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第三章 幽閉された姫君
第五話
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幾らアンドロイドとはいえど、愛しているという言葉を軽く流す行為は、余りにも誠実ではないと真生は思う。
それでもその『愛している』という言葉に対し、軽々しく愛を返せる程の無責任さは真生に無かった。
「…………真生、今日だっけ?アダム社の見学」
真生はキーボードを打つ手を止め、眼鏡を押し上げながら、隣に腰かけている博嗣の方を見る。
博嗣はバルブと人工筋肉を組み合わせ、AIアンドロイドの手の骨組みを作っていた。
蠢く手を模した機械の塊を横目に、真生はマリアの柔らかな手を思い返す。
あの温かな手の中にも、この機械が内蔵されていると思うと、なんだか不思議で仕方なかった。
「ああ…………そうだよ」
真生は博嗣の動かす人工筋肉の伸縮を横目に、昨夜のマリアとの交わりを思い返す。
すると、博嗣の隣に腰かけていた山口美桜という女が、真生に目を輝かせながら話しかけた。
「真生君本当に凄いよねぇ………博嗣から聞いてびっくりしちゃった………!!
アダム社からヘッドハンティングなんて、超エリートコース!」
美桜は茶色いショートボブの髪型で、博嗣と仲がいい。エナの様な雰囲気ではないが、可愛らしい女の子だ。
強いていうなら、美桜は一番最初の頃のエナに似ている気がした。
「………いや、そんなことないよ」
「えー、超凄いよ!尊敬しちゃうよね!ねぇ、博嗣!!」
美桜はそう言いながら、博嗣の肩に手をかける。そして博嗣の顔を覗き込む様にして、熱い視線を絡ませた。
「な、すっげーよなぁ??お前来れなかったけど、授賞式の時も凄かったぜ?これが友達なんだって思ったら感動した」
そう言いながら笑う二人を眺めながら、真生は二人の距離の近さを犇々と感じる。
美桜が博嗣を好きな事は一目瞭然だ。博嗣の事を見る眼差しが明らかに違うのを、研究室の仲間はみんな察している。
けれど博嗣は美桜の好意には、一切気付いていないかの様に振る舞う。先日の授賞式の際に、美桜は用事があるといって来なかった。
その前に博嗣は、自分のアンドロイドを連れてくると口にしたのだ。
博嗣がアンドロイドの造形にこだわることも、異常な程の溺愛をしていることも、研究室では周知の事実だ。
その時に美桜はきっと、エナに逢いたくないんだろうと気付いていた。
美桜は空になった紙コップをゴミ箱に捨て、研究室からそっと出てゆく。
博嗣と二人きりになったのを見計らい、真生は博嗣に耳打ちをした。
「…………博嗣、美桜とあんなに距離近かったか?なんかお前達近くないか?」
「…………え?そう?………アイツ、何時もあんなじゃない?」
博嗣はそう言って軽く流し、作業にまた没頭し始める。
真生は博嗣の眼中には、アンドロイドの造形しか見えていないと察した。
博嗣は美桜の気持ちに、全く気付いていない様に真生には思えた。
真生は人間の感情には鈍いタイプではあるが、流石に美桜の好意には気付いた。
どうやら博嗣は人間に関しては、真生より鈍い人種らしい。
暫くすると新しい珈琲片手の美桜が、綾香を引き連れて帰ってきた。その隣には白い髪に、燃え盛る炎の様な茜色の目をした少年がいる。
彼はAIアンドロイドの『ロイ』という。真生が過去に綾香の為に選んだアンドロイドだ。
真生は綾香を一瞥し、また自分の作業に没頭し始める。
綾香は真生に背を向ける形で、使っていたパソコンの前に腰掛けた。
それでもその『愛している』という言葉に対し、軽々しく愛を返せる程の無責任さは真生に無かった。
「…………真生、今日だっけ?アダム社の見学」
真生はキーボードを打つ手を止め、眼鏡を押し上げながら、隣に腰かけている博嗣の方を見る。
博嗣はバルブと人工筋肉を組み合わせ、AIアンドロイドの手の骨組みを作っていた。
蠢く手を模した機械の塊を横目に、真生はマリアの柔らかな手を思い返す。
あの温かな手の中にも、この機械が内蔵されていると思うと、なんだか不思議で仕方なかった。
「ああ…………そうだよ」
真生は博嗣の動かす人工筋肉の伸縮を横目に、昨夜のマリアとの交わりを思い返す。
すると、博嗣の隣に腰かけていた山口美桜という女が、真生に目を輝かせながら話しかけた。
「真生君本当に凄いよねぇ………博嗣から聞いてびっくりしちゃった………!!
アダム社からヘッドハンティングなんて、超エリートコース!」
美桜は茶色いショートボブの髪型で、博嗣と仲がいい。エナの様な雰囲気ではないが、可愛らしい女の子だ。
強いていうなら、美桜は一番最初の頃のエナに似ている気がした。
「………いや、そんなことないよ」
「えー、超凄いよ!尊敬しちゃうよね!ねぇ、博嗣!!」
美桜はそう言いながら、博嗣の肩に手をかける。そして博嗣の顔を覗き込む様にして、熱い視線を絡ませた。
「な、すっげーよなぁ??お前来れなかったけど、授賞式の時も凄かったぜ?これが友達なんだって思ったら感動した」
そう言いながら笑う二人を眺めながら、真生は二人の距離の近さを犇々と感じる。
美桜が博嗣を好きな事は一目瞭然だ。博嗣の事を見る眼差しが明らかに違うのを、研究室の仲間はみんな察している。
けれど博嗣は美桜の好意には、一切気付いていないかの様に振る舞う。先日の授賞式の際に、美桜は用事があるといって来なかった。
その前に博嗣は、自分のアンドロイドを連れてくると口にしたのだ。
博嗣がアンドロイドの造形にこだわることも、異常な程の溺愛をしていることも、研究室では周知の事実だ。
その時に美桜はきっと、エナに逢いたくないんだろうと気付いていた。
美桜は空になった紙コップをゴミ箱に捨て、研究室からそっと出てゆく。
博嗣と二人きりになったのを見計らい、真生は博嗣に耳打ちをした。
「…………博嗣、美桜とあんなに距離近かったか?なんかお前達近くないか?」
「…………え?そう?………アイツ、何時もあんなじゃない?」
博嗣はそう言って軽く流し、作業にまた没頭し始める。
真生は博嗣の眼中には、アンドロイドの造形しか見えていないと察した。
博嗣は美桜の気持ちに、全く気付いていない様に真生には思えた。
真生は人間の感情には鈍いタイプではあるが、流石に美桜の好意には気付いた。
どうやら博嗣は人間に関しては、真生より鈍い人種らしい。
暫くすると新しい珈琲片手の美桜が、綾香を引き連れて帰ってきた。その隣には白い髪に、燃え盛る炎の様な茜色の目をした少年がいる。
彼はAIアンドロイドの『ロイ』という。真生が過去に綾香の為に選んだアンドロイドだ。
真生は綾香を一瞥し、また自分の作業に没頭し始める。
綾香は真生に背を向ける形で、使っていたパソコンの前に腰掛けた。
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