19 / 20
the end
しおりを挟む
「……ミュラ……貴女……どうしてここに」
馬車の灯に浮かび上がる姿は、可愛らしい天真爛漫な笑顔。
キファント様の背中へ抱きつき、うるうるした瞳でキファント様を見上げるミュラに、私は何故か身震いした。
「えっ?あれ?お姉様!生きてたの!!お父様達心配してたわよ。お姉様死んじゃったって。ほーんとお父様もだけど、あの家の人達って最低だよね。ミュラあの人達大っ嫌い」
チラッと私を見た後は、キファント様へ目線を向けて、ほっぺを膨らまし首を傾げながら話してるミュラ。
「貴女……子供は?子供はどうしたの、確か一歳過ぎになる子いるわよね?それにライト様は、ライト様とは一緒ではないの?」
「えーーー!何言ってんの?私、未婚だよぉ~!子供なんていないわょ!失礼よ。お姉様。アレは、ほんの冗談よ、あんなの皆んな本気にするんだもん。最低だわ。笑って許せないなんて。
ねぇ~そう思うわよねぇお強い獣人騎士様。ミュラ強い人だぁーい好きなんです。
獣人騎士様のお名前はなんておっしゃるの?獣人さんって本当凄いですね。私はミュラです。獣人の騎士様、凛々しくて、カッコよくてすっごくお強いんですものビックリしましたよぉ。やっぱり男性は強さだとミュラ思うんですよね。
それに、その耳すっごいですね。何の獣人様なんですか?獣人って本当に居たんですね。ここまでお姉様を探しに辛い旅をしてきて良かったですぅ。お姉様が死んだって聞いてミュラ信じられなくて、居ても立っても居られなくて一人旅に出たんですよ。
そしたら、いきなり襲われて運命の人に助けられるなんて、ミュラって幸せ者だわ。ねっ、獣人騎士様」
「私は貴女の運命の人ではない。離してくれないか」
キファント様はミュラの手をやんわり払い除け、私の元へ近づいて来てくれた。
「大丈夫だったかレティ。怖くは無かったか」
風で散らばっていた私の髪を、優しく整えながら聴いてくれた。キファント様はミュラの魅力に靡かないんだわ。以前の事があったから、キファント様も変わるのかとビクビクしてた私は、安心して涙が溢れてきた。
私の溢れる涙を優しく拭ってくれながら、護るような笑顔で包んでくれた。
「さあ、帰ろうか」
「はい」
上空にいるラリーさんにキファント様が合図をすると、ラリーさんが目の前に降りて来てくれた。私達がラリーさんに乗り込もうと動いていたら、背後からミュラのイライラした声が聞こえてきた。
「えっ!待ってよお姉様。私もお姉様と一緒に行く!置いてかないで!!獣人騎士様と一緒にいたいもの。だって私の運命の人だから」
「ミュラ貴女、ライト様の時も同じ事私に言っていたわよ。貴女には何人もの運命があるのね。凄いわね」
私の言葉に満面の笑みを讃えて喜ぶミュラ。そこは、喜ぶところではない筈なのに、この子はやはり色々と理解しないといけない事が多過ぎすぎると思うわ。憎しみや怨みより、当たり前のことがわからないこの子に、悲しみが私の中に産まれた。
「ミュラ嬢。悪いがラリーには、二人しか乗れないんだ」
「じゃあ!可愛い私が騎士様と一緒に乗るわ。その方が嬉しいでしょ騎士様も」
「悪いが、ラリーは乗せる人を選ぶんだ。君では無理だ。それに、私の愛している人は君ではない。レティなのだから。
先程連絡したから、もう時期獣人の騎士が来るだろう。君も逃げてばかりではなく、自分自身の後始末をきちんとして来なさい。
来る騎士には貴女を御実家に連れて行く様に伝えているから、帰るといい」
キファント様はいつ、その様な連絡をしたのかしら?獣人国には私には理解できないことが多いけれど、少しづつで良いの、キファント様や獣人国の皆様と共に生きていきたいと思う。
私をラリーさんの上にゆっくり乗せてくれた後、キファント様も背後にヒラリと乗り込んできてくれた。背中の温もりに安心する。そして、ふわりと浮かんだけど、残るミュラが心配でキファント様に問おうと口を開いた時、全方位上空から聴き覚えのある大きな声が聞こえてきた。
「団長!!!!すっ飛ばして来ましたよ!お役目きちんと果たしますから!御安心おーーーー!!」
「宜しく頼む」
「了解ですーーー!!!うちのフィンは素直ですから女の子なら誰でも乗れますから平気です。お任せあれ」
マーシャル様が鷹の様な鳥に乗って凄いスピードで向かって来た。そして、下に降りて行った。何か、ミュラのテンションが上がったみたいで一安心したけど、大丈夫かな。
