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第3章
第5話 記憶の奔流
しおりを挟む自分ではない誰かの記憶を、直接頭に流し込まれているような感覚だった。
彼我の境界が解かれ、絡み合い、視せられているだけなのに、まるでその時間を過ごしているように五感が記憶を伝え、芝蘭の中に新たな時間を生む。
少女の亡霊は見当たらない。代わりに、彼女の幼い頃と思われる姿が在るのを感じていた。
『水月』
聞こえたはずもない声が、脳に響いた。それが少女の名だと、振り返った先で微笑む少年から学ぶ。
黄色の髪は南の花のように眩しく、陽の光を閉じ込めたような柔らかな若葉色の瞳に、少女の笑顔が写る。
『兄様』
蒲公英の綿毛のような声だった。頬を撫でるようなその声が芝蘭の自我を忘却する。この記憶を見せられている理由を、失いそうになる。
小さな手が伸びると、誘うように異なる両手が差し出されて、繋がれる。温かく、穏やかな感触だった。
『まーた火月の奴が妹と一緒にいるぞ』
『妹の方が気が強えもんな!』
視界の端に移った子供が囃し立て、水月がそちらを見つめたのだろう。芝蘭の目にも、青や赤の特徴的な色が写る。火月は何も言わず、そもそも相手にしていないが、水月の視界には子供達だけが写り続ける。水月が睨むと子供達の表情がさっと変わる。
『水月、稽古の時間に遅れる』
『はい』
促されるままに、火月の顔を見上げる。
素直に従うのかと進めた足は、繋いだ手が離れるとともに後ろへ踏み出され、正反対の方へ駆け出した。子供達がちょうど背を向けたところに、そのまま飛び蹴りが炸裂する。
見事に背中の中央を叩き、子供が地面に倒れる。
『いってえ!』
『なんだよやるのか!』
もう一人が小さい水月へ飛びかかろうと近寄り、一歩遅れて水月が跳躍する。頭部への鈍い痛み、それから目の前で呆然と座り込む子供の様子から、頭突きをしたのだと芝蘭は思った。お転婆なのか、芝蘭には程遠い感覚と経験が、鮮やかに映る。
『今度兄様を侮辱したら、その口を縫い付けるから』
じわりと痛みが追いついた瞳から涙が溢れ出し、子供が大声で泣き始める。声を聞きつけた大人が数人集まってくるのを尻目に、突っ立っていた水月の前に、火月が膝をついた。
『痛かっただろう。すまない』
彼が謝っても、子供の泣き声は止まない。仕方ないねと笑う大人に促され、水月は火月に連れられてその場を離れた。
『どうしてそう、手が早い』
繋いだ手に力が篭る。痛みは感じないが、小さな自立心と自尊心を刺激するには充分だ。
『下らないことを言うのだもの』
『水月』
幼い妹の隣に立ち、火月が顔を覗き込む。額を赤く腫らせ、むくれる妹に慰みの微笑みを与える。
『いつも言っているけれど、気にしなくていいんだよ』
『兄様は嫌じゃないの?』
『水月が痛い思いをするより、嫌じゃない』
むくれた頬を指で挟み、ふしゅ、と水月の口から怒りの空気を奪う。唇を尖らせる水月の髪をなで、毛先に絡まっていた葉を払い除けると、よし、と頷いて火月は立ち上がった。
『お前が知っていてくれるなら、それで良い』
諦念の混ざった微笑みとは、こういう風に見えるのかと知った。儚く、淡く、どうしようもなく惹きつけられ、そうでは無いと否定したいのに、否定すら相手を脅かしそうで恐ろしい。
もう一度手を繋ぎ、今度はしっかりと火月が先導して歩き出す。水月にとっての最初の記憶らしい。
頼もしくもあり、どこか頼りなく見えるその姿を見上げながら、芝蘭は透火を思った。水月から見た火月がそう見えるように、透火から見た自分が、まさにこのように見えてはいないだろうかと不安になったのだ。郷愁じみた感情に流されそうになる。
自分と彼は別の人間で、水月とも異なる存在であるのに、自分のもののように感じてしまう。
透火との記憶という地面の上にそっと、新雪が降り積もるが如く水月の記憶が重なっていく。
共鳴するように、見えていなかった過去が見えてくる。
次々と流れる記憶は時間の間隔が不明瞭で、思うよりも早く、見知った人物が記憶の中に現れた。
『それなら、どうして私を助けた?』
『都合が良いからだが』
大きくなった水月と対面するのは、直井昴だ。
芝蘭の記憶と何一つ変わらない姿に、複雑な気持ちを抱く。天色の髪は長く、後ろで一つに結ばれる。額を見せるように分かれた前髪は、毛先を耳にかけるようにして整えられ、顔の稜線がつくる影を美しく魅せる。紫亜の騎士として仕えていた頃だ、今の芝蘭とそう変わらない年頃だ。
怜悧な刃物のように鋭い雰囲気を持つ、細身の青年。それが、この年の昴の印象だ。
常闇とも見紛う暗色の瞳に水月の淡色を写し、昴は無造作に、袖を捲った腕を差し出す。幼い頃に感じていた印象よりは細く、引き締まった腕だった。
『村へ案内して欲しい。お前たちに報せるべき話がある』
『助けてくれたとはいえ、お前は心魔でしょう? そう簡単に信用はしない』
『構わない。お前を助けたことも、ただのきっかけだ』
『……随分と嘗めてくれる。良いでしょう、案内します』
緊張と高揚感が、爪先から背中までを駆け上がる。感覚に酔う。動悸まではいかないが、心音が早くなり、一秒前の景色と今が異なって見える。
急速にして鮮烈なその感覚は長く続き、芝蘭がその意味を理解する頃には、記憶は水月と昴の祝言にまで進んでいた。
黒髪の少年が火月に抱き上げられ、高い位置から水月の頭に花冠を載せる。
『ありがとう、占音』
それが占音本人だと、芝蘭は一目で見抜けなかった。常々、透火に次いで表情豊かな方だとは思っていたが、無垢な笑みと比べれば乏しいの一言に尽きてしまう。
それだけのことを乗り越え、占音は芝蘭達の側にいるのだ。
『透火と名付けたい』
見覚えのある幼子と、占音の眠る顔を見つめて、母親になった水月の声が、この世の始まりを唱えた。
産前産後の片付けを終えたばかりの昴は、やや草臥れた様子で椅子に座り、視線だけを寄越して反応する。
『理由は』
『この子は、誰かを助ける燈となるのでしょう?』
まるで、基音を生み落すことを知っていたような口振りだった。
火月の話とは異なる記憶と印象に、芝蘭の自我が復活する。
紫亜が狙っていたとは思えない。基音の存在を知ることが許されていたとして、昴以外に彼女に伝える者はおらず、しかし、それが事実ならば、昴は生まれてくる子が基音となることを見越して交わったことになる。
(だから、透火のことを、俺に話した……?)
話が合わない。そもそも基音が生まれることを予知するなど、出来るはずがないのだ。
生まれる場所も誰が生むのかも未来に起こる話であり、人里から離れて住まう銀の守護者が知っているはずもない。それに、水月が透火を──基音を生み落としたとこの土地に告げたのは紫亜のはずだ。なぜ、紫亜は透火をそのまま引き取らなかったのか。昴は透火を連れて行かなかったのか。
芝蘭の中に新たな疑惑を生みながらも、記憶は再生し続ける。
『目に見えずとも消えぬ炎のように、顔も知らぬ人にも、この子の命が影響する』
柔らかな金髪を撫で、白くまるい頬に水月が自分の頬をくっ付ける。水月を通して伝わる愛情と歓びに、芝蘭まで感電したような痺れを覚えた。
『兄様のように、誰かを導く火と決められた運命でも、強く生きていけますように』
『……成る程。そうしよう。色にも似合う響きだ』
水月の頭を撫で、労わるように昴が隣に座る。触れるだけの交わりは夫婦のようでしかし、水月の中に、愛情以外の苦しい切なさが生じる。
昴の瞳を通しては感じられない熱情が、行き場を失って芝蘭の中へと入り込んでくる。
幸福かと思われた時間は呆気なく、透火と昴の姿がなくなり、火月と水月の二人だけが記憶に残る。
『やはり、最初から殺しておくべきだった』
『違う。私がいいと言ったんだ』
頭を抱えて後悔するばかりの兄に、水月が言葉を重ねて訴える。
彼女の胸を打つ感情は覚悟と悲しみとに溢れていて、とても見ていられない。
『私が彼を愛したから、それでもいいと言ったんだ。だから透火を生んだの。未来を願って』
『……お前が生きづらくなってもか』
『どの道、私は珠魔のために何もできない。……焦がれたのは、あの人だけだ』
俯き祈るように告白する水月の前に、火月が立つ。
組んだ両手を掴み、彼は金属魔石で水月の自由を奪った。
『兄様……?』
『このままでは殺される。地下へ潜んでいなさい』
『……これは、要らないでしょう?』
『二藍、水月を地下へ。出てこられぬよう、魔法壁を張りなさい』
『……はい』
『兄様!』
戸惑いで抵抗する気にもならない彼女を、少年が連れていく。兄の名を呼び続ける水月を閉じ込める彼の顔は悲しげで、無慈悲だった。
彼女が閉じ込められたのは、芝蘭が閉じ込められたこの場所だった。
この部屋で、彼女は最期の時を生きたのだ。
それからの記憶は、筆舌し難い。
兄との話し合いも無下にされ、抵抗も虚しく禁忌とされた交わりを強制された彼女は、人間としての生の中に一つの悲しい真実を見たのだろう。他人とも家族とも思えず、きょうだいであると信じていたのに、それすらも裏切られ、昴を愛したことだけが彼女を彼女とする理由になっていく。
記憶と感情がどす黒く塗り潰され、閉塞した心が暗闇に支配されていく。
それでも、彼女の中に一度として、透火を生まなければ良かったという後悔は生まれなかった。透水が腹に宿ったことも否定せず、怒りの矛先にもしなかった。
未来を思って産んだという彼女の意志が、紛れもない彼女の生きた証明というように、二人の命は生まれたのだ。
『水月、水月!』
それが、いつの記憶かは分からない。暗闇に射すような眩しい声が、水月の心に光を射す。
『占音……?』
瞬きの先に見えた幼い顔は、可憐な少女のようにあどけなく、決意に満ちた瞳は険しい。珠魔は成長が早いというから、彼の行動力も発想も全て、年相応なのだろう。
『俺、連れ戻してくる。透火を。だから、待ってて』
この世に生まれ落ちてまだ浅いというのに、彼の持つ光は力強く、水月にとってどれほどの救いとなったか計り知れない。窓の向こうとこちらとで隔てられていても、彼は小さな手を水月に向けて、笑顔を見せた。
勇気付けるように笑い、震えそうな手を水月に差し伸べる。
『ひとりじゃ、ないから』
『……ありがとう、占音。貴方は私の、大事な』
淑やかな黒髪を撫でようと、手を伸ばしたところで記憶が途切れた。
闇に、放り込まれる。
『再生された記憶は消える。……残るは、言霊』
水月と同じ顔をした少女が、水月とは異なる髪を靡かせて背後に現れる。
無機質な声が、願いを今に繋ぐ。
『鍵で開くのは奪われた魔力。本来の宿主に返すべき力。
私と彼女は過去の人。未来を生きる者の足枷になるわけにはいかない。
……だからお願い。鍵を開いて』
芝蘭の手の中にあった鍵が、魔力の流れを受けて輝き始める。
瞬きを繰り返した伽羅の瞳が、細められた。
『また、貴方と会うなんてね』
「……アド、」
過去の残滓だと思い込んでいたから、彼女のあまりに自然な吐息が本物のように思われた。
泣きそうに笑う顔が最期を思わせ、忘れていた悲しみを胸に呼ぶ。それすらもかなしむように、アドアは眉根を下げて微笑む。
『あの時の言葉が全て。迷わないで』
ふわりと近寄った影が、芝蘭に触れる前に霧散する。
『貴方は、生きて』
声に誘われ瞬きをすると、暗闇が消え、芝蘭は先程閉じ込められた部屋に居た。
占音の術符は手の中に無く、あるのは紋様の半分を染める己の血だけ。
頭を起こすと目眩がする。失血し過ぎだと思い至るのは容易で、目の前に落ちている鍵に手を伸ばす。
鍵を開かねばならない。
火月が示した封印ではなく、棺に収まった魔力を外へ放出し、透火に返すのだ。ひたすらに頭の中で繰り返し、硝子の鍵穴に鍵を挿す。
冷たい音が響いて、指先が震えた。
(……回せば、)
回せば、彼女たちは今度こそ死ぬだろう。
生きることも死ぬことも許されない今の状態から、死ぬという形で解放される。
彼女たちはそれを望んでいるし、芝蘭とて無責任にアドアや水月を生き返らせたいとは思わない。
しかし。
(また、繰り返すのか)
言われた通りに動くことでしか他人を助けられない自分を、初めて、悔しく思った。
守るために愛することも出来ず、今もこうして、助けるために殺すしか出来ない。他に術がない。方法が見当たらない。
占音や透火なら、あるいは琉玖なら、同じ状況に陥ってもきっと違うことを、違う道を選ぶのかもしれないのに、芝蘭には思いつかない。
選ぶことができない。
『迷わないで。大丈夫』
非力な自分に崩れそうになる芝蘭を支えたのは、消えたはずの少女だった。
芝蘭の隣に寄り添い手を重ね、迷う心を励ましてくれる。
『生きているのは透火だけ。喪いたくないでしょう?』
彼女は正しい。正しいから、眩しくて、苦しい。
手放したくなかった。死なせたくなかった。
(もう二度と、死なせはしない)
短く息を吸う。
覚悟を、決める。
鍵を回すと、棺がひとりでに開いた。勢いよく放たれるのは、見知った癖を持つ魔力だ。その奔流から身を庇うよう間も無く、風圧に負けて椅子にぶつかる。
