優秀リケジョは化学教師に溺愛される

りり

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一年生

6章 文化祭(後編)

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「いらっしゃいませー」
賑わうのは私のクラス。コスプレ喫茶は思ったより繁盛したみたいだ。
「若葉、2番テーブルに紅茶お願い」
「はーい」
私も働く。
「ピーチティーでございます」
よしよし、順調。
「わっ!」
裾につまづく。
「若葉っ」
転びそうなところを誰かが受け止めてくれた。この感触……
「瀬田先生!?」
「大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます」
助かった。
「先生なんでここに?」
「もうすぐ休憩やろ?迎えに来た」
その瞬間教室内から王子様!流石!などの声がでてくる。
「若葉ちゃん、休憩していいよ。ほら、行ってきて」
しまいには締め出された。えぇ…。
「どこ行きたい?」
「うーん。やっぱり定番のお化け屋敷かな?」
多分店舗も多いし。
「行こか」
私の手を握り、先生は歩き始める。デートみたいだな。私たちはすぐ近くのお化け屋敷に入ることにした。
「ほんとに入るん?」
「?はい」
確かに外見は血糊だらけでやばいけど……。
「お気をつけて~」
ライトを受け取り、いざ教室へ。
「すご!」
予算内とは思えないクオリティ。
「くらーい」
「ライト貸しな」
先生はライトを持って先導してくれた。
ガシッ
「きゃっ」
足掴まれた。
「若葉!?」
先生が振り返ると同時に前からもお化け。
「きゃー!!」
私の悲鳴だけが響き渡り、お化け屋敷を出る時には
「若葉、大丈夫?」
「な、なんとか」
ぐったり。先生の腕借りて歩いてる状態。
「クレープ行こや、次」
「はい………」
引きずってもらいながらクレープ屋へ。
「何味がええ?」
「んーと…いちご」
「おけ。ここで待っといて」
「うん」
先生は買いに行ってくれた。
「お待たせ」
あまり混んでなかったのか、先生はすぐに帰って来た。
「なんかデート中に彼女待たせたら悪いからってすぐにくれた」
「認知されてるの!?」
こんなに早く噂って回るんか。
「これいちご」
「ありがとうございます!」
私たちは人の少ない階段へ行き、食べる。
「若葉、一口ちょうだい」
「えっ」
でも口つけちゃってるよ!?
「ええやん。僕のも一口あげるから」
そこじゃないんだよなぁ。
「で、でも」
「うるさい」
先生は私のクレープを握った手を掴むと強引に引き寄せ、私のクレープを頬張った。
「あっ!ちょっ……」
思いっきり間接キス………。
「ほら、僕の…………」
途中で先生は口籠る。自分のしたことに気がついたみたいだ。
「なんでもないわ」
撤回すんなし。
「先生クリームついてますよ?」
私は背伸びをして先生のほおについたクリームをとるために指を近づける。が、
「だ、大丈夫やから」
肩を抑えられ、近づけなくなってしまった。なんだか拒絶された気分だ。
「あ、嫌って意味やないんだけど…」
「うん。分かってるよ…」
そりゃ、嫌だよね。あんな可愛い先輩いるし。ってそんなんじゃだめだ!これから、これから。
「あ、瀬田先生いたー」
「どうした?」
先生のクラスの子だろうか?
「実はトラブルがあって」
「わかった。すぐ行くわ」
「若葉、ごめん。対応してくるわ。埋め合わせはちゃんとするから」
「いーの。いってらっしゃい」
笑顔で先生を見送る。
「ほんとごめんね?せっかくのデートだったのに」
先輩からも謝られる。
「いえいえ」
私は先生と先輩の後ろ姿を見送ってから、一息つく。
「ひとり、か」
一緒に回る人もいないからなぁ。私とクレープだけがその場に残されれてしまった。
「クレープ…」
一口食べてみる。なんとなく、寂しい味がした。

「おい、不宮」
「会長……」
文化祭最終日、生徒会室で留守番してると会長がきた。
「どうして、どうして瀬田先生を止めないんだ!」
「だって……話す隙もなかったんですよ」
最終日、あの桜先輩は瀬田先生を連れて何処かへ行ってしまった。実際会ってはないが。
「今や校内はたくさんのスクープだ。浮気だとか別れたとか」
「そうですか……」
でも開始からすでに一緒にいたし、声かけられる油断も隙もない。思い出したらイライラしてきた。
「先輩、少し外の空気吸ってきます」
私は生徒会室から出て、廊下にでた。その瞬間、文化祭独特の騒がしさが戻る。立ってるのもアレなんで私はドーナツを買いに3年の教室に行った。
「チョコドーナツ一つください」
私はチョコドーナツを注文。早く買って生徒会室に帰ろ。私は別のブースでドーナツを受け取り、イートインスペースに行こうとすると
「せんせ、こっちもおいしいよ!ほら一口あげる」
桜先輩たちがいた。桜先輩が瀬田先生に食べかけのドーナツを差し出してるとこだった。
「ねぇ、あれ彼女さんじゃない?」
「ホントだ!うわっ、修羅場かよ」
私(彼女)が来たことで周りが少しざわついてる。
「あ、若葉」
先生が私に気づき、呼び止める。仕方なく近くに移動する。
「え?彼女さん?」
「そうや」
「へー…」
桜先輩は私のことを細かく見てくる。観察されてる気分だ。
「いい子そうだね」
意味深に桜先輩はそう言う。
「やろ?」
ドヤ顔する先生。
「わ、私仕事があるのでこれで」
そう言って下がろうとした直後、桜先輩に腕を引っ張られる。
「わっ」
思わず傾く私。
「君さぁ、なんで瀬田先生と付き合ってんの?早く別れてくれない?不釣り合いだしw」
は?え?
「じゃあね」
笑顔でそう言われる。私は放心状態になりながら、とりあえず外に出た。妙に騒がしいがそんなのどうでもよかった。全部自分ではなく、誰かを見ているみたいだ。
「若葉!?」
あ、ユズ。
「ユズ……」
ダメだ、ほっとしたら涙出てきた。
「若葉、とりあえず生徒会室行こ。会長いるから」
何も言わなくても分かったようだ。さすがだ。
「会長、若葉が」
「不宮………」
椅子に座らされる。
「何か言われたんだろ、あの女に」
「は、はい…実は」
今まであったことを話す。
「その先輩さいてー」
「不宮、不宮はどうしたい?」
「……わからないです」
もう先生のこと好きなのかすらわからなくなってきた。
ピンポンパンポーン
「文化祭終了まで残り30分です」
そんなアナウンスが響いてきた。
「私、屋上に行ってきます」
ポツリと呟く。
「なんでだ。許可しないぞ」
「このまま最後の鐘を聞きたくないんです。だから」
「はぁ…ほら、行きたきゃ行け。私は責任は取らないからな」
鍵を会長は机に置く。
「若葉……」
ユズの悲しそうな目を横に私は屋上へ駆け出した。

見崎side
「まったく」
私と柚だけが生徒会室に取り残されてしまった。
「おい、ユズと言ったな」
「は、はい」
「放送室に行って鐘が屋上まで聴こえるように操作してこい」
「え、でも…聞きたくないって」
戸惑うのを無視する。
「私は今から瀬田先生のところに行ってくる」
「!分かりました」
どうやら察しがいいらしい。すぐに放送室に向かってくれた。さて、私も行こうじゃないか。決着をつけに。

「瀬田先生」
あの女と腕を組みながら歩いてる先生に声をかける。気持ち悪い。
「不宮はどうしたんだ?」
「生徒会の仕事やないの?」
このバカ教師が。
「あと15分で鐘がなる。いいのか」
「ほんまや。桜、僕ちょっと行かんと」
隣の桜先輩に視線を向ける。
「えー…いいじゃん。私、来週から留学で会えなくなるし、言いたいことあるの」
甘えた声と裏腹に私を睨みつける。
「まぁ、そうやけど」
あの女っ。
「不宮、泣いてたぞ。先生は私より桜先輩と一緒にいる方がいいんだと」
と言うと先生は顔色を変えた。
「やっぱり、若葉んとこ行くわ」
先生は桜先輩の腕を離そうとする。
「待って……」
「「!」」
桜先輩は先生の腕を力強く握り、離す気はなさそうだ。
「私だって瀬田先生のこと好きなんだよ!?なんであんな可愛くない子のほうを選ぶの?だったら私を彼女にしてよ!!」
先輩は怒鳴り散らかす。
「可愛くない子、やて?」
ボソリと呟くのは先生だ。
「え?」
「若葉はめちゃくちゃいい子だし、ちゃんと気も使える。可愛くなるために自分の見せ方だって工夫しとる。僕の彼女をそんな風に言わんといて」
先生は強引に手を離す。
「見崎、すまん。頼んだ」
「分かりきったことさ」
そう言い残して屋上へ行った。
「ぐぬぬ…」
今にも噴火しそうな先輩。いや、先輩とは思えない。
「警備員、不審者がいる。退出をお願いする」
大声で呼ぶと、すぐに取り押さえられた。
「ぐっ、離しなさいっ!元生徒会長よ!」
「生憎、現会長は私だ。では」
私は何事もなかったかのように生徒会室へ歩き出した。

若葉side
「綺麗」
夕日は真っ赤に染まっていた。私以外誰もいない屋上。下には文化祭を楽しむ生徒たちが見え、その中に一組のカップルを見つける。本当だったら先生とあんな風に周ってたのかな。
ドドド
なんか階段を上がる音がする。まぁ、誰も来ないか。
ガチャ
「若葉っ」
「っ!瀬田先生」
ドアが開いたと同時に瀬田先生と目が合った。
「…….桜先輩と一緒にいたらよかったのに」
つい皮肉を言ってしまう。
「その…色々ごめん」
先生は私の隣まで歩いてきた。走って来たのか息は上がってる。
「ねぇ先生、別れませんか?」
「え…」
ずっと自分は不釣り合いだと思ってた。けど、桜先輩に言われて確信した。
「じゃあね、先生」
「待って」
何か言いたいのかな。
「まず、僕は別れる気はない。今でもこれからもずっと若葉のことは大好きだし、幸せにしたいってことは変わらん。確かに今回は僕の配慮が足りんかったのは謝る。けどだからって別れたいわけやない」
そう先生は言う。
「若葉さん、本当に心の底から好きです。もう一度僕と付き合ってください」
真剣な瞳で見つめられる。
「私、すぐに不安になるし、いいとこありませんよ?それでもいいんですか?」
「ええとこなんていっぱいあるやん。若葉じゃないと嫌や」
「私も先生のことすごい好き。私も彼女でいたい。だからその……」
言葉が見つからない。
「若葉」
先生の瞳から目が離せない。気がつくと先生の唇が私の唇に触れていた。多分たった数秒だったんだと思う。けど私には何分にも感じられた。ゆっくりと先生の唇が離れる。
「伝わった?僕の気持ち」
「う、ん…」
まだ感触が残ってる。今、先生とキスしたんだ。私。
キーンコーンカーンコーン
鐘の音が聞こえる?なんで?聞こえないはずなのに。
「若葉のこと好きすぎてやばい。いけんのに」
顔を真っ赤にする先生が私の目に映る。珍しく恥じる姿にキュンとする。
「とりあえず、片付けしに行くか」
「はいっ」
私たちは手を繋いで校内に戻った。
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