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第3章 止まらぬ想い
死ぬほど好きだ
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部屋の机の上には、父と母の写真が飾られている。
もうこの世に一枚しかない、生前の二人の写真。
全てが灰に消えた過去の恋人同士。
その写真をそっと撫で、ナギリは傍らのソファに座る男を見つめた。
漆黒の服を着た背の高い男は、窮屈そうに体を丸め、ソファに座っている。
その瞳は閉じられている。
蝋人形か彫刻のように、まさにそこにあるだけと言ったような姿。
ナギリはそっとその横に座り、蝋燭立ての横顔に話しかけた。
心の内を、全て明かすように。
「蝋燭立て、起きているか。
いや、起きてなくてもいい。聞いてなくてもいい。
私は、ずっとお前の事を考えているんだ。
自分でもおかしくなってしまったのではないかと思うほど、頭の中はいつもお前の事ばかりだ。
笑えるだろう?
思い出さないように忘れた振りをしていたが、本当は一日だってお前のことなど忘れた事は無い。
なのにお前ときたら――勝手にいなくなるわ、王国が一番大変な時に傍にいないのに、今更になって現れる。
私の心をかき乱すためにこの世に生まれたといっても過言ではなかろう。
何故私をこんなに困らせる。
何故私を苦しめ、突き放すんだ。
ならばあの火事の日に、こんな人間一人、獣一匹、放っておけばよかったじゃないか。
お前は私を助けた癖に。
私の人生に、土足で入り込んだ癖に。
私の心に火をつけ、それを知っている癖に知らない振りをするお前は、ただの放火魔だ。
私がこの世で一番憎んでいるあの十字傷の男とまるで同じ存在だ。
わがままは承知だ。お前を困らせる事も分かっている。
だが――――私の気持ちも分かってほしい。
お前に出会ってから私は、どんどん醜い心になっていく。
恋は独占欲に似ているのだと初めて知った。
なあ、千年族にとって人間はただの獣で、その一生は短いかもしれないけど。
お前と一緒にいるときだけが、一番素直な自分で居られるのだ。
どうか私の傍にいて、この気持ちを抑えてくれ。
六十億の私の遺伝子が、お前を求めているんだ。お前が欲しい。
私には分かる。根拠は無いが、父が言っていた。
フィリアになる者は、会ってすぐに分かると。
全てを投げ捨ててもいいほどの存在だと理屈抜きで理解すると。
お前は昔、自分を蛍だと例えたが。
私にとっては何よりも眩しい存在だ。
お前に拒絶されたら、そこにあるのは鉛の海に溺れるような絶望しかない。
王の価値とはなんだ?
次の王を産むためだけの存在か?
私は神ではない。性別も無く、普通の人間としては生きられない。
しかし、私も人並みに恋をする権利が欲しい。
一番想っている者と添い遂げられず、何が王だ。
こんな暗い部屋で隠れるようにではなく、青空の下をお前と歩きたい。
一度しか言わない。
こんなこと、二度も言わせるな。
好きだ。お前のことが、死ぬほど」
もうこの世に一枚しかない、生前の二人の写真。
全てが灰に消えた過去の恋人同士。
その写真をそっと撫で、ナギリは傍らのソファに座る男を見つめた。
漆黒の服を着た背の高い男は、窮屈そうに体を丸め、ソファに座っている。
その瞳は閉じられている。
蝋人形か彫刻のように、まさにそこにあるだけと言ったような姿。
ナギリはそっとその横に座り、蝋燭立ての横顔に話しかけた。
心の内を、全て明かすように。
「蝋燭立て、起きているか。
いや、起きてなくてもいい。聞いてなくてもいい。
私は、ずっとお前の事を考えているんだ。
自分でもおかしくなってしまったのではないかと思うほど、頭の中はいつもお前の事ばかりだ。
笑えるだろう?
思い出さないように忘れた振りをしていたが、本当は一日だってお前のことなど忘れた事は無い。
なのにお前ときたら――勝手にいなくなるわ、王国が一番大変な時に傍にいないのに、今更になって現れる。
私の心をかき乱すためにこの世に生まれたといっても過言ではなかろう。
何故私をこんなに困らせる。
何故私を苦しめ、突き放すんだ。
ならばあの火事の日に、こんな人間一人、獣一匹、放っておけばよかったじゃないか。
お前は私を助けた癖に。
私の人生に、土足で入り込んだ癖に。
私の心に火をつけ、それを知っている癖に知らない振りをするお前は、ただの放火魔だ。
私がこの世で一番憎んでいるあの十字傷の男とまるで同じ存在だ。
わがままは承知だ。お前を困らせる事も分かっている。
だが――――私の気持ちも分かってほしい。
お前に出会ってから私は、どんどん醜い心になっていく。
恋は独占欲に似ているのだと初めて知った。
なあ、千年族にとって人間はただの獣で、その一生は短いかもしれないけど。
お前と一緒にいるときだけが、一番素直な自分で居られるのだ。
どうか私の傍にいて、この気持ちを抑えてくれ。
六十億の私の遺伝子が、お前を求めているんだ。お前が欲しい。
私には分かる。根拠は無いが、父が言っていた。
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お前は昔、自分を蛍だと例えたが。
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私は神ではない。性別も無く、普通の人間としては生きられない。
しかし、私も人並みに恋をする権利が欲しい。
一番想っている者と添い遂げられず、何が王だ。
こんな暗い部屋で隠れるようにではなく、青空の下をお前と歩きたい。
一度しか言わない。
こんなこと、二度も言わせるな。
好きだ。お前のことが、死ぬほど」
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