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学園編一年目
21話 学園編一年目ⅩⅧ
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眠れないので用意しておいた“薬”を再確認しておく。
──この薬の名称は極限血と俺は呼ぶようにしたが、これはその名が示す通り“人間の脳を極限状態にする”薬だ。
俺は鬼砂族と対等に戦うためにはどうすれば良いか考えていたのだが、その内の一つに“あの身体能力に対応するためにはまず動体視力が必要だ”という考えを持っていた。
──少なくとも人間の兵士の動きがゆっくり見えるくらいには必要だと思った。
因みに、脳を極限状態にする成分はこの世界に存在する植物である“トリックカブト”という前世のトリカブトという毒草に似た名前を持つ神経毒を持った植物から抽出することが出来た。
──このトリックカブトは割と山の麓のような標高の低いところに多く生息しているので、入手も簡単だった。
その結果こんな諸刃の剣という言葉を体現したようなとても危険な薬が出来上がった。
──何故危険かって?
この薬が危険な理由は(やらざるを得なかったというのもあるのだが)効果が持続するようにしたという点に深く関係する。
効果が持続するには血液中を“ぐるぐる”循環させることが一番簡単だ。しかし、裏を返せば“常に薬の影響が出る”ということになる。
もう一つ神経毒からつくったために、俺の体中の抗体が反応してしまうのだ。だからそのために常に元素魔法で抗体のはたらきを抑制しなければならない。
そして一番重要なのが、脳のリミッターを外して大きな力を出すことを可能にするということだ。そのため反動も大きくなり、筋繊維が断裂したりするかもしれない。
──所謂、火事場の馬鹿力というやつだ。しかし、筋繊維の断裂は筋繊維が修復されるとき、より強固に、頑丈になる。そのため早いうちからこういった経験をした方がいいと考えた。
色々な考えを組み合わせた結果、この極限血が出来上がった。
☆☆☆
「結局……眠れなかったッ……!」
薬を確認した後眠りにつこうと思い、ベッドに横になったが気がついたら鳥のさえずりが聞こえる時間になっていた。
とりあえず、宿のレストランとなっている一階に降りる。
「あ!ロジーク様、教会からの伝言が先ほど来ましたけど……何かあったのですか?」
「げっ!」
(確か俺……そこで聖女とかいうやつに殴られたんだよな……。あー、軽くトラウマになってるな……!)
「はぁ……伝言というのは?」
「“後で教会にいらして下さい、御詫びします”というものでした」
「あっ、ハイ」
まさかの伝言の内容が協会への招待という事実。
(あー、嫌だなー!)
俺は宿で朝食をとった後、急いで教会へ向かった。勿論、すぐ行って、すく帰ってくるつもりだ。
「あっ!先ほどはすみませんでした!」
昨日俺を殴った聖女さんが扉の前で待ち構えていた。
そして俺を見るとすぐに謝罪。
「こちらこそ失礼なことを考えてしまってすみませんでした……!」
こちらも同罪なので素直に謝る。
「ふーん、やっぱり失礼なこと、考えてたんだ?」
(不味い!聖女さんの顔が見る見る愉快になってく……!)
しかし、こいつは殴る気配はない。
「んー?殴るとでも思ったの?」
「な、殴らないのか?」
「はぁー、私を何だと思っているのかしら?」
「(流石に脳筋聖女とは言えないし……)えーと、子供に厳しい聖女様?」
「また失礼なことを考えられた気もするけど、まあいいわ。いいから早く、中に入りなさい」
──このとき俺は確信した。この聖女様は所謂、“ツンデレ”の気質があると!
☆☆☆
「昨日はうちのアミーがごめんなさい……」
「あ、いいですよ気にしてないんで!」
協会を取り仕切っているらしい修道女さんが改めて謝罪した。この取り仕切っている修道女さんはチップ・ロック・ニードというらしい。
(何がモチーフなんだ……?ロック、ろっく、ろく、六……あ!CYP2D6だ!)
CYP2D6とは抗ヒスタミンを分解する酵素の名称である。
それと聖女様はアミーという名前らしい。フルネームを聞いたところ、アミー・ヒスタ・アセトフェンという名前らしい。
(アセトアミノフェンかな?手と足の生えたカプセル男がァ……)
アセトアミノフェンとは、抗ヒスタミンの一種で有名なのは“某手と足が生えたカプセル”の総合かぜ薬に使われているということだろう。
(それよりも、アセトアミノフェンとCYP2D6って……何ともまぁ)
この聖女様はこの修道女さんに分解という名の制御をされているのだろうか。
「それよりも、貴方がアミーに言った言葉、それは本当なのですか?」
「本当です……。子供の戯言に聞こえると思いますが僕と兵士さん達が【鬼砂族】をやっつけるので安心してください」
「はあ……」
「それでは俺はこれで帰ります!」
「「あっ……!」」
俺はそそくさと退散退散。
「ロジーク様、これからヘリックスタワーに向かいますが本当に大丈夫ですか?実力についてはロキ学園長から伺っているので心配していないんですが……」
「……大丈夫です」
「分かりました、ではこれから【鬼砂族】の潜むヘリックスタワーへと向かいます!」
「はいっ!!」
俺は意気込みの意味も込めて大きな声で返事をした。
──この薬の名称は極限血と俺は呼ぶようにしたが、これはその名が示す通り“人間の脳を極限状態にする”薬だ。
俺は鬼砂族と対等に戦うためにはどうすれば良いか考えていたのだが、その内の一つに“あの身体能力に対応するためにはまず動体視力が必要だ”という考えを持っていた。
──少なくとも人間の兵士の動きがゆっくり見えるくらいには必要だと思った。
因みに、脳を極限状態にする成分はこの世界に存在する植物である“トリックカブト”という前世のトリカブトという毒草に似た名前を持つ神経毒を持った植物から抽出することが出来た。
──このトリックカブトは割と山の麓のような標高の低いところに多く生息しているので、入手も簡単だった。
その結果こんな諸刃の剣という言葉を体現したようなとても危険な薬が出来上がった。
──何故危険かって?
この薬が危険な理由は(やらざるを得なかったというのもあるのだが)効果が持続するようにしたという点に深く関係する。
効果が持続するには血液中を“ぐるぐる”循環させることが一番簡単だ。しかし、裏を返せば“常に薬の影響が出る”ということになる。
もう一つ神経毒からつくったために、俺の体中の抗体が反応してしまうのだ。だからそのために常に元素魔法で抗体のはたらきを抑制しなければならない。
そして一番重要なのが、脳のリミッターを外して大きな力を出すことを可能にするということだ。そのため反動も大きくなり、筋繊維が断裂したりするかもしれない。
──所謂、火事場の馬鹿力というやつだ。しかし、筋繊維の断裂は筋繊維が修復されるとき、より強固に、頑丈になる。そのため早いうちからこういった経験をした方がいいと考えた。
色々な考えを組み合わせた結果、この極限血が出来上がった。
☆☆☆
「結局……眠れなかったッ……!」
薬を確認した後眠りにつこうと思い、ベッドに横になったが気がついたら鳥のさえずりが聞こえる時間になっていた。
とりあえず、宿のレストランとなっている一階に降りる。
「あ!ロジーク様、教会からの伝言が先ほど来ましたけど……何かあったのですか?」
「げっ!」
(確か俺……そこで聖女とかいうやつに殴られたんだよな……。あー、軽くトラウマになってるな……!)
「はぁ……伝言というのは?」
「“後で教会にいらして下さい、御詫びします”というものでした」
「あっ、ハイ」
まさかの伝言の内容が協会への招待という事実。
(あー、嫌だなー!)
俺は宿で朝食をとった後、急いで教会へ向かった。勿論、すぐ行って、すく帰ってくるつもりだ。
「あっ!先ほどはすみませんでした!」
昨日俺を殴った聖女さんが扉の前で待ち構えていた。
そして俺を見るとすぐに謝罪。
「こちらこそ失礼なことを考えてしまってすみませんでした……!」
こちらも同罪なので素直に謝る。
「ふーん、やっぱり失礼なこと、考えてたんだ?」
(不味い!聖女さんの顔が見る見る愉快になってく……!)
しかし、こいつは殴る気配はない。
「んー?殴るとでも思ったの?」
「な、殴らないのか?」
「はぁー、私を何だと思っているのかしら?」
「(流石に脳筋聖女とは言えないし……)えーと、子供に厳しい聖女様?」
「また失礼なことを考えられた気もするけど、まあいいわ。いいから早く、中に入りなさい」
──このとき俺は確信した。この聖女様は所謂、“ツンデレ”の気質があると!
☆☆☆
「昨日はうちのアミーがごめんなさい……」
「あ、いいですよ気にしてないんで!」
協会を取り仕切っているらしい修道女さんが改めて謝罪した。この取り仕切っている修道女さんはチップ・ロック・ニードというらしい。
(何がモチーフなんだ……?ロック、ろっく、ろく、六……あ!CYP2D6だ!)
CYP2D6とは抗ヒスタミンを分解する酵素の名称である。
それと聖女様はアミーという名前らしい。フルネームを聞いたところ、アミー・ヒスタ・アセトフェンという名前らしい。
(アセトアミノフェンかな?手と足の生えたカプセル男がァ……)
アセトアミノフェンとは、抗ヒスタミンの一種で有名なのは“某手と足が生えたカプセル”の総合かぜ薬に使われているということだろう。
(それよりも、アセトアミノフェンとCYP2D6って……何ともまぁ)
この聖女様はこの修道女さんに分解という名の制御をされているのだろうか。
「それよりも、貴方がアミーに言った言葉、それは本当なのですか?」
「本当です……。子供の戯言に聞こえると思いますが僕と兵士さん達が【鬼砂族】をやっつけるので安心してください」
「はあ……」
「それでは俺はこれで帰ります!」
「「あっ……!」」
俺はそそくさと退散退散。
「ロジーク様、これからヘリックスタワーに向かいますが本当に大丈夫ですか?実力についてはロキ学園長から伺っているので心配していないんですが……」
「……大丈夫です」
「分かりました、ではこれから【鬼砂族】の潜むヘリックスタワーへと向かいます!」
「はいっ!!」
俺は意気込みの意味も込めて大きな声で返事をした。
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