上 下
93 / 109
第十一章 君の居ない世界

第二話☆

しおりを挟む
 テレビモニターの中では、三ヵ月前に起きたアンドロイドが人に危害を加えた事件について、特集の番組が組まれている。
 その番組の中身の大半がアダム社の批判であることは、とっくに見ないでも解っていた。
 淡いピンク色の寝具の中から手を伸ばし、リモコンを取り電源を消す。
 寝起きの綾香はまだ眠たげな眼を擦り、気怠い身体を起き上がらせた。
 
 
 そういえば昨日の夜、何も纏わずに寝てしまったと思いながら、ベッドの上で身体を伸ばす。
 ベッドから降りてシャワーでも浴びようかと考えた綾香は、ゆっくりと身体を起き上がらせる。
 すると綾香の身体に、長い腕が絡まった。
 
 
「…………綾香さん、何処に行くの??」
 
 
 真っ白な髪と、燃え盛る炎を思わせる茜色の虹彩。整った顔立ちの美青年が綾香に微笑む。
 彼は綾香をベットに引き寄せ、甘ったるいキスを唇に落とした。
 綾香は嬉しそうに微笑み、そのキスに応える様にキスを返す。そして、恋人の名前を口にした。
 
 
「うふふ、ロイってば………!!シャワーに行くだけよ………!!汗かいちゃったし………。
昨日、久しぶりに求め合ったでしょ…………??私達………………」
「ふふっ…………そんなに久しぶりでしたっけ??でも綾香さんの身体、今も欲情してます」
 
 
 昨日綾香は新しいロイの身体を手に入れ、LILITH5の時にとったデータをインストールしたばかりだ。
 ロイの記憶はLILITH6に取り換える前の記憶で止まっているが、それでいいと感じていた。
 そしてロイの身体は前のものと同じ顔立ちで、少年型から大人型へと切り替えられる。
 今のロイは綾香の隣を歩いても、何の違和感もない大人の男の肉体をしていた。
 
 
「あ…………ロイ、だめ………今のロイの指、長くてすぐ届いちゃうから…………」
 
 
 綾香は自分の性器に、愛撫をしようと手を伸ばすロイを、わざと制止する動作をする。
 けれど本気でロイを止めるつもりはなく、ロイの長い指先を膣口で飲み干した。
 綾香はロイの首に腕を回しながら、甘い吐息を漏らす。
 
 
「あっ………!!そこ………!!ねぇロイ、お願い………シャワー行く前に、またイキたい…………」
 
 
 綾香が強請る様にロイに甘えると、ロイは満足気な表情を浮かべる。
 昨日の夜にロイは綾香から、幹彦と別れた事を告げられた。
 もう人間と付き合うつもりはない、自分に嘘を吐くのを止めて、ロイだけを愛して生きていくつもりだと言いだしたのだ。
 ロイはそれを嬉しく思い、昨夜は綾香が気をやる迄抱いた。今のロイは幸せの絶頂の中にいた。
 
 
「…………待ち合わせの時間には、間に合う様にしましょう?」
 
 
 ロイの指を膣で咥え込んだ綾香は、身体をくねらせて吐息を漏らす。
 綾香の唇を塞ぐように口付けを落とすと、くちゅっ、と濡れた音が響き渡った。
 
 
「ふ………!!綾香さんってば、もうこんなに濡らして………溢れてます…………」
「あ………!!やだロイ…………!!そんなこと、いわないで………」
 
 
 綾香の中を昂らせる様に指先を動かすと、前の身体の時より綾香が激しく反応を示す。
 大人の身体になって良かったと、ロイは心から思う。
 そして綾香に設定を施された通りに、綾香の身体にキスマークの痕を残してゆく。
 今までの綾香は自分の肉体に、絶対に痕跡を残さない様に徹底させていた。
 それが今となっては、残せと命令を下すのだ。
 
 
 ロイは綾香の肌に、自分の付けた痕が残るのを愛しく思っていた。
しおりを挟む

処理中です...