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学園編一年目
5話 学園編一年目Ⅱ
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そして俺は商店街へとやって来た。
俺はこの町並みを見て興奮してしまった。何故ならそこには俗に言う猫獣人や犬獣人の女性が八百屋や雑貨屋、冒険者御用達の武器屋、本屋等のお店に人を呼び込む売り子のような仕事をしている光景があったからだ。
(うおっほぉぉぉぃ!ケモミミだぁーーー!!)
俺はニヤついて持ち上がっているかもしれない頬を無理矢理下げる。やはり、無理矢理表情筋を動かすのはとても難しいな。
ただ俺には前世から苦手な生き物がいる。それは蜘蛛だ。ゴキブリも苦手ではあるが、それ以上に粘ついた糸を吐く蜘蛛だけは本当に無理だ。スパ〇ダーマンはよくビデオ屋で借りて観ていたが。
──何故このことを話したかって?
「うわあァァァァァァァ!!」
目の前には巨大な蜘蛛がいた。正確にはアラクネと呼ばれる蜘蛛の亜人がこちらを見ている。
──どうすれば、
◇ たたかう
◆ にげる
みたいなコマンドが脳裏にちらつく。俺は迷わずに《◆ にげる》を選んだ。
──しかし蜘蛛の魔の手からは逃げられない!!
アラクネの少女が“人の手”を伸ばしてくる。
(うわあァァァァァ!嫌だ、死にたくないィ!)
恥ずかしいことに、思わず俺は頭を抱えてしまった。いくら毒とかの抗体を持っているとはいえ苦手意識はどうにもならない。
「あのっ、大丈夫?」
何とアラクネの少女は人の手を俺の肩の上に乗せて心配してくれたのだ。
よくよく考えてみれば、蜘蛛は嫌いだけどアラクネは別に蜘蛛じゃなくて亜人っていう種族だし案外平気なのかもしれない。それとこの世界のアラクネという種族は俺の知っているアラクネではないようだ。俺の知識では下半身が蜘蛛であるが、この世界では人間とあまり変わらない。頭から蜘蛛の触覚があるが、蜘蛛にはない綺麗な青紫色の髪もあるわけだし。
──と、その時……。
「おいっ!なんでこんなところにアラクネなんかがいるんだ?」
身なりからして間違いなく冒険者の男がアラクネの少女に対して凄む。顔がやや赤らんでおり、酔っているというのが見てとれる。
「ひっ……」
この光景を見て俺は蜘蛛が苦手とかどうとか関係なく、むしろアラクネの少女が怯えているのに凄んでいる冒険者に怒りを覚えていた。まあ、テンプレではあるのだが。
「ちょっとその子を離してもらえますか?」
俺は冷めた微笑を冒険者の男に向ける。
「……やんのか?あ゛あ゛っ!!?」
──すると面白いことに俺の挑発にのってきた。
やはりテンプレだなぁ~と思って思わず笑ってしまった。そして冒険者の男の頭がさらに沸騰する。やっちまった……。取り敢えず元素魔法でクロロホルムでも作ろっと……。
「W=2、Lv=2【置換】」
俺は空気中の炭素と水素から生成したメタン2分子に塩素3分子を加え置換反応を起こし、生成したクロロホルムを冒険者の男に吸わせる。最悪、昏睡するかもしれないが俺の知ったことじゃない。
──周りから「やっつけてくれてありがとう!」とか「あいつ、うちの店の売り子にも脅しみたいなのをしてたからとてもスッキリしたよ!」とか聞こえるが、とりあえず笑うべきなのか反応に困るので喝采をあげるのは止めて欲しい。
因みに魔法は詠唱などは存在せず、“魔力測定器”の示すそれぞれの色をW(白)、Y(黄)、B(青)、G(緑)、R(赤)で表し、各魔法の位階──つまり難易度を数字で指定。次に威力をLv=(数字)で指定。最後に魔法名を告げることで発動する。
──それよりもアラクネの少女の方が気になる。
視界には冒険者の男から解放されたアラクネの少女は尻餅をついて膝をガクガクさせているのが映っていた。
「大丈夫ですか?」
尻餅をついたアラクネの少女に俺は手を差し出す。あれ?この子、顔が真っ赤になってプルプル震えてる。
──ショボショボショボ……。
どこからかともなく水音が聞こえる。俺はなるべく下を見ないようにアラクネの少女の顔を見ながら改めて手を差し出す。
「いやぁァァァァァ見ないでェーーー」
アラクネの少女が悲鳴を上げるがそんなのお構い無しに俺は“ある魔法”を使う。
「B=1、Lv=2【洗浄】」
「そしてっ、B=1、Lv=2【乾燥】!」
生活魔法でアラクネの少女を洗い流し、水で濡れた服を乾かす。この世界で風呂はそう易々と使えないし、この魔法さえあればひとまず衛生面は大丈夫である。まあ、学園の寮にはあったけど。
「あ、ありがとう……ございます……。あっ、私はポリメ……でしゅっ!!」
彼女──ポリメは噛みながらも名乗ってくれた。
「僕はロジーク、ロジーク・オルト・グラストーンという者です」
「あっ、え!貴族様!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
ポリメが今にも平伏しそうな勢いだったので急いでそれを止めさせる。
「別に畏まらなくていいですよ……。確かに僕は伯爵家の息子ですが、あまり同年代の友人がいないので……気軽に話しかけてくれると嬉しいです……」
話しているうちに何故だか悲しくなってきたな。
「それに……貴女は今年学園に入学するのでは?僕も今年から王立学園の生徒ですからね……出来れば仲良くしたいのですが、どうでしょうか?」
俺は仲良くしようと思って言ったのだが──
「はいっ!今年から学園の1年生です!よっ、よろしくおねがいいたします!」
一気に捲し立てて話したせいか語彙が変なことになってしまっているが……まあ、俺に1人目の友達が出来たので良しとしよう。
俺はこの町並みを見て興奮してしまった。何故ならそこには俗に言う猫獣人や犬獣人の女性が八百屋や雑貨屋、冒険者御用達の武器屋、本屋等のお店に人を呼び込む売り子のような仕事をしている光景があったからだ。
(うおっほぉぉぉぃ!ケモミミだぁーーー!!)
俺はニヤついて持ち上がっているかもしれない頬を無理矢理下げる。やはり、無理矢理表情筋を動かすのはとても難しいな。
ただ俺には前世から苦手な生き物がいる。それは蜘蛛だ。ゴキブリも苦手ではあるが、それ以上に粘ついた糸を吐く蜘蛛だけは本当に無理だ。スパ〇ダーマンはよくビデオ屋で借りて観ていたが。
──何故このことを話したかって?
「うわあァァァァァァァ!!」
目の前には巨大な蜘蛛がいた。正確にはアラクネと呼ばれる蜘蛛の亜人がこちらを見ている。
──どうすれば、
◇ たたかう
◆ にげる
みたいなコマンドが脳裏にちらつく。俺は迷わずに《◆ にげる》を選んだ。
──しかし蜘蛛の魔の手からは逃げられない!!
アラクネの少女が“人の手”を伸ばしてくる。
(うわあァァァァァ!嫌だ、死にたくないィ!)
恥ずかしいことに、思わず俺は頭を抱えてしまった。いくら毒とかの抗体を持っているとはいえ苦手意識はどうにもならない。
「あのっ、大丈夫?」
何とアラクネの少女は人の手を俺の肩の上に乗せて心配してくれたのだ。
よくよく考えてみれば、蜘蛛は嫌いだけどアラクネは別に蜘蛛じゃなくて亜人っていう種族だし案外平気なのかもしれない。それとこの世界のアラクネという種族は俺の知っているアラクネではないようだ。俺の知識では下半身が蜘蛛であるが、この世界では人間とあまり変わらない。頭から蜘蛛の触覚があるが、蜘蛛にはない綺麗な青紫色の髪もあるわけだし。
──と、その時……。
「おいっ!なんでこんなところにアラクネなんかがいるんだ?」
身なりからして間違いなく冒険者の男がアラクネの少女に対して凄む。顔がやや赤らんでおり、酔っているというのが見てとれる。
「ひっ……」
この光景を見て俺は蜘蛛が苦手とかどうとか関係なく、むしろアラクネの少女が怯えているのに凄んでいる冒険者に怒りを覚えていた。まあ、テンプレではあるのだが。
「ちょっとその子を離してもらえますか?」
俺は冷めた微笑を冒険者の男に向ける。
「……やんのか?あ゛あ゛っ!!?」
──すると面白いことに俺の挑発にのってきた。
やはりテンプレだなぁ~と思って思わず笑ってしまった。そして冒険者の男の頭がさらに沸騰する。やっちまった……。取り敢えず元素魔法でクロロホルムでも作ろっと……。
「W=2、Lv=2【置換】」
俺は空気中の炭素と水素から生成したメタン2分子に塩素3分子を加え置換反応を起こし、生成したクロロホルムを冒険者の男に吸わせる。最悪、昏睡するかもしれないが俺の知ったことじゃない。
──周りから「やっつけてくれてありがとう!」とか「あいつ、うちの店の売り子にも脅しみたいなのをしてたからとてもスッキリしたよ!」とか聞こえるが、とりあえず笑うべきなのか反応に困るので喝采をあげるのは止めて欲しい。
因みに魔法は詠唱などは存在せず、“魔力測定器”の示すそれぞれの色をW(白)、Y(黄)、B(青)、G(緑)、R(赤)で表し、各魔法の位階──つまり難易度を数字で指定。次に威力をLv=(数字)で指定。最後に魔法名を告げることで発動する。
──それよりもアラクネの少女の方が気になる。
視界には冒険者の男から解放されたアラクネの少女は尻餅をついて膝をガクガクさせているのが映っていた。
「大丈夫ですか?」
尻餅をついたアラクネの少女に俺は手を差し出す。あれ?この子、顔が真っ赤になってプルプル震えてる。
──ショボショボショボ……。
どこからかともなく水音が聞こえる。俺はなるべく下を見ないようにアラクネの少女の顔を見ながら改めて手を差し出す。
「いやぁァァァァァ見ないでェーーー」
アラクネの少女が悲鳴を上げるがそんなのお構い無しに俺は“ある魔法”を使う。
「B=1、Lv=2【洗浄】」
「そしてっ、B=1、Lv=2【乾燥】!」
生活魔法でアラクネの少女を洗い流し、水で濡れた服を乾かす。この世界で風呂はそう易々と使えないし、この魔法さえあればひとまず衛生面は大丈夫である。まあ、学園の寮にはあったけど。
「あ、ありがとう……ございます……。あっ、私はポリメ……でしゅっ!!」
彼女──ポリメは噛みながらも名乗ってくれた。
「僕はロジーク、ロジーク・オルト・グラストーンという者です」
「あっ、え!貴族様!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
ポリメが今にも平伏しそうな勢いだったので急いでそれを止めさせる。
「別に畏まらなくていいですよ……。確かに僕は伯爵家の息子ですが、あまり同年代の友人がいないので……気軽に話しかけてくれると嬉しいです……」
話しているうちに何故だか悲しくなってきたな。
「それに……貴女は今年学園に入学するのでは?僕も今年から王立学園の生徒ですからね……出来れば仲良くしたいのですが、どうでしょうか?」
俺は仲良くしようと思って言ったのだが──
「はいっ!今年から学園の1年生です!よっ、よろしくおねがいいたします!」
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