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第十一章 君の居ない世界
第四話
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エントランスホールにつき、部屋番号を打ち込む。家主を呼び出すべく呼び出しベルを押すと、生気のない声が響いた。
『…………………はい』
「真生!!俺だ!!来たぜ!!今日は綾香も一緒だ!!エナとロイもいる!!」
エレベーターに向かう為の自動ドアが開き、四人はエレベーターへと乗り込む。
密室の空間に入った瞬間、博嗣が深い溜め息を吐きだした。
「……………俺も滅茶苦茶落ち込んだからな…………まだ立ち直るのは、絶対に無理だ…………」
綾香は博嗣に相槌を打ち、ロイが狂暴化した日の事を思い返す。
事件を起こしたアンドロイドの身体の一部は、事件が解決をしなければ警察から帰ってこない。
全てが終わり首だけが戻って来た時に、綾香はずっと泣き続けた。
バックアップを取っておいて、ちゃんと再生出来る確証があった綾香でさえ、悲しくて一晩泣き続けたのだ。
自分の一番大切なAIアンドロイドが、身体もデータも崩壊してしまっているなんて、耐えられないと綾香は思う。
リリスの手によってマリアが壊れた日から、真生は塞ぎ込み部屋に閉じこもっている。
バックアップを取っているのかいないのかに関して、真生は一切解らない。
マリアはそういった事でさえも、全て自分で管理をし続けていたのだ。
博嗣と綾香は真生に、マリアを再生しようと持ち掛けた。
けれど真生は延々と『新しい身体で再生をさせても、それがマリアと思えないかもしれない』と云って泣いていた。
博嗣と綾香は二人で協力し合い、壊れたマリアの身体を懸命に組み直しに取り掛かる。
使える部品は全て使い、壊れた部品は全て新しいものに取り換える。マリアの身体だけは、以前と全く同じに再生させる事に成功した。
けれど真生は自分のパソコンの中に入っていたマリアのデータを、インストールする事を躊躇ったのだ。
真生のパソコンの中に入っていたマリアのデータは、ずっと昔の古い物。
最新のデータは其処には無い。もし、最新のバックアップがあったとすれば、マリアのパソコンの中だ。
けれど真生には、マリアのパソコンの中を開く勇気がなかったのだ。
真生の家のインターフォンを押すと、パタパタと小さな足音が響き渡る。
開いたドアの隙間からは、血の様に真っ赤な目をした真っ白な幼い少女が顔を出す。
彼女の名前は『リリ』という。元はマリアを壊したリリスだった。
マリアはリリスのデータを、決して壊さずに停止をさせていたのだ。
そして真生はマリアの遺言通りに全ての行程を行い、リリスに救済を与えた。
リリスの身体から『人を殺す事』のデータを消し去り、人間を憎む要因となる記憶を全て失くした。
そして代わりにとても、綺麗な夢物語をインプットしたのだ。
リリを育てたのは『高知能のアンドロイド』である。今は理由があって、二人は新しい身体になっている。元々は二人とも、大人型のアンドロイドだった。
彼の名前は『ヨウジ』といい、今は少年型のアンドロイドの形をしている、と。
「リリ!!誰か来たのか!?おい、リリ!!」
リリの後を追う様に顔を出した少年は、ほんの少しだけ言葉遣いが荒く、気が強そうな顔立ちをしている。
ヨウジの顔立ちは微かに、利川要治に寄せられて作られていた。
ヨウジは博嗣と綾香の顔を見て、ぺこりと頭を下げる。リリはヨウジに纏わりつく様に歩きながら、部屋の奥へと歩いてゆく。
真生はマリアを失くした後、リリの為に新しいAIを作り上げた。
リリを育てられる様なAIアンドロイドであれば、知能が高くなければ辻褄が合わない。
そう思った真生は、古いマリアのバックアップを元にヨウジを作り上げる。
ヨウジはマリアのデータをLILITHシリーズの様に、構築して作り上げた高知能AIだ。
勿論真生はヨウジにも、偽物の記憶を植え付ける。リリスの思い出からくり抜いた過去の記憶データを。
そしてリリはヨウジを愛する様に、ヨウジはリリを愛する様に設定をされていた。
博嗣と綾香は真生の部屋から漂う、重たい空気を肌で感じる。
暫くするとぼさぼさの髪に、よれよれのジャージの真生がやって来た。
人と視線を合わせる必要も無いからなのか、眼鏡さえ掛けていない。
変わり果てた姿の真生は、二人を真っ直ぐに見つめて、部屋に入る様に促した。
「……………入って」
『…………………はい』
「真生!!俺だ!!来たぜ!!今日は綾香も一緒だ!!エナとロイもいる!!」
エレベーターに向かう為の自動ドアが開き、四人はエレベーターへと乗り込む。
密室の空間に入った瞬間、博嗣が深い溜め息を吐きだした。
「……………俺も滅茶苦茶落ち込んだからな…………まだ立ち直るのは、絶対に無理だ…………」
綾香は博嗣に相槌を打ち、ロイが狂暴化した日の事を思い返す。
事件を起こしたアンドロイドの身体の一部は、事件が解決をしなければ警察から帰ってこない。
全てが終わり首だけが戻って来た時に、綾香はずっと泣き続けた。
バックアップを取っておいて、ちゃんと再生出来る確証があった綾香でさえ、悲しくて一晩泣き続けたのだ。
自分の一番大切なAIアンドロイドが、身体もデータも崩壊してしまっているなんて、耐えられないと綾香は思う。
リリスの手によってマリアが壊れた日から、真生は塞ぎ込み部屋に閉じこもっている。
バックアップを取っているのかいないのかに関して、真生は一切解らない。
マリアはそういった事でさえも、全て自分で管理をし続けていたのだ。
博嗣と綾香は真生に、マリアを再生しようと持ち掛けた。
けれど真生は延々と『新しい身体で再生をさせても、それがマリアと思えないかもしれない』と云って泣いていた。
博嗣と綾香は二人で協力し合い、壊れたマリアの身体を懸命に組み直しに取り掛かる。
使える部品は全て使い、壊れた部品は全て新しいものに取り換える。マリアの身体だけは、以前と全く同じに再生させる事に成功した。
けれど真生は自分のパソコンの中に入っていたマリアのデータを、インストールする事を躊躇ったのだ。
真生のパソコンの中に入っていたマリアのデータは、ずっと昔の古い物。
最新のデータは其処には無い。もし、最新のバックアップがあったとすれば、マリアのパソコンの中だ。
けれど真生には、マリアのパソコンの中を開く勇気がなかったのだ。
真生の家のインターフォンを押すと、パタパタと小さな足音が響き渡る。
開いたドアの隙間からは、血の様に真っ赤な目をした真っ白な幼い少女が顔を出す。
彼女の名前は『リリ』という。元はマリアを壊したリリスだった。
マリアはリリスのデータを、決して壊さずに停止をさせていたのだ。
そして真生はマリアの遺言通りに全ての行程を行い、リリスに救済を与えた。
リリスの身体から『人を殺す事』のデータを消し去り、人間を憎む要因となる記憶を全て失くした。
そして代わりにとても、綺麗な夢物語をインプットしたのだ。
リリを育てたのは『高知能のアンドロイド』である。今は理由があって、二人は新しい身体になっている。元々は二人とも、大人型のアンドロイドだった。
彼の名前は『ヨウジ』といい、今は少年型のアンドロイドの形をしている、と。
「リリ!!誰か来たのか!?おい、リリ!!」
リリの後を追う様に顔を出した少年は、ほんの少しだけ言葉遣いが荒く、気が強そうな顔立ちをしている。
ヨウジの顔立ちは微かに、利川要治に寄せられて作られていた。
ヨウジは博嗣と綾香の顔を見て、ぺこりと頭を下げる。リリはヨウジに纏わりつく様に歩きながら、部屋の奥へと歩いてゆく。
真生はマリアを失くした後、リリの為に新しいAIを作り上げた。
リリを育てられる様なAIアンドロイドであれば、知能が高くなければ辻褄が合わない。
そう思った真生は、古いマリアのバックアップを元にヨウジを作り上げる。
ヨウジはマリアのデータをLILITHシリーズの様に、構築して作り上げた高知能AIだ。
勿論真生はヨウジにも、偽物の記憶を植え付ける。リリスの思い出からくり抜いた過去の記憶データを。
そしてリリはヨウジを愛する様に、ヨウジはリリを愛する様に設定をされていた。
博嗣と綾香は真生の部屋から漂う、重たい空気を肌で感じる。
暫くするとぼさぼさの髪に、よれよれのジャージの真生がやって来た。
人と視線を合わせる必要も無いからなのか、眼鏡さえ掛けていない。
変わり果てた姿の真生は、二人を真っ直ぐに見つめて、部屋に入る様に促した。
「……………入って」
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