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朝の慣例行事

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王都のディビーズ辺境伯家の朝は早い。

 動きやすい服装をしたラティラを筆頭に、傭兵や護衛達が朝日が昇って直ぐに庭に集まってきた。自然と皆は整列し、前にはラティラが進み出て話しだす。


「おはよう! 皆んなよく眠れた? 昨夜王都に無事到着したお祝いとか言って、すっごくお酒飲んでたけど?大丈夫なの?」

「おはようございます! 昨日辺境から来た者も、こちらに居た者も、全員揃っております」

「流石、皆んな凄いね! よし! じゃあいつもの始めるよ」


他のお屋敷は庭に花等植えて、綺麗な庭園を作成していますが、この辺境伯の庭園は何もありません。いえ、だだっ広い砂地の端には、模擬戦で使う、色々な種類の剣や弓、その他の特殊な武器類が、綺麗に並んでおります 。


「軽く身体を温めて、模擬戦で行くよ! ダッシュで先ずは、私を捕まえてみなさい。捕まえた者には5日の休日をお兄様に頼んであげるわ! ,,ピ,, はじめ!」


ダッシュで逃げるラティラ、それを追う男達。静かだったお屋敷が、いきなり罵声飛び交う戦場に早変わりだ。何事? と、窓から眺めるメイド達や使用人達その皆が注目する中、無邪気に良い年をした男共が、本気で走り回っている。


「はい、終了~! ダイアンが私の手を掴んだわ。ダイアンは明日から5日お休みね!お兄様には伝えておくから、皆も色々お仕事変わってあげてね~ 次は、50回腿上げ、腹筋背筋~,,ピッ,,はじめ!」1.2.3.4.5……


その後、模擬戦で良い汗を流して。朝の練習は終了です。各自、その後は部屋へ帰ってさっぱりお風呂へ。


「ねぇ貴女達? なんでそんな目で私をみるの? お風呂へ入ろうとしたんだけど、あまりのキラキラした視線が痛いわ……昨日はそんなのでは無かったわよね?」


ラティラの部屋に居るお風呂の手伝いの三名のメイドが、お互いキョロキョロ視線を見合わせて。


「申し訳有りません。崇拝する目で見てしまいました! 今朝のラティラ様の動き、スタイル、全てにリスペクトですわ!」

「ハイ! とても素敵でしたわ」

「過去の体形と、どうやってお別れ出来たのかも、私は知りたいのですわ」


三人のメイドの言葉でラティラは納得して、ウンウン頷いている。


「わかったわ! 貴女達は綺麗になりたいのね。努力するのは良い事です。私、前向きな人は好きですよ。教えましょう。私が痩せたのは……ゴニョゴニョゴニョ……どう? できそう? ちょっとだけキツイけど頑張ってやると、確実に変化するわよ」

「「「はい! 頑張ります」」」


メイド達は笑顔でキラキラ輝いています。それを見てラティラも嬉しく満面の笑顔です。


「じゃあ私お風呂にいくわね。お手伝いは要らないから」


言ってさっさとお風呂に入って行きました。

 サッパリした後。軽く皆んなでワイワイ朝食を……

 辺境伯家は、代々ごくごく内輪の食事や生活は、他の貴族とは違い皆んなでワイワイが基本だ。その理由は命をかけて護られるからには、信頼関係が必要で食事は仲間意識を作るのには、最適な場所だからだ。臣下達や護衛が、なあなあになったり下に見たりしないところは代々ディビーズ辺境伯家の、上手な所だと思う。食事時間も短縮できるし良い事だ。


「お兄様今日の予定を、教えて下さらない? 舞踏会も来週ですから、色々用意もありますよね?」


食事を終えゆったりお茶をいただいている時に、ラティラからの質問があった。アルベルトはラティラにチラッと視線を投げ。


「昨日帰って来たばかりだけど……元気そうだし。そうだね。バルサ叔母様を呼んで簡単な、打ち合わせをしようか」

「嬉しい。久しぶりに叔母様に会いたいわ」


アルベルトは、斜め後ろに立っているセバスにチラリと視線を向けると又、優美に紅茶を飲み始めた。セバスは静かに部屋を出て行った。

 ラティラがのんびり部屋で寛いでいると、階下が騒がしくなった? 部屋を出て階段から覗いて見ると、アルベルトと何やら話していた女性が、視線を感じたのかラティラの方を仰ぎ見た。


「叔母様!」


ラティラは笑顔で階段を駆け下りた。


「まあまあラティラお久しぶりですわね! 今、王都では貴女の話題で持ちきりですのよ。美しく強くまるで女神の様だと、騎士団の殿方を中心に噂が広まっていますのよ」


ラティラに向けて、優美で端正なスマイルを向けてくれています。


「本当にお兄様とバルサ叔母様は髪と瞳の色だけではなく、雰囲気も似ていますわね!」


ウンウン納得した様に頷いているラティラに。


「そうねぇ我が子達より、アルベルトの方が見た目も色々な面も似ているかしらね」

「バルサ叔母様立ち話も何ですから、座りませんか?
辺境伯領地のお菓子も、持って帰って来たのですよ」

「なつかしいわ~ 食べたいわぁ」


3人でにこやかに話し歩いていると、叔母様の背後にチラチラ何か居る?


「叔母様背後の子は?」

「あ~ごめんなさい。今日娘のナナが、用事があって孫のソフィアを預かる事になっててね。貴方達にも紹介しようと思い、連れて来たのよ。自己紹介は?」


叔母様の背後からトボトボ俯きながら8歳頃の、少しぷくぷく柔らかそうな子が出て来て、可愛いくカーテシーをした。


「はじめまして、ソフィアです……よろしくお願い致します」


ラティラは屈んで、目線を合わせソフィアに。


「はじめまして、ラティラですわ仲良くしてね」


ラティラの行動に,,ビク,,としたソフィアは又、叔母様の背後へ。


「あらまあ!? 先週迄はこんな感じでは無かったのよ? どうしたのかしら?」


バルサは首を傾げながらも、心配そうだ。


「叔母様、ソフィア嬢こちらに」


部屋の扉を開けて、アルベルトが女性達をエスコートした。

 紅茶や辺境特産果物の果汁ジュースと辺境のお菓子、懐かしい話を交えながら楽しい時間を過ごしていると、静かにジュースを飲んでいたソフィア嬢が、ボソボソ小言で。


「ラティラお姉様……どうやったらそんなに綺麗になれるの?」

「え? ソフィアちゃん充分可愛いわよ!?」

「可愛くなんかないわ! だってだって、皆んな私の事ブサイクだってデブって言うのよ!」


今迄我慢していたのが切れたのか、わんわん涙を流しながら泣きだした……


「ソフィアちゃん…」


ラティラは屈み目を合わせて。


「ソフィアちゃん。私も幼い頃ソフィアちゃんよりも、もっともっと太っててね。皆んなに意地悪されたの。その後いっぱい努力して今があるのよ。頑張れるなら色々教えてあげるけど、どうする?」


「ラティラお姉様お願いします。私、綺麗になりたいし、意地悪言った子達を見返したいわ!」

「じゃあ先ずは身体の形を綺麗にして、美味しい物をゆっくり食べて心を強くしましょう。人は関係ないわよ。
自分が楽しく元気が、一番なんだからね。後で私の部屋でお話ししましょ」


…うふふふふふ…
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