馬に蹴られても死んでなんてやらない【年下αの魔性のΩ略奪計画】

如月緋衣名

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第五章 

第三話☆

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 そういえば操さんの苗字は穂波だし、おばあちゃんと呼ばれていた大女将の苗字は布施さんだ。
 家族でありながら違う名前であるなんて、そうそうザラにあるものではないなと思う。
 それに布施さんは、操さんには一切似ても似つかない顔をしていた。血の繋がりは感じられない。
 親戚という線も無さそうだと、勝手に考察を進めてゆく。
 操さんと操さんを取り囲む世界の事は、俺にはとても謎が多い。
 けれど今の俺の立ち位置では、疑問点を聞き出す事さえも難しいのだ。
 俺と操さんの関係は、恋人というものではない。ただただ俺が操さんに入れあげているだけである。
 
 
 温泉の中で足をのばしながら、夜空をぼんやりと仰ぐ。露天風呂で身体を温めながら、俺はある事を思い出した。
 そういえば首輪をどうやって渡すべきなんだろうか。
 特別なタイミングであれば、プレゼントなんてすんなりと手渡せる。
 けれど今日は何にもない日の上に、あげようと思っているものは首輪だ。
 下手したら指輪を買い与えるよりも、ずっとずっと重たいプレゼントをした気がする。
 Ωの首輪なんて、プロポーズみたいなものではないか。
 とんでもない致命的なミスをしたと思いつつも、今更買ってきてしまったものはどうしようもない。
 俺は桜のモチーフの付いた首輪を、どう渡すべきなんだろうかと頭を抱えた。
 
 
 身を清め終わり部屋に戻って、渡す予定のプレゼントと向き合う。
 シンプルな箱に控えめなリボンの乗ったそれを見ながら、ただにらめっこを続ける。
 勢いとはいえ大層重たいものを買ってきたと、俺は後悔をしていた。
 どう言い訳をしようと思いながら、腕を組んで首を傾げる。
 当てたも正直微妙だし、渡さないのも気が引ける。何せ操さんの首輪はボロボロなのだ。
 何て云えば退かれることがなく、首輪をプレゼント出来るのだろうか。
 プレゼントボックスに集中していた時、俺の隣に何かがとすんと落ちる。隣に目をやれば、操さんが首を傾げていた。
 
 
「えっ!?!?!?操さん!?!?!?」
 
 
 思わず俺が大声を出せば、操さんがわざとらしく耳を塞ぐ仕草をする。
 操さんは何時もの夜伽に着ている時の、脱がしやすそうな桃色の襦袢を着ていた。
 呆れた表情を浮かべ、鈴が転がる様な声色で笑う。
 
 
「もーぉ??なぁにぃ??虎ちゃん超五月蝿いんだけどぉ!!!」
 
 
 パクパクと口を動かしながら、思わず目を泳がせる。
 机の上にあるものはプレゼントボックス。操さんにも見られてしまった。
 もうこれは覚悟を決めて手渡そう。
 口説き文句なんて無くていい。あげたいという気持ちが操さんに伝わればいい。
 
 
「あの、プレゼントです。これ………」
 
 
 箱を手にして操さんに突き出すと、目を丸くして俺を見上げる。
 操さんは白魚の様な指先で、俺からプレゼントを受け取った。
 
 
「……俺にくれるのぉ??開けて良い??」
 
 
 俺がコクコク頷けば、操さんはリボンに手を掛ける。
 丁寧に包装を外す指先を見つめながら、思わず唾を飲み込んだ。
 桜の花のモチーフの付いた首輪を手にして、操さんは目を輝かせる。
 それから何かを思い返したかの様にこう言った。
 
 
「ああ、そっか……俺の首輪今ボロボロだったね??有難う………」
 
 
 想像していたよりもすんなりと、操さんは首輪を受け取り、俺の目の前で無防備に首輪を外す。
 αの目の前で自分の項を晒すなんて、余りにも警戒心がないと感じた。
 
 
「………ちょっと操さん!!αに項を晒すのは良くないですって!!!」
「虎ちゃんはぁ、俺に酷い事しないでしょう?大丈夫。俺、自分に変な事しようとする人は直ぐ解るよぉ??」
 
 
 猫の様な大きな眼を輝かせながら、俺の顔を覗き込む。
 首元で桜のモチーフを揺らし、俺が選んだ首輪を身に着けて操さんが笑う。
 屈託なく八重歯を見せて、目を細めた操さんを見ていると、胸がきつく締め付けられた。
 好きだなあと思った瞬間、操さんの白魚の様な手が俺の首を撫でる。身を屈んだ瞬間に唇に唇が重なった。
 
 
 啄ばむ様なキスを何度も繰り返しながら、恋人同士の様に熱っぽい視線を絡ませる。
 ちゅっ、という音を響かせながら、じゃれる様に抱き合う。
 俺は操さんの頬を撫でながら、甘い声色で囁いた。
 
