【完結】爆薬聖女トリニトロトルエンの福音書

中島マリア

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第2話【急募】世界を救ってくれる魔法少女。どうする?応募する?

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「『†ヘル天使†』とは遊戯における仮の名、私の真の姿は天使のアズラエルです」
 鳥人間かと思ったが私の友達は天使だったらしい。
「天使さんって本当にいたんだ! えっと握手しても良いですか?」
「ええ、どうぞ」
 天使さんって冷え性かな。手が冷たい。
「そっかー。私天国に行けるんだ。何もしてない人生だったのに」
「何もしてないなんてことはありませんよ、輝夜さん。あなたは病気にめげずいつも笑い、多くの人を笑顔にしました。この私もその一人です」
 ヘル天使さん、いや、アズラエルさんはさっきから無表情だけど本当に笑顔になったのかな。天使さんって人間と違って感情が薄いのかも知れない。
「天国ってどういうところなの?」
「苦しみも悲しみもお腹のすくこともないところです」
「スマホは持っていける?」
「残念ながら」
 がーんだな。天国って意外と暇そう。
「ん? アズラエルさんは天使なのにどうやってあの着せ替えゲームプレイしてたの?」
「まあ、それは置いといて。輝夜さん何か叶えてほしい願いはありませんか?可能な限り叶えますよ。なので私が輝夜さんと生前会ってたことは二人だけのトップシークレットにしてください」
「い、いや、アズラエルさん。別に脅してるつもりはないから誤解しないで。もし、本当はゲームプレイ禁止なら黙っておくからさ」
「わかってます。遠慮しないでください。限定アイテムを喜捨した聖女の輝夜さんへ個人的にお礼がしたいのです」
 それなら気になってた願いについて聞いてみよう。最近の世間の流行りに乗りたい。
「異世界転生がしたいです。世界を救ってみたい志望です」
「異世界転生ですか? はっきり申し上げますが過酷ですよ。あなたの世界に伝わる神話や昔話の勇者に憧れた屈強な男性が意気揚々と異世界へ転生したが、こんなはずではなかったと重いホームシックになり、モンスターがいない平和な故郷へ帰りたいと天へ泣いて懇願するので私達も対応に苦慮してます。悪いことは言いません。考えを改めた方が良いと思います」
 期待とは真逆に異世界転生の現実を教えられた。
「そうなんだ……。現実は結構シビアなんだ……」
「他に願いはありませんか?」
「それなら、地球で世界を救ってみたいなーっと。えっと……、ま、魔法少女ってなれます?」
 魔法少女だなんて異世界転生より恥ずかしい。だが思い切って言ってしまった。
「魔法少女は生きている方のみがなれます。輝夜さんはすでに死亡されてますので残念ながら。もし生前にお会いできれば魔法少女担当天使を紹介したのですか。至らず申し訳ありません」
 うーん残念と心の中でちょっと落ち込む。あっ、魔法少女担当の天使さんもいるんだ。
「大丈夫大丈夫、ちょっと言ってみただけだから。気にしないで。それに不健康な一生だったから激しい運動は無理だったし。アハハ」
「……ではこうしましょうか。異世界で魔法少女に転生するのは許容できますか?」
 私に気を使って天使のアズラエルさんは別案を提案してくれた。
「えっ? そういうことできるの?」
「はい。条件に該当する転生先を探しましょう」
「お願いします!」
 夢が同時に叶いそう。言ってみるもんだ。

 天使さんはどこからか白い電話を取り出した。ボタンが無くて横にハンドルが付いてる珍しいタイプ。それを天使さんが回す。しばらくするとジリリリと鳴り受話器を取った。
「もしもし、大天使のアズラエルですが、転生管理局に繋いでください」
「私です。実は異世界に転生して魔法少女がしたいという聖女の方がいまして。ええ、そうです。聖女です」
 私のこと聖女だって。なんかくすぐったい。
「はい、はい、え……、魔法少女だと検索結果0ですか? それであれば、古い用語の魔女っ子で検索してみてください。それでも0?」
検索が難航してるらしい。
「では、女魔法使いor魔女で検索してみてください、向こうの業界用語です。どうですか? ああ、1件ありましたか? 羊皮紙で印刷して送ってください。至急でお願いします」
 どうやら見つかったらしい。良かったー。……少し魔法少女から外れている気もしたけど。うん、大丈夫、きっと。
「ありましたよ。魔法少女を求めてる異世界の住人の願いが」
【願No.9001 世界が滅亡の危機。王と教会が異次元の魔女を召喚。アットホームなパーティ。世界を救う簡単なお仕事です】
「へぇー。アルバイトの募集みたい。身体が弱くてアルバイトなんてしたことなかったから貴重な体験になりそう。アズラエルさん、ここで魔法少女やりたいです!」
「そうですか、さっそく手続きをします。よろしいですか? 後悔しませんね?」
「う、うん、でも魔法の使い方とか誰に教われば良いのかな?言葉って通じる?」
「ああ、そういったことは私が責任持って全てサポートしますのでご安心ください。魔法少女には水先案内人であるナビゲーターか必要です」
「アズラエルさんも一緒に来てくれるの?」
「もちろんです。では、これを背負ってください。将来的に飛ぶ魔法も習得できることでしょう」
天使はリュックサックのようなものを私に差し出した。
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