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第四章 

第三話☆

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 部屋着にしている甚平を着て、風呂上がりの髪をドライヤーで乾かしてゆく。
 この髪も此処に来た時より大分長くなったなと、熱風を受けながら感じていた。
 操さんが来るかどうかの確証なんてないけれど、ちゃんと部屋の中で待つ自分がいる。
 今日はちゃっかりコンドームも用意をしておいた。もう準備は万端だ。
 まるで飼い慣らされた犬みたいだと、自分の状態を自分で笑った。
 
 
 午前0時に襖の前で物音が聞こえる。
 その音に導かれる様に襖を開けば、襦袢を着た操さんが俺を見上げた。
 白魚の様な綺麗な手を取って、部屋の中に引っ張る。華奢な体が俺の胸に飛び込んだ瞬間、襖を閉じた。
 唇を奪うように重ね合わせて、舌を絡めて静かに離す。
 またすぐに唇が触れ合ってしまう様な距離感で、操さんの猫の様な目を覗き込む。
 柔らかい黒髪を優しく撫でながら、俺は操さんに囁いた。
 
 
「…………ねぇ操さん、少しくらいは俺に逢いたかったのかなって、自惚れてもいいですか?」
 
 
 操さんの身体から漂う砂糖菓子の様な、甘い薫りに酔い痴れる。
 まだヒートの名残の消えない操さんの身体は、甘い芳香を漂わせていた。
 操さんは俺に対して呆れたような表情を浮かべ、わざとらしく鼻で笑う。
 そして俺を小馬鹿にした態度をわざと取りながら、俺の首に腕を回した。
 
 
「逢いたかったんじゃないってばぁ………セックスしたかっただけ………」
「…………でも、また抱かれたいって思ってくれたんですね?嬉しいです………」
「うわぁー………なにそれ前向きぃー………」
 
 
 操さんはそう言って悪戯っぽく笑う。その顔があんまりにも可愛らしくて、俺もつられて笑ってしまう。
 お互いに笑い合いながら、唇を薄く開いてキスを繰り返す。
 操さんは俺に触るのが嫌じゃない。抱かれる事だって、唇と唇を重ね合わせる事だって。むしろ自分から求めてくれていた事実が嬉しい。
 それが都合のいい性欲処理の相手だったとしても、好きな人に必要とされている事に変わりはない。
 今は正直これでもいいと思う。相手にされていない訳では無いと信じている。
 
 
 布団の上で腰紐に手を掛けて、襦袢をゆっくりと脱がしてゆく。
 白い肌が襦袢の隙間から見えるのが、物凄く色っぽいと思う。
 細い肢体を寝かせながら、丹念に唇を落としてゆく。その度に操さんの形の良い唇から、甘ったるい吐息が漏れた。
 まるで一番美しい感じ方を計算し尽くしているみたいに、最中の操さんは綺麗だ。
 胸元にある突起に舌を絡ませると、操さんの唇から可愛らしい声が漏れた。
 
 
「ひぁ………!!!」
 
 
 操さんは全体的に中性的な身体つきをしている。声も他の人と比べると少しだけ甲高い。
 喘ぎ声も鈴を転がしたみたいである。
 それに抱きしめたら壊れてしまうんじゃないかと思う位に、全てが柔らかくて抱き心地が良いのだ。
 
 
「ん………虎ちゃん、俺そこ好き…………優しく噛まれるのも、すきだから………」
「おねだりですか?操さん………」
「んっ………そんなこというの……?虎ちゃん意外といじわるぅ………ああっ………は、あっ!!」
 
 
 操さんは俺にちゃんと、自分が感じる場所を教えてくれる。
 まるで操さん好みにセックスを作り変えられているみたいだと、胸元の突起を淡く噛みながら思う。
 何度も何度も繰り返して淡く噛み続けていると、操さんの性器から先走りが漏れる。
 此処がこんなに大きくなっているのなら、中はもうグチャグチャに濡れてしまっているに違いない。
 操さんはまだまだ余裕そうな様子で、俺の愛撫に身体をくねらせる。この余裕を奪いたいと思った。
 
 
「ねぇ操さん。俺の事作り変えて。アンタ好みの攻め方全部、俺の中に叩き込んで……」
 
 
 操さんの感じる所が全部知りたい。何処をどう触れたらどういくのかを、全部俺に教えて欲しい。
 そして出来たら、操さんが俺なしで生きていけなくなればいいと思ってる。
 操さんを置き去りにして、何処かにトンで回っている様な人より、俺の方がこの人を解ってあげられたらいいのに。
 そしたら、俺だけのものになってくれないかなと思うのだ。
 我ながら女々しい感情が、自分の中に湧いている。
 良くない事だと解ってはいるけれど、心の在処が決まっている人間を、俺は必死で振り向かせようとしているのだ。
 人道外れた恋をしていると、愛した瞬間から解ってる。
 今更止めるという選択肢は俺には無かった。
 
 
「あ………そこ、その、うえ………そこ指で……こすってぇ…………あっ、ああああ!!!」
「……………此処?」
 
 
 操さんに導かれるがままに、入り口に指をねじ込む。
 濡れた音が響き渡ると、操さんの目が涙で潤んだ。
 吐息交じりの喘ぎ声を響かせながら、操さんは肌を汗で湿らせる。
 そのうち自分の身体の何処が気持ち良いかを伝える事も出来ずに、ただ乱れた呼吸と嬌声を漏らしだす。
 余裕のなくなっていく操さんを見ていると、身体中の毛が逆立つみたいにゾクリとする。
 
 
 中を弄っているのに性器から漏れ出した白濁は、操さんが中で達しているのを教えてくれる。
 綺麗に感じる操さんもそそるけれど、余裕なく喘ぐ操さんの方が蠱惑的だ。
 
 
「あっ!!も、もうだめ……!!そこいきすぎちゃう!!!いきすぎちゃうのぉ………!!!!」
「操さん、凄い色っぽい………綺麗です………もっとその顔見せてください………」
 
 
 顔を隠そうとする手を手で押さえ付けながら、中を更に指先で昂らせてゆく。
 操さんは爪先をピンと伸ばし、びくりと腰を跳ね上げた。
 溢れ出した愛液から漂う甘い匂いは、俺の劣情を更に激しく掻き立てる。
 感じ過ぎて体中から力が抜けた操さんは、譫言みたいに囁いた。
 
 
「………とらちゃんの………ちょうだい………おれのなかに、いれて…………」
 
 
 操さんは本当に、俺に対してなんて言ったら思う通りに動くのかを、もうよく解っている様な気がする。
 俺のが欲しいと直々に言われてしまえば、俺は決して嫌だと云えない。
 もう少し限界まで攻めたかったと思いつつも、着ていた甚平を脱ぎ始める。
 するとふやけた表情を浮かべた操さんが、身体を起こして俺のものを口に咥え込んだ。
 時折髪を耳に掛けながら、舌を絡ませて頭を動かす。
 口でされているだけでイケるかもしれないと感じたのは、操さん相手だけだ。
 
 
「操さん……それ本当に上手すぎ………!!あんまり激しくしたらイキそうだから……待って………!!」
 
 
 俺がそう言って操さんの動きを制せば、得意げな表情を浮かべてぺろりと舌を出す。
 八重歯を見せる様な笑みを浮かべた操さんを抱き起し、唇に唇を重ね合わせる。
 すると操さんが俺の身体に脚を絡ませて、自分の方に引き倒した。
 
 
「………このままいれてぇ??」
 
 
 枕元に置いておいたコンドームに手を伸ばそうとすれば、操さんは自らの入り口に俺のものを宛がう。
 そのまま入れられるのを望んでいる事に気付いた時、俺はほんの少しだけたじろいだ。
 
 
「操さん??ゴム………!!!」
「………だからぁ、そのまま入れて??避妊薬飲んでるって言ったでしょ??
中に出されたいから………そのまま…………覚えてよ、俺好み………………」
 
 
 俺の身体に脚を絡ませながら笑う操さんが、とんでもない悪魔に見える。
 がっちりと脚で身体を固められた俺は、そのまま操さんの中に入り込んだ。
 入れただけできゅうきゅう中は俺に絡まり、思わず眉を顰める。
 操さんの汗ばんだ身体が、小さく弓形になるのを見下ろしていた。
 
 
「は…………!!!」
「………っ、操さん………ズルいっすそれ………」
「ふふっ………俺の事嫌になったぁ??」
「…………いいえ、愛してます」
 
 
 操さんの手に手を重ね合わせ、指先を絡めて腰を揺らす。
 愛し合う恋人同士の様に、何度もキスを繰り返す。操さんの手が、俺の手をきつく握りしめた。
 俺の下で喘ぐ操さんは、とても色っぽくて、可愛らしくて愛おしい。
 華奢な体を揺さぶる度に、やっぱり好きだと再確認する。
 喘ぐ姿をじっと見つめていれば、頬を上気させた操さんが、俺のことを不機嫌そうな眼差しで見上げた。
 
 
「…………なぁに……??さっきからジロジロみて…………」
「好きだなぁって、思ってました…………」
 
 
 俺がそう言いだすと、操さんは呆れた素振りで目を逸らす。
 本来だったら聞けない筈の我儘も、惚れた弱みと言わんばかりに聞いてしまう。
 俺は操さんの身体を揺さぶりながら、さらに罪を重ねていると思った。
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