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第15話 終末
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「被告は権力争いに明け暮れ、シスターダレンを身籠っていた第二王妃に毒を盛り死に至らせ、産まれたシスターダレンは永久に光を失った。その非道な行いには相応の報い受けるべきである。サラシン救国国民戦線臨時裁判所は全会一致で合意した判決を述べる。被告ヤルガ・アドマ・ファヒールの全財産は没収。被告の皮を剥ぎ熱した油に沈め煮殺刑に処す」
「い、いやああーっ! こんな裁判は無効よーっ!」
アフダルとライラの母親であるヤルガ王妃は即席の裁判所で有罪判決を言い渡された。
「どうだ? 君の要望通り裁判を開いたぞ。アサシンとして帝国に雇われていたダークエルフが全て話したから証拠も揃ってる。君の母親はヤルガ王妃に毒殺されたんだ。そして君の目から光を奪った大罪人だ。これで少しでも君の気が晴れると良いんだが」
「ジョン、こんな酷たらしい処刑法になるのなら裁判を開かなかった方が良かったかもと複雑な気分。でも、私の母が死んだ理由がわかって少し嬉しいわ」
「君のその目は治せないのか? 奇跡の力でどうにかするとか」
「私が使える回復の奇跡というのは先天性の障碍には効かないの。怪我や病気で後天的に視力を失った場合は回復できるけど」
「奇跡も万能ってわけではないのか。一つ考えがある。俺の国では医学が進歩していてな、すべての生命体はディーエネエーという設計図に基づいていることが判明している。両親や兄弟姉妹はその設計図が似ており、体の臓器を交換することが比較的容易なんだ。健康な眼球と取り替えてから回復の奇跡を使えば後天的に怪我をした扱いになるんじゃないか」
「おぞましい考えね。はらわたを血を分けた肉親へ提供するということでしょ。異世界の黒魔術は怖いぐらいに進歩してるわね」
「黒魔術ではない医学だ」
ジョンの提案で黒魔術の実験に協力する気があるか私の妹に確認することになった。今、私があの二人に会うとその場で呪い殺してしまいそうだから彼に臓器提供の交渉を丸投げした。
「絶対に嫌! ダリヤに私の目をあげるだなんて! 死んだ方がマシだわ!」
「ライラ、お前の姉に両目を提供すればお前達が俺の婚約者を殺害しようとしたことの罪を減刑することぐらい考えてやるのに。死霊教会の奇跡の力で痛みもなく目を提供できるはずだ。たぶん」
「た、頼むよライラ。イアブーユは強い。俺も革命に巻き込まれて捕まってしまった。ここは彼らに恩を売っておいたほうが良い」
「はあ!? ジハール、あなたは私の夫でしょ! 私の言うことだけ聞いてれば良いのよ! 邪教の死霊の奇跡なんて嫌! 天国に行けなくなるわ! ダリヤなんて永久に目が見えなければ良いのよ!」
「ほう、よく言ったな。俺の婚約者にそう伝えよう」
「ま、待ってくれ! ライラ! 俺はお前と一緒に死にたくない! 頼むから俺を巻き込まないでくれ!」
「なんですって!? 私のこと愛してたんじゃないの!?」
「はぁ……、まったくお似合いの二人だ……」
ライラは私に臓器提供するぐらいなら死んだ方がマシと答えたらしい。
「本当にあいつらは救いようがないな」
「ところでジョン。私がいつの間にか婚約者扱いになってるけど修道女とは結婚できないからね?」
「まあ、死んだ奴らのことは忘れよう。ダレン、この瓶はなんだと思う? 氷の魔法がかかっているんだ」
「えっ、ライラとジハール王子はもう処刑されたの? あなた、息をするように人を殺すわね」
「ああ、王族殺害を企て者は火刑か車輪轢きの刑だ。一応裁判もやったさ。それで君の妹の目をタダでカラスやハゲタカに食わせてやるのも勿体ないと思ってな。この瓶に冷凍保存しておいたんだ」
「うっ……。ごめんなさい、ちょっと気分が悪くて死にそうだわ」
「おいおい、君はすでに死んでいるだろ?」
死霊教会と新生サラシン帝国の明るい未来のために地下牢獄のさらに深部にある地下墳墓で黒魔術の実験を行うことになった。
「この糸車は呪いの力で一時的に人を昏睡させることができる。それで一切の恐怖や痛みがなく手術ができるというわけだ。西の国へ遠征した時の戦利品で、何でも妖精か魔女が作ったものらしい。まさか実在するとは思わなかった」
「それ大丈夫なの? 永久に眠ったままにならない?」
「ああ、大丈夫だ。ちゃんと覚醒させる方法も知っている」
「それはどうするの?」
「それはだな、えーっと……、君は心配しなくて良い。俺を信じてくれ。ほら、この糸車を少し触ってみろ。魔法の糸車だぞ」
彼は言葉を詰まらせたが、今更何が起きても怖くはない。彼を信じてみることにした。
「ふーん、魔法の糸車ね。なんだかうさんくさいけど。痛っ、何か指に刺さった……、うーん……、急に眠気が……、スー……、スー……」
糸車に指を刺されて私は深い眠りに落ちた。気がつくとジョンが私を呼んでいる。
「……レン。ダレン。聞こえるか。……おかしい、しくじったか? 起きてくれ、頼む」
「聞こえてるわ。私寝てたの? 急に意識が飛んで」
「良かった。何かミスったと思ったぞ。君の目を取り替えた。素人仕事だからグチャグチャだが回復の奇跡を使えば大丈夫なはずだ」
「はいはい。死霊教会奇跡『回復』」
私は自分自身の目に回復の奇跡を唱えた。段々と暗闇が明るくなってくる。
「どうだ?」
「眩しくて涙が溢れて目を開けてられないわ」
「そうか、眩しいのか。それは良い。徐々になれるさ」
私は目を両手で覆いながら片目を薄っすらと開けて、指の間から彼を見た。
「ジョン、あなたの目の色は、それは何色というのかしら。きれいな色ね」
──完──
「い、いやああーっ! こんな裁判は無効よーっ!」
アフダルとライラの母親であるヤルガ王妃は即席の裁判所で有罪判決を言い渡された。
「どうだ? 君の要望通り裁判を開いたぞ。アサシンとして帝国に雇われていたダークエルフが全て話したから証拠も揃ってる。君の母親はヤルガ王妃に毒殺されたんだ。そして君の目から光を奪った大罪人だ。これで少しでも君の気が晴れると良いんだが」
「ジョン、こんな酷たらしい処刑法になるのなら裁判を開かなかった方が良かったかもと複雑な気分。でも、私の母が死んだ理由がわかって少し嬉しいわ」
「君のその目は治せないのか? 奇跡の力でどうにかするとか」
「私が使える回復の奇跡というのは先天性の障碍には効かないの。怪我や病気で後天的に視力を失った場合は回復できるけど」
「奇跡も万能ってわけではないのか。一つ考えがある。俺の国では医学が進歩していてな、すべての生命体はディーエネエーという設計図に基づいていることが判明している。両親や兄弟姉妹はその設計図が似ており、体の臓器を交換することが比較的容易なんだ。健康な眼球と取り替えてから回復の奇跡を使えば後天的に怪我をした扱いになるんじゃないか」
「おぞましい考えね。はらわたを血を分けた肉親へ提供するということでしょ。異世界の黒魔術は怖いぐらいに進歩してるわね」
「黒魔術ではない医学だ」
ジョンの提案で黒魔術の実験に協力する気があるか私の妹に確認することになった。今、私があの二人に会うとその場で呪い殺してしまいそうだから彼に臓器提供の交渉を丸投げした。
「絶対に嫌! ダリヤに私の目をあげるだなんて! 死んだ方がマシだわ!」
「ライラ、お前の姉に両目を提供すればお前達が俺の婚約者を殺害しようとしたことの罪を減刑することぐらい考えてやるのに。死霊教会の奇跡の力で痛みもなく目を提供できるはずだ。たぶん」
「た、頼むよライラ。イアブーユは強い。俺も革命に巻き込まれて捕まってしまった。ここは彼らに恩を売っておいたほうが良い」
「はあ!? ジハール、あなたは私の夫でしょ! 私の言うことだけ聞いてれば良いのよ! 邪教の死霊の奇跡なんて嫌! 天国に行けなくなるわ! ダリヤなんて永久に目が見えなければ良いのよ!」
「ほう、よく言ったな。俺の婚約者にそう伝えよう」
「ま、待ってくれ! ライラ! 俺はお前と一緒に死にたくない! 頼むから俺を巻き込まないでくれ!」
「なんですって!? 私のこと愛してたんじゃないの!?」
「はぁ……、まったくお似合いの二人だ……」
ライラは私に臓器提供するぐらいなら死んだ方がマシと答えたらしい。
「本当にあいつらは救いようがないな」
「ところでジョン。私がいつの間にか婚約者扱いになってるけど修道女とは結婚できないからね?」
「まあ、死んだ奴らのことは忘れよう。ダレン、この瓶はなんだと思う? 氷の魔法がかかっているんだ」
「えっ、ライラとジハール王子はもう処刑されたの? あなた、息をするように人を殺すわね」
「ああ、王族殺害を企て者は火刑か車輪轢きの刑だ。一応裁判もやったさ。それで君の妹の目をタダでカラスやハゲタカに食わせてやるのも勿体ないと思ってな。この瓶に冷凍保存しておいたんだ」
「うっ……。ごめんなさい、ちょっと気分が悪くて死にそうだわ」
「おいおい、君はすでに死んでいるだろ?」
死霊教会と新生サラシン帝国の明るい未来のために地下牢獄のさらに深部にある地下墳墓で黒魔術の実験を行うことになった。
「この糸車は呪いの力で一時的に人を昏睡させることができる。それで一切の恐怖や痛みがなく手術ができるというわけだ。西の国へ遠征した時の戦利品で、何でも妖精か魔女が作ったものらしい。まさか実在するとは思わなかった」
「それ大丈夫なの? 永久に眠ったままにならない?」
「ああ、大丈夫だ。ちゃんと覚醒させる方法も知っている」
「それはどうするの?」
「それはだな、えーっと……、君は心配しなくて良い。俺を信じてくれ。ほら、この糸車を少し触ってみろ。魔法の糸車だぞ」
彼は言葉を詰まらせたが、今更何が起きても怖くはない。彼を信じてみることにした。
「ふーん、魔法の糸車ね。なんだかうさんくさいけど。痛っ、何か指に刺さった……、うーん……、急に眠気が……、スー……、スー……」
糸車に指を刺されて私は深い眠りに落ちた。気がつくとジョンが私を呼んでいる。
「……レン。ダレン。聞こえるか。……おかしい、しくじったか? 起きてくれ、頼む」
「聞こえてるわ。私寝てたの? 急に意識が飛んで」
「良かった。何かミスったと思ったぞ。君の目を取り替えた。素人仕事だからグチャグチャだが回復の奇跡を使えば大丈夫なはずだ」
「はいはい。死霊教会奇跡『回復』」
私は自分自身の目に回復の奇跡を唱えた。段々と暗闇が明るくなってくる。
「どうだ?」
「眩しくて涙が溢れて目を開けてられないわ」
「そうか、眩しいのか。それは良い。徐々になれるさ」
私は目を両手で覆いながら片目を薄っすらと開けて、指の間から彼を見た。
「ジョン、あなたの目の色は、それは何色というのかしら。きれいな色ね」
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