恋する電脳Cybernetics~君の名はMARIA~【若き天才プログラマー×高知能AIアンドロイド美少女】

如月緋衣名

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第七章 リリスとマリア

第四話

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 リリスを目の前にしたマリアは、流石に表情を強張らせる。
 全く表情に変化のない真っ白なアンドロイドは、唯々不気味さを醸し出していた。
 相変わらずリリスはとても美しい。けれどその美しさも『異様さ』に拍車をかけてゆく。
 けれどマリアは決して物怖じせず、リリスに向かって笑いかけた。
 
 
「………………初めまして!!私マリアっていうの!!貴女のお名前は??」
「リリス」
「そぉ!!リリスっていうのね!!初めまして!!仲良くしてね!!宜しくね!!」
 
 
 マリアはリリスの手を掴み、大きく回す様に動かす。けれどリリスは一切表情を変えなかった。
 賢明にリリスに話し掛けるマリアを横目に、真生は東郷と真っ赤なソファーに腰掛ける。
 東郷は面倒臭そうに、携帯電話の画面を見ていた。
 
 
「………………………AIが人を襲うだなんて、まるで映画の中みたいな話だねぇ…………」
 
 
 東郷の口から狂暴化したアンドロイドについての、話を聞き出せるチャンスが来たと真生は思う。
 真生は相槌を打ちながら、言葉を引き出すタイミングを窺っていた。
 
 
「…………うちの研究室でもトラブルが起きて…………何人か事件に巻き込まれているのですが………………東郷さんの周りは大丈夫ですか??」
「…………ああ、んー………こっちはちょっと人害が大変かな??」
 
 
 人害。少し気になる言葉が出てきたと思い、真生は神経を集中させる。
 東郷は呆れた様に笑い、ソファーに深く腰掛けもたれ掛かった。
 
 
「…………人害だよ、人害。もうこの事件が起きて以来、10人も人が辞めてる。
………………AIを作る仕事に関わるのは、殺人兵器を作る仕事と同じだってさぁ………」
 
 
 東郷は馬鹿にした様に笑い、大袈裟に脚を組み換えた。
 ふと東郷の横顔を見ると、以前会った時より頬が痩けている。
 疲れが如実に顔に出ていることに、真生は気付いた。
 
 
「………………東郷さん、少しお疲れですか?」
「そうそう、疲れちゃってさ……………だから逢いたくなったんだよ、君に。
………………………君みたいな有能な社員、うちの会社に居て欲しいなぁって………………。
君みたいにAIに対する知識と愛が深い子が…………」
 
 
 東郷は異性に愛の告白をするかの様に、真生にアダム社で働く事を持ち掛ける。東郷は真生の事をじっと見つめ、瞳を全く逸らさない。
 真生は女性になったことはない。それにこれからも女性になる予定はない。けれど東郷と視線を合わせると、言い寄られて困る女性の気持ちが解る気がするのだ。
 返答に困っている真生の目の前に、マリアがすっ、と入ってくる。しなを作りながら足元に屈み、上目使いで東郷を見た。
 
 
「………東郷さァん!!リリスちゃんともう少し仲良くなりたいから、配線繋げても良い??
ダメなら諦めます!!」
 
 
 AIアンドロイドにも、パソコンのUSBの様にデータを共有出来る場所がある。それは耳の裏側のすぐ下の辺りに存在するのだ。
 AIアンドロイドにとってのその行為は、アンドロイド同士の名刺交換に近いものである。
 マリアはその部分を開いて配線を差し込む。真生はマリアが其処まで周到に、リリスを調べようとしていたことに驚いた。
 
 
「………あぁ、良いよ?こういうの、ボク見たかったんだよね。
リリスが他のAIとどういう交流取るんだろうって、とーっても気になってた…………」
 
 
 マリアはリリスと向かい合い、顔と顔がぶつかりそうな距離で見つめ合う。
 配線の繋がり合った二人は何処か、幻想的に見えた。
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