恋する電脳Cybernetics~君の名はMARIA~【若き天才プログラマー×高知能AIアンドロイド美少女】

如月緋衣名

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第六章 正しい、が解らない

第六話

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 今研究室にいるのは間違いなく綾香とロイ。
 幹彦は何時もとは違い、少し緊張した面持ちをしている。
 
 
「…………いるけど、話してどうするんだ?」
 
 
 真生の問い掛けに対して幹彦は、めんどくさそうに頭を掻いて目を逸らす。
 
 
「その人形とオレ、どっち選ぶのか聞く……………」
 
 
 そう言って立ち上がった幹彦は、フラフラと研究室に向かって歩いて行く。
 真生の隣に座っていたマリアは何かに気付き、神妙な表情を浮かべていた。
 
 
「ご主人様………綾香さんって…………まさか……………」
「ああ、そういえばマリアは幹彦に逢ってたね。あれは綾香の彼氏だよ。みんな色々難しいよね………」
 
 
 マリアは静かに眼を伏せて、放射線状の長い睫毛を揺らす。
 綾香から貰ったハーブティーを飲み干すと、真生の着ている白衣の裾を引っ張った。
 
 
「……………少し心配だから、研究室の方、見に行きましょう??」
  
 
 マリアが何故心配をするのだろうと真生は思いつつ、マリアと連れ添い研究室の方へと歩く。
 すると研究室からガシャン、という大きな破壊音が響き渡った。
 この音の類いは機械が投げ付けられて、壊れてゆく時の音だと真生は思う。
 慌てて研究室のドアを開けば、山積みになったパソコンの上に、ぐったりとした幹彦が倒れている。
 幹彦の身体には打撲痕でいっぱいだった。その向かいには、眼を燃え盛る炎の様に茜色に光らせたロイが立ってる。
 
 
 ロイの顔は能面を思わせるかの様に、無表情で冷たかった。
 
 
「ロイ!やめてロイ!!どうしたの!?何時もの貴方じゃないみたい!!」
 
 
 必死にロイにすがり付く綾香を抱き寄せ、深く淫らにキスをする。
 綾香はロイからのキスに戸惑い、身体をビクリと跳ね上げた。
 ロイは綾香にキスを繰り返しながら、その首元に手を置く。
 指先の動きが首を絞める動作になった時、真生を突き飛ばしてマリアが走った。
 
 
「…………だめえええぇぇぇェェェェェ!!!」
 
 
 マリアは近くにあった椅子を振り回し、ロイの胴体を吹き飛ばす。
 ロイは壁に身体を強く打ち、バチバチと身体から火花を散らした。
 
 
「…………頭を潰したら再生出来ませんけど、身体ならまだ、大丈夫だから…………!!」
 
 
 そう言ったマリアを見ながら、真生は逞しいと感じる。
 するとロイはショート寸前の状態で、綾香の瞳をじっと覗きこんだ。
 
 
「…………
 
 
 その言葉を聞いた瞬間、真生は博嗣のエナを思い返す。博嗣の話によればエナも、全く同じ事を口にしていた。
 それにロイの普段の一人称は『僕』だ。決して『私』とは言わない。まるでロイの中に違う人間が憑依したかの様だ。
 
 
 パソコンとパソコンが積み上がってぐちゃぐちゃになってしまった研究室の中で、幹彦が一人苦悶の表情を浮かべている。
 真生は慌てて幹彦に駆け寄り、怪我の状態を確認した。
 額に浅い裂傷。肋骨は二本くらい折れていてもおかしく無さそうだ。脚にもどうやら怪我を負っている。
 
 
「マリア、急いで救急車を呼んでくれ!!」
 
 
 真生の指示に頷いたマリアは救急車の手配を始める。幹彦の応急措置を行った真生は、綾香の事を思い出した。
 綾香を探す様に辺りを見回すと、綾香はロイの前にいる。綾香はロイの前でボロボロと涙を流していた。
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