19 / 24
第一章《少女と槍星の邂逅》
1-19《三年の軌跡》
しおりを挟む
ソフィアの特訓は更に量を増していった。ソフィアはあれから数ヶ月に1回だが、街へ出る様になっては経験を積んでいた。
***
とある日。今回はソフィアとダグラスで一緒にエステルへ訪れている。ダグラスはソフィアに「案内したい所があるんだ」と言いとある所へ連れて行く。
そこは1つの道場。ソフィアはその大きさに、呆然と佇んでいたがやがてダグラスに「ここは…?」と疑問に思ったことを問いかける。
「あぁ。ここは俺の持っている槍士達の道場だ」
「え?」
ソフィアはダグラスの言った意味が分からなかった。だがダグラスの言った言葉を頭の中で整理して、やがて1つの結論を出す。
―――持っている…?それってつまり…
「父さんはここの道場主ってこと…?」
「まぁそういうことだな!」
ソフィアはダグラスの新たな一面を知り、また微妙な表情で相槌を打っていたがその顔はダグラスの言葉で、打ち消される事になる。
「槍術にも流派ってものがあるんだ。まぁ俺の使う槍術はソフィアにしか教えてないけどな。…とにかくソフィアにはここで色々な奴らと戦って経験を積んで欲しいと思う。」
「…!?…ほんと!?」
表情がパァッと明るくなり、ソフィアは喜びを露わにする。その喜び様に今度はダグラスが微妙な表情でソフィアを見ていた。
***
「はぁっ!!」
「くっ…」
――バタンッ!!
「ま、参った…」
道場内。ソフィアの技によって相手を地面に押し倒し、そこで試合は終了となる。
「まさか俺の流派の技で返されるとはな…あの短い時間でそこまで再現できるって相当だぞ…」
ソフィアの強み。それが最大限に活かされた試合だった。
ダグラスの使う槍術の流派。――周りの槍士からはルナリウス流と呼ばれている流派。何故呼ばれているなのかはそれはダグラス考案の流派。いわば我流であり、ダグラス自身がその流派に名を付けなかった為、槍士達が仮に読んでいるのである。
その流派は世界に存在する『攻め』の流派とは違い、ルナリウス流は『受け』を主体とした槍術だ。
―――相手の動きや考えを常に読み、それに乗り主導権を勝ち取る。
そのスタイルを主体とした槍術は、瞬間的な対応力と、技や相手を見極める洞察力が必要となるがソフィアはその点では優れていた。
そしてソフィアの強みはその洞察力の鋭さと、常に相手と謙虚に向き合い自らの能力を高めようとする向上心の高さだろう。
相手の流派の技を即座に読み取り、模倣して反撃する。一度みた槍術は忘れずに、対応する力が強いからこそ出来る技であり、ルナリウス流と合わせたその技術はとてつもない程の高みへ上り詰めていた。
ソフィアの『分からないことは、理解出来るまで調べ、学ぶ』という性格もあるのだろう。
兎も角。
ソフィアはそんな感じで、他の流派の槍術を次々と習得していき、実際に体現してみせその道場内にいた槍士達を唸らせていた。
***
そのソフィアの向上心の高さは、違う所にも現れていた。
図書館。
そこには柱の様に積み重なった武術について、書かれてある本が置いてあった。
ソフィアはエステルへ来たら、まず図書館へ行くという習慣をつけていた。
――ただ相手の技を見てそれを真似するだけじゃ、本当にその技を習得したとは言えない…
その考えが元になり、ソフィアはその流派について描かれた本で、その槍術の本質を知り、実際に頭の中でシミュレーションし、様々な場面での対応策を練ったりしながら1日を図書館で過ごしていた。
その集中力はとてつもなく高く、その図書館の職員に声を掛けられるまでは、時間さえ気が付かなくなる程。
