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第5章
6話 オバちゃんの2度目の旅立ち
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リコとカイルの旅立ちに、オルガやミル、それに助けた魔族たち、というか数え切れないほどの沢山の者が駆けつけていた。
「王都に行って今度は私がリコを助けたいけど、街を一刻も早く立て直さなければならないから……ごめんね」
オルガが申し訳なさそうに、スカートの裾をギュッと握る。
領主のいなくなったこのクスタルは、これからオルガを中心に街の復興を目指すことになった。
街の人たちはオルガの父を尊敬し慕っていたので、彼女ならきっとやり遂げると喜んで賛成したのである。
それになんと、リザードマンやドワーフもこの街に残り復興に協力するらしい。もちろん、ミルもだ。
それから、領主のバカ息子はというと、ちゃんと反省し真人間になるまで、ミルたちのいた地下牢に幽閉ということになったのである。
一体、いつ太陽の下に出てこられるのであろうか。
リコは、俯いたままのオルガに優しく語りかける。
「そんなこと気にしないで。オルガはこれから皆の先頭に立つんだから。頑張っていい街にしてね」
「本当にありがとう。リコ」
感謝を伝えるオルガに、リコは微笑みを返す。そして、彼女の隣にいるミルに視線を移した。
実はリコ。ミルにどうしても聞いておきたいことがあったのだ。
「ところでミル、素朴な疑問なんだけどさ。あなた、言葉の語尾にニャアはつけないの?」
ミルは「え?」と目を丸くした。
そして、笑顔でバッサリ否定する。
「ニャアなんてつけないよ! 確かに私はウェアキャットだけど……そんなのはつけたことないよ! 私はミルだニャア……ほら、変じゃん! あはははは!」
大笑いするミルの肩を、カイルがガシッと組んでリコを睨む。
「じゃあ、何か? 俺はピョンをつけろってか! リコ、俺たちをバカにしてるのか? なぁ、ミル。このオバちゃん変な奴だろう?」
「きゃははは! へーん!」
「なぁー! あっはっはっ!」
肩を組みながら笑い転げるカイルとミル。
(そんなに笑わなくてもいいじゃん。ウサ耳男のピョンはともかく、猫耳娘のニャアは心のオアシスだよ! 砂漠に咲いた一輪の花だよ! 何だよもう!)
リコはそっと拳を握り締めた。
「これこれ、何をそんなに怒っておる。今のはリコの失言じゃぞ!」
その声に振り返ると、エルフのご老体――いや、長老が苦笑いをしていた。
「長老さん、失言などと! 浪漫を馬鹿にしてはダメです!」
「浪漫とな! ニャアがか?」
リコは「その通りです」と真面目な顔で何度も頷く。
「あはははは! まったくリコには呆れるわい! あんたはどこかハルカ様に似ておるのう……っと、そうじゃ。リコに報告があったんじゃ!」
「報告ですか?」
「うむ。儂らエルフは、ヨーク村に行こうと思うての」
「ヨーク村ですか? でも旅は危険じゃ……」
長老は「それなら大丈夫じゃ!」と元領主の護衛たちを呼んだ。
「この護衛たちがな、連れて行ってくれるそうじゃ」
「はぁ?」
驚くリコを余所に、護衛たちは長老の後ろにピシッと一列に並ぶ。
そして、護衛のひとりが一歩前に出ると胸を張った。
「ご心配はご尤もです。しかし我々は心を入れ替え、長老様をお守りする所存です。リコさん、ご安心下さい。長老様を無事にヨーク村へお連れします」
「長老様って……長老さん、この人たち一体どうしたんですか?」
「何。怪我を治してやって、世間話をしておったらこうなったのじゃよ」
「はっ。長老様には、なんとお礼を言っていいやら。そして、長老様の為になるお話、我々は目が覚める思いでした。これから生きて行く道筋がはっきりと見えたのです。長老様について行こう。一生かけて恩返ししよう……と!」
護衛は熱く語った。他の護衛たちも目に涙を浮かべている。
(長老さん……一体、何をお話になったんですか? スゲー懐いてますけど……)
