嗚呼、なんて薔薇色の人生~フォークのα×フォークのΩの運命論~

如月緋衣名

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第一章 La Vie en rose

第二話 ★☆

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 薔薇の花束を抱きしめながら、薔薇より華やかな美しい男が幸せそうに微笑む。
 血塗れの手で紫苑にそれを差し出しながら、玲央は囁いた。
 
 
「ねぇ見て!!薔薇の花束頂いたんだ!!綺麗だろ!?天然のダイヤモンドのラメを纏った薔薇の花……!!」
 
 
 カナリヤの如くに透き通った美声を放ちながら、薔薇の花びらを舞わせる。
 そんな玲央の姿を横目で見ながら、ナイフ片手の紫苑は呆れた様に溜め息を吐いた。
 
 
「何その無駄に高そうな花束………。花なんて究極の贅沢品じゃん………。
金持ちって一体何考えて過ごしてんの…………?」
 
 
 女の身体を全裸の紫苑が器用に解体し、細かく梱包してゆく。火照った身体のままで解体をする紫苑はとても不機嫌だ。
 紫苑はこの作業をする前に玲央に触られるのを、余り好んでいない。気持ちが漫ろになってしまうからだ。
 解体の合間に紫苑が玲央の手にした薔薇を一輪、わざと手のひらでぐしゃりと砕く。
 花びらはヒラヒラと舞い落ちて、アップルパイの香りの女の遺体の上に落ちていった。
 血塗れの紫苑から仄かにフリージアのような香りが漂ったのを感じながら、玲央は生唾を飲み込む。
 それは紫苑の肉体から自分の手によってフェロモンが染み出ている証だと、玲央は幸せな気持ちになるのだ。
 運命の番を確信出来るこの瞬間、余りにも甘美で眩暈がする。
 
 
 薔薇の花束をジャグジー付きのバスタブの上に乗せ、玲央は紫苑の方を見る。
 すると全身ケーキの血に塗れた紫苑が、玲央に脚を差し出した。
 はあはあと息を荒げながら、蠱惑的な視線を送る。紫苑はもう、我慢の限界を迎えていた。
 誘われるが儘に紫苑の爪先にキスを落とし、ゆっくりと舌を這わせてゆく。
 爪先から足の甲を通り踝に舌が這い回った時、紫苑は小さく吐息を漏らした。
 赤。赤。赤。全てが真紅で纏われた世界の中で、アップルパイの甘い香りと花の香りが入り混じる。
 
 
「そんなきったないとこ、よく舐めれるね?玲央」
「汚くないよ……?紫苑の身体は全部が綺麗………」
 
 
 何もかもが美しい男がそう囁きながら、紫苑の身体を弄ってゆく。ひんやりとして冷たい指先は的確に紫苑の身体を高ぶらせた。
 肌の上を触れるか触れないかのギリギリで、形の綺麗な手を滑らせてゆく。
 胸元の突起を擦り上げれば、思わず濡れた声が紫苑の唇から漏れた。
 
 
「っ………あっ!!!」
 
 
 つれない態度を繰り返す愛しい人から、紫苑のフェロモン独特の花のような香りが漂う。
 この瞬間が最大の至福であると玲央は思った。自分の愛撫で紫苑が感じているなんて、幸せ過ぎて頭が真っ白になりそうだ。
 血塗れの紫苑にダイヤモンドのラメが付いた薔薇の花びらが、ひらりと舞い落ちる。
 その光景を見た玲央は心から、とても美しいと感じていた。
 玲央の作り物の様に整った唇から、甘い甘い言葉が漏れる。
 
 
「渋谷のファッションビルの広告になる事よりも、女性の憧れの的になることよりも、君の身体にこうして唇を寄せるこの瞬間が一番幸せなんだ………」
 
 
 そう囁きながら恍惚の笑みを浮かべて紫苑の肌に頬を寄せる玲央を、紫苑は回らない思考で見つめている。
 そんな甘い言葉よりも、今すぐに快楽が欲しいと思っていた。
 玲央と触れ合ってしまえば最後、紫苑の身体は何処までも淫乱に成り下がる。
 それがΩの性である事を紫苑は、よく理解しているのだ。
 
 
「なあ、そんなとこばっか触ってないで……早く触って………。
もう我慢の限界……………」
 
 
 中の方が熱くて熱くて仕方がないと紫苑は身体を震わせる。入り口からは愛液が滲み出ていた。
 はしたなく自ら脚を開いて見せれば、玲央が舌なめずりをしてみせる。
 
 
「………こんなにもう、濡れちゃったんだね………早く癒してあげる」
 
 
 甘い芳香の漂う場所は、すぐにでも自分の遺伝子を欲しがっているように感じる。
 心の底からこの蠱惑的な肢体を孕ませたいと、玲央は思っていた。
 それを察している紫苑は強請るように玲央を見つめる。玲央は紫苑の中にゆっくりと指を滑らせた。
 ぬるりとした粘膜の絡まる感覚と、ぐちゅりという濡れた音が響く。
 虚ろな目をしてされるがままに乱され、身体をくねらせた紫苑は指の侵入に唇を強く噛み締める。
 けれど玲央はそれを察して、紫苑の口の中に指をねじ込んだ。
 
