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学園編一年目
6話 学園編一年目Ⅲ
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俺は学生寮に戻ると、自室である207号室のルームメイトが揃っていた。
「あ!やっと来た!!」
「……?」
ルームメイトの一人が俺を指差して叫んだ。控えめに言ってうるさいと思うが本人は気にしていないように見える。
「僕はベンズ!君は?」
うるさい奴──ベンズはどうやら距離感というものを知らないらしい。男同士なのに顔の距離が近い。因みに髪は茶髪、目は灰色だ。
──というかベンズって、ベンゼンが由来なのかな?
「僕はロジーク、ロジーク・オルト・グラストーンといいます。よろしくお願いします」
そう言って俺が右手を差し出すと、ベンズは両手で握りながら上下にぶんぶん振り回す。……それ、俺の手がもげちゃうから。
「……へぇー、ロジークっていうのか!俺はピクリン……名前については気にしないでくれよな!」
ピクリン──ピクリンさんは自分の名前をどうも気にしているらしい。ただし、決してピク〇ンを連想してはいけないと思う。髪は黄色だった。空は飛べなさそうだけど。
「俺はジーフェン・ヒドラ・ミンだ。よろしくな!!」
ジーフェン──第一世代抗ヒスタミン薬はピクリンとは真逆に名前を気にしていないようだ。表情から察するにむしろ誇りを持ってそうなくらいだ。髪は白色で目は赤く、一瞬アルビノなのかと思ってしまうくらいに髪が白かった。ただし肌が健康そのものなのでアルビノということはないだろうが少し心配になるな。
「ここでは貴族も何も身分は関係ないからタメ口でいいからな!!」
「「分かった!」」
ジーフェンは今さらな気もするがタメ口云々をベンズとピクリンに伝えたようだ。
「でも助かったー、平民なんてそんなに綺麗な言葉遣い出来ねーもんな」
「そうだよね……、僕も不敬に当たらないかヒヤヒヤしっぱなしだからさ……」
「うんうん!」
──ガシッ!
ベンズとピクリンはがっしりとした握手を交わしていた。──おい二人とも、お互いを見る目が歴戦の戦友を見る目になってるぞ。
日は流れ、遂に今日は王立ニトロ学園の入学式だ。
俺は敷地内のホールで先生方のお話を聞いていた。
因みに、新入生は全員で150名程でホールにはまだ幾分かの余裕があった。とても退屈な時間だったのだが、こっそりと後ろの男子生徒が話しかけてくれたので退屈しのぎになった。
「なあなあ、お前もしかしてグラストーン伯爵様の息子か?」
小声でこんなことを聞いてきた。
「そうですけど?」
「やっぱりな、その青髪はグラストーン家のものだと思ったよ。あ、俺はブチル、ブチル・ジ・スクエアっていうんだ!よろしくな!」
(ブチルにジにスクエアって……2-ブテンかな?)
俺は下らないことを考えながらブチルの話を聞く。クラスに可愛い女子はいるか?とか担任の先生は女の人がいい!とか言っていたが、こいつ頭の中身が性欲まっしぐらなんじゃないか……?
ブチルと小声で談笑していると、初等部の最上級生の挨拶があるようで皆一斉にステージの端の方を向く。
「おおっ、女神だっ……!」
「ああ……」
「「「はぁ~♡」」」
何名かの男子が仏のような顔をしたり、何名かの女子はうっとりしたような表情で熱い吐息を漏らす。俺はなんとなく予想がついた。これは学園のマドンナってやつだ、たぶん。
──で、ステージの方を見やると、
(……)
俺の思考が止まる。同時にちょっとした不安というものが湧き上がった。
何故ならば、そこにはよぉ~く見知っている人物がいたからだ。
綺麗なターコイズの髪が流れるように揺れる。
(……何やってるんですかね、ライラ嬢!?)
学園のマドンナ=ライラ嬢だったのだ。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。私はこの場で何を話せばいいのか分からなくてとても悩みました。……なので私は自分の最近の出来事に学園の存在理由を交えて挨拶とさせていただきます!」
チラッとライラ嬢と目が合う。これはもう嫌な予感しかない。前世から俺はあまり目立ちたくなかった。ただひたすら研究と本を読み漁ることが出来ればそれで十分だとさえ思っていたのに……。
「私は春期休暇でグラストーン伯爵領で伯爵の息子さんに魔法を教えていました。」
ブチルが「お、お前ぇ……」とか言って睨まれた気がしたがライラ嬢の話に集中していたせいで全く聞こえなかった。
「そして魔法を教えましたが、魔力を直ぐに巡らせられるようになり、驚くことにたったの十日で基礎を全部身につけてしまったのです!」
後ろにいるブチルがなんか騒いでいるが気にしない。
「そして思ったのです!こんな才能を溝に捨てるようなことはあってはならないと!!」
ライラ嬢は更に言葉を続ける。
「実際に昔そのようなことがあったそうです。そうしてこの王立ニトロ学園が設立されました。同時期に6年間は無償で教育を受ける権利が認められました。そして私は改めて教育機関の大切さを実感しました。故に私は公爵令嬢としてケミストラ王国に学問などの実績を立てて貢献したく思います!ご静聴有難う御座いました」
最後は貴族の礼をしてステージを降りていった。
(本当に何やってくれてるんですかねッ!?ライラ嬢!?)
──入学早々、俺は嫌な予感に見舞われた。
「あ!やっと来た!!」
「……?」
ルームメイトの一人が俺を指差して叫んだ。控えめに言ってうるさいと思うが本人は気にしていないように見える。
「僕はベンズ!君は?」
うるさい奴──ベンズはどうやら距離感というものを知らないらしい。男同士なのに顔の距離が近い。因みに髪は茶髪、目は灰色だ。
──というかベンズって、ベンゼンが由来なのかな?
「僕はロジーク、ロジーク・オルト・グラストーンといいます。よろしくお願いします」
そう言って俺が右手を差し出すと、ベンズは両手で握りながら上下にぶんぶん振り回す。……それ、俺の手がもげちゃうから。
「……へぇー、ロジークっていうのか!俺はピクリン……名前については気にしないでくれよな!」
ピクリン──ピクリンさんは自分の名前をどうも気にしているらしい。ただし、決してピク〇ンを連想してはいけないと思う。髪は黄色だった。空は飛べなさそうだけど。
「俺はジーフェン・ヒドラ・ミンだ。よろしくな!!」
ジーフェン──第一世代抗ヒスタミン薬はピクリンとは真逆に名前を気にしていないようだ。表情から察するにむしろ誇りを持ってそうなくらいだ。髪は白色で目は赤く、一瞬アルビノなのかと思ってしまうくらいに髪が白かった。ただし肌が健康そのものなのでアルビノということはないだろうが少し心配になるな。
「ここでは貴族も何も身分は関係ないからタメ口でいいからな!!」
「「分かった!」」
ジーフェンは今さらな気もするがタメ口云々をベンズとピクリンに伝えたようだ。
「でも助かったー、平民なんてそんなに綺麗な言葉遣い出来ねーもんな」
「そうだよね……、僕も不敬に当たらないかヒヤヒヤしっぱなしだからさ……」
「うんうん!」
──ガシッ!
ベンズとピクリンはがっしりとした握手を交わしていた。──おい二人とも、お互いを見る目が歴戦の戦友を見る目になってるぞ。
日は流れ、遂に今日は王立ニトロ学園の入学式だ。
俺は敷地内のホールで先生方のお話を聞いていた。
因みに、新入生は全員で150名程でホールにはまだ幾分かの余裕があった。とても退屈な時間だったのだが、こっそりと後ろの男子生徒が話しかけてくれたので退屈しのぎになった。
「なあなあ、お前もしかしてグラストーン伯爵様の息子か?」
小声でこんなことを聞いてきた。
「そうですけど?」
「やっぱりな、その青髪はグラストーン家のものだと思ったよ。あ、俺はブチル、ブチル・ジ・スクエアっていうんだ!よろしくな!」
(ブチルにジにスクエアって……2-ブテンかな?)
俺は下らないことを考えながらブチルの話を聞く。クラスに可愛い女子はいるか?とか担任の先生は女の人がいい!とか言っていたが、こいつ頭の中身が性欲まっしぐらなんじゃないか……?
ブチルと小声で談笑していると、初等部の最上級生の挨拶があるようで皆一斉にステージの端の方を向く。
「おおっ、女神だっ……!」
「ああ……」
「「「はぁ~♡」」」
何名かの男子が仏のような顔をしたり、何名かの女子はうっとりしたような表情で熱い吐息を漏らす。俺はなんとなく予想がついた。これは学園のマドンナってやつだ、たぶん。
──で、ステージの方を見やると、
(……)
俺の思考が止まる。同時にちょっとした不安というものが湧き上がった。
何故ならば、そこにはよぉ~く見知っている人物がいたからだ。
綺麗なターコイズの髪が流れるように揺れる。
(……何やってるんですかね、ライラ嬢!?)
学園のマドンナ=ライラ嬢だったのだ。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。私はこの場で何を話せばいいのか分からなくてとても悩みました。……なので私は自分の最近の出来事に学園の存在理由を交えて挨拶とさせていただきます!」
チラッとライラ嬢と目が合う。これはもう嫌な予感しかない。前世から俺はあまり目立ちたくなかった。ただひたすら研究と本を読み漁ることが出来ればそれで十分だとさえ思っていたのに……。
「私は春期休暇でグラストーン伯爵領で伯爵の息子さんに魔法を教えていました。」
ブチルが「お、お前ぇ……」とか言って睨まれた気がしたがライラ嬢の話に集中していたせいで全く聞こえなかった。
「そして魔法を教えましたが、魔力を直ぐに巡らせられるようになり、驚くことにたったの十日で基礎を全部身につけてしまったのです!」
後ろにいるブチルがなんか騒いでいるが気にしない。
「そして思ったのです!こんな才能を溝に捨てるようなことはあってはならないと!!」
ライラ嬢は更に言葉を続ける。
「実際に昔そのようなことがあったそうです。そうしてこの王立ニトロ学園が設立されました。同時期に6年間は無償で教育を受ける権利が認められました。そして私は改めて教育機関の大切さを実感しました。故に私は公爵令嬢としてケミストラ王国に学問などの実績を立てて貢献したく思います!ご静聴有難う御座いました」
最後は貴族の礼をしてステージを降りていった。
(本当に何やってくれてるんですかねッ!?ライラ嬢!?)
──入学早々、俺は嫌な予感に見舞われた。
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