛行士たちは、救助を待ちながら惑星を探索する。
だが、次第に彼らは 「見えない何か」に監視されている という不気味な感覚に襲われる。
そしてある日、クルーのひとりが 跡形もなく消えた。
足跡も争った形跡もない。
ただ静かに、まるで 存在そのものが消されたかのように──。
「この星は“沈黙を守る”ために、我々を排除しているのか?」
音を発する者が次々と消えていく中、残されたクルーたちは 沈黙の星の正体 に迫る。
この惑星の静寂は、ただの自然現象ではなかった。
それは、惑星そのものの意志 だったのだ。
音を立てれば、存在を奪われる。
完全な沈黙の中で、彼らは生き延びることができるのか?
そして、最後に待ち受けるのは── 沈黙を破るか、沈黙に飲まれるかの選択 だった。
極限の静寂と恐怖が支配するSFサスペンス、開幕。

【完結】バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~
山須ぶじん
SF
異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。
彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。
そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。
ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。
だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。
それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。
※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。
※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

我ら新興文明保護艦隊
ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら?
もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら?
これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。
※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる