疼痛溺愛ロジック~嗜虐的Dom×被虐的Subの恋愛法則~

如月緋衣名

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Ⅸ.

Ⅸ 第二話

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 美容室の扉を開けば何時も通りに、赤い髪を揺らして黒澤さんが奥から出てくる。
 俺の姿を見るなりほんの少しだけ目を見開き、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。
 
 
「………この間、本当にごめんね」
 
 
 謝る黒澤さんに首を左右に振り、何時もと変わらぬ笑みを浮かべる。
 そして自らシャンプーチェアーの方に向かった。
 
 
「今日もカットお願いします!!」
 
 
 規則的な音を響かせながら鳴り響く鋏と、漂ってくる花の香り。
 長らく切っていない髪を整えて貰っている最中に、黒澤さんはこう言った。
 
 
「……遥の事なんだけど、本当に君の云う通りだったよ」
 
 
 黒澤さんはそう言いながらとても寂しそうに笑う。
 この人は遥さんに利用されたといっても、正直過言では無いのだ。
 パートナーであったとはいえど、遥さんの心の在処は遊歩のところにある。
 二人はとてもお似合いだったし、傍目から見ても素敵だった。
 それだけに、遥さんが遊歩を刺したことだけは悲しかったのだ。
 
 
「そう………ですね………」
 
 
 俺は苦笑いを浮かべながら目を伏せる。すると黒澤さんが穏やかな表情を浮かべて囁いた。
 
 
「俺ね、遥の事を待つつもりでいるよ。馬鹿だって思うかもしれないけれど。
本当に悪い事をされても簡単に捨てられないもんだね。
遥が出てきたら、この町を離れて二人で暮らすつもりだよ……」
 
 
 黒澤さんはそう言いながら笑い、俺の髪を綺麗に整えてくれる。
 この時俺は遥さんに、黒澤さんが付いていてくれて良かったと少しだけ思った。
 
 
「また来ます……!!」
「うん!!また来てね!!」
 
 
 髪を切り終わり黒澤さんに挨拶をする。
 自棄に首筋が冷えるのを感じながら美容室から出れば、もう冬が近付いている事に気付く。
 そういえば去年の今頃はまだ、日向の事で嘆き悲しんでいた気がする。
 また俺がこんな風に笑って生きていけるだなんて、正直夢にも思っていなかった。
 
 
 病院について一般病棟のドアの前に立てば、ドアの向こうから賑やかな声が聞こえてくる。
 遊歩は一般病棟で出会った劇団員ととても仲良くなり、入院生活をそれなりに謳歌していた。
 どうやら今度その劇団員の人の出ている舞台に、特別ゲストの体で出る事迄決めてしまったようだ。
 
 
 こっそりドアを開いて隙間から覗けば、一般病棟の人たちと記念撮影迄しているじゃないか。
 この日遊歩はこの病院からやっと退院する。
 遊歩の誕生日からは二週間過ぎてしまったけれど、これから遊歩の誕生日をお祝いする。
 そして今日、遊歩とClaim結婚の手続きに向かうのだ。
 
 
 ゆっくりとドアを開けば、満面の笑みを浮かべた遊歩が笑う。そして俺を指さしてこう叫んだ。
 
 
「あれ!!俺の奥さん!!今日結婚する!!」
 
 
 その瞬間に周りから囃し立てる様な声が上がり、俺は恥ずかしくてただ俯く。
 遊歩はそんな俺を横目に、何時も通りの下衆な笑みを浮かべていた。
 
 
「髪切ったね。また髪掴むの大変そう……」
 
 
 遊歩がそう言いながら俺の頭を撫でる。
 そう言えば此処二週間の強制禁欲を強いられた身体は、自棄に火照っている気がする。
 遊歩にほんの少し触られるだけでクるものがある。
 思わず熱っぽい顔で見上げてしまえば、それに気付いた遊歩が察して照れ始めた。
 
 
 まずは何よりも手続きをするのが先決だ。そう解っている筈なのに、自棄に身体は性急だ。
 今直ぐにでも抱かれたいなんて思っている俺に、遊歩が耳元で囁いた。
 
 
Stay我慢
 
 
 俺にそんな命令を仕掛けておきながら、遊歩の手は俺の腰を撫でまわす。
 久しぶりの性的な手付きに思わず息を漏らした。
 
 
「っ……!!遊歩ぉ!!!」
 
 
 思わずキッと睨み付ければ、こっそりと静かに耳打ちをする。
 
 
「駄目……我慢だよ?我慢……。後で一希の身体をグズグズになるまでぶち犯してやるから、ちょっと待ってて……。
そんな堪え性のない子に、何時なっちゃってたのかなぁ?」
 
 
 遊歩の言葉に体中が過敏に反応して止まらない。久しぶりに自分の中のSubの枯渇を感じながら、全身を震わせた。
 
 
***
  
 
 晴れて遊歩と夫婦になった。俺は完全に遊歩のモノになったのだ。
 
 
Kneel跪いて
 
 
 人妻になって早一時間の時間が経過した頃には、俺は全裸で小さなソファーに腰掛けた遊歩の足元にいた。
 俺の中にはもう小さな玩具が捩じ込まれ、さっきから犬の様にハァハァ息を乱している。
 俺の状態はずっとSubスペースのままだ。
 
 
 役所に行き届け出を出してから、余程俺がフェロモンを垂れ流していたのか即ラブホテル。
 夫婦になって先ずする事が性行為なんて、とても正しい夫婦としての在り方だ。
 遊歩が俺の顎を掴み、ソファーに座って屈んだままでキスをする。
 舌を絡ませ合う度に口の中で水音が響く。
 久しぶりの深いキスの感覚に、完全に脳が痺れきっているのが解る。
 
 
「ふ……うちの奥さん、こんなに淫乱なんだねぇ?」
 
 
 遊歩がそう言いながら俺の頭を床に叩きつけ、その上から革靴で踏みにじる。
 身体の奥底から溢れ出すような、滲み出る欲情。
 久しぶりのこの感覚に酔いしれていた。
 
 
「だってぇ………ひさしぶりなんだもん………。
一般病棟じゃエッチな事できないし………」
「個室の時は俺が元気じゃなかったしねぇ…………。
フェラチオさせる余裕もあの時無かったから……」
 
 
 遊歩がそう言いながら苦笑いを浮かべ、ボトムのジッパーを下ろす。
 舌舐めずりをして見せながら、遊歩がいやらしい笑みを浮かべた。
 
 
「久しぶりに堪能させてあげる……」
Strip上手に脱がせて
Suck召し上がれ
 
 
 膝立ちになりながら遊歩の穿いているボトムを下ろし、下着越しの熱くなったモノに唇を寄せる。
 わざとキスの音を響かせながら、下着をゆっくりと下げてゆく。
 口に含んで味わう様に舐め回しながら、唇を使って吸い上げて頭を動かす。
 折角綺麗に整えて貰った髪は、遊歩が俺の頭を撫でて乱してゆく。
 このまま崩されていく感覚が最高に気持ちいい。
 
 
「……おいしい?」
「おいひい………ん………ふ……!!」
 
 
 唾液の音を響かせながら遊歩のモノを舐める俺に、稚拙な質問を落としてゆく。
 俺の中に埋め込まれた玩具が良いところで震える度、身体中が情欲に駆り立てられた。
 上目遣いで遊歩を観れば、遊歩も余裕のない笑みを浮かべる。
 すると遊歩が俺の頭を無理矢理掴んで、俺の口からモノを引き抜いた。
 
 
「は………!!俺も限界だったみたい………!!」
 
 
 遊歩が俺の身体を起こして、ベッドに向かって突き飛ばす。
 それと同時に恍惚とした笑みを浮かべて囁いた。
 
 
Present全部見せて
 
 
 遊歩の目の前で脚を開き、誘うように甘く囁く。
 
 
「……………旦那様ので突いてください!!」
「……何それ、ホント最高なんだけど!!」
 
 
 俺の中に入っている玩具を引き抜き、遊歩が俺の入り口に自らを宛がう。
 中に入り込もうと脚を肩に掛けたその時、遊歩が小さく囁いた。
 
 
「愛してるよ………!!」
「う!?え!?あっ!?ああっ!!!」
 
 
 遊歩のモノが中に入った瞬間に、身体中に電流みたいに快感が駆け巡る。
 そういえば俺と遊歩の間に、愛してるという言葉が解禁されてから今日初めてのセックスだ。
 
 
「まっ……まってゆうほ……もたない……!!これだめ………!!」
「ふふ………かわいい……愛してる………愛してるよ……」
「ひっ………!!!」
 
 
 遊歩から愛してるなんて言葉が出た瞬間に、快感が止まらずにおかしくなりそうになってしまう。
 俺の身体を突き回しながら、俺の首元に手を這わせる。
 そのままギチギチと俺の首を締め上げて、遊歩が息を乱した。
 恍惚を浮かべたその表情が愛しい。
 
 
「あ……んっ……!!あい……して、る………ぅ!!」
 
 
 遊歩に向かってそう言った瞬間、俺の中のモノがビクリと跳ねる。
 それと同時に俺の中にじわりと熱が広がった。
 
 
「……これ、破壊力高いわ………ちょっと出ちゃったもん………。まって……はずかしい……!!!」
 
 
 遊歩が真っ赤な顔のままで、俺の胸元に顔を埋める。
 この時に俺の旦那様は世界で一番可愛いと思った。
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