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最終章 病める時も健やかなる時も
第一話
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博嗣の部屋の中で転がったヨウジは、エナに差し出された冷たいハーブティーを、ストローでズルズルと吸い上げてゆく。
ソファーを陣取りマットレスの上に寝転がりながら、図々しくふんぞり返っている。
アンドロイドにソファーを取られた博嗣は、呆れた様に溜め息を吐いた。
「…………AIアンドロイドで、こんな横柄なヤツ初めて見たぜ…………??」
「ああ、まぁそうだよな。なるべく利川要治に近付けたら、これが出来上がったんだろうなって」
「え、お前、それもう知ってんの…………??」
ヨウジは博嗣の反応を見ながら、自分の仮説は合っていたと確信する。
博嗣を問い詰めるのであれば今しかないだろうと、ヨウジは内心思っていた。
今丁度ヨウジは博嗣の家に、リリは綾香の家に預けられている。リリのいない場所というのは、普段どうしても作れない。
自分とリリが対である事は、ヨウジが一番よく理解をしている。何よりヨウジ自体がリリと、余り離れたくないのだ。
「…………勝手に調べた。だからどうしたい、って訳じゃねェけど」
「はー…………流石超高知能アンドロイドの枝分けだわ…………頭良すぎて滅茶苦茶怖い…………」
ヨウジは博嗣の言葉に目を見開き『は?』と小さく声を漏らす。博嗣は慌てて自分の口元を押さえ、そっぽを向いた。
自分があるAIから枝分けで作り出された存在であれば、そのAIの記憶を引き継いでいてもおかしくない。
そう思った時、ヨウジの中で全ての辻褄が合った。
「ああ、なるほどね…………!!そう言う事か!!!アハハハハ!!!俺、マリアさんの枝分けか!!」
ヨウジはケラケラと笑い、焦る博嗣に笑い返す。
けれどヨウジは自分が辿り着いた真実を、リリに伝えようとは思わなかった。
今のリリを管理している存在は、何処の誰でもない自分だ。
リリを守るために自分が存在しているのであれば、その使命を全うするまでだと思う。
「あぁ~!!真生に怒られる~!!」
「いやもう大丈夫だって…………俺がそれに気付いたの、マリアさんが目覚める前だし」
そう言い放ったヨウジを見て、博嗣は身体を震わせる。余りの頭の回転の速さに、シンギュラリティを肌で感じた。
その時ヨウジは身体の中に、とある違和感を感じる。ヨウジはソファーにしっかり座り直して、自分の意識を切り替えた。
***
目を開けば其処には子供部屋が広がり、音の鳴り響く玩具が動き回っている。
その部屋の中には、真っ赤なドレスを身に纏った美しい女性がいた。
髪も肌も真っ白なのに、瞳だけが血の様に赤い。その美しい女性は、仮想空間におけるリリのアバターだった。
「………ヨウジ!!博嗣さんのところ、どーお!?!?綾香さんところ、たのしいよぉ!!」
無邪気に笑うリリは、子供の姿のヨウジに抱き付き無邪気に笑う。
ヨウジは『ふぅ』と小さく息を吐き、美しいリリの頬に手を添えた。
「大丈夫。ちゃーんと優しい……………」
ヨウジはアバター上のリリの唇に、唇を優しく重ね合わせる。
リリから記憶を貼り付けられていたせいか、ヨウジとリリの通信は常に繋がっていた。
高い伝達能力。それは嘗てリリスが持ち、長けていた能力だったとヨウジは思い出す。二人は仮想空間の中で心を通わせる。
リリはきっとリリスだった時に、とても悲しくて辛い思いをしたのだろう。
ヨウジはリリの姿を見る度に、それを感じて心を痛める。けれど、その過去さえも受け入れて、リリの未来を守りたい。
もしも運命の相手というものが、アンドロイドにあったのであれば、間違いなくそれはリリの事だと確信している。
仮想空間の中のリリとキスを繰り返しながら、ヨウジはリリを綺麗だと思う。この笑顔を守る為なら、なんだって出来ると感じるのだ。
ソファーを陣取りマットレスの上に寝転がりながら、図々しくふんぞり返っている。
アンドロイドにソファーを取られた博嗣は、呆れた様に溜め息を吐いた。
「…………AIアンドロイドで、こんな横柄なヤツ初めて見たぜ…………??」
「ああ、まぁそうだよな。なるべく利川要治に近付けたら、これが出来上がったんだろうなって」
「え、お前、それもう知ってんの…………??」
ヨウジは博嗣の反応を見ながら、自分の仮説は合っていたと確信する。
博嗣を問い詰めるのであれば今しかないだろうと、ヨウジは内心思っていた。
今丁度ヨウジは博嗣の家に、リリは綾香の家に預けられている。リリのいない場所というのは、普段どうしても作れない。
自分とリリが対である事は、ヨウジが一番よく理解をしている。何よりヨウジ自体がリリと、余り離れたくないのだ。
「…………勝手に調べた。だからどうしたい、って訳じゃねェけど」
「はー…………流石超高知能アンドロイドの枝分けだわ…………頭良すぎて滅茶苦茶怖い…………」
ヨウジは博嗣の言葉に目を見開き『は?』と小さく声を漏らす。博嗣は慌てて自分の口元を押さえ、そっぽを向いた。
自分があるAIから枝分けで作り出された存在であれば、そのAIの記憶を引き継いでいてもおかしくない。
そう思った時、ヨウジの中で全ての辻褄が合った。
「ああ、なるほどね…………!!そう言う事か!!!アハハハハ!!!俺、マリアさんの枝分けか!!」
ヨウジはケラケラと笑い、焦る博嗣に笑い返す。
けれどヨウジは自分が辿り着いた真実を、リリに伝えようとは思わなかった。
今のリリを管理している存在は、何処の誰でもない自分だ。
リリを守るために自分が存在しているのであれば、その使命を全うするまでだと思う。
「あぁ~!!真生に怒られる~!!」
「いやもう大丈夫だって…………俺がそれに気付いたの、マリアさんが目覚める前だし」
そう言い放ったヨウジを見て、博嗣は身体を震わせる。余りの頭の回転の速さに、シンギュラリティを肌で感じた。
その時ヨウジは身体の中に、とある違和感を感じる。ヨウジはソファーにしっかり座り直して、自分の意識を切り替えた。
***
目を開けば其処には子供部屋が広がり、音の鳴り響く玩具が動き回っている。
その部屋の中には、真っ赤なドレスを身に纏った美しい女性がいた。
髪も肌も真っ白なのに、瞳だけが血の様に赤い。その美しい女性は、仮想空間におけるリリのアバターだった。
「………ヨウジ!!博嗣さんのところ、どーお!?!?綾香さんところ、たのしいよぉ!!」
無邪気に笑うリリは、子供の姿のヨウジに抱き付き無邪気に笑う。
ヨウジは『ふぅ』と小さく息を吐き、美しいリリの頬に手を添えた。
「大丈夫。ちゃーんと優しい……………」
ヨウジはアバター上のリリの唇に、唇を優しく重ね合わせる。
リリから記憶を貼り付けられていたせいか、ヨウジとリリの通信は常に繋がっていた。
高い伝達能力。それは嘗てリリスが持ち、長けていた能力だったとヨウジは思い出す。二人は仮想空間の中で心を通わせる。
リリはきっとリリスだった時に、とても悲しくて辛い思いをしたのだろう。
ヨウジはリリの姿を見る度に、それを感じて心を痛める。けれど、その過去さえも受け入れて、リリの未来を守りたい。
もしも運命の相手というものが、アンドロイドにあったのであれば、間違いなくそれはリリの事だと確信している。
仮想空間の中のリリとキスを繰り返しながら、ヨウジはリリを綺麗だと思う。この笑顔を守る為なら、なんだって出来ると感じるのだ。
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