41 / 75
第3章 止まらぬ想い
レナードのため息
しおりを挟む
小一時間ほど経って、カティ達の食事が終わってみな自室に休みに行った後も、黒髪の男の食事は続いていた。
「青銅の蝋燭立て。動作の遅さは相変わらずだな」
やっとメインディッシュの牛肉をナイフで切って口に運びだした蝋燭立てに、足を組んだナギリは楽しそうに話しかける。
大きなテーブルに、ナギリと蝋燭立ての二人だけが座っているので妙に殺風景だ。
「レナード、お前もこいつに会うのは久しぶりだろう」
白い騎士の制服を着たレナードは後ろ手に手を組み、扉の前に立っていた。
普段は食堂の外で警護をしているのだが、蝋燭立てを同じ食卓に招きたいとナギリが我が儘を言うので、仕方なく部屋の中で一挙一動を見守っている。
「そうですね」
レナードが直立の体勢を崩さぬまま答えると、蝋燭立ての首が動き、レナードの方を見た。
二人の視線が交差する。
すると、蝋燭立てが小さく、
「その騎士には、よく叱られた」
と呟いた。
途端に、ナギリの高笑いが響き渡る。
「確かに、私が鍛練中に怪我をしてはロウが怒られていたものな。
ふふ、懐かしいものよ」
レナードはバツが悪そうに口をへの字に曲げると、しかし反論はできないのか、苦々しく忠告する。
「……公私混同はおやめください王。
他のカティや部下が動揺します」
「次期王を作るために子作りをするのが公で、命の恩人をもてなすのが私か?
おかしな話だ」
ナギリは、からかう時の癖のように腕を組み、挑発するようにレナードを見る。
近衛隊長は、一層低い声で、
「―――私は王のためならいくらでも命など差し出す覚悟ですが、胃痛で私を殺すおつもりなら、今すぐにでもお暇を頂きたいと思います。
一度きりの人生を無駄に過ごすつもりはありません」
ときっぱりと言い放つ。
彼が本気で怒っている時の顔であった。
ナギリはため息をついて、
「冗談が過ぎた。機嫌を直してくれ」
と、言うと、レナードは眉根を寄せて目を閉じたまま黙り込んでしまった。
「食べ終わったか、ロウ」
食器を置く音が聞こえたので蝋燭立ての方を見ると、小さく頷いた。
満足げにそうか、と相槌を打つ。
「突然だから部屋が用意できていない。
今夜は私の部屋で寝るといい」
席を立ちあがって蝋燭立てを自分の部屋の方へと促した。
レナードの呆れた顔は、見て見ぬふりをして。
「青銅の蝋燭立て。動作の遅さは相変わらずだな」
やっとメインディッシュの牛肉をナイフで切って口に運びだした蝋燭立てに、足を組んだナギリは楽しそうに話しかける。
大きなテーブルに、ナギリと蝋燭立ての二人だけが座っているので妙に殺風景だ。
「レナード、お前もこいつに会うのは久しぶりだろう」
白い騎士の制服を着たレナードは後ろ手に手を組み、扉の前に立っていた。
普段は食堂の外で警護をしているのだが、蝋燭立てを同じ食卓に招きたいとナギリが我が儘を言うので、仕方なく部屋の中で一挙一動を見守っている。
「そうですね」
レナードが直立の体勢を崩さぬまま答えると、蝋燭立ての首が動き、レナードの方を見た。
二人の視線が交差する。
すると、蝋燭立てが小さく、
「その騎士には、よく叱られた」
と呟いた。
途端に、ナギリの高笑いが響き渡る。
「確かに、私が鍛練中に怪我をしてはロウが怒られていたものな。
ふふ、懐かしいものよ」
レナードはバツが悪そうに口をへの字に曲げると、しかし反論はできないのか、苦々しく忠告する。
「……公私混同はおやめください王。
他のカティや部下が動揺します」
「次期王を作るために子作りをするのが公で、命の恩人をもてなすのが私か?
おかしな話だ」
ナギリは、からかう時の癖のように腕を組み、挑発するようにレナードを見る。
近衛隊長は、一層低い声で、
「―――私は王のためならいくらでも命など差し出す覚悟ですが、胃痛で私を殺すおつもりなら、今すぐにでもお暇を頂きたいと思います。
一度きりの人生を無駄に過ごすつもりはありません」
ときっぱりと言い放つ。
彼が本気で怒っている時の顔であった。
ナギリはため息をついて、
「冗談が過ぎた。機嫌を直してくれ」
と、言うと、レナードは眉根を寄せて目を閉じたまま黙り込んでしまった。
「食べ終わったか、ロウ」
食器を置く音が聞こえたので蝋燭立ての方を見ると、小さく頷いた。
満足げにそうか、と相槌を打つ。
「突然だから部屋が用意できていない。
今夜は私の部屋で寝るといい」
席を立ちあがって蝋燭立てを自分の部屋の方へと促した。
レナードの呆れた顔は、見て見ぬふりをして。
0
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川パナ
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
指導係は捕食者でした
でみず
BL
新入社員の氷鷹(ひだか)は、強面で寡黙な先輩・獅堂(しどう)のもとで研修を受けることになり、毎日緊張しながら業務をこなしていた。厳しい指導に怯えながらも、彼の的確なアドバイスに助けられ、少しずつ成長を実感していく。しかしある日、退社後に突然食事に誘われ、予想もしなかった告白を受ける。動揺しながらも彼との時間を重ねるうちに、氷鷹は獅堂の不器用な優しさに触れ、次第に恐怖とは異なる感情を抱くようになる。やがて二人の関係は、秘密のキスと触れ合いを交わすものへと変化していく。冷徹な猛獣のような男に捕らえられ、臆病な草食動物のように縮こまっていた氷鷹は、やがてその腕の中で溶かされるのだった――。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。
狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。
表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。
権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は?
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
【注意】※印は性的表現有ります
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
婚約破棄されて森に捨てられたら、フェンリルの長に一目惚れされたよ
ミクリ21 (新)
BL
婚約破棄されて森に捨てられてしまったバジル・ハラルド。
バジルはフェンリルの長ルディガー・シュヴァに一目惚れされて、フェンリルの村で暮らすことになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる