【完結】悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?

たかつじ楓*LINEマンガ連載中!

文字の大きさ
上 下
27 / 72
第3章 クロード・ライネル公爵の視点

27、皇太子の暴挙

しおりを挟む
「一体どういうことだ、ユリウス! 追放令だなんて…!」

 舞踏会は、とんでもない結末を迎えた。

 興を削がれた生徒たちは次々と解散していき、各々の寮の部屋に戻っていった。

 控え室にてユリウスと二人きりになった俺は、友人の暴挙を問いただす。


 しかし、俺の言うことなどどこ吹く風で、ユリウスは肩をすくめている。


「リリアから、レベッカの話はよく聞いていた。いつも睨まれて、やることなすこと、突っかかって来るのが怖かったって」


 小柄で華奢で、可憐なリリア。

自分の愛らしさを自覚した上で、意中の男に、気に食わない女のことを吹聴していたのだろう。


「レベッカはリリアに、貴族としての礼儀を教えていただけだ…!」


 くだらない恋の駆け引きにまんまと引っかかり、権力を自分の私利私欲のために使うユリウスが信じられなかった。

 しかし、ユリウスは俺の忠告を、煩わしいとため息をつく。


「クロード、お前……レベッカの肩を持つのか?」


 眉を寄せて目を細めたその表情は、温厚な彼が怒っている時のものだった。

 思わず息を呑む。

 沈黙を肯定と受け取ったのか、


「そうか、ならもうお前とは、金輪際口を聞かない」


 ユリウスは冷たくそう言うと、俺に背を向けて歩き出した。

 口を聞かないなんて、子供染みたセリフだ。

 しかし、たちまち俺の背中からは冷や汗がどっと溢れ出る。


『必ずやユリウス王子と仲良くなりなさい、クロード』

『それが我がライネス家のためになるのだから……!』

『学校で王子のご機嫌取るだけでいいなんて羨ましい、俺と人生変わってほしいよ』


 両親と、二人の兄たちからの呪いの言葉が脳裏を埋め尽くす。

 何かを言わなければ、と思うが、気の利いた言葉が思い浮かばない。


「俺は………」

 園庭のベンチで、濡れ衣だと泣いていたレベッカ。
 教室で他愛のない話をした。俺は自由で羨ましいと、微笑んでくれた。


「……悪かった、機嫌を直してくれ、ユリウス」


 ひねり出したのは、情けない、皇太子へのご機嫌取りの言葉。

 この状況で、自分と自分の家柄への保身しかできないのが、酷く惨めだ。

 ユリウスは振り返ると、頭を下げた俺を見つめてきた。

反省している様子がわかったのか、軽く肩を叩く。


「わかればいいんだ。
 言いすぎたよクロード、ごめんな!」

 底抜けに明るい笑顔で、俺に笑いかける。


「それより、俺とリリアの結婚式に、友人代表でスピーチを読んでくれないか? 俺たち、親友だろう?」


 もう彼の頭の中には、追放した令嬢の存在などすっかり消えていて、自分と最愛のリリアの華やかな結婚式のことでいっぱいのようだ。


「……ああ、もちろん」


ユリウスはただの友人ではない。

この国の次期皇帝は、一言でその一族を没落させるほどの権力を持っている。


彼を利用しようとした俺の浅ましさが、今まさに俺の首を絞めていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

処理中です...