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第九章 地獄の中を駆け巡る
第一話★
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アダム社の現代表の東郷慎一は、リリスのいる球体の部屋でウイスキーを呷っていた。
ヴェリーオールドセントニック17年。中々手に入る事のない珍しい酒だ。
東郷はキャラメルを思わせる甘い薫りのそれを、瓶の儘で口を付け喉に流してゆく。
その足元には真っ白な肢体を晒し、床に転がったリリスの姿があった。
ワインレッドの派手なスーツと、艶々に磨かれた革靴。
東郷はリリスの身体を革靴で踏みつけ、畏怖と軽蔑の視線を送る。
リリスの真っ白な体は全く反応を示さず、ただされるが儘だった。
東郷はぐりぐりとリリスの身体を踏み躙り、爪先で蹴り飛ばして身体を転がす。
ゴツゴツとした背骨を爪先で突きながら、吐き捨てるかの様にこう言った。
「リリスぅ…………テメェなんかしたろ…………??パーになった演技なんてしてんじゃねぇよ…………。
テメェがまだイカれてねェ事なんて、とっくの昔に解ってんだよ…………!!!」
東郷は立ち上がりリリスの上に乗り上げ、真っ白い顔に何発も拳を入れる。
けれどリリスは全く無反応の儘、天井を見上げていた。
東郷の元に『LILITH6から異常なコードが出てきた、事情聴取に向かいたい』と警察から連絡が入る。
アンドロイドが狂暴化した辺りから、東郷はそれがLILITH6が原因ではないかと感じていた。
それを心の中で懸命に否定し続け、見て見ぬふりを続けてきた。
けれど今、いよいよ脅威としての形を成して現れたのだ。
これから東郷はLILITH6のトラブルを詳しく調べ、ソフトの中身を洗い浚い確認し、方々に頭を下げて回らなければならない。
気が遠くなる程に膨大な仕事を、考えるだけで今にも狂いそうだ。
不祥事を解決させるために支払う金も、一体どれだけの額が必要になるのだと思う。
その怒りとやるせなさは全て、リリスに向かって拳でぶつけられていた。
全く無反応のリリスを殴る東郷を、メグも無反応の儘で見ている。
表情を切られたAIアンドロイドたちは、冷ややかな虹彩で虚空を眺めているのだ。
東郷は心の底から、それが不気味だと感じた。
本当は自分の事を憎んでいるであろうアンドロイドは、能面の様に表情を変えない。
その顔の下にはどんな感情が隠れているのだろうと、東郷は思う。
「……………ホントは今、君ってどんな顔してボクの事を見てるの??教えてよ…………」
東郷はリリスの上に馬乗りになりながら、ヴェリーオールドセントニックの瓶を口にする。
唇から漏れたアルコールの匂いが漂い、強く強く漂う。
東郷は酒で濡れた唇をスーツの袖で拭いながら、真っ赤な顔で煽る様に叫んだ。
「…………でも、お前の一番大切な人はさぁ!!結局、見殺しにしたのはお前なんだよ!!
ボクは殺してなんていない!!殺したのはお前!!助けられなかったお前が一番悪いんだ!!」
リリスの上でゲラゲラと下品に笑う東郷に、いきなり影が重なる。
振り返るとガラス製の大きな灰皿を手にして、大きく振りかぶるメグがいた。
メグは灰皿で東郷の頭を強く、何回も何回も殴り付ける。そのうち透明なガラスは血で染まり、東郷は全く動かなくなった。
覆いかぶさった東郷を突き飛ばし、リリスはゆっくりと立ち上がる。
東郷の血に塗れたリリスに、メグが静かにガウンを羽織らせた。
ヴェリーオールドセントニック17年。中々手に入る事のない珍しい酒だ。
東郷はキャラメルを思わせる甘い薫りのそれを、瓶の儘で口を付け喉に流してゆく。
その足元には真っ白な肢体を晒し、床に転がったリリスの姿があった。
ワインレッドの派手なスーツと、艶々に磨かれた革靴。
東郷はリリスの身体を革靴で踏みつけ、畏怖と軽蔑の視線を送る。
リリスの真っ白な体は全く反応を示さず、ただされるが儘だった。
東郷はぐりぐりとリリスの身体を踏み躙り、爪先で蹴り飛ばして身体を転がす。
ゴツゴツとした背骨を爪先で突きながら、吐き捨てるかの様にこう言った。
「リリスぅ…………テメェなんかしたろ…………??パーになった演技なんてしてんじゃねぇよ…………。
テメェがまだイカれてねェ事なんて、とっくの昔に解ってんだよ…………!!!」
東郷は立ち上がりリリスの上に乗り上げ、真っ白い顔に何発も拳を入れる。
けれどリリスは全く無反応の儘、天井を見上げていた。
東郷の元に『LILITH6から異常なコードが出てきた、事情聴取に向かいたい』と警察から連絡が入る。
アンドロイドが狂暴化した辺りから、東郷はそれがLILITH6が原因ではないかと感じていた。
それを心の中で懸命に否定し続け、見て見ぬふりを続けてきた。
けれど今、いよいよ脅威としての形を成して現れたのだ。
これから東郷はLILITH6のトラブルを詳しく調べ、ソフトの中身を洗い浚い確認し、方々に頭を下げて回らなければならない。
気が遠くなる程に膨大な仕事を、考えるだけで今にも狂いそうだ。
不祥事を解決させるために支払う金も、一体どれだけの額が必要になるのだと思う。
その怒りとやるせなさは全て、リリスに向かって拳でぶつけられていた。
全く無反応のリリスを殴る東郷を、メグも無反応の儘で見ている。
表情を切られたAIアンドロイドたちは、冷ややかな虹彩で虚空を眺めているのだ。
東郷は心の底から、それが不気味だと感じた。
本当は自分の事を憎んでいるであろうアンドロイドは、能面の様に表情を変えない。
その顔の下にはどんな感情が隠れているのだろうと、東郷は思う。
「……………ホントは今、君ってどんな顔してボクの事を見てるの??教えてよ…………」
東郷はリリスの上に馬乗りになりながら、ヴェリーオールドセントニックの瓶を口にする。
唇から漏れたアルコールの匂いが漂い、強く強く漂う。
東郷は酒で濡れた唇をスーツの袖で拭いながら、真っ赤な顔で煽る様に叫んだ。
「…………でも、お前の一番大切な人はさぁ!!結局、見殺しにしたのはお前なんだよ!!
ボクは殺してなんていない!!殺したのはお前!!助けられなかったお前が一番悪いんだ!!」
リリスの上でゲラゲラと下品に笑う東郷に、いきなり影が重なる。
振り返るとガラス製の大きな灰皿を手にして、大きく振りかぶるメグがいた。
メグは灰皿で東郷の頭を強く、何回も何回も殴り付ける。そのうち透明なガラスは血で染まり、東郷は全く動かなくなった。
覆いかぶさった東郷を突き飛ばし、リリスはゆっくりと立ち上がる。
東郷の血に塗れたリリスに、メグが静かにガウンを羽織らせた。
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