彼らの物凄い変わりように、若干引いたリコは、笑顔を取り繕った。
「へぇ~、そ、そうなんだ~。よ、よかったね~」
「ということで儂とラドルフは……」
長老はラドルフを探し辺りを見回す。
――因みにラドルフとはティーラの父である。
「む! はぁー。まったく、あんな所に」
呆れた声を出す長老。
その視線の先に、街の女性と楽しそうにイチャイチャ戯れるラドルフの姿があった。
「あ、あれは?」
目を丸くするリコに、長老は肩を竦めた。
「アレはもう一種の病気じゃ。ティーラも心底困り果てておったわ」
「へぇ~。ティーラのお父さんって(女好きの)困ったちゃんなんだー。あはははは!」
最早、笑うしかないリコ。
(ティーラ。あなた、大分苦労してるのね。めげずに頑張るのよ……ヨーク村で)
リコは心の中で、また父親に苦労するであろうティーラにエールを送った。
「リコ! そろそろ出発するぞ!」
カイルから声がかかる。
「分かった。それじゃあ、皆さん。行ってくるね」
リコが別れを告げ馬車に乗ろうとすると、オルガから待ったがかかった。
オルガは、真剣な表情でリコを見つめる。
「リコ……ここにいる皆と話し合ったのだけど、リコの傀儡石を石コロにしちゃう力。あれは女王と対決するまであまり使わない方がいいわ」
「どういうこと?」
「リコが魔族をひとりでも多く助けたい気持ちは分かる。だけどね、派手に動いて女王の耳にでも入ったらリコの命が危ない。王都に着く前に殺されてしまうわ。リコは魔族や私たちの唯一の希望なの。だから十分、気をつけて。お願いよ、リコ」
胸で手を組み懇願するオルガ。
リコはオルガの手をそっと握る。
「分かった。気をつけるね」
オルガは頷き、ニッコリ笑う。
「この街で魔族が傀儡石から解放されたっていう噂は、どんなに気をつけても流れてしまうと思うの。そこで! 嘘の情報を一緒に流して敵を攪乱しとくからね! バッチリ任せといて!」
気が強くて可憐な少女の笑顔に見送られ、リコとカイルはクスタルを後にするのであった。
「王都に行って今度は私がリコを助けたいけど、街を一刻も早く立て直さなければならないから……ごめんね」
オルガが申し訳なさそうに、スカートの裾をギュッと握る。
領主のいなくなったこのクスタルは、これからオルガを中心に街の復興を目指すことになった。
街の人たちはオルガの父を尊敬し慕っていたので、彼女ならきっとやり遂げると喜んで賛成したのである。
それになんと、リザードマンやドワーフもこの街に残り復興に協力するらしい。もちろん、ミルもだ。
それから、領主のバカ息子はというと、ちゃんと反省し真人間になるまで、ミルたちのいた地下牢に幽閉ということになったのである。
一体、いつ太陽の下に出てこられるのであろうか。
リコは、俯いたままのオルガに優しく語りかける。
「そんなこと気にしないで。オルガはこれから皆の先頭に立つんだから。頑張っていい街にしてね」
「本当にありがとう。リコ」
感謝を伝えるオルガに、リコは微笑みを返す。そして、彼女の隣にいるミルに視線を移した。
実はリコ。ミルにどうしても聞いておきたいことがあったのだ。
「ところでミル、素朴な疑問なんだけどさ。あなた、言葉の語尾にニャアはつけないの?」
ミルは「え?」と目を丸くした。
そして、笑顔でバッサリ否定する。
「ニャアなんてつけないよ! 確かに私はウェアキャットだけど……そんなのはつけたことないよ! 私はミルだニャア……ほら、変じゃん! あはははは!」
大笑いするミルの肩を、カイルがガシッと組んでリコを睨む。
「じゃあ、何か? 俺はピョンをつけろってか! リコ、俺たちをバカにしてるのか? なぁ、ミル。このオバちゃん変な奴だろう?」
「きゃははは! へーん!」
「なぁー! あっはっはっ!」
肩を組みながら笑い転げるカイルとミル。
(そんなに笑わなくてもいいじゃん。ウサ耳男のピョンはともかく、猫耳娘のニャアは心のオアシスだよ! 砂漠に咲いた一輪の花だよ! 何だよもう!)
リコはそっと拳を握り締めた。
「これこれ、何をそんなに怒っておる。今のはリコの失言じゃぞ!」
その声に振り返ると、エルフのご老体――いや、長老が苦笑いをしていた。
「長老さん、失言などと! 浪漫を馬鹿にしてはダメです!」
「浪漫とな! ニャアがか?」
リコは「その通りです」と真面目な顔で何度も頷く。
「あはははは! まったくリコには呆れるわい! あんたはどこかハルカ様に似ておるのう……っと、そうじゃ。リコに報告があったんじゃ!」
「報告ですか?」
「うむ。儂らエルフは、ヨーク村に行こうと思うての」
「ヨーク村ですか? でも旅は危険じゃ……」
長老は「それなら大丈夫じゃ!」と元領主の護衛たちを呼んだ。
「この護衛たちがな、連れて行ってくれるそうじゃ」
「はぁ?」
驚くリコを余所に、護衛たちは長老の後ろにピシッと一列に並ぶ。
そして、護衛のひとりが一歩前に出ると胸を張った。
「ご心配はご尤もです。しかし我々は心を入れ替え、長老様をお守りする所存です。リコさん、ご安心下さい。長老様を無事にヨーク村へお連れします」
「長老様って……長老さん、この人たち一体どうしたんですか?」
「何。怪我を治してやって、世間話をしておったらこうなったのじゃよ」
「はっ。長老様には、なんとお礼を言っていいやら。そして、長老様の為になるお話、我々は目が覚める思いでした。これから生きて行く道筋がはっきりと見えたのです。長老様について行こう。一生かけて恩返ししよう……と!」
護衛は熱く語った。他の護衛たちも目に涙を浮かべている。
(長老さん……一体、何をお話になったんですか? スゲー懐いてますけど……)
彼らの物凄い変わりように、若干引いたリコは、笑顔を取り繕った。
「へぇ~、そ、そうなんだ~。よ、よかったね~」
「ということで儂とラドルフは……」
長老はラドルフを探し辺りを見回す。
――因みにラドルフとはティーラの父である。
「む! はぁー。まったく、あんな所に」
呆れた声を出す長老。
その視線の先に、街の女性と楽しそうにイチャイチャ戯れるラドルフの姿があった。
「あ、あれは?」
目を丸くするリコに、長老は肩を竦めた。
「アレはもう一種の病気じゃ。ティーラも心底困り果てておったわ」
「へぇ~。ティーラのお父さんって(女好きの)困ったちゃんなんだー。あはははは!」
最早、笑うしかないリコ。
(ティーラ。あなた、大分苦労してるのね。めげずに頑張るのよ……ヨーク村で)
リコは心の中で、また父親に苦労するであろうティーラにエールを送った。
「リコ! そろそろ出発するぞ!」
カイルから声がかかる。
「分かった。それじゃあ、皆さん。行ってくるね」
リコが別れを告げ馬車に乗ろうとすると、オルガから待ったがかかった。
オルガは、真剣な表情でリコを見つめる。
「リコ……ここにいる皆と話し合ったのだけど、リコの傀儡石を石コロにしちゃう力。あれは女王と対決するまであまり使わない方がいいわ」
「どういうこと?」
「リコが魔族をひとりでも多く助けたい気持ちは分かる。だけどね、派手に動いて女王の耳にでも入ったらリコの命が危ない。王都に着く前に殺されてしまうわ。リコは魔族や私たちの唯一の希望なの。だから十分、気をつけて。お願いよ、リコ」
胸で手を組み懇願するオルガ。
リコはオルガの手をそっと握る。
「分かった。気をつけるね」
オルガは頷き、ニッコリ笑う。
「この街で魔族が傀儡石から解放されたっていう噂は、どんなに気をつけても流れてしまうと思うの。そこで! 嘘の情報を一緒に流して敵を攪乱しとくからね! バッチリ任せといて!」
気が強くて可憐な少女の笑顔に見送られ、リコとカイルはクスタルを後にするのであった。
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