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第6章 共に夢を叶えよう
50.期間限定で
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「そ、そんなこと、すぐにはできないのでは」
まさか肯定してもらえると思わなかったので、レベッカが驚いていると、
「……俺に考えがある。移動しても良いか」
「え、ええ」
食べ終わったモンブランの皿と、冷めた紅茶のティーポットを前に頷くと、クロードは片手を上げてウェイターを呼んだ。
スーツに白い手袋を着た紳士がテーブルの前まで来る。
「会計を。釣りはいらない」
注文代より多めの銀貨を渡し、ウェイターが持つ紙にライネル家のサインをしたクロードは、颯爽と立ち上がる。
深々と礼をしたウェイターの横を通り、座ったままのレベッカの手を取り立ち上がらせると、全店員が見送る中、優雅にクロードは店の扉を開けた。
一分の隙もない貴族の立ち振る舞いに、レベッカは目を丸くする。
「あ、あの、お会計半分出しますわよ」
現世の癖で、初デートで男に全額払わせる女は最悪? それとも女は服や化粧にお金がかかるんだから男が奢って当然?という永遠に結論が出ないテーマを思い出し、謙虚な女性と思ってもらいたいとレベッカが慌てて声をかける。
しかし、店を出たクロードは片眉を上げるだけだ。
「格好つけさせてくれ、エイブラム令嬢。
さ、行こうか」
少し恥ずかしそうにしているクロードが、それを隠すように歩き出した。
* * *
クロードが向かったのは、カフェから数分ほど歩いた、賑やかな商店街の一角だった。
「ここだ」
彼が指を差したところには、こじんまりとした煉瓦作りの屋根の店がある。
しかし、店内に明かりはついておらず、がらんとしている。
「なんのお店ですか?」
「ここは、何か商売を始めたい人が、一月ごとに契約し、店の場所を提供するところだ。
今はたまたま利用する人がいないようだが、少し前は若い女性が1人で数ヶ月ほどパン屋をやっていたな。
その前は年配の男性が骨董品を売っていた」
クロードは学校が休みの日は頻繁にこの辺りを散歩するらしく、周辺事情に詳しいようだ。
確かに、現代日本でも、百貨店や駅ビルの一角に、期間限定の品を売ったり、展示会をするようなマンスリーテナントをよく見る。
異世界の乙女ゲーム内にもどうやら存在するようだ。
「来週から、学園も長期連休が始まる。
ここを借りて、試しに君の服屋を出店してみるのはどうだ?」
クロードの提案に、レベッカはハッと息を呑む。
確かに、舞踏会の後は長期連休に入り、私服の攻略キャラと休日デートを楽しめるのがゲームのストーリーだった。
それと同じだというのなら、学校の授業は無いし、できるかもしれない。
「クロード様、それすごい名案ですね……!」
隣に立つ背の高いクロードを見上げ、レベッカはもしかしたら実現可能なんじゃないかと心を躍らせた。
「よかった。君の夢の話を聞いた時、ふとこの店が思い浮かんだ」
銀髪を風で揺らしながら、ボルドーのジャケットを着たクロードが告げる。
「ああ、でも来週からか……。
今から売り物のドレスを作ったとしても、間に合わないわ」
幼い頃から憧れて、専門学校で勉強し作れるようになった中世ヨーロッパ風の煌びやかなドレス。
それを作るにしても、たった1週間程度では数着できれば良い方だ。
店を借り、売り物とするほどの準備はできない。
それに関してはクロードもすぐには打開策を思いつかないのか、顎を押さえて考え込んでいる。
人通りも多い、可愛らしい外観の小さなお店は、自分の店を出すとしたら理想的なので、このチャンスを逃したくはない。
寮の自分の部屋のクローゼットの中に所狭しと置かれていて、着る出番のないドレスやワンピースのような美しい服を作って、それが似合う人たちに着て欲しいというのに。
(ん……待って。着る出番のないドレスを、誰かに着て欲しい……?)
レベッカは自分の心に浮かんだことでピンと来た。
「そっか、作る暇がないんだったら、レンタルにすればいいんだわ」
名案だと言わんばかりに人差し指を立て、レベッカは頷いた。
まさか肯定してもらえると思わなかったので、レベッカが驚いていると、
「……俺に考えがある。移動しても良いか」
「え、ええ」
食べ終わったモンブランの皿と、冷めた紅茶のティーポットを前に頷くと、クロードは片手を上げてウェイターを呼んだ。
スーツに白い手袋を着た紳士がテーブルの前まで来る。
「会計を。釣りはいらない」
注文代より多めの銀貨を渡し、ウェイターが持つ紙にライネル家のサインをしたクロードは、颯爽と立ち上がる。
深々と礼をしたウェイターの横を通り、座ったままのレベッカの手を取り立ち上がらせると、全店員が見送る中、優雅にクロードは店の扉を開けた。
一分の隙もない貴族の立ち振る舞いに、レベッカは目を丸くする。
「あ、あの、お会計半分出しますわよ」
現世の癖で、初デートで男に全額払わせる女は最悪? それとも女は服や化粧にお金がかかるんだから男が奢って当然?という永遠に結論が出ないテーマを思い出し、謙虚な女性と思ってもらいたいとレベッカが慌てて声をかける。
しかし、店を出たクロードは片眉を上げるだけだ。
「格好つけさせてくれ、エイブラム令嬢。
さ、行こうか」
少し恥ずかしそうにしているクロードが、それを隠すように歩き出した。
* * *
クロードが向かったのは、カフェから数分ほど歩いた、賑やかな商店街の一角だった。
「ここだ」
彼が指を差したところには、こじんまりとした煉瓦作りの屋根の店がある。
しかし、店内に明かりはついておらず、がらんとしている。
「なんのお店ですか?」
「ここは、何か商売を始めたい人が、一月ごとに契約し、店の場所を提供するところだ。
今はたまたま利用する人がいないようだが、少し前は若い女性が1人で数ヶ月ほどパン屋をやっていたな。
その前は年配の男性が骨董品を売っていた」
クロードは学校が休みの日は頻繁にこの辺りを散歩するらしく、周辺事情に詳しいようだ。
確かに、現代日本でも、百貨店や駅ビルの一角に、期間限定の品を売ったり、展示会をするようなマンスリーテナントをよく見る。
異世界の乙女ゲーム内にもどうやら存在するようだ。
「来週から、学園も長期連休が始まる。
ここを借りて、試しに君の服屋を出店してみるのはどうだ?」
クロードの提案に、レベッカはハッと息を呑む。
確かに、舞踏会の後は長期連休に入り、私服の攻略キャラと休日デートを楽しめるのがゲームのストーリーだった。
それと同じだというのなら、学校の授業は無いし、できるかもしれない。
「クロード様、それすごい名案ですね……!」
隣に立つ背の高いクロードを見上げ、レベッカはもしかしたら実現可能なんじゃないかと心を躍らせた。
「よかった。君の夢の話を聞いた時、ふとこの店が思い浮かんだ」
銀髪を風で揺らしながら、ボルドーのジャケットを着たクロードが告げる。
「ああ、でも来週からか……。
今から売り物のドレスを作ったとしても、間に合わないわ」
幼い頃から憧れて、専門学校で勉強し作れるようになった中世ヨーロッパ風の煌びやかなドレス。
それを作るにしても、たった1週間程度では数着できれば良い方だ。
店を借り、売り物とするほどの準備はできない。
それに関してはクロードもすぐには打開策を思いつかないのか、顎を押さえて考え込んでいる。
人通りも多い、可愛らしい外観の小さなお店は、自分の店を出すとしたら理想的なので、このチャンスを逃したくはない。
寮の自分の部屋のクローゼットの中に所狭しと置かれていて、着る出番のないドレスやワンピースのような美しい服を作って、それが似合う人たちに着て欲しいというのに。
(ん……待って。着る出番のないドレスを、誰かに着て欲しい……?)
レベッカは自分の心に浮かんだことでピンと来た。
「そっか、作る暇がないんだったら、レンタルにすればいいんだわ」
名案だと言わんばかりに人差し指を立て、レベッカは頷いた。
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