私達は、ラリーさんと一緒に家路へ帰ります。キファント様に包まれて飛んでいると、包み込む腕の強さが強まりました。そして、
「レティ……すまない。君の事を調べた」
なんとなくだけど、話から知ってるのかなッとは感じましたが、キファント様のお家は格式の高い貴族だから、周り的にも仕方がない事だとは思います。ちゃんと理解してますから。
「……私には婚約者がいました。攻略的な婚約でしたが、より良い関係を築く事ができなかったのは、私の所為もあります。それに、実家から逃げたいがやゆえに、偽装をして行方をわからなくしてしまいました。
この様な私ですが、キファント様は……私を受け入れていただけますか」
「私は、レティが何者でも、私の家や家族を棄てようともレティが私を受け入れてくれたのなら、奪い去る予定だった。誰も知らない土地で二人で生きて行くのも楽しいかなと想像していたぞ。
レティと美味しい食事さえあれば、私はいつも元気だが、君の過去を知らされ総ての事を理解した時は、レティへの愛しさが倍増したな。
レティは苦しんだだろうが、私にとってはその過去の君があってこそ、今の君だと思うんだ。
レティの過去や今の悔しさ悲しさを、全て私へ話してくれると嬉しい。私も私の気持ちを素直にレティには伝えていきたいと、これから一緒に生きて行きたいと思っているんだ。
レティのすべてを愛している」
「私もキファント様のすべてを愛しています」
the end
馬車の灯に浮かび上がる姿は、可愛らしい天真爛漫な笑顔。
キファント様の背中へ抱きつき、うるうるした瞳でキファント様を見上げるミュラに、私は何故か身震いした。
「えっ?あれ?お姉様!生きてたの!!お父様達心配してたわよ。お姉様死んじゃったって。ほーんとお父様もだけど、あの家の人達って最低だよね。ミュラあの人達大っ嫌い」
チラッと私を見た後は、キファント様へ目線を向けて、ほっぺを膨らまし首を傾げながら話してるミュラ。
「貴女……子供は?子供はどうしたの、確か一歳過ぎになる子いるわよね?それにライト様は、ライト様とは一緒ではないの?」
「えーーー!何言ってんの?私、未婚だよぉ~!子供なんていないわょ!失礼よ。お姉様。アレは、ほんの冗談よ、あんなの皆んな本気にするんだもん。最低だわ。笑って許せないなんて。
ねぇ~そう思うわよねぇお強い獣人騎士様。ミュラ強い人だぁーい好きなんです。
獣人騎士様のお名前はなんておっしゃるの?獣人さんって本当凄いですね。私はミュラです。獣人の騎士様、凛々しくて、カッコよくてすっごくお強いんですものビックリしましたよぉ。やっぱり男性は強さだとミュラ思うんですよね。
それに、その耳すっごいですね。何の獣人様なんですか?獣人って本当に居たんですね。ここまでお姉様を探しに辛い旅をしてきて良かったですぅ。お姉様が死んだって聞いてミュラ信じられなくて、居ても立っても居られなくて一人旅に出たんですよ。
そしたら、いきなり襲われて運命の人に助けられるなんて、ミュラって幸せ者だわ。ねっ、獣人騎士様」
「私は貴女の運命の人ではない。離してくれないか」
キファント様はミュラの手をやんわり払い除け、私の元へ近づいて来てくれた。
「大丈夫だったかレティ。怖くは無かったか」
風で散らばっていた私の髪を、優しく整えながら聴いてくれた。キファント様はミュラの魅力に靡かないんだわ。以前の事があったから、キファント様も変わるのかとビクビクしてた私は、安心して涙が溢れてきた。
私の溢れる涙を優しく拭ってくれながら、護るような笑顔で包んでくれた。
「さあ、帰ろうか」
「はい」
上空にいるラリーさんにキファント様が合図をすると、ラリーさんが目の前に降りて来てくれた。私達がラリーさんに乗り込もうと動いていたら、背後からミュラのイライラした声が聞こえてきた。
「えっ!待ってよお姉様。私もお姉様と一緒に行く!置いてかないで!!獣人騎士様と一緒にいたいもの。だって私の運命の人だから」
「ミュラ貴女、ライト様の時も同じ事私に言っていたわよ。貴女には何人もの運命があるのね。凄いわね」
私の言葉に満面の笑みを讃えて喜ぶミュラ。そこは、喜ぶところではない筈なのに、この子はやはり色々と理解しないといけない事が多過ぎすぎると思うわ。憎しみや怨みより、当たり前のことがわからないこの子に、悲しみが私の中に産まれた。
