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傷ついた心

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「えっーとそうねぇ……なんといっていいのかな」


ラティラは首をひねり悩み考えている。無意識にラインハルトの手をこねくり回しながら。


「……幼い頃は、王都と王宮に行くのが楽しみで待ち遠しかったの。煌びやかで女の子としては夢の世界よね。 話の合う楽しい友達も出来て、とても嬉しかったわ。でも嫌な事が続いた時に、仲良くなった友達に知らないふりをされたのが、一番哀しかったのかな」


ヴァント殿下は、下を向き唇を噛み締めた……


「1人になってからは……大人も子供もチラチラ見てはクスクス笑うの。

 言葉にした時は大した事ないと思うでしょう。一人にされて、周りにそんな事されるとね。本当に嫌な気持ちになるのよ。惨めな消えたい気持ち……

 呼び出してあからさまに言われたりもしたけど……
まぁ……上げれば色々あるんだけどね。いちいち今更言ってもねぇ。
    
 多分なんだけど、ノリや軽い気持ちでやってた人がほとんどだと思うし、私の心の中に染み込んでる嫌な気持ちって、やっぱり言葉にしても伝わらないよね……

    それに、その場の空気や匂いって何故か忘れられなくて……今だに空気感を思い出すと胸がギュってなるし、似たような匂いや風や季節が感じられると薄れはしたけど、思い出すのよ。

     これって私が乗り越えないといけないものだと思っててね……

    ゆっくりだけど私なりには、乗り越えようとしてるんだけど、心の中って難しいのね……」
   

ラティラは目を瞑り一つ溜息を吐いて又、話始めた。


「辺境に帰って、少し人に会いたくなくて部屋にも篭ってたけど、家族や辺境皆んなの優しさで少しづつ外へ出れるようになって。

    元々私は、令嬢の中にいても楽しいとは思えなくて、辺境に帰って令嬢達の中に居る事が一番の苦痛だったの。

    自然と以前から仲の良かった傭兵軍にいる事が多くなってね。太ってた事も王都で言われてた事だったから、自分を一つでも変えてみようと身体を動かし始めたの。それが私の逃げ道だったのかな?  それから体形を変える為に、運動を始めるとね。そっちの方が楽しくなっちゃって、そのまま頑張っちゃった。

    今でも……思い出……とは言えないし、忘れられもしないけど。今の私がいるのも過去のおかげだとは思えるようになったかなぁ?

    時々夢に出たり、辛いけどね。今の私になれたのは過去があっての事だと思えるようにはなったのよ。
    
 いじめた人達は許せないけど、そんな事言っても始まらないし、前みて楽しく笑って生きたいじゃない?
 でもね、判るかなぁ? 身体を鍛えてもね。心はなかなか鍛えられないんだよ。いつまでもジクジク痛むの。わかって貰えないと思うけど。後……謝罪なんていらない。謝られても返せないから。ごめんなさい……」
    


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