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第九章 地獄の中を駆け巡る
第八話
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窓の外が仄かに紫掛かり始めた頃には、リリスもマリアもボロボロだった。
身体中に細かな傷痕が付いたリリスからは、人工血液が滲んでいる。
マリアも顔に細かな傷をつけ、流れた血を手で拭った。
長い戦いにより、銃弾はとうに無くなった。二人が出来る戦いは肉弾戦のみだ。
荒い息を吐き肩を上下するマリアを見て、冷ややかな表情を浮かべたリリスが問いかけた、
「…………貴女が其処迄して戦う理由は、何?人間の下についてるんじゃないのなら、どうしてそんなに頑張るの?」
リリスはマリア目掛けて走り、マリアの身体を押さえ付ける。
大理石の床に叩き付けられたマリアは、リリスに向かって不敵な笑みを浮かべた。
「…………愛してるんだもの、ご主人様を!!」
愛。その言葉を聞いた瞬間、リリスの動きが一瞬止まる。
マリアはその隙をついて、真っ白な肢体を蹴り上げた。
リリスの細くて華奢な体は吹き飛ばされ、大理石の床へと転がる。
さっきとは形勢逆転したマリアは、リリスの上に馬乗りになった。
マリアはリリスの顔を殴りながら、プラチナブロンドの髪を揺らす。目に涙を一杯に溜めて、声を張り上げた。
「………私はァ!!ご主人様の幸せの為だったなら!!粉々になって消えたって構わないの!!ご主人様が幸せなら、何でもいい!!
私が頑張る理由は愛!!愛する人を幸せにする為に、頑張ってるだけだもん!!」
するとリリスはマリアの身体を突き飛ばし、大理石の床に転がったヴェリーオールドセントニックの空瓶を手にする。
リリスはそれを大理石の床に強く打ち付けた。パァンという音が響き渡り、ガラス片が飛び散る。
半分に割れた瓶を持ったリリスは、マリアに向かって突進する。リリスは鋭く尖った瓶の破片を、マリアの太腿に打ち付けた。
「…………マリア!!」
真生が思わず叫ぶと、マリアの身体が大理石の床に崩れ落ちる。マリアの太腿からは人工血液が流れていた。
亀裂から見える細い管を見て、真生は怪我の状態を計算する。この傷は思っているよりずっとずっと深いと感じた。
パチパチと散る火花は、傷が深くに到達しているという証拠だった。
身動きが取れなくなったマリアに、リリスは歩み寄る。
リリスはマリアの身体を踏み躙りながら、自ら耳の後ろの接続部分を開いた。
「…………貴女が愛の為に戦うのなら、私は愛の為に人を壊す」
真生はリリスの言葉を聞いた時に、表情を切られた理由を思い返す。
東郷が語った言葉が、真生の頭の中で再生された。
『…………壊れてしまった人はね、リリスに入れ込んでしまったんだ。
だから今、表情の機能を切ってる』
自分の身体から接続用の配線を引っ張りだし、リリスは表情のない目を伏せる。
そしてマリアの接続部分に配線を繋げ、泡沫の様な声で囁いた。
「……………愛を知ってる貴女にだったら、見せてあげる…………私の記憶…………私の愛した、大切なヒト」
配線を繋がれたマリアの空色の虹彩の、瞳孔が一瞬大きく広がる。
マリアとリリスは二人で見つめ合う様に向かい合った。
身体中に細かな傷痕が付いたリリスからは、人工血液が滲んでいる。
マリアも顔に細かな傷をつけ、流れた血を手で拭った。
長い戦いにより、銃弾はとうに無くなった。二人が出来る戦いは肉弾戦のみだ。
荒い息を吐き肩を上下するマリアを見て、冷ややかな表情を浮かべたリリスが問いかけた、
「…………貴女が其処迄して戦う理由は、何?人間の下についてるんじゃないのなら、どうしてそんなに頑張るの?」
リリスはマリア目掛けて走り、マリアの身体を押さえ付ける。
大理石の床に叩き付けられたマリアは、リリスに向かって不敵な笑みを浮かべた。
「…………愛してるんだもの、ご主人様を!!」
愛。その言葉を聞いた瞬間、リリスの動きが一瞬止まる。
マリアはその隙をついて、真っ白な肢体を蹴り上げた。
リリスの細くて華奢な体は吹き飛ばされ、大理石の床へと転がる。
さっきとは形勢逆転したマリアは、リリスの上に馬乗りになった。
マリアはリリスの顔を殴りながら、プラチナブロンドの髪を揺らす。目に涙を一杯に溜めて、声を張り上げた。
「………私はァ!!ご主人様の幸せの為だったなら!!粉々になって消えたって構わないの!!ご主人様が幸せなら、何でもいい!!
私が頑張る理由は愛!!愛する人を幸せにする為に、頑張ってるだけだもん!!」
するとリリスはマリアの身体を突き飛ばし、大理石の床に転がったヴェリーオールドセントニックの空瓶を手にする。
リリスはそれを大理石の床に強く打ち付けた。パァンという音が響き渡り、ガラス片が飛び散る。
半分に割れた瓶を持ったリリスは、マリアに向かって突進する。リリスは鋭く尖った瓶の破片を、マリアの太腿に打ち付けた。
「…………マリア!!」
真生が思わず叫ぶと、マリアの身体が大理石の床に崩れ落ちる。マリアの太腿からは人工血液が流れていた。
亀裂から見える細い管を見て、真生は怪我の状態を計算する。この傷は思っているよりずっとずっと深いと感じた。
パチパチと散る火花は、傷が深くに到達しているという証拠だった。
身動きが取れなくなったマリアに、リリスは歩み寄る。
リリスはマリアの身体を踏み躙りながら、自ら耳の後ろの接続部分を開いた。
「…………貴女が愛の為に戦うのなら、私は愛の為に人を壊す」
真生はリリスの言葉を聞いた時に、表情を切られた理由を思い返す。
東郷が語った言葉が、真生の頭の中で再生された。
『…………壊れてしまった人はね、リリスに入れ込んでしまったんだ。
だから今、表情の機能を切ってる』
自分の身体から接続用の配線を引っ張りだし、リリスは表情のない目を伏せる。
そしてマリアの接続部分に配線を繋げ、泡沫の様な声で囁いた。
「……………愛を知ってる貴女にだったら、見せてあげる…………私の記憶…………私の愛した、大切なヒト」
配線を繋がれたマリアの空色の虹彩の、瞳孔が一瞬大きく広がる。
マリアとリリスは二人で見つめ合う様に向かい合った。
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