恋する電脳Cybernetics~君の名はMARIA~【若き天才プログラマー×高知能AIアンドロイド美少女】

如月緋衣名

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第九章 地獄の中を駆け巡る

第四話

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「マリア、これは命令だ。よく聞いて欲しい。必ず無事に戻ろう………!!」
「はい………ご主人様!!」
 
 
 マリアはこくりと頷き、前嶋の運転するパトカーの中に乗り込む。
 警察署で借りた戦闘スーツを身に纏い、銃器を身体に纏わせてゆく。
 黒いテカテカとした素材はとても強く、アンドロイドの機動隊はこれをよく着ているイメージだ。軽い上に動きやすく戦いやすい服装。その上から防弾チョッキを着て、更に防御力を上げる。
 本来であれば真生の様な一般市民を危険に巻き込むのは、国としては本意ではない。
 けれど真生の様にAIアンドロイドに長けた人間が、どうしても場に必要になっていた。
 戦う相手は人間ではない。アンドロイドだ。何をしてくるのかは全く解らない。
 真生の安全は軍事用データをインストールしたマリアなら、確実に守れると判断が下る。
 その判断が降りた時に、マリアが国に戦闘兵器と思われたと気付き、真生は胸を痛ませた。
 
 
 真生もマリアも前嶋も、車の中では黙りこくり、真剣な表情を浮かべていた。
 
 
 アダム社の上には丸い月が光輝いている。真夜中のアダム社はとても不気味で、気味が悪い雰囲気を醸し出している。
 思えばアダム社の中には、無数のアンドロイドがいる。警察署のアンドロイドとは違い、戦闘用データをダウンロードされている訳では無い。
 それでもアダム社の中のアンドロイドたちの量は、計り知れないものがある。
 
 
 アダム社の出入り口の前に機動隊が並び、突入の準備を開始する。
 扉を壊してアダム社の中に乗り込むと、けたたましい音の防犯ブザーが鳴り響いた。
 銃器を持った男たちが走り、アダム社の中を駆けてゆく。銃声の音を聞きながら、東郷の安否を真生は憂いた。
 東郷から連絡があった事を真生は既に伝えていた。それに駐車場側の出入り口には、見慣れた東郷の車が置いてあったのだ。
 
 
 真生とマリアは東郷に案内された道を走り、エレベーターホールの方に向かう。
 リリスのところに辿り着くには、エレベーター以外の道がないのだ。
 真生はエレベーターを直前にして、カードキーが必要である事を思い返す。
 するとマリアが人間を襲うアンドロイド目掛けて、銃を打ち始めた。
 ガクンと膝から崩れ落ちるアンドロイドを見て、真生はある事を思う。
 カードキーを其処から得れば、最上階に向かう事が出来る。
 
 
 真生は動かなくなったアンドロイドから、そっとカードキーを手にする。
 まるで戦争の中にいるみたいだと、真生の気持ちが重くなった。
 マリアも本当はアンドロイドでありながら、同じアンドロイドを壊すのを本位にしない筈だ。
 本来のマリアはとてもアンドロイドに対し、友好的な心を持っている。
 そのマリアが銃口をアンドロイドに向け、撃ち込む姿はただ悲しかった。
 
 
 マリアはゆっくりと真生の方を見て、切なげな笑みを溢す。そしてエレベーターホールに向かって走り始める。
 真生もマリアの背中を追いかけて、エレベーターホールに向かって走り出した。
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