優秀リケジョは化学教師に溺愛される

りり

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一年生

6章 文化祭(前編)

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「おはよ」
「お、おはよ」
学校が始まり、今日から二学期。
「ストラップつけてくれたんや?」
「し、仕方なくだしっ」
「ほんと?」
先生はにやにやしながら私のことを見る。しょうがなくつけてるだけだし。
「そいや、今日文化祭の打ち合わせやけど」
「え!?そうなんですか?」
「聞いとらん?」
「全く」
初耳ですけど。うちの担任の情報が薄いせいで。
「若葉のクラスは何すんの?」
「予定だとコスプレカフェですねー」
女子たちが盛り上がってたっけ。
「ええやん」
いいんかいっ。
「あ、瀬田先生だ」
制服的に先輩かな?
「あぁ、おはよ」
「隣の子って今噂の彼女?」
「え、あ……」
噂になってるんだ。
「そ。可愛いやろ?」
「普通に可愛いけど……先生はてっきり付き合わないかと思ってたから意外なだけ」
少し驚きながらも先輩はそう告げる。てか、可愛いって……。
「ありがとう、ございます」
お礼だけしとこ。
「文化祭も彼女さんと回るんでしょ?去年みたいに雑務いれすぎないでねー」
と言って先輩は去って行った。
「先生、去年そんなに雑務いれてたんですか?」
「あー…主顧問だったから」
そうなんだ。
「じゃ、また昼」
「はーい」
先生と別れ、教室へ。
「若葉ー!」
柚!?
「本当に瀬田先生と付き合ったの!?」
「え、あ…うん」
「やばっ」
今日の学校はその噂で持ちきりみたいだ。
「じゃあさ、文化祭の鐘も一緒にいるの?」
「鐘?」
「え、知らない?」
何それ?
「文化祭終わりの鐘は特別な音で、その鐘を聞いたカップルは幸せになれるーとか」
へー。
「だからっ!」
柚は私の手を掴む。
「若葉も頑張りなよー?」
ニヤニヤしながら柚は私を見つめる。
「う、うん」
「そろそろホームルームだから席座れー」
「あ、先生来ちゃった」
柚は自分の席に戻って行ってしまった。私は私で、さっきの鐘の話が気になりそれどころではなかった。

「じゃあ、被ってるのは2年の1組と8組、3年2組と4組か」
会長は各クラスの出し物を確認してそう言う。
「それ以外は第一希望になる。各クラスへの伝達を頼む」
「はいっ」
よかった。いや、コスプレ喫茶も良くないか。
「不宮、これまとめてプリントにしといてくれ」
「分かりました」
仕事だぁぁ。
「じゃ、放課後一緒にやろか」
あ、瀬田先生!
「はいっ!」
「いちゃつくのは放課後にしろよー」
横目で会長に釘を刺される。
「は、はーい」
いちゃつくも何も、そんなことしてないんだよなぁ。
「見崎、いくら付き合ってるからって手を出したりはしないんやけど」
「…体育祭で騎馬戦のとき、不宮を自分の1番近くに配置したのはどこの誰だ?」
「うっ……」
先生、ぐうの音もでてないよっ!
「はい。じゃあ他の人は各先生への伝達、借り物の予算、開催場所についてよろしく頼む」
流石会長、しっかりしてる。
「では、解散」
その一言でみんなが散る。
「じゃ、また放課後に作業な」
「はーい」
私も教室へ向かった。

「せーんせっ」
私は化学室へ顔を出す。
「パソコン置いて。ほら、さっさと終わらせるよ」
「はい」
放課後2人、こんな幸せなことある!?
「前回よりも操作早くなった?」
「あの後練習しました!」
「偉いな」
先生が笑う。うぅ…好きすぎる。
「これ、この色にした方が見やすい」
先生はマウスを握る私の手に自分の手を重ねる。と反射的にお互い手を離してしまった。
「あ、ごめん」
「い、いえこちらこそ…」
気まずい。
「あ、あのっ!先生!」
「何?」
私は話題を逸らすため、鐘の話を振ろうと思った。
「文化祭終わりの日、あの…一緒に」
ピンポンパンポーン
「瀬田先生、お客様がお見えです。至急職員玄関前にお越しください」
「あっ…」
「ごめん。行ってくるわ。篠宮先生に提出したら帰っててええから」
先生はそう言うと慌ただしく化学室から出て行ってしまった。
「はぁ……言いそびれちゃった」
ま、明日言えばいっか。私は荷物をまとめ、データを篠宮先生に提出して下駄箱へ向かった。今日は先生と一緒に帰れないや。
「そうやんな?」
「うん、でさー」
先生の声、と女の子の声。そっと声のする方を覗いてみる。
「ひどいの!」
「ははっ!おもろいな」
大学生くらいの人だ。教え子かな?
「ねぇ、先生。今度文化祭あるでしょ」
「あるな」
「最終しか私来れないからさ、少しだけ一緒に回らない?」
「でも…」
「えー、いいじゃん!もう来れなくなるし」
「分かった。空けとく」
最終日ってことは…鐘が鳴る時じゃん。先生、あの子と過ごすの!?私がいるのに?やばい、パンクしてきた。
「あ、若葉」
「え、あ……」
つい目を逸らしてしまう。
「先生嫌われてるんじゃない?」
「んなわけないやん!っ若葉!」
私は先生の声を無視して家に帰った。

「若葉、昨日なんで無視したん?」
「……………」
「若葉?」
先生は昨日のことがどういう意味か知ってるのかな。先生もこの学校5年目だし、知ってるはずだよね。
「文化祭の2日目の午後って空いとる?」
「空いてますけど」
「一緒に周らん?」
「まわる」
まさかのお誘い!嬉し。
「迎えに行くから待っとって」
「うん」
こういうのは彼氏らしいのにな。
「ねぇ、先生!最終日は一緒に……」
「ごめん。最終日は予定がある」
「………分かった」
やっぱりあの人の方を優先するんだ…。元カノ、とか?
「じゃ、じゃあまた帰り」
「またな」
私はふらつく足取りで文化祭準備期間に突入した。
「不宮!これ買ってきてー」
私は副会長にパシらされる。まぁ、みんな忙しいからしょうがないんだけど。
「はーい」
近くのショッピングモールへ向かう。
「「あっ」」
たまたま会長と会ってしまった。
「不宮も買い出しか?」
「はい。会長も?」
「あぁ。全く、人使いが荒いクラスだ」
どうやら会長はクラスの買い出しみたいだ。
「不宮は生徒会の買い出しか?あいつ、後輩に何来させてるんだ」
「いえ。私が暇だったのでたまたま買いに来ました」
実際忙しそうだったし。
「暇だし、私も一緒にいていいか?」
「はい!もちろんです」
嬉しい。私たちは他愛のない会話をしながら順調に買い物を済ませた。
「あれから瀬田先生とはどうだ?」
「あ、えーと…夏にデートに行ったきりですね」
「何かあったな。悪いこと」
あ、お見通しだった。
「実は………」
こないだあったことを話す。
「嘘だ…いや、でも……」
話した途端に会長は顔を青くする。
「か、会長?どうかしました?」
「その女性ってこんな人だったか?」
会長は一枚の写真を見せる。
「は、はい…」
この椿の髪飾りとピンク髪は間違いない。
「まさか、桜先輩が来るなんて……」
「桜先輩?」
「私の二つ上の先輩で、元生徒会長だ」
「え、えぇ!?」
そうなの!?
「とにかく性格が悪い。悪いがそれ以上この人を表す言葉が見つからない」
そんなに!?
「不宮、絶対に瀬田先生と2人にしてはいけない。あいつは何するかわからない」
あの会長がこんなに動揺するなんて…。
「あいつは、桜先輩はっ……」
会長は声を振るわせる。
「瀬田先生のことが好きなんだ!」
え、
「えぇ!?」
嘘だよね?
「多分今も狙ってるんだろう。じゃなきゃ鐘の時一緒にいたいなんて言わないはずだ」
「そんな…」
「しっかりしろ、不宮。彼女は不宮だ。絶対に大丈夫だから」
そう会長は言ってくれた。
「じゃ、その…気をしっかり」
そう言って会長は別の店に行ってしまった。
「お、若葉?」
「せんせ……」
なんだかたまたま先生も買い出しに来てたみたいで、声をかけてくれた。
「どうしたん?顔色悪いけど」
「あ、いや。なんでもないです」
心配そうにしている先生を無視して私は自分の買い出しのために、別のお店に向かった。
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