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学園編一年目

9話 学園編一年目Ⅵ

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決闘の後、俺は気づくことになったのだが……。
──発熱させることが出来るのならば俺自身を加速させることも出来るのではないか?という疑問が浮かび、自分自身が空気中に存在する物質を押し退けるイメージで元素魔法を使ってみた。

──すると、一瞬勢いがつくが直ぐにそのスピードは落ちてしまう。
「あれっ?失敗した?……そうか!俺が押し出されればいいんだ!!」
続いて俺は“目の前の空間にある物質全てを俺の背後に移動させるイメージ”で魔法を使う。

「よしっ!!成功だ!」

俺はこのまま速さを利用して壁を走れないかと思い、壁に両足をつける。──勿論、身体が地面と水平になるので頭上の空間にある物質を地面に移動させているが、これはなかなかに難しいな。
そして俺は壁に立つことは出来たものの、常に下に沢山の物質を移動させなければならず燃費が悪いことに気づく。
「これじゃあ実際に戦闘では使えないな……。ファ〇ズア〇セルみたいに壁を走りたかったのにな」
俺は前世において特撮もそれなりに見ていた。その中でも速度を売りにしているヒーローは特に好きだった。その点、フ〇イズ〇クセルのように壁を走るのは剣と魔法の異世界に転生してから一度はやってみたかったのだ。
──それなのに実際は燃費が悪く、戦闘では使い物にならない魔法だったため少しだけショックを受けた。

──あれっ?待てよ……壁ば走れずとも空は飛べるんじゃね?

そう考えて俺はさっきのイメージで空を飛んでみる。──うーむ、燃費はそこそこだけど基本的に相手が追えない高さであれば有用だな。

──というわけで、俺に新たな技能が身についた。



☆☆☆



「すごかったぜ!昨日の決闘!!」
「おめでとう!」
「ライラ先輩を奪われずに済んだなッ!ロジーク~☆」
「ひゅうひゅう~」
「なんだよあれ!?すげーな!!今度教えてくれよ!!」
ブチルを筆頭に称賛半分、冷やかし半分で騒ぐ友達が沢山いて少し困ったが、ジン先輩の取り巻きの1人が俺の勝利が気にくわなかったらしく、俺が嫌になるような言葉を顔を笑顔でいてそして──顔を引きつらせながら絶叫する。

「おい!昨日は何故勝てたッ!どうせ何かからくりがあるんだろ!!」
「僕はジン先輩の体温を上げてオーバーヒートさせただけですよ……。ルール上は問題無いはずですが?」
俺は用意していた“答え”を棒読みで答える。一々こんな奴に構ってられるか。もとい、勝ったのだから相手にする必要がない。
「大有りだ!!お前のせいで、お前のせいでジン様の箔が落ちたではないかッ!!」
「ジン先輩の家は何よりも武力を重視されますよね?ですから武力を示しただけなのですが……。まあ、無力化に止めましたが」
「それが問題だと言っているのだッ!何故それが分からない!!」
「分かっています。但し、僕には通用しませんよ……。人を壊すための有害な物質を知り尽くしているのてすから……。だからこそ僕は武力を示し、ライラ先輩を守りたかったのです……。ですから、ジン先輩にライラ先輩を諦めてもらうよう進言して頂けませんか?」
俺は殺気を放ち威圧しながら懇願脅迫する。
「ひっ!……あ、ああ。分かった!分かったから止めてくれ!!」
殺気を収めると気が抜けたのか、ジン先輩の取り巻きの先輩が崩れ落ちる。
「よくそんな台詞が言えるなぁ~」
──ブチルだ。俺の肩に腕を掛けてきた。そういえば周りに友達がいたままだったな。
「あー、えっと……なんか、お騒がせしました」

「「「「「クフッ、ハハハハハッ──────」」」」」

俺の台詞に友達の笑い声が響いた。



──その頃、ジン先輩の取り巻きの先輩は俺から逃げるとすぐに先輩の元へと向かっていた。
「ジン様、あいつは何か得体が知れないです。ライラ様を諦めて頂けませんか?ジン様のためにも!」
「得体が知れないから諦めろ……ッだと!?まるで俺が怖がりみたいな言い方だなぁ、おい!!」
「め、滅相もございません!ですが、ジン様のお家のためにもあいつに負けた事実を隠さなければなりません……。ですから、ライラ様を諦めるべきかと」
「伯爵家の息子の分際でぇ……!調子に乗りやがってッ……!」
ジン先輩は目を血走らせながら悪意に塗れた顔で嗤っていた。



☆☆☆



「ライラ先輩!決闘で勝ちましたよ!」
──俺は今、ライラ嬢のいる6年の教室に来ていた。
「ありがとう……。ロジーク君、貴方のおかげであいつからの嫌がらせが無くなったから本当に助かったよ!!」
ライラ嬢はターコイズの髪を揺らしながらご機嫌そうな笑顔を見せている。
「ところで……、ロジーク君の友達って言ってた、確か……ブチル君だっけ?って男の子が私を訪ねてきたんだけど、ロジーク君が“私を守る”みたいな事を言ってたのは本当?」

「ぶっっっっっ──────!?」

ブチルめっ、余計なことばっかりしやがって!おかげでもう俺の心はボロボロなんだよ!!
「ん~~~?……!その反応はもしかして本当だったんだ!!」
右手の人指し指を顎の下に当てて唸りながらはっ!?と気づいたように喜色満面の笑みで笑う。
(もうやめて下さい……。その仕草とか、何かくるものがあるんです……)
流石に俺も美少女がこんな仕草をしていては何かこう……くるものがあり、思わず赤面してしまいかねない。

「そうだ!お礼に何かしてあげようか?」

(ぐはっっっっっ──────!?)

ここでこの台詞はヤバい。──“俺のハートにクリティカルヒット!!”してしまう。というかもう既にクリティカルヒットしてしまっているか。
「あ、あの……それならライラ先輩の自由で良いので──と、とりあえずその仕草をやめてください!!」
「んん~?ということはロジーク君はデートを所望かなぁ~?」
ライラ嬢の顔が悪い笑みを浮かべてる!完全に遊ばれているぞ!?俺!
「すいません、やっぱりお礼は結構です……」

──ピキッッ!

見るからに青筋を浮かべているライラ嬢。やはりこれは逃げ場はない……。
「あ、ああ!やっぱりお礼は学園の側の“商店街の案内”でお願いします!」

──デートとも言葉に出来なくて見事にヘタレている俺であった。
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