ケミカル☆ファンタジア~研究職の薬剤師が異世界に転生した結果~

文壱文(ふーみん)

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学園編一年目

16話 学園編一年目ⅩⅢ

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(研究出来るようになったのは良いいんだけど、新しい研究を始める前にを作っておかないとな)
「W=3、Lv=2【生成ジェネレート】」
俺はロキソプロフェンナトリウムを元素魔法で生成した。ロキソプロフェンナトリウムとは某有名頭痛薬であるロキ〇ニンの主成分である。

こうなったのは訳がある。
いざ、研究!となったところで思わぬ壁にぶち当たったのだ。
すなわち、俺の研究費用はどうする!?
──とまあ、要するに研究にあてるお金が無かったのだ。

某頭痛薬のCMが言う通りロキソプロフェンナトリウムだと体内のプロストグランジン類が減ってしまうので、胃では炎症を起こしてしまう。ここはやはり某CMの通りに優しさを与えてあげよう。
「W=3、Lv=2【生成ジェネレート】」
──ここで俺はアラキドン酸を生成した。
何故なら、人間の体内のシクロオキシゲナーゼCOXによってプロストグランジン類になるからだ。これで優しさを与えることが出来た。
一先ずの間はこれで研究費を稼がなければならなかった。



☆☆☆



──商店街に出る。先ず俺は商店街で薬草を扱うお店を探した。
「いらっしゃい!」
店員が明るい声で挨拶。
「あの、すみません。ここって薬を扱うお店ですよね?」
「ああ、そうだよ。坊っちゃん、何か用かい?」
──坊っちゃん!?初めて聞いたぞ!!
それよりも早く用件を伝えないと!
「実は……元素魔法で頭痛薬を生成したんですが、ここで売り出して頂けないでしょうか?」
「どれだ、見せてみろ」
俺はロキソ〇ンを見せる。──勿論、パッケージ付きで。これも紙の主成分、セルロースを元素魔法で生成して作ったものだ。
「G=3、Lv=3【解析アナライズ】」
店員は知覚魔法が使えたのか。
「はぁ!?なんだこれは!頭痛と胃痛を両方とも抑えてくれる代物じゃないか!普通なら頭痛薬は胃痛を伴うのに……」
──そうなのだ、頭痛薬は基本的に胃痛を伴う。優しさがあるのはアラキドン酸があるためなのだ。

──アラキドン酸、万歳!!

「この薬をロキニンと名づけました。これを売ってはもらえないでしょうか?」
「もちろんだ!是非売らせてくれ!今から店長を呼んでくる!!」
店員さんは店の奥へ走っていった。──それを見て俺は──

「や っ た ぜ ! !」

としか思えなかった。
これで店長さんと話をつけてくれれば俺のロキニンがこのお店で売り出すことが出来る!



「君が薬を売りたいと言っていた子供かい?」
「はい」
「君!うちで雇われない?」
「は、はぁ?」
何を言ってるんだ!?俺はまだ10才だぞ!
「君はおそらく、他にも色々と理解があるんだろう?それならうちで雇ぶほっっ!!」
──気がつけばさっきの店員さんが店長さんを殴り飛ばしていた。

「え?何これ……どんな状況?」

「何勝手に雇用しようとしてるんですか!?坊っちゃんは未だ10才ですよッ!?……第一、店長はまだこの薬を見ていないでしょう!」
「いや~そうなんだけどね、薬を創れる知識があるなら是非雇用したいなぁ~と思ってね。じゃあその薬を見せてもらえる?」
「はあ……、どうぞ」
俺はロキニンを見せた。俺の戸惑いをお構い無しに。
「……これは、どのようにして使うんだい?」

──まあ、聞かれるとは思っていたが。

「これは錠剤といって、水と一緒に飲む薬です。体内で溶けて作用します」
「これは画期的だ!やっぱりうちで雇われないかいッ!」
「え、店長さんさっき注意されてましたよね……?」
「流石にここまでとは思ってもいなかった。坊っちゃん、俺からも頼む。雇われてくれ」
(え~店員さんまで敵に回っちゃったよ……)
「え!?無理ですよ、研究費用を用意するために薬を売ろうと思ったんですから……。レシピも売ってもいいですけど、元素魔法が使えないと出来ないですし……」
嘘は言っていない。この世界で一から機材を作ることは金銭的にほぼ無理だし、そもそもの話……機械に関する知識が少ない。

──だから俺は元素魔法で薬を作っていたのだが。

「ブレンステッド、元素魔法を使える人材を探してきてくれ!僕は彼の話を聞いておくから!」
俺を“坊っちゃん”呼ばわりする店員さんの名前はブレンステッドというらしい。

──あなたはブレンステッド・ローリーの酸・塩基の定義か何かですか?
「では実演します。W=3、Lv=2【生成ジェネレート】」
俺はロキソプロフェンナトリウム二水和物(分子式:C15H17O3・2H2O・Na)を生成してみせる。

「はっ?」「えっ?」

店長さんと今にも店を飛び出しそうだった店員さん──ブレンステッドさんは口をあんぐりと開けて驚いていた。

──何か驚く要素あったかな?

「な、なっ、何故そのような荒業が出来るんだい!?」
「あ、荒業!?」

──これって荒業だったのか?
「いいかい?は自然界から物質を抽出してから生成するんだよ?それをこうも元素魔法一発で生成してしまうなんて……。周りにその技術荒業が渡ったら薬屋の需要が無くなるに等しいじゃないか……」

そんなに凄いことだったのか。
──この世界にもっと物質の構造等についての知識を広めるべきなのだろうか。
「因みに、これがさっきの薬の構造になります」
俺は紙にロキソプロフェンナトリウムの構造を書いてみせる。すると店長さんは目を見開いて紙を凝視した。
「なるほど……。あまり構造は大きくはないのか。……あ!レシピを広めるようなことは絶対にしないでよ!それとレシピのお金は後日用意して渡すから三日後にでもここを訪ねてね!」
「分かりました。三日後ですね!」
──そうして俺は薬屋を後にして、学園へ戻った。
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