 
「来年は操さんも一緒に行きたいって、二人が言ってましたよ………」
「ふふっ♡いいねぇそれ………お祭りいけなくて、今日残念だったなぁ………」
 
 
 操さんは俺の首にぶら下がるかの様な要領で、俺の身体を引き倒す。
 覆い被さる様な体制になれば、誘うように足を絡ませた。
 桜のモチーフの付いた真新しい首輪は、操さんにとてもぴったりだ。我ながらいいセンスをしていたと思う。
 それにそんなつもりでは毛頭ないが、まるで自分色に染めているかの様な気持ちになる。
 
 
「ふふ、お土産で買ったおつまみとか、冷蔵庫の中に入ってますよ」
「あ………んっ………じゃあ、一回したらぁ、晩酌お付き合いしてぇ??」
「はい、後でお酌します………」
 
 
 来年になったら操さんは、俺に愛されてくれるのだろうか。そんな事を考えながら、白い身体に舌を這わせる。
 俺の下で背中を見せた操さんの項には、真新しいエナメルの首輪が輝く。
 時折身体をくねらせて、俺の事を見上げる眼差しが、とても蠱惑的に感じられた。
 動物の交尾の様に背後から責め立ててゆくと、操さんの腰が誘う様に揺れる。
 濡れた入口に指を這わせると、仄かに甘い香りをした蜜が糸を引いた。
 
 
「は………っ!!虎ちゃんっ………!!」
 
 
 操さんが身をよじって、俺からのキスをねだる。
 身体起こした操さんに手を伸ばし、引き寄せる様にして舌を絡ませた。
 優しいキスと愛撫を繰り返しながら、愛し合っている様な気持ちになる。
 水音を立てる様に舌を絡ませ合いながら、俺は小さく囁いた。
 
 
「………愛してます。操さん………」
「あはっ………しってるぅ………」
 
 
 何時も通りのお決まりな会話をしながら、ずきりと痛む胸を抑える。
 それでも俺は挫けることなく、操さんの中に指を入れた。
 
 
「あ……はぁっ…………ン!!」
「愛してます………アンタが悦んでくれるんだったら本望です………」
 
 
 歯が浮く位の甘い言葉を囁きながら、弱い場所を擦る様に指を動かす。
 操さんの腰がガクガクと震えだしたのを見て、指で弄るのを止める。
 そして操さんの入り口に、自分のものを宛がった。
 流石に何度も操さんを抱いてきたせいか、何を求めているのかが最近わかる。
 操さんの体はそろそろイク直前なんだろうなと思った。
 操さんは指でイカされるより、俺のモノでイカされるのが好きだ。
 
 
 濡れそぼった入口に一気に俺のものを沈めると、普段なら声を漏らす筈の操さんが言葉を失う。
 ガクガクと震える両の脚から、白濁を垂れ流す操さんのモノが見える。
 俺に後ろから入れられてイッたんだと、この時に気付いた。
 
 
「操さん………もう、イッちゃったんですか?」
 
 
 俺がそう問いかけると、操さんは頬を真っ赤に染め上げる。それから小さく頷いて、口元を恥ずかしそうに押えた。
 この表情がみたい。照れていやらしくなった、操さんの可愛い顔を見たい。
 後ろから羽交い締めにする様に抱き締め、舌を深くに絡ませる。
 潤んだ瞳が俺を見上げた瞬間に、さらに最奥を突き上げた。
 
 
「ああっ………!!んっ………ぁっ…………!!やぁっ………!!」
 
 
 余裕なく喘ぐ操さんの目尻から、涙が一筋落ちてゆく。
 綺麗に喘ぐ操さんも好きだけど、感じてぐちゃぐちゃになってる、余裕ない操さんが一番色っぽい。
 
 
「愛してます、操さん………世界で一番……」
 
 
 絶対に返事の返ってこない愛を囁きながら、操さんの背中に舌を這わせてゆく。
 操さんは背中を舐められたりキスをされる度、体をびくりと震わせた。
 操さんの最奥に俺の先端を擦り付け、腰を回す様にしながら焦らす。
 すると痺れを切らした操さんが、俺にこういった。
 
 
「おねがい………!!いかせてぇ??ぐちゃぐちゃになるまでおかされたいのぉ………!!」
 
 
 操さんに導かれるがままに、激しく腰を突き上げる。
 すると操さんはうっとりとした様子で、赤い舌を差し出した。
 貪る様に赤い舌に食らい付き、貪る様なキスをする。
 その瞬間、操さんの中が自棄に絡み付いて、俺のをきつく吸い上げた。
 もうダメだ。そろそろイく。そう感じた瞬間に操さんが体を起こす。
 そして向かい合うような体勢に変え、甘える様な眼差しをして囁いた。
 
 
「…………ぎゅってして…………おねがい」
 
 
 お互いの顔を見ながら、甘いキスを繰り返す。キスをねだる操さんが可愛くて仕方がない。
 もう持たないと思った瞬間に、何時も通りに操さんの細い脚が腰に絡まる。
 操さんの中に熱を吐き出しながら、華奢な身体の上に落ちた。
 こんなに甘く抱き合うと、愛されているんじゃないかと、うっかり勘違いしそうになる。
 俺は自分を律する様に勘違いするなと、自分で自分に言い聞かせていた。
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