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第1話【悲報】私が病気で死んだ件。天国に持っていくと捗る物はスマホ
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†ヘル天使†:魔法少女シリーズガチャで被りましたので服あげます
家具屋:ヘル天使さんいつも回しすぎ! ありがとう!
またフレンドのヘル天使さん豪遊してる。私は無課金なのにクローゼットいっぱいだよ。ありがたや。
私、川西輝夜はアバターを着せ替えできるゲームにハマってる。『家具屋』とは私のユーザー名だ。このゲームではリアル系、ファンタジー系、色々な服を揃えることができる。その他に部屋へ家具を置いてハウジングもできる。新作で可愛い服や良い家具ほど入手方法が低確率のガチャとなるので収入がない学生身分の私には重荷だ。ただ、イベントをこなせば限定の服も手に入れることができるから、一日中ベッドでゴロゴロしてる私なら上位に入ることもできる。
家具屋:お返しにこの魔王シリーズの家具あげるよ! ヘル天使さんコレクションしてるでしょ?
†ヘル天使†:それはイベントで上位10名のみに配布された限定品ではないですか。よろしいのですか?
家具屋:もちろん! 部屋に飾って見せてー
†ヘル天使†:聖女。地上にこそ聖女はいた。ありがとうございます
家具屋:いつもガチャ服もらってるお礼だよ
ヘル天使さん面白いなあ、いつも気合入ったロールプレイしてて。
†ヘル天使†:家具屋さん、あなたが天寿を全うしたとき必ず私が迎えに行きます
家具屋:おお! 待ってるー! でも80年ぐらいかかるかなあ
†ヘル天使†:100年でも1000年でも待ちます
家具屋:人類を超越した何かかな?
つい嘘を言ってしまった。実のところ私の寿命はもう長くない。
ヘル天使さんと最後に遊んで数週間経った。
はあ、痛い……。もっと痛み止め欲しい……。お母さん、ごめん、先立つ不幸を許してね……。もっと健康なら良かったけど私は運がないみたい……。ヘル天使さん、だいぶ予定より早いけど天国行くよー……。
不幸にも私は短い一生を終えた……、と思ったが光輝く空間にいた。服はなぜか学校の制服、もし病気が治れば着て行くはずだったけど結局着ることはなかったなあ。
「ここはどこだろう?」
そこはお花畑と大きな川がある場所だった。噂に聞いた天国だろうか。
「はー。やっぱり死んじゃったのか」
思わずため息が出る。これから私はどうなるんだろ。
途方に暮れていると川の中程になにか生き物が見えた。
「モー」
「う、牛?」
水にいる牛だからどこかで聞いた水牛という動物だろうか。なるほど、泳げるから水牛って言うんだ。
「モー!」
水牛さんは私を見つけると水泳選手のように凄まじい速さで泳いで向かってくる。なぜ!?
「だ、誰かいませんかー!水牛さんを止めてーっ!」
「モオオオオー!」
上陸してきたその牛さんは下半身が魚で人魚みたいだった。人魚ではなく牛魚というのかな!?
「ひいいいいー!誰かーっ!」
体育止めなことも顧みず死を覚悟して走った。いや、一度死んだせいか体調は良く身体は軽い。
必死になって走っていると目の前には元気に走る戦車の姿が!
「なぜ天国に戦車が!?」
『キュラキュラキュラキュラ!ガガガガガガ!』
あれはタイヤではなくカタピラと言うのだろうか、金属音とエンジンの音を響かせ走ってくる。
「モオオオオー! フーッ! フーッ! ドタッ! ドタッ!」
後ろからは鼻と蹄の音を響かせ水牛さんが迫る。私は戦車の前に出て必死に手を降った。
「と、止まってください! 助けてください! 追われているんです! 水牛さんに!」
『キ、キィー……』
良かった。私の声に気が付きブレーキをかけ止まってくれ……、しかし戦車は止まりきれなかった!
ドンッと私は数メートル跳ね飛ばされた。
「きゃあっ! いたた……」
ちょっと轢かれたけど幸い止まる寸前だったからいたたで済んだ。しかし牛さんは迫りくる。
「モオオオオー!」
「いやあー!?」
死を覚悟したその瞬間──。
「冥界奇跡『即死』」
「モッ……」
ズーンッ。戦車から声がしたと思うと元気に走り回る水牛さんは突如呻き声をあげ倒れた。
「た、助かった……」
「危ないところでしたね。これはウォーターバッファローという下級デーモンです。知性のかけらもないただの化物です」
声の主である背中から翼の生えた鳥人間のような人が戦車から現れて私にそう語りかけた。
「ウォーターバッファロー……。デーモン……。水牛さんじゃなかったんだ……」
「それより私の戦車で轢いてしまって申し訳ありません。怪我を治します。天界奇跡『回復』」
鳥人間さんは轢かれた私に向かって何かを唱えた。不思議なことに痛みがなくなる。
擦り傷が一瞬で治った。奇跡だ。
「これが噂に聞く奇跡というもの……? あっ、助けていただきありがとうございます。ピンチに陥って戦車に都合よく会える展開に驚きました」
「この子は天地両用車アムトラックといいます。天馬で曳かない最新の戦車です」
「へぇー、カタピラがついているのにトラックと言うんだー。珍しい乗り物ですね」
「アムトラックなら天国のミルクと蜂蜜の川も地獄の血の池も渡れますので有用です。名の由来を手短に解説しますと、アムとはエルフ古語における水陸両用の略語であり、トラックとは装軌式のことを意味し……」
「あの、ここってどこなんですか?」
長くなりそうなトラックの解説に割り込み最大の謎を問う。
「ここはあなたの世界で賽の河原と呼ばれる場所です。死んだ人の子はここに送られる決まりです」
「ここがあの有名な賽の河原かー。話には聞いてたけど本当にあるんだ」
名所に来た観光客気分で見渡していると鳥人間さんが語りだした。
「……輝夜さん、あなたは病床につき多くの苦しみに耐え、病院内では明るく子どもたちに接し、そして天使である私に施してくれました。良き子でした。したがって遅滞なく天国へ案内します」
「もしかしてヘル天使さん!?」
思いがけないところで友達に再開した。世界って意外と狭いなあ。
家具屋:ヘル天使さんいつも回しすぎ! ありがとう!
またフレンドのヘル天使さん豪遊してる。私は無課金なのにクローゼットいっぱいだよ。ありがたや。
私、川西輝夜はアバターを着せ替えできるゲームにハマってる。『家具屋』とは私のユーザー名だ。このゲームではリアル系、ファンタジー系、色々な服を揃えることができる。その他に部屋へ家具を置いてハウジングもできる。新作で可愛い服や良い家具ほど入手方法が低確率のガチャとなるので収入がない学生身分の私には重荷だ。ただ、イベントをこなせば限定の服も手に入れることができるから、一日中ベッドでゴロゴロしてる私なら上位に入ることもできる。
家具屋:お返しにこの魔王シリーズの家具あげるよ! ヘル天使さんコレクションしてるでしょ?
†ヘル天使†:それはイベントで上位10名のみに配布された限定品ではないですか。よろしいのですか?
家具屋:もちろん! 部屋に飾って見せてー
†ヘル天使†:聖女。地上にこそ聖女はいた。ありがとうございます
家具屋:いつもガチャ服もらってるお礼だよ
ヘル天使さん面白いなあ、いつも気合入ったロールプレイしてて。
†ヘル天使†:家具屋さん、あなたが天寿を全うしたとき必ず私が迎えに行きます
家具屋:おお! 待ってるー! でも80年ぐらいかかるかなあ
†ヘル天使†:100年でも1000年でも待ちます
家具屋:人類を超越した何かかな?
つい嘘を言ってしまった。実のところ私の寿命はもう長くない。
ヘル天使さんと最後に遊んで数週間経った。
はあ、痛い……。もっと痛み止め欲しい……。お母さん、ごめん、先立つ不幸を許してね……。もっと健康なら良かったけど私は運がないみたい……。ヘル天使さん、だいぶ予定より早いけど天国行くよー……。
不幸にも私は短い一生を終えた……、と思ったが光輝く空間にいた。服はなぜか学校の制服、もし病気が治れば着て行くはずだったけど結局着ることはなかったなあ。
「ここはどこだろう?」
そこはお花畑と大きな川がある場所だった。噂に聞いた天国だろうか。
「はー。やっぱり死んじゃったのか」
思わずため息が出る。これから私はどうなるんだろ。
途方に暮れていると川の中程になにか生き物が見えた。
「モー」
「う、牛?」
水にいる牛だからどこかで聞いた水牛という動物だろうか。なるほど、泳げるから水牛って言うんだ。
「モー!」
水牛さんは私を見つけると水泳選手のように凄まじい速さで泳いで向かってくる。なぜ!?
「だ、誰かいませんかー!水牛さんを止めてーっ!」
「モオオオオー!」
上陸してきたその牛さんは下半身が魚で人魚みたいだった。人魚ではなく牛魚というのかな!?
「ひいいいいー!誰かーっ!」
体育止めなことも顧みず死を覚悟して走った。いや、一度死んだせいか体調は良く身体は軽い。
必死になって走っていると目の前には元気に走る戦車の姿が!
「なぜ天国に戦車が!?」
『キュラキュラキュラキュラ!ガガガガガガ!』
あれはタイヤではなくカタピラと言うのだろうか、金属音とエンジンの音を響かせ走ってくる。
「モオオオオー! フーッ! フーッ! ドタッ! ドタッ!」
後ろからは鼻と蹄の音を響かせ水牛さんが迫る。私は戦車の前に出て必死に手を降った。
「と、止まってください! 助けてください! 追われているんです! 水牛さんに!」
『キ、キィー……』
良かった。私の声に気が付きブレーキをかけ止まってくれ……、しかし戦車は止まりきれなかった!
ドンッと私は数メートル跳ね飛ばされた。
「きゃあっ! いたた……」
ちょっと轢かれたけど幸い止まる寸前だったからいたたで済んだ。しかし牛さんは迫りくる。
「モオオオオー!」
「いやあー!?」
死を覚悟したその瞬間──。
「冥界奇跡『即死』」
「モッ……」
ズーンッ。戦車から声がしたと思うと元気に走り回る水牛さんは突如呻き声をあげ倒れた。
「た、助かった……」
「危ないところでしたね。これはウォーターバッファローという下級デーモンです。知性のかけらもないただの化物です」
声の主である背中から翼の生えた鳥人間のような人が戦車から現れて私にそう語りかけた。
「ウォーターバッファロー……。デーモン……。水牛さんじゃなかったんだ……」
「それより私の戦車で轢いてしまって申し訳ありません。怪我を治します。天界奇跡『回復』」
鳥人間さんは轢かれた私に向かって何かを唱えた。不思議なことに痛みがなくなる。
擦り傷が一瞬で治った。奇跡だ。
「これが噂に聞く奇跡というもの……? あっ、助けていただきありがとうございます。ピンチに陥って戦車に都合よく会える展開に驚きました」
「この子は天地両用車アムトラックといいます。天馬で曳かない最新の戦車です」
「へぇー、カタピラがついているのにトラックと言うんだー。珍しい乗り物ですね」
「アムトラックなら天国のミルクと蜂蜜の川も地獄の血の池も渡れますので有用です。名の由来を手短に解説しますと、アムとはエルフ古語における水陸両用の略語であり、トラックとは装軌式のことを意味し……」
「あの、ここってどこなんですか?」
長くなりそうなトラックの解説に割り込み最大の謎を問う。
「ここはあなたの世界で賽の河原と呼ばれる場所です。死んだ人の子はここに送られる決まりです」
「ここがあの有名な賽の河原かー。話には聞いてたけど本当にあるんだ」
名所に来た観光客気分で見渡していると鳥人間さんが語りだした。
「……輝夜さん、あなたは病床につき多くの苦しみに耐え、病院内では明るく子どもたちに接し、そして天使である私に施してくれました。良き子でした。したがって遅滞なく天国へ案内します」
「もしかしてヘル天使さん!?」
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