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第7話【保健】死んでからの健康法
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「私の目は見えませんが集中すれば流れる気で辺りはわかります。魔女様は豊かな生気をお持ちですね。美しく輝いている素晴らしい生気なのでよくわかります。食べちゃいぐらい、なーんて、ウフフ、冗談です」
私の顔や体を撫で回しながら異世界のジョークを披露してくれる修道女のダレン。気というと中国の太極拳みたいなものかな。
「気がわかるだなんて凄いよね。どんな修業を積むと見えるようになるの?」
「朝晩の祈りと鍛錬を積めばいつの日か生気を見ることができますよ。魔女様もどうぞご一緒に。手とり足とり教えますので私に身と心を委ねてください。ハァハァ……!」
「まずはお手本見せてくれない? 私も真似するから」
「そ、そうですね。僭越ながら祈りのポーズをお見せしましょう。……ああ、魔女様に見つめられるなんて、もうたまらないわ」
そう言うと修道女はゆらりと片脚で立ち片手を垂直に、もう片方を水平に伸ばしながら独特の祈りの舞を見せてくれた。うん、やっぱりヨガか太極拳。
「こうかな? このポーズをすると何か超パワーで気を見るスキルを獲得できる感じ?」
「あ、魔女様、恐れながら手が反対です。そうです。良いですね、美しい姿勢です。ゆっくりと深呼吸してください。この祈りの踊りは気の流れを効率よく受けとるためのものです。マジックパワーがお腹の辺りに溜まってきたはずです」
「へぇー、アンテナ的役割なのかな」
「あんてなが何かはわかりませんが、神託を受けた聖職者なら毎朝この姿勢でいればまずは太陽からの声を聞けるようになります。そして気の流れをも読めるように──」
「ダレンは青白い気の色をしてるね」
この奇妙な姿勢で目を瞑って修道女を見ると確かに闇の中に青白く人の姿が見えた。
「えっ!? もう気を読めるのですか!? さすがは異界の魔女様です!」
興奮した様子で私の手を取る盲目の修道女。確かにおぼろげな姿はわかるけど目が見えないって大変だなあ。
「目が見えないと本とか読めないよね」
「聖インクで書かれた聖典なら読めますよ。聖なる力が込められているので気を読む要領で文字を見ることができます。面白い物語を一つ語りましょう」
修道女は聖なるインクというもので書かれた聖典の物語を読み上げてくれた。
『魔王城から西に向かった地に人間達が聖なる丘と呼ぶ場所がある。伝説によれば天から星が落ちてきたという。もし本当に星がおちてきたなら巨大な穴となるはずだ。だからこれは誇張された伝説に過ぎない。』
「これはどういう意味の話?」
「天界から何か投下されたということですか?」
「ええ、人間達より先に魔王軍がその丘に到着して調査しました。そして黒い箱を見つけました。それが死霊教会に聖骸物として納められました」
「はー、なんだか壮大なストーリーになる予感」
私は冒険に期待をふくらませた。どうやら天使も物語が気になるらしい、修道女に尋ねた。
「シスター、もっと詳しく、その黒い箱には何が入っていたのですか?」
「呪術書がありました。なんて書いてあるのかわかりませんでしたが天使様と魔女様ならわかるでしょう。持ってきましょう」
彼女は見習い修道女の子に本のようなものを持ってこさせた。
「ご覧ください。これが天か地より授かりし書物です」
「これは興味深いです。魔法少女用の古い呪術書ですね。いつの頃のものかはわかりませんが魔法少女であるカグヤなら使えるはずです。なるほど、このように支給されるのですね」
「私にも見せて。えっと、『ニトロセルロース』? これが魔法の呪文? というか私知らない文字を読めてしまうね。これが魔法少女スキル?」
一見すると漢字みたいだけど違う言語で書かれていた。でも読めてしまう。
「そうです。魔法少女はどんな言葉や文字を持つ人とも心を通わせられるでしょう。 『ニトロセルロース』なる魔法は異世界から来た魔法少女用の魔法なので私にもよくわかりません。とりあえす使ってみると良いでしょう」
天使も異世界での魔法少女システムにはそこまで熟知していないようだ。彼女と一緒に成長したい。
「ということは私もついに魔法が使えるようになるの?」
「そのはずです。ただ、魔法少女は変身しないと魔力を完全には行使できないので変身方法を見つける必要があります」
「えっ、アズラエルが何か変身アイテムくれる展開だと思ってたんだけど」
「私も上から何も聞いてませんので追って天界から指示があるか何か地上でヒントがあるかも知れません」
「うーん、魔法少女ものだと思ったら異世界冒険ものだったのか」
「きっと天から啓示がありますよ。一つ提案なのですが魔王様の魔力を盗んで、失礼、借りて魔法の発動を試してみてはいかがでしょう?」
異世界魔法少女の勝手がわからない私達は修道女に励まされた。いや待て、魔力ってレンタルできるんだ。
「ダレン、今の話詳しくお願い」
私の顔や体を撫で回しながら異世界のジョークを披露してくれる修道女のダレン。気というと中国の太極拳みたいなものかな。
「気がわかるだなんて凄いよね。どんな修業を積むと見えるようになるの?」
「朝晩の祈りと鍛錬を積めばいつの日か生気を見ることができますよ。魔女様もどうぞご一緒に。手とり足とり教えますので私に身と心を委ねてください。ハァハァ……!」
「まずはお手本見せてくれない? 私も真似するから」
「そ、そうですね。僭越ながら祈りのポーズをお見せしましょう。……ああ、魔女様に見つめられるなんて、もうたまらないわ」
そう言うと修道女はゆらりと片脚で立ち片手を垂直に、もう片方を水平に伸ばしながら独特の祈りの舞を見せてくれた。うん、やっぱりヨガか太極拳。
「こうかな? このポーズをすると何か超パワーで気を見るスキルを獲得できる感じ?」
「あ、魔女様、恐れながら手が反対です。そうです。良いですね、美しい姿勢です。ゆっくりと深呼吸してください。この祈りの踊りは気の流れを効率よく受けとるためのものです。マジックパワーがお腹の辺りに溜まってきたはずです」
「へぇー、アンテナ的役割なのかな」
「あんてなが何かはわかりませんが、神託を受けた聖職者なら毎朝この姿勢でいればまずは太陽からの声を聞けるようになります。そして気の流れをも読めるように──」
「ダレンは青白い気の色をしてるね」
この奇妙な姿勢で目を瞑って修道女を見ると確かに闇の中に青白く人の姿が見えた。
「えっ!? もう気を読めるのですか!? さすがは異界の魔女様です!」
興奮した様子で私の手を取る盲目の修道女。確かにおぼろげな姿はわかるけど目が見えないって大変だなあ。
「目が見えないと本とか読めないよね」
「聖インクで書かれた聖典なら読めますよ。聖なる力が込められているので気を読む要領で文字を見ることができます。面白い物語を一つ語りましょう」
修道女は聖なるインクというもので書かれた聖典の物語を読み上げてくれた。
『魔王城から西に向かった地に人間達が聖なる丘と呼ぶ場所がある。伝説によれば天から星が落ちてきたという。もし本当に星がおちてきたなら巨大な穴となるはずだ。だからこれは誇張された伝説に過ぎない。』
「これはどういう意味の話?」
「天界から何か投下されたということですか?」
「ええ、人間達より先に魔王軍がその丘に到着して調査しました。そして黒い箱を見つけました。それが死霊教会に聖骸物として納められました」
「はー、なんだか壮大なストーリーになる予感」
私は冒険に期待をふくらませた。どうやら天使も物語が気になるらしい、修道女に尋ねた。
「シスター、もっと詳しく、その黒い箱には何が入っていたのですか?」
「呪術書がありました。なんて書いてあるのかわかりませんでしたが天使様と魔女様ならわかるでしょう。持ってきましょう」
彼女は見習い修道女の子に本のようなものを持ってこさせた。
「ご覧ください。これが天か地より授かりし書物です」
「これは興味深いです。魔法少女用の古い呪術書ですね。いつの頃のものかはわかりませんが魔法少女であるカグヤなら使えるはずです。なるほど、このように支給されるのですね」
「私にも見せて。えっと、『ニトロセルロース』? これが魔法の呪文? というか私知らない文字を読めてしまうね。これが魔法少女スキル?」
一見すると漢字みたいだけど違う言語で書かれていた。でも読めてしまう。
「そうです。魔法少女はどんな言葉や文字を持つ人とも心を通わせられるでしょう。 『ニトロセルロース』なる魔法は異世界から来た魔法少女用の魔法なので私にもよくわかりません。とりあえす使ってみると良いでしょう」
天使も異世界での魔法少女システムにはそこまで熟知していないようだ。彼女と一緒に成長したい。
「ということは私もついに魔法が使えるようになるの?」
「そのはずです。ただ、魔法少女は変身しないと魔力を完全には行使できないので変身方法を見つける必要があります」
「えっ、アズラエルが何か変身アイテムくれる展開だと思ってたんだけど」
「私も上から何も聞いてませんので追って天界から指示があるか何か地上でヒントがあるかも知れません」
「うーん、魔法少女ものだと思ったら異世界冒険ものだったのか」
「きっと天から啓示がありますよ。一つ提案なのですが魔王様の魔力を盗んで、失礼、借りて魔法の発動を試してみてはいかがでしょう?」
異世界魔法少女の勝手がわからない私達は修道女に励まされた。いや待て、魔力ってレンタルできるんだ。
「ダレン、今の話詳しくお願い」
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