3 / 3
後朝
しおりを挟む
その晩。
光之進は竜泉に大層可愛がられた。
体位を変え、何度も何度も注ぎ込まれる熱液。子種。
中で出されるたびに「孕んだ」と言わされた。
竜泉の子を孕んだ。
行灯の油が切れ、火灯りが消えてからも続いた淫交は、外が少し明るくなった頃に終わった。
どろどろになった体を寄せ合い、手を繋いで眠ったのは束の間でしかなく。
早朝。
夜の薄闇も去らぬ早い時間に、後朝の挨拶もそこそこに竜泉に見送られて光之進は店を出た。体を酷使した疲労と寝不足で、その足元はいささか心許ない。
去り際、竜泉は光之進を抱き寄せ、慈しみ満ちた仕草で光之進の腹を着物越しに撫でた。
「俺たちの子を頼みましたよ」
光之進。
そう言って優しく笑った竜泉の目はどこまでも本気のように見えた。
「ちゃんと食べて、危ないことはしないように」
竜泉の口づけに応え、店先で深く口づけ合う。
不寝番をしていた男がそっと顔を背けたのが視界の隅に見えたが、竜泉がうまく光之進を隠すような角度で立ち振る舞ってくれていたので気にならなかった。
「また来てくださいね」
竜泉の言葉に光之進は躊躇いもなく頷いた。
帰路。
光之進はそろと腹を撫でてみた。
真っ平らな男の胎。
子がいるのかと思うと、光之進の両の乳首が着物の下でじくと疼いた。
(……違う)
光之進は首を振った。
「馬鹿げている」
口にも出すと、朝の冷たい空気の中にすぅと夜の夢が覚めていく心地があった。
そうだ。
男が子を孕むはずがない。
そのはずだ。
朝霧のなかを養家へと急ぎながらも、光之進はどうしても走ることができなかった。
光之進は竜泉に大層可愛がられた。
体位を変え、何度も何度も注ぎ込まれる熱液。子種。
中で出されるたびに「孕んだ」と言わされた。
竜泉の子を孕んだ。
行灯の油が切れ、火灯りが消えてからも続いた淫交は、外が少し明るくなった頃に終わった。
どろどろになった体を寄せ合い、手を繋いで眠ったのは束の間でしかなく。
早朝。
夜の薄闇も去らぬ早い時間に、後朝の挨拶もそこそこに竜泉に見送られて光之進は店を出た。体を酷使した疲労と寝不足で、その足元はいささか心許ない。
去り際、竜泉は光之進を抱き寄せ、慈しみ満ちた仕草で光之進の腹を着物越しに撫でた。
「俺たちの子を頼みましたよ」
光之進。
そう言って優しく笑った竜泉の目はどこまでも本気のように見えた。
「ちゃんと食べて、危ないことはしないように」
竜泉の口づけに応え、店先で深く口づけ合う。
不寝番をしていた男がそっと顔を背けたのが視界の隅に見えたが、竜泉がうまく光之進を隠すような角度で立ち振る舞ってくれていたので気にならなかった。
「また来てくださいね」
竜泉の言葉に光之進は躊躇いもなく頷いた。
帰路。
光之進はそろと腹を撫でてみた。
真っ平らな男の胎。
子がいるのかと思うと、光之進の両の乳首が着物の下でじくと疼いた。
(……違う)
光之進は首を振った。
「馬鹿げている」
口にも出すと、朝の冷たい空気の中にすぅと夜の夢が覚めていく心地があった。
そうだ。
男が子を孕むはずがない。
そのはずだ。
朝霧のなかを養家へと急ぎながらも、光之進はどうしても走ることができなかった。
0
お気に入りに追加
14
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
菊松と兵衛
七海美桜
BL
陰間茶屋「松葉屋」で働く菊松は、そろそろ引退を考えていた。そんな折、怪我をしてしまった菊松は馴染みである兵衛に自分の代わりの少年を紹介する。そうして、静かに去ろうとしていたのだが…。※一部性的表現を暗喩している箇所はありますので閲覧にはお気を付けください。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
俺の婚約者が変態過ぎる!〜いいだろ。コイツ俺のなんだぜ?〜
ミクリ21
BL
婚約者のヒューゴのことを、主人公のユリスは苦手であった。
何故なら、ヒューゴは超ド級の変態だったからだ。
しかし、ある時前世の記憶を思い出したユリスは、ヒューゴを深く深く愛し始める。
何故なら、ユリスは前世で変態大好きな性癖だったから………。
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
今度は殺されるわけにいきません
ナナメ(近況ボードお知らせあり)
BL
国唯一にして最強の精霊師として皇太子の“婚約者”となったアレキサンドリート。幼い頃から想いを寄せていたテオドールに形だけでも添い遂げられると喜んでいたのも束の間、侯爵令嬢であるユヴェーレンに皇太子妃の座を奪われてしまう。それでも皇太子の側にいられるならと“側妃”としてユヴェーレンの仕事を肩代わりする日々。
過去「お前しかいらない」と情熱的に言った唇で口汚く罵られようと、尊厳を踏みにじられようと、ただ幼い頃見たテオドールの優しい笑顔を支えに耐えてきた。
しかしテオドールが皇帝になり前皇帝の死に乱れていた国が治まるや否や、やってもいない罪を告発され、周りの人々や家族にすら無罪を信じてもらえず傷付き無念なまま処刑されてしまう。
だが次目覚めるとそこは実家の自室でーー?
全てを捨て別人としてやり直す彼の元にやってきた未来を語るおかしな令嬢は言った。
「“世界の強制力”は必ず貴方を表舞台に引きずり出すわ」
世界の強制力とは一体何なのか。
■■■
女性キャラとの恋愛はありませんがメイン級に出張ります。
ムーンライトノベルズさんで同時進行中です。
表紙はAI作成です。
淫愛家族
箕田 悠
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
去りし桜の片隅に
香野ジャスミン
BL
年季あけ間近の陰間の桜。胸には、彼に貰った簪。
でも、彼はもういない・・・
悲しい想いの桜が幸せを掴んでいく・・・・
「ムーンライトノベルズ」で公開している物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
こんにちは。
作品を拝読しましたので感想を送らせていただきます。
まず一言で表すと最高です。世界観から登場人物、二人の行動まで全てにおいて私に刺さりました。こんな素敵な作品を作ってくださってありがとうございます。
行為の時の光之進の可愛さと竜泉のSさが相まってとても官能的でした。
時代小説のBLは初めて読んだのですが初めての作品がこの作品で本当に良かったです。
ありがとうございました。
感想ありがとうございます(*´∇`*)
えっちさを上品に出したくて頑張って書いたので、官能的と言ってもらえてとっても嬉しいです。
優しくいじめられてひんひんしちゃう光之進の可愛さをわかってくださる方がいて歓喜。
こちらこそありがとうございました。