因みに貸し出しもアリなので、別荘内に持ち帰ってはダグラスとの稽古で再現し、実戦に活かしたりなどしていた。
本人にそのつもりはないが、ダグラスは実験台同様である。因みにダグラスもなんとも思っていない。
***―――――
そんな習慣とも呼べる日々が約3年ほど続いた。
ソフィアの槍術は更に成長していき、ダグラス相手にも接戦となる戦いまで持ち込められる程に。
そしてソフィアの容姿も3年間で成長していき、艶の増した長い銀髪を後ろに結び、腰回りも引き締まり、女性らしい膨らみも出始めていた。
―――儚く優美な女戦士の姿。
それは男だけでなく女でさえも、思わず振り向いてしまう程の美少女である。
現在ソフィアは15歳。この世界での成人の定義は15歳からとされているので、ソフィアは既に成人済みと言う事になる。
ダグラスとの稽古もそろそろ5年となる所。ダグラスはソフィアを5年で、自分の持てる全てを与える、と言葉にしていたがそれは既に達成されたであろう。
そんなとある日。ダグラスとの稽古が終わり、木々に囲まれた空間にポツンと置いてある岩に2人は腰掛ける。
「ふぅ…今日も疲れたぁ~」
そんな言葉に「そうだなぁ~」と同意する様に頷くダグラス。
季節は冬に移り変わろうとしている。辺りの木々は前までは、紅色の葉で染まっていたがそれも今は大分散ってしまっている。ダグラスは何処か懐かしさを感じながら口を開く。
「ソフィアももう15か…5年というのは本当に早いな」
「本当にね…―――父さんには凄く感謝してる。私に槍術を教えてくれた事、色んな物の交流や経験の場を与えてくれた事。そして…」
――私に生きる目的を与えてくれた事。
ソフィアのその言葉にダグラスは、思わず目に涙を滲ませる。
「そうか…初めて会った時からピンとは来たが…まさかここまでの成長を遂げるとは思ってなかったな。…ソフィアは俺の自慢の娘だ」
「うん…」
ダグラスの言葉にソフィアもまた、顔を綻ばせて頷く。
「だが」
その言葉に「え?」とソフィアに困惑の色が浮かぶ。ダグラスは気にせずに口を開く。
「俺とソフィアは親子でもあり師弟でもある。師としてはソフィアの力を最大限まで引き伸ばしたい」
そう口にするが、当のソフィアは結局ダグラスの言いたい事が分からずに「えぇっと…つまり…?」と問いかける。
「卒業試験だ。俺と―――ソフィアの」
***
とある日。今回はソフィアとダグラスで一緒にエステルへ訪れている。ダグラスはソフィアに「案内したい所があるんだ」と言いとある所へ連れて行く。
そこは1つの道場。ソフィアはその大きさに、呆然と佇んでいたがやがてダグラスに「ここは…?」と疑問に思ったことを問いかける。
「あぁ。ここは俺の持っている槍士達の道場だ」
「え?」
ソフィアはダグラスの言った意味が分からなかった。だがダグラスの言った言葉を頭の中で整理して、やがて1つの結論を出す。
―――持っている…?それってつまり…
「父さんはここの道場主ってこと…?」
「まぁそういうことだな!」
ソフィアはダグラスの新たな一面を知り、また微妙な表情で相槌を打っていたがその顔はダグラスの言葉で、打ち消される事になる。
「槍術にも流派ってものがあるんだ。まぁ俺の使う槍術はソフィアにしか教えてないけどな。…とにかくソフィアにはここで色々な奴らと戦って経験を積んで欲しいと思う。」
「…!?…ほんと!?」
表情がパァッと明るくなり、ソフィアは喜びを露わにする。その喜び様に今度はダグラスが微妙な表情でソフィアを見ていた。
***
「はぁっ!!」
「くっ…」
――バタンッ!!
