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第三章 幽閉された姫君
第八話
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立体駐車場から繋がっている出入り口から、ビルの中へと入ってゆく。
すると首に上品なピンク色のスカーフを巻いた、美しいAIアンドロイドが二人を出迎えてくれた。
「これはボクの秘書のAIアンドロイド。名前はメグ。もう既にLILITH6にアップグレードしてあるよ」
茶色の眼に放射線状の長い睫毛。猫の様な形の目をした、茶色のロングヘアのAIアンドロイドは、静かに頭を下げる。
真生はメグの動きに合わせて頭を下げながら、メグの表情がいやに堅い事が気にしていた。
メグを凝視する真生に対し、東郷は微笑む。そしてメグの肩に腕を回してこういった。
「メグは表情の機能を切ってあるんだ。なるべく表情が読み取れない位の方が、良い事があるから」
アンドロイドの表情機能が切れることを、真生は知っていた。けれど真生はそれを好まなかったのだ。
作られたものだといえど、アンドロイドにも喜怒哀楽がある。
それにLILITHシリーズであるなら、最初から感情機能が付いているものだ。人格が売られている様なものである。
それなのに表情を切るというのは、人格を無視しているみたいだ。
真生は東郷の普段のアンドロイドの扱いに、ほんの少しだけ嫌悪感を覚えた。
メグが先頭に立ち、ハイヒールの音を響かせながら案内を始める。
東郷と二人で肩を並べて廊下を歩くと、行き交う人が全て頭を下げてゆく。真生はその様子を見ながら、居心地の悪いものを感じていた。
人に頭を下げられる度に、恥ずかしさと申し訳なさが心の中を駆け巡る。
東郷は全く気にしていない様子でビルの中を進む。エレベーターホールに到着すると、メグがカードキーをパネルに翳した。
エレベーターの中に乗り込むと、メグが丁寧に操作を始める。メグが押した階は数字が書いていなかった。
強化ガラス越しの窓のエレベーターから、ビルの洪水を見下ろす。
真生はモヤモヤした嫌な感覚を抱きながら、懸命に感情を懸命に噛み砕いていた。
自分がアンドロイドに対して逸脱した感情があるせいで、アンドロイドをアンドロイドと扱う人間に嫌悪感を持つのは間違っている。
けれど真生はどうしてもそれを、噛み砕き切れないでいた。痺れを切らした真生は、東郷に問い掛ける。
「…………なんで表情機能切ってるのか、お伺いしても良いですか??」
「うん、構わないよ!!実はアンドロイドに入り込み過ぎてね……………自殺した研究員がいるんだ」
自殺。思ってもいなかった言葉の返答に、真生は凍り付く。
東郷は真生の状態を、一切気にしない様子で語り続けた。
「表情があると情が湧く。そして感情が出来る。愛し合ったりする人たちだって、いるのはよーく解っている。
……………ただ、アダム社では、それが起きて欲しくなくてね………もう…………。
穂積君はアンドロイドをこよなく愛しているだろうから、気になるよね?不快にさせていたらごめんね??」
東郷は切なげな表情を浮かべ、強化ガラスの窓の向こうの景色を見つめる。
その表情は何かに、思いを馳せているかのようだった。
「あっ…………全然、そんなことないです…………!!!」
真生は慌てて取り繕いながら、自分の心を落ち着ける。そしてマリアの事を思い返したのだ。
マリアが生きた女の子の様に振る舞う姿を見て、真生は心を惹き付けられた。
表情があると情が湧くのは、痛いほど真生が解っていた。
エレベーターが指定されていた階に辿り着き、扉がゆっくりと開く。真生と東郷はメグに案内されながら、重厚な扉の前に立った。
メグがカードキーをパネルに翳した瞬間に、扉が開く。真生の視界には大理石の床の、広いスペースが飛び込んできた。
ドーム状の天井のスペースの窓は、街が一望できる位に大きい。
そのスペースの真ん中には、真っ赤なソファーに腰かけた、真っ白な全裸のAIアンドロイドがいた。
髪の毛も肌の色も真っ白。まるでアルビノのウサギを彷彿とさせる色合いだ。造形もとても美しい。
長い真っ白な髪は、腰の辺りでバッサリと切り揃えられている。華奢な肉体の造りは女性型だった。
思春期の少女を思わせる肉体をしていると、真生は思う。
真っ白な長い睫毛の瞼を開き、AIアンドロイドはゆっくりと顔を上げる。
まるで血を思わせる程に赤い虹彩が、真生の目を捕らえた。
「…………紹介するよ。この子がLILITHのオリジナルだ」
すると首に上品なピンク色のスカーフを巻いた、美しいAIアンドロイドが二人を出迎えてくれた。
「これはボクの秘書のAIアンドロイド。名前はメグ。もう既にLILITH6にアップグレードしてあるよ」
茶色の眼に放射線状の長い睫毛。猫の様な形の目をした、茶色のロングヘアのAIアンドロイドは、静かに頭を下げる。
真生はメグの動きに合わせて頭を下げながら、メグの表情がいやに堅い事が気にしていた。
メグを凝視する真生に対し、東郷は微笑む。そしてメグの肩に腕を回してこういった。
「メグは表情の機能を切ってあるんだ。なるべく表情が読み取れない位の方が、良い事があるから」
アンドロイドの表情機能が切れることを、真生は知っていた。けれど真生はそれを好まなかったのだ。
作られたものだといえど、アンドロイドにも喜怒哀楽がある。
それにLILITHシリーズであるなら、最初から感情機能が付いているものだ。人格が売られている様なものである。
それなのに表情を切るというのは、人格を無視しているみたいだ。
真生は東郷の普段のアンドロイドの扱いに、ほんの少しだけ嫌悪感を覚えた。
メグが先頭に立ち、ハイヒールの音を響かせながら案内を始める。
東郷と二人で肩を並べて廊下を歩くと、行き交う人が全て頭を下げてゆく。真生はその様子を見ながら、居心地の悪いものを感じていた。
人に頭を下げられる度に、恥ずかしさと申し訳なさが心の中を駆け巡る。
東郷は全く気にしていない様子でビルの中を進む。エレベーターホールに到着すると、メグがカードキーをパネルに翳した。
エレベーターの中に乗り込むと、メグが丁寧に操作を始める。メグが押した階は数字が書いていなかった。
強化ガラス越しの窓のエレベーターから、ビルの洪水を見下ろす。
真生はモヤモヤした嫌な感覚を抱きながら、懸命に感情を懸命に噛み砕いていた。
自分がアンドロイドに対して逸脱した感情があるせいで、アンドロイドをアンドロイドと扱う人間に嫌悪感を持つのは間違っている。
けれど真生はどうしてもそれを、噛み砕き切れないでいた。痺れを切らした真生は、東郷に問い掛ける。
「…………なんで表情機能切ってるのか、お伺いしても良いですか??」
「うん、構わないよ!!実はアンドロイドに入り込み過ぎてね……………自殺した研究員がいるんだ」
自殺。思ってもいなかった言葉の返答に、真生は凍り付く。
東郷は真生の状態を、一切気にしない様子で語り続けた。
「表情があると情が湧く。そして感情が出来る。愛し合ったりする人たちだって、いるのはよーく解っている。
……………ただ、アダム社では、それが起きて欲しくなくてね………もう…………。
穂積君はアンドロイドをこよなく愛しているだろうから、気になるよね?不快にさせていたらごめんね??」
東郷は切なげな表情を浮かべ、強化ガラスの窓の向こうの景色を見つめる。
その表情は何かに、思いを馳せているかのようだった。
「あっ…………全然、そんなことないです…………!!!」
真生は慌てて取り繕いながら、自分の心を落ち着ける。そしてマリアの事を思い返したのだ。
マリアが生きた女の子の様に振る舞う姿を見て、真生は心を惹き付けられた。
表情があると情が湧くのは、痛いほど真生が解っていた。
エレベーターが指定されていた階に辿り着き、扉がゆっくりと開く。真生と東郷はメグに案内されながら、重厚な扉の前に立った。
メグがカードキーをパネルに翳した瞬間に、扉が開く。真生の視界には大理石の床の、広いスペースが飛び込んできた。
ドーム状の天井のスペースの窓は、街が一望できる位に大きい。
そのスペースの真ん中には、真っ赤なソファーに腰かけた、真っ白な全裸のAIアンドロイドがいた。
髪の毛も肌の色も真っ白。まるでアルビノのウサギを彷彿とさせる色合いだ。造形もとても美しい。
長い真っ白な髪は、腰の辺りでバッサリと切り揃えられている。華奢な肉体の造りは女性型だった。
思春期の少女を思わせる肉体をしていると、真生は思う。
真っ白な長い睫毛の瞼を開き、AIアンドロイドはゆっくりと顔を上げる。
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