「ミュラ嬢。悪いがラリーには、二人しか乗れないんだ」
「じゃあ!可愛い私が騎士様と一緒に乗るわ。その方が嬉しいでしょ騎士様も」
「悪いが、ラリーは乗せる人を選ぶんだ。君では無理だ。それに、私の愛している人は君ではない。レティなのだから。
先程連絡したから、もう時期獣人の騎士が来るだろう。君も逃げてばかりではなく、自分自身の後始末をきちんとして来なさい。
来る騎士には貴女を御実家に連れて行く様に伝えているから、帰るといい」
キファント様はいつ、その様な連絡をしたのかしら?獣人国には私には理解できないことが多いけれど、少しづつで良いの、キファント様や獣人国の皆様と共に生きていきたいと思う。
私をラリーさんの上にゆっくり乗せてくれた後、キファント様も背後にヒラリと乗り込んできてくれた。背中の温もりに安心する。そして、ふわりと浮かんだけど、残るミュラが心配でキファント様に問おうと口を開いた時、全方位上空から聴き覚えのある大きな声が聞こえてきた。
「団長!!!!すっ飛ばして来ましたよ!お役目きちんと果たしますから!御安心おーーーー!!」
「宜しく頼む」
「了解ですーーー!!!うちのフィンは素直ですから女の子なら誰でも乗れますから平気です。お任せあれ」
マーシャル様が鷹の様な鳥に乗って凄いスピードで向かって来た。そして、下に降りて行った。何か、ミュラのテンションが上がったみたいで一安心したけど、大丈夫かな。
私達は、ラリーさんと一緒に家路へ帰ります。キファント様に包まれて飛んでいると、包み込む腕の強さが強まりました。そして、
「レティ……すまない。君の事を調べた」
なんとなくだけど、話から知ってるのかなッとは感じましたが、キファント様のお家は格式の高い貴族だから、周り的にも仕方がない事だとは思います。ちゃんと理解してますから。
「……私には婚約者がいました。攻略的な婚約でしたが、より良い関係を築く事ができなかったのは、私の所為もあります。それに、実家から逃げたいがやゆえに、偽装をして行方をわからなくしてしまいました。
この様な私ですが、キファント様は……私を受け入れていただけますか」
「私は、レティが何者でも、私の家や家族を棄てようともレティが私を受け入れてくれたのなら、奪い去る予定だった。誰も知らない土地で二人で生きて行くのも楽しいかなと想像していたぞ。
レティと美味しい食事さえあれば、私はいつも元気だが、君の過去を知らされ総ての事を理解した時は、レティへの愛しさが倍増したな。
レティは苦しんだだろうが、私にとってはその過去の君があってこそ、今の君だと思うんだ。
レティの過去や今の悔しさ悲しさを、全て私へ話してくれると嬉しい。私も私の気持ちを素直にレティには伝えていきたいと、これから一緒に生きて行きたいと思っているんだ。
レティのすべてを愛している」
「私もキファント様のすべてを愛しています」
the end
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
完 あの、なんのことでしょうか。
水鳥楓椛
恋愛
私、シェリル・ラ・マルゴットはとっても胃が弱わく、前世共々ストレスに対する耐性が壊滅的。
よって、三大公爵家唯一の息女でありながら、王太子の婚約者から外されていた。
それなのに………、
「シェリル・ラ・マルゴット!卑しく僕に噛み付く悪女め!!今この瞬間を以て、貴様との婚約を破棄しゅるっ!!」
王立学園の卒業パーティー、赤の他人、否、仕えるべき未来の主君、王太子アルゴノート・フォン・メッテルリヒは壁際で従者と共にお花になっていた私を舞台の中央に無理矢理連れてた挙句、誤り満載の言葉遣いかつ最後の最後で舌を噛むというなんとも残念な婚約破棄を叩きつけてきた。
「あの………、なんのことでしょうか?」
あまりにも素っ頓狂なことを叫ぶ幼馴染に素直にびっくりしながら、私は斜め後ろに控える従者に声をかける。
「私、彼と婚約していたの?」
私の疑問に、従者は首を横に振った。
(うぅー、胃がいたい)
前世から胃が弱い私は、精神年齢3歳の幼馴染を必死に諭す。
(だって私、王妃にはゼッタイになりたくないもの)
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる