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第一章 数学の賢者

グラルの学院生活④

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 グラルとアイズの自己紹介が終わり、シータを含めた他の生徒の番となった。

「僕はロラン・ルナ・オルガンっていいます! よろしくな!」
「私はローラ・ルナ・オルガンといいます! ロランの妹です。よろしくお願いします」

 この兄妹のミドルネームは“ルナ”であるから、ロンバルド王国の隣国でべネトレット王国とは反対側に位置するベルガルダ帝国の出身であることを示していた。

 グラルは自己紹介を次々に聞いているとアイズ以外に知っている人物であるシータの番がやって来た。

「私はシータ・シン・トライアングルですわっ! よろしくしてあげてもよくってよ!!」
「「「「「…………」」」」」

(あいつ! これだから友達が出来ねぇんじゃねぇか……?)

 グラルは確信を持って言えるくらいにはこの推測に自信があった。
 グラルの推測を裏付けるかのように皆はしんと静まりかえっていた。

「あ、あれ……?」
「次は俺の番だな! 俺はアルブス・シン・ノースグリム。よろしく!!」

 シータの自己紹介で皆が沈黙したために自己紹介が終わったと判断されたようで、次の生徒──アルブスが自己紹介をした。

「ちょ、ちょっと貴方! まだ私の自己紹介が終わってな──」
「お前、で終わったんじゃないのかよ!?」
「終わるも何も……まだ途中でしたのに!!」
「そ、それはすまんかった……」

 アルブスは素直にシータへ謝罪すると、シータも諦めたような顔をして次の生徒へ順番を回した。

 そして次は生徒が立ち上がると、シータとアルブスの二人も着席した。

「私はシフォン・ルナ・ガウスといいます。ミドルネームから分かるかもしれませんが、丁度そこにいらっしゃるロラン君とローラさんと同じベルガルダ帝国の出身です。よろしくお願いしますね?」

 シフォンは薄い黄色の髪と赤色の瞳を持っており、頭頂部からへ伸びた癖のある髪が特徴的な少女であった。

 最後の“よろしくお願いします”の部分が疑問形であったことがグラルの首を傾げさせたが、それ以外の部分は手や足の動かし方や姿勢もしっかりとしていて品というものがあった。

「次は僕かな……? 僕はリード・フォン・ナウーシニキィといいます。是非仲良くしてください」

 リードは青色の髪にそれと同色の瞳を持っており、髪型は男子にしてはやや長めであった。

 自己紹介が進んでいき、遂にグラルのクラスメイトとなる仲間の名前が出揃った。

 名前を挙げていくと、残りの七人の名前は以下の通りである。

アレン・フォン・ヴァルトール
エレン・ルナ・アルモニオ
セリカ・ルナ・プルトーネ
リリス・フォン・セルフィー
ロイ・サウザー
マルス・アクスティカ
ノルン・シン・ミクラフォーン

 そして結果としては、男女比七対八のクラスとなったのである。



※※※



「終わったみてーだなぁ~」

 ファンクが終わった頃になってから部屋に戻ってくると、生徒たちからの非難のような視線がファンクへと突き刺さった。

「今日は簡単にホームルームをして解散となる。だからお前らのためにも簡潔に説明するぞ~」

 皆の心の内が一つに纏まった。
 すなわち、“早く終わらせたいのはファンク先生でしょう”ということである。

「あー、それじゃあまずは今週一週間の日程についてからだぁ~」

 そしてファンクは少しばつが悪そうに頭を掻きながら、この一週間の予定についての説明を始めたのである。

 一週間の予定を簡潔に纏めると次のようになる。

 初日(今日)でおおまかな説明をして一週間の間、学院の環境に慣れてもらう。

 二日目にクラブの紹介があり、その後で一時間だけ授業が設けられている。

 三日目からはカリキュラムに沿って授業が開始されることになり、四日目からは三日目と同様に進行することになるのである。

 こうしてグラルたちの学院生活が幕を開けたのだった。
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