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そのまま静寂な状態が続いた。
アルベルトは次期辺境伯だが、現在の宰相とは気が合い、良く飲み合う間柄だ。年齢的には、親と子程離れているのだが何故かお互い気が合った。性格だろうか? そんな事言ったなら不快な顔になるだけだ。
話の種に王宮や国の事を話すのだが、今は安定しているこの国は将来不安を抱えている。次期皇帝に誰を据えるかという事だ。本来なら皇后の息子で長男のレオン殿下なのだが、何かが不足している決定打に欠けるのだ。
皇帝には3人の王子が居るが、皇帝は未だに後継者を指名していないのだ。その為、色々な憶測をよんでいる。レオン殿下は頭脳は申し分なく見栄えも良い、昔は精神的に落ち着かないところもみえたが、現在は冷静な判断と対応もできる。剣の腕もなかなかだ。笑顔はある。とても綺麗な笑顔だが、何処か冷たさが拭えない感じが残るのだ。
国を統べる皇帝は歴代色々な人物が居た。何か人を惹きつける魅力が一番大事だとアルベルトは思っているのだ。そもそも悪政を強いる独裁者的な皇帝は、論外だ。アルベルトはレオン殿下の本質が見たかった……只の好奇心かも知れないが、あの不透明な感じが気になるのだ。
ラティラの心に傷を付けた主犯なのは知っている。
愛しい変わり者の妹が、今も隠れて思い出しては泣いているのも知っていた。今回引き合わせた事も、アルベルトとしても、合わせるのかどうするか散々悩み抜いたが、結局ラティラの思うままにした。これで良かったのか……アルベルトも不安なのだった。
皆が色々考えているだろう、この無言の時間に、扉の開く音が響きわたった。この医務室の部屋は、部屋と部屋で通り抜けられるように繋がっている。その、扉だ。その扉が開いたという事は、隣の部屋に誰かが居たという事だ。
隣の部屋から扉を開けて、出てきた人物は。
第二王子ヴァント殿下だった。王族特有のブルーの瞳それも深みのあるミッドナイトブルーの持ち主だ。髪もエメラルドグリーンでとても鮮やかな色を短めにしている、優しそうで落ち着いた雰囲気を持つ王子だ。王族の教師の言葉だと、多分オールマイティに何事もそつなくこなせる能力がある筈なのに、わざと数カ所間違えているであろうという事だ。上手く隠しているので確信では無いが……
一斉に目線がヴァント殿下に向かい、ヴァント殿下も一人一人目線を合わせたが、ラティラで止まり少しだけ見つめ合い。ヴァント殿下は勢い良く頭を下げた。何も語らず、ただ頭を下げたまま上げなかった。
見兼ねたアルベルトがヴァント殿下に近づいて、肩を優しく叩くとヴァント殿下は頭を上げたが、やはり言葉は発しなかった。
ただラティラを真摯に見つめるだけだった。
「えーと……なんだか関係者が集まったみたいだね。こんな機会も無いだろうし、お互いの思っている事を言ってみないかい? 私達は今、大人と子供の狭間の大人に近い様なものだと私は思うんだ。これから先は、発言にも各自責任が求められる人間が多いだろうが、今この時は少し心を緩めて言い合う事も必要だと思うのだがどうだろう?
という事で、ラインハルトお前が今思っている事を、包み隠さず言え!」
「はぁ~ 何言ってんだよお前! 俺は関係ないだろうが!」
「ふぅ~ん? 関係無いねぇ?」
アルベルトの視線がラインハルトが握っている手を見ている。
「ウッ……そうだなぁじゃあ軽くな、軽く、俺の特技は剣や体術だ! 子供の頃からじっとしてる事が嫌で何時も走り回っていたな。大人になっても変わらずだが、今は仲間が居る! 仲間を何があっても殺さない様にする為に、俺は騎士団長になったんだよ。何者にも邪魔されないようにな。理不尽な死や処罰は見たく無いんだよ。でも、今は少し違うかな……
まだよく判らないが、もう一つ護りたいと感じる奴が現れたからな」
明るい好奇心旺盛な長めの跳ねてるオレンジの髪と、オリーブグリーンの落ち着いた草色の瞳でラティラを暖かく見つめて、握っていた両手を離し片手でラティラの頭をガシガシ不器用に撫でて、もう片方の手は今度は指と指を絡ませしっかりと繋ぎ合せた。
ラティラは、話を聞きながら自然と俯いてしまった。顔が紅く染まっているだろうからだ。
手を離された時、今迄あった暖かなものが無くなり一瞬、淋しく置いて行かれた様な気がした。
すぐにもっとしっかりと繋がれて、安心と恥ずかしさで、内心はパニック状態だった。
「おい。ラインハルトやり過ぎだ。お前は昔から飄々としている癖に、いざとなると的確な行動力を発揮するよな。だからお前は女にモテるんだよ。
鍛えあげた、ガッチリした身体で包容力バッチリだもんな。見た目も悪く無いし。ラティラ気をつけろ。こんな無害そうな奴が一番手が早いんだよ」
「お前なに言ってんだよ! 俺は疚しい事など何一つ無いわ! お前と一緒にすんなよ」
お互い嫌な顔で睨み合う。
「お兄様大丈夫よ。そうねぇ大分落ち着いたから。私もきちんと話さないとね」
ラティラはラインハルトと繋いだ手に少し力を込めた。
アルベルトは次期辺境伯だが、現在の宰相とは気が合い、良く飲み合う間柄だ。年齢的には、親と子程離れているのだが何故かお互い気が合った。性格だろうか? そんな事言ったなら不快な顔になるだけだ。
話の種に王宮や国の事を話すのだが、今は安定しているこの国は将来不安を抱えている。次期皇帝に誰を据えるかという事だ。本来なら皇后の息子で長男のレオン殿下なのだが、何かが不足している決定打に欠けるのだ。
皇帝には3人の王子が居るが、皇帝は未だに後継者を指名していないのだ。その為、色々な憶測をよんでいる。レオン殿下は頭脳は申し分なく見栄えも良い、昔は精神的に落ち着かないところもみえたが、現在は冷静な判断と対応もできる。剣の腕もなかなかだ。笑顔はある。とても綺麗な笑顔だが、何処か冷たさが拭えない感じが残るのだ。
国を統べる皇帝は歴代色々な人物が居た。何か人を惹きつける魅力が一番大事だとアルベルトは思っているのだ。そもそも悪政を強いる独裁者的な皇帝は、論外だ。アルベルトはレオン殿下の本質が見たかった……只の好奇心かも知れないが、あの不透明な感じが気になるのだ。
ラティラの心に傷を付けた主犯なのは知っている。
愛しい変わり者の妹が、今も隠れて思い出しては泣いているのも知っていた。今回引き合わせた事も、アルベルトとしても、合わせるのかどうするか散々悩み抜いたが、結局ラティラの思うままにした。これで良かったのか……アルベルトも不安なのだった。
皆が色々考えているだろう、この無言の時間に、扉の開く音が響きわたった。この医務室の部屋は、部屋と部屋で通り抜けられるように繋がっている。その、扉だ。その扉が開いたという事は、隣の部屋に誰かが居たという事だ。
隣の部屋から扉を開けて、出てきた人物は。
第二王子ヴァント殿下だった。王族特有のブルーの瞳それも深みのあるミッドナイトブルーの持ち主だ。髪もエメラルドグリーンでとても鮮やかな色を短めにしている、優しそうで落ち着いた雰囲気を持つ王子だ。王族の教師の言葉だと、多分オールマイティに何事もそつなくこなせる能力がある筈なのに、わざと数カ所間違えているであろうという事だ。上手く隠しているので確信では無いが……
一斉に目線がヴァント殿下に向かい、ヴァント殿下も一人一人目線を合わせたが、ラティラで止まり少しだけ見つめ合い。ヴァント殿下は勢い良く頭を下げた。何も語らず、ただ頭を下げたまま上げなかった。
見兼ねたアルベルトがヴァント殿下に近づいて、肩を優しく叩くとヴァント殿下は頭を上げたが、やはり言葉は発しなかった。
ただラティラを真摯に見つめるだけだった。
「えーと……なんだか関係者が集まったみたいだね。こんな機会も無いだろうし、お互いの思っている事を言ってみないかい? 私達は今、大人と子供の狭間の大人に近い様なものだと私は思うんだ。これから先は、発言にも各自責任が求められる人間が多いだろうが、今この時は少し心を緩めて言い合う事も必要だと思うのだがどうだろう?
という事で、ラインハルトお前が今思っている事を、包み隠さず言え!」
「はぁ~ 何言ってんだよお前! 俺は関係ないだろうが!」
「ふぅ~ん? 関係無いねぇ?」
アルベルトの視線がラインハルトが握っている手を見ている。
「ウッ……そうだなぁじゃあ軽くな、軽く、俺の特技は剣や体術だ! 子供の頃からじっとしてる事が嫌で何時も走り回っていたな。大人になっても変わらずだが、今は仲間が居る! 仲間を何があっても殺さない様にする為に、俺は騎士団長になったんだよ。何者にも邪魔されないようにな。理不尽な死や処罰は見たく無いんだよ。でも、今は少し違うかな……
まだよく判らないが、もう一つ護りたいと感じる奴が現れたからな」
明るい好奇心旺盛な長めの跳ねてるオレンジの髪と、オリーブグリーンの落ち着いた草色の瞳でラティラを暖かく見つめて、握っていた両手を離し片手でラティラの頭をガシガシ不器用に撫でて、もう片方の手は今度は指と指を絡ませしっかりと繋ぎ合せた。
ラティラは、話を聞きながら自然と俯いてしまった。顔が紅く染まっているだろうからだ。
手を離された時、今迄あった暖かなものが無くなり一瞬、淋しく置いて行かれた様な気がした。
すぐにもっとしっかりと繋がれて、安心と恥ずかしさで、内心はパニック状態だった。
「おい。ラインハルトやり過ぎだ。お前は昔から飄々としている癖に、いざとなると的確な行動力を発揮するよな。だからお前は女にモテるんだよ。
鍛えあげた、ガッチリした身体で包容力バッチリだもんな。見た目も悪く無いし。ラティラ気をつけろ。こんな無害そうな奴が一番手が早いんだよ」
「お前なに言ってんだよ! 俺は疚しい事など何一つ無いわ! お前と一緒にすんなよ」
お互い嫌な顔で睨み合う。
「お兄様大丈夫よ。そうねぇ大分落ち着いたから。私もきちんと話さないとね」
ラティラはラインハルトと繋いだ手に少し力を込めた。
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