「ま、参った…」
道場内。ソフィアの技によって相手を地面に押し倒し、そこで試合は終了となる。
「まさか俺の流派の技で返されるとはな…あの短い時間でそこまで再現できるって相当だぞ…」
ソフィアの強み。それが最大限に活かされた試合だった。
ダグラスの使う槍術の流派。――周りの槍士からはルナリウス流と呼ばれている流派。何故呼ばれているなのかはそれはダグラス考案の流派。いわば我流であり、ダグラス自身がその流派に名を付けなかった為、槍士達が仮に読んでいるのである。
その流派は世界に存在する『攻め』の流派とは違い、ルナリウス流は『受け』を主体とした槍術だ。
―――相手の動きや考えを常に読み、それに乗り主導権を勝ち取る。
そのスタイルを主体とした槍術は、瞬間的な対応力と、技や相手を見極める洞察力が必要となるがソフィアはその点では優れていた。
そしてソフィアの強みはその洞察力の鋭さと、常に相手と謙虚に向き合い自らの能力を高めようとする向上心の高さだろう。
相手の流派の技を即座に読み取り、模倣して反撃する。一度みた槍術は忘れずに、対応する力が強いからこそ出来る技であり、ルナリウス流と合わせたその技術はとてつもない程の高みへ上り詰めていた。
ソフィアの『分からないことは、理解出来るまで調べ、学ぶ』という性格もあるのだろう。
兎も角。
ソフィアはそんな感じで、他の流派の槍術を次々と習得していき、実際に体現してみせその道場内にいた槍士達を唸らせていた。
***
そのソフィアの向上心の高さは、違う所にも現れていた。
図書館。
そこには柱の様に積み重なった武術について、書かれてある本が置いてあった。
ソフィアはエステルへ来たら、まず図書館へ行くという習慣をつけていた。
――ただ相手の技を見てそれを真似するだけじゃ、本当にその技を習得したとは言えない…
その考えが元になり、ソフィアはその流派について描かれた本で、その槍術の本質を知り、実際に頭の中でシミュレーションし、様々な場面での対応策を練ったりしながら1日を図書館で過ごしていた。
その集中力はとてつもなく高く、その図書館の職員に声を掛けられるまでは、時間さえ気が付かなくなる程。
因みに貸し出しもアリなので、別荘内に持ち帰ってはダグラスとの稽古で再現し、実戦に活かしたりなどしていた。
本人にそのつもりはないが、ダグラスは実験台同様である。因みにダグラスもなんとも思っていない。
***―――――
そんな習慣とも呼べる日々が約3年ほど続いた。
ソフィアの槍術は更に成長していき、ダグラス相手にも接戦となる戦いまで持ち込められる程に。
そしてソフィアの容姿も3年間で成長していき、艶の増した長い銀髪を後ろに結び、腰回りも引き締まり、女性らしい膨らみも出始めていた。
―――儚く優美な女戦士の姿。
それは男だけでなく女でさえも、思わず振り向いてしまう程の美少女である。
現在ソフィアは15歳。この世界での成人の定義は15歳からとされているので、ソフィアは既に成人済みと言う事になる。
ダグラスとの稽古もそろそろ5年となる所。ダグラスはソフィアを5年で、自分の持てる全てを与える、と言葉にしていたがそれは既に達成されたであろう。
そんなとある日。ダグラスとの稽古が終わり、木々に囲まれた空間にポツンと置いてある岩に2人は腰掛ける。
「ふぅ…今日も疲れたぁ~」
そんな言葉に「そうだなぁ~」と同意する様に頷くダグラス。
季節は冬に移り変わろうとしている。辺りの木々は前までは、紅色の葉で染まっていたがそれも今は大分散ってしまっている。ダグラスは何処か懐かしさを感じながら口を開く。
「ソフィアももう15か…5年というのは本当に早いな」
「本当にね…―――父さんには凄く感謝してる。私に槍術を教えてくれた事、色んな物の交流や経験の場を与えてくれた事。そして…」
――私に生きる目的を与えてくれた事。
ソフィアのその言葉にダグラスは、思わず目に涙を滲ませる。
「そうか…初めて会った時からピンとは来たが…まさかここまでの成長を遂げるとは思ってなかったな。…ソフィアは俺の自慢の娘だ」
「うん…」
ダグラスの言葉にソフィアもまた、顔を綻ばせて頷く。
「だが」
その言葉に「え?」とソフィアに困惑の色が浮かぶ。ダグラスは気にせずに口を開く。
「俺とソフィアは親子でもあり師弟でもある。師としてはソフィアの力を最大限まで引き伸ばしたい」
そう口にするが、当のソフィアは結局ダグラスの言いたい事が分からずに「えぇっと…つまり…?」と問いかける。
「卒業試験だ。俺と―――ソフィアの」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
もう二度とあなたの妃にはならない
葉菜子
恋愛
8歳の時に出会った婚約者である第一王子に一目惚れしたミーア。それからミーアの中心は常に彼だった。
しかし、王子は学園で男爵令嬢を好きになり、相思相愛に。
男爵令嬢を正妃に置けないため、ミーアを正妃にし、男爵令嬢を側妃とした。
ミーアの元を王子が訪れることもなく、妃として仕事をこなすミーアの横で、王子と側妃は愛を育み、妊娠した。その側妃が襲われ、犯人はミーアだと疑われてしまい、自害する。
ふと目が覚めるとなんとミーアは8歳に戻っていた。
なぜか分からないけど、せっかくのチャンス。次は幸せになってやると意気込むミーアは気づく。
あれ……、彼女と立場が入れ替わってる!?
公爵令嬢が男爵令嬢になり、人生をやり直します。
ざまぁは無いとは言い切れないですが、無いと思って頂ければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる