1 / 2
はじまり
しおりを挟む
俺はある任務の為、王宮北門までやって来た。
何やらそこで門番担当騎士達が揉めている様な声が聞こえて来る。嫌だなぁ。嫌な気しかしない。
「なんなんだ……揉め事かぁ~。巻き込まれたくないんだけどなぁ俺。日々の仕事で十分煩い奴等の相手はやってるんだよ、これ以上は遠慮したいんだけどなぁ。近衛騎士なんて辞めて、のんびり自由に冒険者でもやろうかな。
実家の公爵家も今は安定してるし、兄貴に任せとけば、今後も大丈夫だろう。うるさ可愛いガキ達もスクスク成長してる事だしな。本気で計画たててやろうかな。
やばっ門番に見つかったぞっ。逃げるわけにはいかねーか」
俺は観念して、すました顔で近寄ってみた。
「アンティスト副団長!お疲れ様です。良かったです。近衛騎士の方を呼びに行こうと思っていたんです」
「一体何があった」
門番達は、本当に困っていたのだろう。俺を見て、天使を見たかの様に顔を輝かせた。珍しいことだ、うちの門番達は冷酷で有名な筈では?少しでも怪しければ貴族だろうとなんだろうと王宮内へは、何人たりともいれぬ!!!が心情だった筈だが。
門番達が相手をしていた一人の女を観察してみるが、これはまた、えらい変わった服装をしているな。
大抵王宮へ来る女達は、着飾ってジャラジャラ色々な飾り物を重そうにつけて、化粧もバッチリで、その上匂いも臭い奴らが多数派だからな。
俺の好みは出来るだけシンプルが好ましい。内側から滲み出る色気があれば普通に楽しめるんだよ。それに、化粧や香水は舐めると、苦いんだよ。致してる時に、口の中で香水や化粧の味がするのは懲り懲りだからさ。本当興醒めする。
「お嬢様。失礼します。私は、近衛騎士団副団長のアンティストと申します。王宮へは何か御用がおありでしょうか?」
俺は、いつも通りの人好きのする満面の笑顔で、ドレスではなく作業着の様な簡素な服を着た女に話しかけた。顔や身体の素材は良さそうなのに、きちっと手入れしてないのが、勿体ない女だと思う。
「あのーすみません。ごめんなさい。本当はちゃんとした格好で来る予定でした。準備もしてたんです。依頼者にも、出来るだけ身綺麗にして来る様に、と。何度も何度も伝えられたのですが、朝起きたら服が全て消えてました。宿中探してもなく。
私の宿泊している宿の前に大きな湖がありまして、昨夜遅くまで、ベランダに出て月と湖が綺麗だったので、それを夢中で描いてて……そのまま朝まで寝てました。部屋に入って二度寝して、時間なので用意しようと見たら……服という服が無くなってました…」
何言ってんだこの女はって最初は思ったが、何となく意味がわかってしまった。賢い俺は推理して正解を導き出してしまったんだよ。
「理由はわかりました。それでは、貴女のお名前を教えてもらえますか?」
「はい。私はララミラと申します。皇女様の肖像画依頼をいただきましたので、今回此方に来たのですが……この様な事になってしまいました。申し訳ないのですが、また、日を改めて準備をして来ます」
「いえ、大丈夫ですよ。このまま行きましょう。私は女流画家のララミラ様の案内の為にこちらに迎えに来たのですから。御安心ください。因みに紛失した物は、衣服だけですか?」
俺が聞けば、ララミラは少し涙声で応えた。
「服と、あまりないのですが、化粧類と櫛等の小物類が無くなってました。他のお金などの貴重品は何故か全てありました」
流石、俺!推理当たってたわ。種明かしは後にして、先ずはこの可哀想な女を皇女の元へ連れていかねば、今日の俺のお仕事が終わらねーからな。
明日休みだから今夜は街に出て、俺の中の溜まりに溜まった全ての廃棄物を一滴残らず、掃き出すのさっ。何故、わざわざ街に出るのかって。それはな。俺の経験上、王宮内の女や貴族の女は、後々何かあると厄介だからな。
ちゃんと分別つく割り切った女が一番だ。後腐れ無く、お互い金で割り切った関係が一番だ!心など必要ない!!
今夜のお楽しみの為に、お仕事頑張るぞ!
何やらそこで門番担当騎士達が揉めている様な声が聞こえて来る。嫌だなぁ。嫌な気しかしない。
「なんなんだ……揉め事かぁ~。巻き込まれたくないんだけどなぁ俺。日々の仕事で十分煩い奴等の相手はやってるんだよ、これ以上は遠慮したいんだけどなぁ。近衛騎士なんて辞めて、のんびり自由に冒険者でもやろうかな。
実家の公爵家も今は安定してるし、兄貴に任せとけば、今後も大丈夫だろう。うるさ可愛いガキ達もスクスク成長してる事だしな。本気で計画たててやろうかな。
やばっ門番に見つかったぞっ。逃げるわけにはいかねーか」
俺は観念して、すました顔で近寄ってみた。
「アンティスト副団長!お疲れ様です。良かったです。近衛騎士の方を呼びに行こうと思っていたんです」
「一体何があった」
門番達は、本当に困っていたのだろう。俺を見て、天使を見たかの様に顔を輝かせた。珍しいことだ、うちの門番達は冷酷で有名な筈では?少しでも怪しければ貴族だろうとなんだろうと王宮内へは、何人たりともいれぬ!!!が心情だった筈だが。
門番達が相手をしていた一人の女を観察してみるが、これはまた、えらい変わった服装をしているな。
大抵王宮へ来る女達は、着飾ってジャラジャラ色々な飾り物を重そうにつけて、化粧もバッチリで、その上匂いも臭い奴らが多数派だからな。
俺の好みは出来るだけシンプルが好ましい。内側から滲み出る色気があれば普通に楽しめるんだよ。それに、化粧や香水は舐めると、苦いんだよ。致してる時に、口の中で香水や化粧の味がするのは懲り懲りだからさ。本当興醒めする。
「お嬢様。失礼します。私は、近衛騎士団副団長のアンティストと申します。王宮へは何か御用がおありでしょうか?」
俺は、いつも通りの人好きのする満面の笑顔で、ドレスではなく作業着の様な簡素な服を着た女に話しかけた。顔や身体の素材は良さそうなのに、きちっと手入れしてないのが、勿体ない女だと思う。
「あのーすみません。ごめんなさい。本当はちゃんとした格好で来る予定でした。準備もしてたんです。依頼者にも、出来るだけ身綺麗にして来る様に、と。何度も何度も伝えられたのですが、朝起きたら服が全て消えてました。宿中探してもなく。
私の宿泊している宿の前に大きな湖がありまして、昨夜遅くまで、ベランダに出て月と湖が綺麗だったので、それを夢中で描いてて……そのまま朝まで寝てました。部屋に入って二度寝して、時間なので用意しようと見たら……服という服が無くなってました…」
何言ってんだこの女はって最初は思ったが、何となく意味がわかってしまった。賢い俺は推理して正解を導き出してしまったんだよ。
「理由はわかりました。それでは、貴女のお名前を教えてもらえますか?」
「はい。私はララミラと申します。皇女様の肖像画依頼をいただきましたので、今回此方に来たのですが……この様な事になってしまいました。申し訳ないのですが、また、日を改めて準備をして来ます」
「いえ、大丈夫ですよ。このまま行きましょう。私は女流画家のララミラ様の案内の為にこちらに迎えに来たのですから。御安心ください。因みに紛失した物は、衣服だけですか?」
俺が聞けば、ララミラは少し涙声で応えた。
「服と、あまりないのですが、化粧類と櫛等の小物類が無くなってました。他のお金などの貴重品は何故か全てありました」
流石、俺!推理当たってたわ。種明かしは後にして、先ずはこの可哀想な女を皇女の元へ連れていかねば、今日の俺のお仕事が終わらねーからな。
明日休みだから今夜は街に出て、俺の中の溜まりに溜まった全ての廃棄物を一滴残らず、掃き出すのさっ。何故、わざわざ街に出るのかって。それはな。俺の経験上、王宮内の女や貴族の女は、後々何かあると厄介だからな。
ちゃんと分別つく割り切った女が一番だ。後腐れ無く、お互い金で割り切った関係が一番だ!心など必要ない!!
今夜のお楽しみの為に、お仕事頑張るぞ!
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
「番外編 相変わらずな日常」
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる