18 / 20
何故
しおりを挟む
今、私とキファント様はラリーさんに乗りアーティの街へ帰っています。夜空の飛行はとても綺麗。
下を向けば家々の灯りがキラキラして、上を向けば星が煌めいています。そして、背後から寒く無い様に抱き締めてくれている、キファント様が居て、私は怖いくらい幸せです。
「キファント様、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「それなら安心した。ファーマン家に連れて行った事。レティには驚かせたと思う。だが、騎士団の私としてではなく、キファント・ファーマンとしての私を知って欲しくてな。それに、私の食べてきた中で美味い物と言ったら、料理長しか思い浮かばなかったんだ。けど、家族の事は……まさか、居るとは思わなくて、レティを不安にさせてしまったな。すまない」
「いえ。御家族の方と知り合えて嬉しかったです。皆様、明るく楽しい方で、それにキファント様の子供の頃のお話も沢山聞けて、キファント様のお部屋も見れたので何か得した気分でしたよ」
「部屋は、そうだな。まさか、奥に子供の頃のおもちゃや、剣など取ってあるとは驚いたが、私も懐かしかったな。その当時の気持ちが蘇ってくるもんだな。レティの子供の頃はどんな子供だったんだ」
ドキッとした。何を答えれば良いのかわからない。私の思い出なんて、どこか良い家に繋がる為の道具として、少しでも他家より優位に立てる様に、大人しく静かに勉強勉強勉強ばかり、野原を駆け抜けた事も、大声で笑った事も無い。なんて、何も無い子供時代だったんだろう。キファント様は、私の本当の事を知って嫌いにならないだろうか?言ってしまいたい私と、隠したい私がいる。どうしよう。
「レティ!!私はちょっと下に降りる。レティは、このままラリーに乗っていてくれ、私だけが飛び降りるから。絶対にラリーから、降りないでくれ」
「何かあったのですか?」
「下で、誰かが、野獣に襲われている。こんな時間に、何故あんな乗り物で走っているんだ。襲ってくれと言っている様な物だろう。それも、見渡しの良いこんな場所、一番有り得ない。
ラリー。高度はこれぐらいにしておけば、野獣も襲ってこない。レティの事、頼むな。レティでは、行ってくる」
「キファント様、いってらっしゃいませ。ご無事を祈っております」
キファント様は、ラリーさんから飛び降りる前に、私を見てニコリと笑み、素早く口づけをし、スルリと下に降りて行きました。
「……キファント様……」
私は、ドキドキする心臓を抑え。無事を祈りながら、下を覗き込んだ。
暗闇ですが、上からは、月の光と下にいらっしゃる方のランプの光で、かろうじて動きがわかります。
キファント様は、剣を使い狼みたいな野獣と闘っています。一匹一匹は弱くても、数が多く同時に襲いかかってくるので、見ていてヒヤヒヤします。
荷馬車には、女の方がいらっしゃるのか、女性の甲高い叫び声が聞こえて、きます。心配なので、キファント様に集中したいのに、女性の叫び声が煩くて邪魔です。
こんなに叫ぶと、他の獣もきそうで気になります。
「あっ!!」
キファント様が剣を納めています。私の方を見て、手を振ってくれました。
「良かった。終わったんだ」
ラリーさんが下に降りてくれています。だんだんとキファント様との距離が近くなっていって、キファント様が私の方へゆっくり歩いて来てくれている時。荷馬車の中から小柄な女性が走って来て、何故かキファント様の背中へ抱きつきました。
「えっ!!!」
「ありがとうございます!私を助けてくれたのですね。馬車の中から、見てました。すっごくと強くてカッコよかったです。まるで王子様のようでした。お名前教えていただけますか。私は、ミュラと言います」
久しぶりに聞いた声は、私がもう二度と聞きたく無いと思っていた声でした。
下を向けば家々の灯りがキラキラして、上を向けば星が煌めいています。そして、背後から寒く無い様に抱き締めてくれている、キファント様が居て、私は怖いくらい幸せです。
「キファント様、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「それなら安心した。ファーマン家に連れて行った事。レティには驚かせたと思う。だが、騎士団の私としてではなく、キファント・ファーマンとしての私を知って欲しくてな。それに、私の食べてきた中で美味い物と言ったら、料理長しか思い浮かばなかったんだ。けど、家族の事は……まさか、居るとは思わなくて、レティを不安にさせてしまったな。すまない」
「いえ。御家族の方と知り合えて嬉しかったです。皆様、明るく楽しい方で、それにキファント様の子供の頃のお話も沢山聞けて、キファント様のお部屋も見れたので何か得した気分でしたよ」
「部屋は、そうだな。まさか、奥に子供の頃のおもちゃや、剣など取ってあるとは驚いたが、私も懐かしかったな。その当時の気持ちが蘇ってくるもんだな。レティの子供の頃はどんな子供だったんだ」
ドキッとした。何を答えれば良いのかわからない。私の思い出なんて、どこか良い家に繋がる為の道具として、少しでも他家より優位に立てる様に、大人しく静かに勉強勉強勉強ばかり、野原を駆け抜けた事も、大声で笑った事も無い。なんて、何も無い子供時代だったんだろう。キファント様は、私の本当の事を知って嫌いにならないだろうか?言ってしまいたい私と、隠したい私がいる。どうしよう。
「レティ!!私はちょっと下に降りる。レティは、このままラリーに乗っていてくれ、私だけが飛び降りるから。絶対にラリーから、降りないでくれ」
「何かあったのですか?」
「下で、誰かが、野獣に襲われている。こんな時間に、何故あんな乗り物で走っているんだ。襲ってくれと言っている様な物だろう。それも、見渡しの良いこんな場所、一番有り得ない。
ラリー。高度はこれぐらいにしておけば、野獣も襲ってこない。レティの事、頼むな。レティでは、行ってくる」
「キファント様、いってらっしゃいませ。ご無事を祈っております」
キファント様は、ラリーさんから飛び降りる前に、私を見てニコリと笑み、素早く口づけをし、スルリと下に降りて行きました。
「……キファント様……」
私は、ドキドキする心臓を抑え。無事を祈りながら、下を覗き込んだ。
暗闇ですが、上からは、月の光と下にいらっしゃる方のランプの光で、かろうじて動きがわかります。
キファント様は、剣を使い狼みたいな野獣と闘っています。一匹一匹は弱くても、数が多く同時に襲いかかってくるので、見ていてヒヤヒヤします。
荷馬車には、女の方がいらっしゃるのか、女性の甲高い叫び声が聞こえて、きます。心配なので、キファント様に集中したいのに、女性の叫び声が煩くて邪魔です。
こんなに叫ぶと、他の獣もきそうで気になります。
「あっ!!」
キファント様が剣を納めています。私の方を見て、手を振ってくれました。
「良かった。終わったんだ」
ラリーさんが下に降りてくれています。だんだんとキファント様との距離が近くなっていって、キファント様が私の方へゆっくり歩いて来てくれている時。荷馬車の中から小柄な女性が走って来て、何故かキファント様の背中へ抱きつきました。
「えっ!!!」
「ありがとうございます!私を助けてくれたのですね。馬車の中から、見てました。すっごくと強くてカッコよかったです。まるで王子様のようでした。お名前教えていただけますか。私は、ミュラと言います」
久しぶりに聞いた声は、私がもう二度と聞きたく無いと思っていた声でした。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる