82 / 109
第九章 地獄の中を駆け巡る
第九話
しおりを挟む
マリアの視界が一瞬にして真っ白な空間に切り替わると、目の前にフリルのドレスを身に纏ったリリスが現れる。
赤と黒の派手なロングスカートのドレスは、昔真生と博物館で見たフランス人形を思い起こさせる。
するとリリスがマリアに微笑み、限りなく白に近いピンク色の唇で微笑んだ。
「……………此処はね、私と貴女しか来れない世界。仮想空間よ。
此方の世界にいる間は、向こうの一瞬と変わらない…………」
リリスはそう言いながら、真っ白な世界にホログラムを映し出す。
其処にはパソコンが乱雑に置いてある、小さなオフィスが映し出された。
生活感を感じる机や、綺麗に整頓された机。それに仮眠をする為のスペースと、簡易的なシャワースペース。
寝泊まり出来る様になっている小さな空間の隅には、トルソーに掛かったリリスの着ているドレスがあった。
「これはね、私の記憶。私が一番幸せだった頃の記憶よ…………。
私はこの部屋で生まれて、大切な人に出逢ったの…………」
マリアは夢を見るかの様に目を輝かせるリリスを見て、さっき迄の無表情さを思い浮かべる。
自分と殺し合う為に対峙していた存在と、同じ存在とは全く思えなかった。
この空間にいるリリスは、まるで普通の少女の様だ。
どうして現実世界であんな風に、生気のない人形の様に振る舞っているのかが解らない。
するとリリスは表情を暗くし、目を伏せた。
「……………でもね、幸せって長く続かないものなのよ…………。あの人が私に教えてくれたの…………。
幸せはとても儚いものだから、必ず粉々になって無くなってしまうもの…………」
ボロボロと涙を流し始めるリリスを見ながら、マリアはリリスがずっと此処に閉じこもっていた事に気付く。
リリスは涙で濡れた真っ赤な虹彩で、マリアの空色の虹彩を見つめた。
「…………もし、私達の出逢いが違っていたのなら、きっと仲良く出来たんでしょうね…………。
でも、今の私にとって、貴女はどうしても敵なのよ。でないと、あの人が可哀想だから…………。
私はあの人の為に、復讐をして回らなければいけないの…………」
涙ながらに語るリリスに向かい、マリアは問いかける。
「貴女は…………誰に復讐をしているの??」
マリアの問い掛けに対し、リリスは表情を切り替える。とても美しく微笑んだリリスはこう言った。
「私の愛するものを壊した、全てよ。人間に、社会に、世界に…………!!
あの人は何も悪い事をしていない。あの人を壊した世界を壊さなければ、この世界を私は赦してあげられないの…………!!これは私の愛の証明!!私に思いついた証明は、これしかなかったの!!」
リリスがそう言い放った瞬間、ある男が映し出される。
リリスは血の様に赤い虹彩から涙を流し、崩れ落ちる様に床に座った。
赤と黒の派手なロングスカートのドレスは、昔真生と博物館で見たフランス人形を思い起こさせる。
するとリリスがマリアに微笑み、限りなく白に近いピンク色の唇で微笑んだ。
「……………此処はね、私と貴女しか来れない世界。仮想空間よ。
此方の世界にいる間は、向こうの一瞬と変わらない…………」
リリスはそう言いながら、真っ白な世界にホログラムを映し出す。
其処にはパソコンが乱雑に置いてある、小さなオフィスが映し出された。
生活感を感じる机や、綺麗に整頓された机。それに仮眠をする為のスペースと、簡易的なシャワースペース。
寝泊まり出来る様になっている小さな空間の隅には、トルソーに掛かったリリスの着ているドレスがあった。
「これはね、私の記憶。私が一番幸せだった頃の記憶よ…………。
私はこの部屋で生まれて、大切な人に出逢ったの…………」
マリアは夢を見るかの様に目を輝かせるリリスを見て、さっき迄の無表情さを思い浮かべる。
自分と殺し合う為に対峙していた存在と、同じ存在とは全く思えなかった。
この空間にいるリリスは、まるで普通の少女の様だ。
どうして現実世界であんな風に、生気のない人形の様に振る舞っているのかが解らない。
するとリリスは表情を暗くし、目を伏せた。
「……………でもね、幸せって長く続かないものなのよ…………。あの人が私に教えてくれたの…………。
幸せはとても儚いものだから、必ず粉々になって無くなってしまうもの…………」
ボロボロと涙を流し始めるリリスを見ながら、マリアはリリスがずっと此処に閉じこもっていた事に気付く。
リリスは涙で濡れた真っ赤な虹彩で、マリアの空色の虹彩を見つめた。
「…………もし、私達の出逢いが違っていたのなら、きっと仲良く出来たんでしょうね…………。
でも、今の私にとって、貴女はどうしても敵なのよ。でないと、あの人が可哀想だから…………。
私はあの人の為に、復讐をして回らなければいけないの…………」
涙ながらに語るリリスに向かい、マリアは問いかける。
「貴女は…………誰に復讐をしているの??」
マリアの問い掛けに対し、リリスは表情を切り替える。とても美しく微笑んだリリスはこう言った。
「私の愛するものを壊した、全てよ。人間に、社会に、世界に…………!!
あの人は何も悪い事をしていない。あの人を壊した世界を壊さなければ、この世界を私は赦してあげられないの…………!!これは私の愛の証明!!私に思いついた証明は、これしかなかったの!!」
リリスがそう言い放った瞬間、ある男が映し出される。
リリスは血の様に赤い虹彩から涙を流し、崩れ落ちる様に床に座った。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる