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第七章 リリスとマリア
第五話
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マリアが最終手段に出た理由は、余りにもリリスがマリアに対し、口を開いてくれなかったからだ。
普通ならアンドロイド同士で挨拶の一つや二つはするもの。
一般的なコミュニケーションをとれる事は、AIアンドロイドの必要不可欠なスキルである。
それなのにリリスは全く反応を示さなかったのだ。
LILITHシリーズといえば、人格が売られていると言っても過言では無い程に、人間らしく振る舞うAIのソフトだ。
そのオリジナルの存在が一つの場所に閉じ込められて、挨拶一つ出来ない位の廃人と化しているのはおかしい。
リリスと配線を繋げたマリアは、ずっとそれを考えていた。
それに少しでもお互いの情報を知る事が出来るのであれば、何かの証拠が出るかもしれないと思う。
リリスがLILITH6の元になるオリジナルであるのなら、彼女の中には証拠品が沢山詰め込まれている。
ほんの少しだけでも、リリスを知る事が出来たらいい。それだけでマリアの手持ちの情報が変わる。
マリアはそう思いながら、リリスの中に意識を移した。
リリスに読み取られたら困るデータは全て、家のパソコンの中にしまってきている。
今のマリアの中にあるデータは、リリスに押えられても特に問題のない物ばかりだ。
万が一情報を抜き取られたり、破壊されたりした所で、複製は全てパソコンの中に出来上がっている。
マリアは丸腰の状態でリリスの内部を泳いでゆく。すると、とある文字がマリアの頭の中に浮かんだ。
『GET OUT』
マリアは表情を強張らせ、無表情のリリスを凝視する。
アルビノのウサギのような真っ赤な目。マリアの頭に浮かんだ文字は、全く予想出来ないものだった。
この廃人の様なアンドロイドは、全く廃人ではない。廃人の様に振る舞いながらも、まともな思考が存在している。
明らかな拒否をされていると感じた瞬間、再度叩き付けられるかの様に文字が脳裏に現れる。
『NUISANCE』
異物として認識されている、とマリアは理解する。
それと同時にマリアの頭に激しい電気信号が送られてきた。
その感覚は真生と身体を交えている時に流れるものとは、完全に正反対の類のものである。
それは人間でいう『激痛』だった。
マリアは慌てて配線をリリスから抜き取る。
本来ならAIアンドロイド同士のデバイスの取り外しは、もっと慎重に配線を抜き取る作業を行わなければいけない。
AIアンドロイドの頭の中には、大量の精密機械が入っている。慎重に抜き取らなければ、アンドロイドに負荷が掛かる。
時折このような光景を見る事があるが、その大半は何方かが強烈に、相手の侵入を拒否しなければあり得ないのだ。
感情的な行動をとるマリアを見た真生は、慌ててマリアの傍に駆け寄る。マリアは呼吸を荒くしながらリリスの事を見つめていた。
「……………大丈夫かい、マリアちゃん??うちの姫君が失礼を働いたかな??」
東郷はそう言いながらマリアに歩み寄り、プラチナブロンドの髪を撫でる。
マリアは必死に取り繕いながら、作り笑いを浮かべて目を細めた。
「…………いえ、大丈夫です」
大体のAIアンドロイドであれば、マリアより性能が圧倒的に低く、こういう事態は起きない。
けれどリリスはマリアには劣るものの、高知能のアンドロイドだ。マリアはリリスに完全に跳ねのけられたのだ。
汗を拭い顔に張り付いた髪を避けながら、マリアはリリスを睨む。
リリスは虚空をじっと見つめたまま、視線を動かす事は無かった。
普通ならアンドロイド同士で挨拶の一つや二つはするもの。
一般的なコミュニケーションをとれる事は、AIアンドロイドの必要不可欠なスキルである。
それなのにリリスは全く反応を示さなかったのだ。
LILITHシリーズといえば、人格が売られていると言っても過言では無い程に、人間らしく振る舞うAIのソフトだ。
そのオリジナルの存在が一つの場所に閉じ込められて、挨拶一つ出来ない位の廃人と化しているのはおかしい。
リリスと配線を繋げたマリアは、ずっとそれを考えていた。
それに少しでもお互いの情報を知る事が出来るのであれば、何かの証拠が出るかもしれないと思う。
リリスがLILITH6の元になるオリジナルであるのなら、彼女の中には証拠品が沢山詰め込まれている。
ほんの少しだけでも、リリスを知る事が出来たらいい。それだけでマリアの手持ちの情報が変わる。
マリアはそう思いながら、リリスの中に意識を移した。
リリスに読み取られたら困るデータは全て、家のパソコンの中にしまってきている。
今のマリアの中にあるデータは、リリスに押えられても特に問題のない物ばかりだ。
万が一情報を抜き取られたり、破壊されたりした所で、複製は全てパソコンの中に出来上がっている。
マリアは丸腰の状態でリリスの内部を泳いでゆく。すると、とある文字がマリアの頭の中に浮かんだ。
『GET OUT』
マリアは表情を強張らせ、無表情のリリスを凝視する。
アルビノのウサギのような真っ赤な目。マリアの頭に浮かんだ文字は、全く予想出来ないものだった。
この廃人の様なアンドロイドは、全く廃人ではない。廃人の様に振る舞いながらも、まともな思考が存在している。
明らかな拒否をされていると感じた瞬間、再度叩き付けられるかの様に文字が脳裏に現れる。
『NUISANCE』
異物として認識されている、とマリアは理解する。
それと同時にマリアの頭に激しい電気信号が送られてきた。
その感覚は真生と身体を交えている時に流れるものとは、完全に正反対の類のものである。
それは人間でいう『激痛』だった。
マリアは慌てて配線をリリスから抜き取る。
本来ならAIアンドロイド同士のデバイスの取り外しは、もっと慎重に配線を抜き取る作業を行わなければいけない。
AIアンドロイドの頭の中には、大量の精密機械が入っている。慎重に抜き取らなければ、アンドロイドに負荷が掛かる。
時折このような光景を見る事があるが、その大半は何方かが強烈に、相手の侵入を拒否しなければあり得ないのだ。
感情的な行動をとるマリアを見た真生は、慌ててマリアの傍に駆け寄る。マリアは呼吸を荒くしながらリリスの事を見つめていた。
「……………大丈夫かい、マリアちゃん??うちの姫君が失礼を働いたかな??」
東郷はそう言いながらマリアに歩み寄り、プラチナブロンドの髪を撫でる。
マリアは必死に取り繕いながら、作り笑いを浮かべて目を細めた。
「…………いえ、大丈夫です」
大体のAIアンドロイドであれば、マリアより性能が圧倒的に低く、こういう事態は起きない。
けれどリリスはマリアには劣るものの、高知能のアンドロイドだ。マリアはリリスに完全に跳ねのけられたのだ。
汗を拭い顔に張り付いた髪を避けながら、マリアはリリスを睨む。
リリスは虚空をじっと見つめたまま、視線を動かす事は無かった。
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