8 / 18
第2章
8.魔力に味がある?
しおりを挟む
朝からずっと問題児、ローランの動向をクロエは観察していた。
授業中は、満腹になった眠気が襲ってきたのか、机に突っ伏して二限が終わるまですやすや居眠りをこいているし、移動教室に向かう途中でまたすれ違いざまの後輩の魔力を試食する。
昼休み、食堂では種族に合わせた食事が提供される。
隣に座ろうとローランに誘われたクロエは、一般的なパンとスープの配膳を口に運んでいたが、ローランは持参した輝く魔法石の魔力を吸収している。
キラキラと虹色に輝いていた魔法石が、彼が魔力を「食べた」後は、ただの真っ黒な鉱石に変わってしまう。
「はあ、腹八分目なんだよなぁ、デザートが欲しいなぁ」
と独り言を言ってローランはクラスメイトを見回して物色し始める。
「逃げろ、また吸われるぞ!」
「倒れて午後の授業聞けなかったら単位がやばいんだよ!」
それが合図だと言わんばかりに、食堂にいた者たちは食事をしている手を止め、急いで廊下に出たり窓から中庭に飛び降りている。
まるで蜘蛛の子を散らすかのように、学生たちは散り散りに食堂から消えてしまう。
残ったのは委員長の四人とクロエだけだ。
ギルバードは早くも食事を終えて椅子にふんぞり返ってイビキをかいて寝ているし、端の席のオスカーは、自分の周辺に魔力のシールドを貼り、誰も近づけないようにして静かに本を読んでいる。
えーと、と辺りを見渡して都合の良い魔力を吸えそうな相手がいないことを確認するローラン。
「ねえお願い、レヴィン、少しだけいいから食べさせて?」
「またですか……。ひと吸いだけですよ」
どうやら仲が良いレヴィンが、彼の昼食のデザート担当のようだ。
レヴィンが嫌そうに自分の右手を差し出すと、そこには拳ほどの大きさの煌めく魔力の玉が乗っている。
自分の魔力を取り出し、食べやすいように球状に固めるだけでも、その辺の悪魔にとっては高等技術なのだが、レヴィンはそつなくこなしてしまった。
「はい、いただきまーす!」
ローランが言うと、口を大きく開けて一気にその魔力の玉を吸い込んでしまう。
「うん、なめらかでおいしい!」
舌なめずりをし、ローランは満足そうにご馳走さま、と 両手を合わせていた。
「魔力にも味があるんですか?」
クロエが不思議に思って尋ねると、ローランは深く頷いた。
「うん、魔力にはその人の性格や素質が反映するんだろうね。
レヴィンのはなんていうか、繊細な味? なんだよ。
ギルバードのを前に食べたけど、獣臭くて味が濃くてめっちゃまずかった! しかも食べたあとぶん殴られた」
「なんか納得ですね」
聞こえたらまた殴られますよ、とレヴィンが食堂の机で居眠りをこいているギルバードに聞こえないように声をひそめると、ローランもクロエを見ながら、シーと笑いかけてきた。
(……魔力の味を食べわけ、無尽蔵に吸えるピクシー、ね……)
クロエは、目の前にいる問題児のローランを見つめ、彼の可能性について思案していた。
授業中は、満腹になった眠気が襲ってきたのか、机に突っ伏して二限が終わるまですやすや居眠りをこいているし、移動教室に向かう途中でまたすれ違いざまの後輩の魔力を試食する。
昼休み、食堂では種族に合わせた食事が提供される。
隣に座ろうとローランに誘われたクロエは、一般的なパンとスープの配膳を口に運んでいたが、ローランは持参した輝く魔法石の魔力を吸収している。
キラキラと虹色に輝いていた魔法石が、彼が魔力を「食べた」後は、ただの真っ黒な鉱石に変わってしまう。
「はあ、腹八分目なんだよなぁ、デザートが欲しいなぁ」
と独り言を言ってローランはクラスメイトを見回して物色し始める。
「逃げろ、また吸われるぞ!」
「倒れて午後の授業聞けなかったら単位がやばいんだよ!」
それが合図だと言わんばかりに、食堂にいた者たちは食事をしている手を止め、急いで廊下に出たり窓から中庭に飛び降りている。
まるで蜘蛛の子を散らすかのように、学生たちは散り散りに食堂から消えてしまう。
残ったのは委員長の四人とクロエだけだ。
ギルバードは早くも食事を終えて椅子にふんぞり返ってイビキをかいて寝ているし、端の席のオスカーは、自分の周辺に魔力のシールドを貼り、誰も近づけないようにして静かに本を読んでいる。
えーと、と辺りを見渡して都合の良い魔力を吸えそうな相手がいないことを確認するローラン。
「ねえお願い、レヴィン、少しだけいいから食べさせて?」
「またですか……。ひと吸いだけですよ」
どうやら仲が良いレヴィンが、彼の昼食のデザート担当のようだ。
レヴィンが嫌そうに自分の右手を差し出すと、そこには拳ほどの大きさの煌めく魔力の玉が乗っている。
自分の魔力を取り出し、食べやすいように球状に固めるだけでも、その辺の悪魔にとっては高等技術なのだが、レヴィンはそつなくこなしてしまった。
「はい、いただきまーす!」
ローランが言うと、口を大きく開けて一気にその魔力の玉を吸い込んでしまう。
「うん、なめらかでおいしい!」
舌なめずりをし、ローランは満足そうにご馳走さま、と 両手を合わせていた。
「魔力にも味があるんですか?」
クロエが不思議に思って尋ねると、ローランは深く頷いた。
「うん、魔力にはその人の性格や素質が反映するんだろうね。
レヴィンのはなんていうか、繊細な味? なんだよ。
ギルバードのを前に食べたけど、獣臭くて味が濃くてめっちゃまずかった! しかも食べたあとぶん殴られた」
「なんか納得ですね」
聞こえたらまた殴られますよ、とレヴィンが食堂の机で居眠りをこいているギルバードに聞こえないように声をひそめると、ローランもクロエを見ながら、シーと笑いかけてきた。
(……魔力の味を食べわけ、無尽蔵に吸えるピクシー、ね……)
クロエは、目の前にいる問題児のローランを見つめ、彼の可能性について思案していた。
10
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい
緋影 ナヅキ
恋愛
男女比が5:1、一妻多夫が当たり前な世界。
前世、大災害により高校1年生(16歳)で死亡した相模ほのか(サガミ ホノカ)だった記憶のある公爵令嬢アンジュ=リーノ=エルドラードは、そんな世界に転生した。
記憶と生来の性格もあってか、基本心優しい努力家な少女に育った。前世、若くして死んでしまったほのかの分も人生を楽しみたいのだが…
双子の兄に、未来の騎士団長、隠れヤンデレな司書、更には第2王子まで…!ちょっ、なんでコッチ来るの?!
という風になる(予定の)、ご都合主義合法逆ハーレムファンタジー開幕です!
*上記のようになるまで、かなり時間(話)がかかります。30,000文字いってもまだまだ新たな婚約者が出てきません。何故こうなった…
*腐女子(親友)が出てきます。苦手な方は自衛して下さい。忠告はしたので、文句は受け付けません。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
この作品は『野いちご』『エブリスタ』でも投稿しています。
作者学生のため、カタツムリ更新です。文才皆無なので、あまり期待しないで下さい。
*表紙は ぽやぽやばぶちゃんメーカー で作ったアンジュ(幼少期)イメージです。
メーカーは下記のリンク⇓
https://picrew.me/ja/image_maker/11529
*うわぁぁーっ!!お気に入り登録100ありがとうございます! 2022/10/15
*お気に入り登録208ありがとうございます!2023/03/16
*お気に入り登録300ありがとうございます!2023/05/07
*教会➂➃の属性の部分をいくつか修正しました。作者である僕ですら意味分からないのもあったので…w 2023/04/25
*お気に入り登録400ありがとうございます!2023/07/15
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
6年間姿を消していたら、ヤンデレ幼馴染達からの愛情が限界突破していたようです~聖女は監禁・心中ルートを回避したい~
皇 翼
恋愛
グレシュタット王国の第一王女にして、この世界の聖女に選定されたロザリア=テンペラスト。昔から魔法とも魔術とも異なる不思議な力を持っていた彼女は初潮を迎えた12歳のある日、とある未来を視る。
それは、彼女の18歳の誕生日を祝う夜会にて。襲撃を受け、そのまま死亡する。そしてその『死』が原因でグレシュタットとガリレアン、コルレア3国間で争いの火種が生まれ、戦争に発展する――という恐ろしいものだった。
それらを視たロザリアは幼い身で決意することになる。自分の未来の死を回避するため、そしてついでに3国で勃発する戦争を阻止するため、行動することを。
「お父様、私は明日死にます!」
「ロザリア!!?」
しかしその選択は別の意味で地獄を産み出していた。ヤンデレ地獄を作り出していたのだ。後々後悔するとも知らず、彼女は自分の道を歩み続ける。
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
【本編完結】副団長様に愛されすぎてヤンデレられるモブは私です。
白霧雪。
恋愛
王国騎士団副団長直属秘書官――それが、サーシャの肩書きだった。上官で、幼馴染のラインハルトに淡い恋をするサーシャ。だが、ラインハルトに聖女からの釣書が届き、恋を諦めるために辞表を提出する。――が、辞表は目の前で破かれ、ラインハルトの凶悪なまでの愛を知る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる