恋する電脳Cybernetics~君の名はMARIA~【若き天才プログラマー×高知能AIアンドロイド美少女】

如月緋衣名

文字の大きさ
上 下
60 / 109
第七章 リリスとマリア

第五話

しおりを挟む
 マリアが最終手段に出た理由は、余りにもリリスがマリアに対し、口を開いてくれなかったからだ。
 普通ならアンドロイド同士で挨拶の一つや二つはするもの。
 一般的なコミュニケーションをとれる事は、AIアンドロイドの必要不可欠なスキルである。
 それなのにリリスは全く反応を示さなかったのだ。
 LILITHシリーズといえば、人格が売られていると言っても過言では無い程に、人間らしく振る舞うAIのソフトだ。
 そのオリジナルの存在が一つの場所に閉じ込められて、挨拶一つ出来ない位の廃人と化しているのはおかしい。
 
 
 リリスと配線を繋げたマリアは、ずっとそれを考えていた。
 
 
 それに少しでもお互いの情報を知る事が出来るのであれば、何かの証拠が出るかもしれないと思う。
 リリスがLILITH6の元になるオリジナルであるのなら、彼女の中には証拠品が沢山詰め込まれている。
 ほんの少しだけでも、リリスを知る事が出来たらいい。それだけでマリアの手持ちの情報が変わる。
 マリアはそう思いながら、リリスの中に意識を移した。
 
 
 リリスに読み取られたら困るデータは全て、家のパソコンの中にしまってきている。
 今のマリアの中にあるデータは、リリスに押えられても特に問題のない物ばかりだ。
 万が一情報を抜き取られたり、破壊されたりした所で、複製は全てパソコンの中に出来上がっている。
 マリアは丸腰の状態でリリスの内部を泳いでゆく。すると、とある文字がマリアの頭の中に浮かんだ。
 
 
GET OUT出て行け
 
 
 マリアは表情を強張らせ、無表情のリリスを凝視する。
 アルビノのウサギのような真っ赤な目。マリアの頭に浮かんだ文字は、全く予想出来ないものだった。
 この廃人の様なアンドロイドは、全く廃人ではない。廃人の様に振る舞いながらも、まともな思考が存在している。
 明らかな拒否をされていると感じた瞬間、再度叩き付けられるかの様に文字が脳裏に現れる。
 
 
NUISANCE邪魔者
 
 
 異物として認識されている、とマリアは理解する。
 それと同時にマリアの頭に激しい電気信号が送られてきた。
 その感覚は真生と身体を交えている時に流れるものとは、完全に正反対の類のものである。
 それは人間でいう『激痛』だった。
 
 
 マリアは慌てて配線をリリスから抜き取る。
 本来ならAIアンドロイド同士のデバイスの取り外しは、もっと慎重に配線を抜き取る作業を行わなければいけない。
 AIアンドロイドの頭の中には、大量の精密機械が入っている。慎重に抜き取らなければ、アンドロイドに負荷が掛かる。
 時折このような光景を見る事があるが、その大半は何方かが強烈に、相手の侵入を拒否しなければあり得ないのだ。
 感情的な行動をとるマリアを見た真生は、慌ててマリアの傍に駆け寄る。マリアは呼吸を荒くしながらリリスの事を見つめていた。
 
 
「……………大丈夫かい、マリアちゃん??うちの姫君が失礼を働いたかな??」
 
 
 東郷はそう言いながらマリアに歩み寄り、プラチナブロンドの髪を撫でる。
 マリアは必死に取り繕いながら、作り笑いを浮かべて目を細めた。
 
 
「…………いえ、大丈夫です」
 
 
 大体のAIアンドロイドであれば、マリアより性能が圧倒的に低く、こういう事態は起きない。
 けれどリリスはマリアには劣るものの、高知能のアンドロイドだ。マリアはリリスに完全に跳ねのけられたのだ。
 汗を拭い顔に張り付いた髪を避けながら、マリアはリリスを睨む。
 リリスは虚空をじっと見つめたまま、視線を動かす事は無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

びるどあっぷ ふり〜と!

高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。 どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。 ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね? ※すでになろうで完結済みの小説です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...