『ありがとう』
背中から床に打ち付けられた芝蘭の耳に、水月の声が聞こえた。
『透火と占音を、お願いね』
「王子!」
二人の姿が、消える。
気配に重なる日向の声が、芝蘭に現実を、自分の感覚を呼び覚ます。
手に体温を感じる。自分のものではないそれに、そっと目を開ける。
必死の形相で芝蘭を呼ぶ日向が、目の前に居た。
「きこ、えている」
「……王子!」
芝蘭の上半身を抱き起こし、止血をした手を掴んで、彼は何度も芝蘭を呼んだ。芝蘭よりも小柄なのに、日向に抱き締められると安心した。
やはり彼は年上で、大人だなと芝蘭も少しだけ彼の服の裾を握り返した。
良かった、と何度も繰り返しながら芝蘭の頭を撫で、脈を確認し、日向が光河へ連絡を取り始める。呆然としたままでいると、日向の肩越しに、麗しい銀の守護者と視線がかちあった。
「透火は、」
彼女は透火の監視役だから、てっきり透火も居るものだと思った。が、彼女は何も言わず、芝蘭から視線を逸らすだけである。
「……よろしいんですの?」
ハークの視線は、自分ではない誰かへ向けられていた。そこでようやく、階段の影に隠れた一人に気が付く。見知った気配ながらも、すぐには誰かは分からない。
けれど、芝蘭の前に現れた少年は、間違いなく予想した人物だった。
「透、水?」
困惑と戸惑いと、不安と怒りが一気に押し寄せ、息が苦しくなる。
「芝蘭にいちゃん」
小等部を卒業してから呼ばなくなった呼び方で、透水が苦い顔をしている。日向に支えられて腕を伸ばすと、少年がひくりと喉を痙攣させて、泣きそうな顔をしてから芝蘭の中に飛び込んできた。
「どう、し ──ッゴホ」
渇いた喉に声が引っかかる。咳き込む芝蘭の口に、日向が携帯水を寄せる。促されるままに飲み干すと、生温い液体が水分として体内に吸収されるのを感じた。
「……どうした? 何故ここに」
よく見えるように両手で包み、透水と顔を合わせる。
少年に傷はない。先程のハークの様子から、連れてきたのは彼女だろう。
心配を掛けたことは理解していて、それ故に落ち着いて対応しようとした芝蘭に、透水が小さく、声を絞り出した。
「透火が、誰かを殺すのを見た」
密やかな告白が、芝蘭の呼吸を奪った。
「でも、俺は見てないふりをするから。にいちゃんもそうして。お願い」
心臓を刺されたような気分だ。内容を理解した頭が、どうしてと聞き返す言葉を並べようとする。
感情が昂ると黄色に変化する彼の瞳が、芝蘭の疑問を封じる。
「きっと、透火は何も言わないから」
まるでそう言われたように、透水は言い切る。
それが透水の優しさだと、弟としての配慮だと瞬時に判断できてしまえて、芝蘭は益々、居心地の悪さを覚えた。
釘を刺されたようにも思えて、透水を見ていられなくなる。
「……棺、は」
日向を振り返る。透水と芝蘭を思って、距離を取ってくれたらしい。今の会話は聞かれていないだろうと言い聞かせ、話を変える。
棺の中の彼女達を弔って欲しいと言いかけて、急に異臭を感じた。つい先程まで感じなかった違いに、嘔気が込み上げる。
「まずは部屋を出ましょう。立てますか?」
「ああ……」
横目に棺を見遣るも、硝子の棺は蓋がされ、光を反射するばかりで中を見せてはくれない。魔力の放出を終えて、閉じたのだ。
見えないことに安堵する自分が、少し嫌になった。
「御手を」
差し伸べられた手を掴み、日向にもたれるようにして立ち上がる。透水も小柄ながら芝蘭の脇から身体を支えてくれ、そのいじらしさに胸を痛めながら、ありがとうと頭を撫でた。
「乗りなさい」
大きくなった銀竜が、芝蘭の前に尻尾を伸ばした。
ハークが銀竜の隣に立ち、冷ややかな横顔を見せる。
「……ありがとうございます」
日向が礼を言うので、大人しく竜の背に身体を預けた。ハークと透水が芝蘭の前に座り、日向は芝蘭を後ろから支えるように身体を乗せる。
天井はどうするのかと顔を上げれば、日向の詠唱で召喚された土の塊が天井を地下から押し上げるように破壊する。空へと続く道が出来上がる。
身動ぐこともままならず、浮遊する感覚に身を任せる。
「進軍を止めました。ひとまず、光河と合流します」
「……ああ」
報告を聞きながら、芝蘭はそのまま、意識もなにもかもを失った。
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