 
「だめだよ紫苑……唇ボロボロになっちゃうだろ??」
 
 
 こうされてしまえば声を出すしかなくなると玲央は思う。どうしても紫苑の嬌声が聞きたくて仕方ないのだ。
 それを察しているが故に、紫苑は玲央に自分の声を聞かせたくない。
 もうすぐ混濁しそうな思考の中で、最後の理性を振り絞る。
 けれどそれは無残にも玲央の愛撫で、一気に崩れ落ちた。
 
 
「あぁ………!!そこは駄目………!!」
 
 
 感じてしまう場所に淡く指先が触れた瞬間に、紫苑の身体が跳ね上がる。
 紫苑が涙で目を滲ませながら顔を左右に振った。
 紫苑の好きな場所を玲央はとっくの昔に熟知している。
 玲央が意地の悪い笑みを浮かべて、その場所目掛けて摺り上げる。すると更に水音が響き渡った。
 一本だけ入れた指を二本に増やして滑り込ませれば、紫苑の身体がくねる。
 探るように紫苑の中を愛撫し始めれば、その都度に蜜が溢れ出した。
 
 
「あ………!!ぐ……!!れお!!!それ……ぇ………!!!」
 
 
 頭が真っ白になる様な背筋の冷たくなる感覚。紫苑はこの時、自分の身体が絶頂に近い事を理解していた。
 ガクガク腰を震わせながら玲央の愛撫に溺れてゆく。玲央は恍惚の眼差しを浮かべて、乱れる紫苑を見つめていた。
 
 
「ん……は………んん………ふ…………!!」
 
 
 頭から理性が完全に吹き飛び、口内にねじ込まれた玲央の指先に愛撫を始める。
 そのまま自分から顎を突き上げて、静かに紫苑はキスを強請り始めた。
 玲央はそんな紫苑の余りの可愛さに思わず笑みを溢す。
 唾液塗れの指を唇から抜き取れば、淫らにそれが糸を引いた。
 玲央がキスをしようと紫苑の顔に顔を近付ける。その瞬間いてもたってもいられず、紫苑は玲央の首に腕を回した。
 貪るかの様なキスしながら、我ながらはしたなく誘っていると紫苑は思う。
 こんな風に乱れる自分を自分だと認めたくない気持ちはあれど、こうしているのが心地よくて仕方がない。
 息を乱しながら甘い口付けを繰り返せば、長い髪が覆い被さる。
 金色の絹のような髪を紫苑が撫でれば、玲央の口元が動いた。
 
 
「……………いくとこ見せて?」
 
 
 甘い声色で玲央はそう囁いて、紫苑の中を指でさらに弄る。
 激しく指を動かす度に、ぐちゃぐちゃと音を響かせて蜜が溢れ出す。
 聴覚でも犯されていると感じた瞬間、もう紫苑は我慢なんて出来なかった。
 理性は完全に吹き飛んで、ただ愛液と喘ぎを垂れ流すだけの獣と化す。
 玲央の腕の中で紫苑が飛び切り甘い声を上げて、玲央の指を締め上げた。
 
 
「ああっ!!いく!!!いくぅ!!!ああああああ!!!!!」
 
 
 バスルームの中に充満したΩのフェロモンの匂い。それは紫苑が達した事を教えてくれた。 
 ガクガク腰を震わせながら、血まみれのバスルームの床に崩れ落ちる。熱を含んだ目が潤むのを玲央は愛しいと思った。
 一度達してしまった肉体は、更なる快楽を求めて貪欲に熱を帯びてゆく。
 これが孕まされるΩの本能なんだと、欲情をするたびに紫苑は思うのだ。
 
 
「ねえ、いれて………むり、もう我慢できない……ちょうだい、玲央………。
中にほしい………」
 
 
 中にほしいと口にする自分自身が浅ましい。
 自分の理性とは裏腹に身体の方が先走り、欲望を口にするこの感覚は、まるで動物にでもなってしまったかのようだ。
 戸惑う紫苑の愛らしさに玲央は邯鄲の息を漏らし、紫苑の入口に玲央は自分のものを宛がう。
 それだけで紫苑の入り口から、蜜が溢れてしまっていることに気付いた。
 
 
「紫苑、素直だね。可愛いよ………。
何時もこれくらい素直に僕の事、求めてくれたっていいんだよ?」
 
 
 玲央はそう囁きながら紫苑の身体をきつく抱き締める。そしてゆっくりと腰を沈めていった。
 繋がり合った身体のままで向かい合い、深いキスを交わし合う。
 紫苑の中に玲央の先端が飲み干された瞬間、思考が混濁して犯して欲しいという感情だけに支配される。
 これが欲しい。もっと欲しい。これをされると心地が良い。身体が本能的にそう感じていると紫苑は思う。
 Ωの本能に完全に踊らされている。玲央はそんな状態になった紫苑に、愛の言葉を囁き続けた。
 
 
「あ……!!あああ……!!!これ、すき………!!!」
「……愛してる………愛してるよ紫苑………こんな気持ちになるのは、生まれて初めてなんだ……」
 
 
 愛してるという言葉の雨を浴びながら、紫苑はまた絶頂を迎える。
 激しく絡まりあいながら、甘い香りの血の海に沈んでいった。
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