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一年生
4章 体育祭(後編)
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「おはよ。体調は大丈夫か?」
定例会で見崎会長が心配してくれた。
「はい。お陰様で」
瀬田先生はまだ来ていない。
「瀬田先生にも感謝したまえ。雨の中一番に探しにいったのは先生だからな」
「……はい」
「……………不宮、この後カフェにでも行かないか?」
「えっ?」
突然のお誘いにびっくりする。
「定例会始めよー」
先生が来た。
「はーい」
「…………」
気まずいなぁ。結局一度も瀬田先生と目を合わせることもなく、定例会は終わった。
「不宮、行くぞ」
「あ、はい」
見崎会長は私の腕を絡める。
「じゃ、おつ」
「お疲れ様でした」
挨拶をして生徒会室を去る。
「会長、いきなりなんですか?」
カフェへ向かう途中の大通りでそう尋ねる。
「瀬田先生と何かあっただろ?」
「へっ!?」
やべ、変な声出た。
「べ、別に何も……」
「不宮、全部お見通しだが」
あ、そっか先輩分かっちゃうんだ。
「実は………」
私は昨日から今日にかけてのことを話した。
「へー…あの瀬田先生がね」
意外そうな顔で会長は頷く。
「不宮はどうしたいんだ?」
「私、ですか?」
私は……。
「仲良くしていたいです。でも、そのせいで周りの人から先生が色々言われるのは嫌なんです」
「なるほどな……」
巻き込むくらいならいっそ……。
「先生はそんなこと思ってないと思う。むしろそういう風に見られたいんじゃないか?」
「それってどういう……」
「ほら、着いたぞ」
あ、ホントだ。
「何飲みます?」
「私はキャラメルマキアート。不宮は?」
「抹茶フラペチーノですかね。お気に入りなんで」
「そうか」
私たち二人は飲み物を購入すると席についた。
「瀬田先生も不宮のこと気に入ってるんだ。多めに見てやってくれ」
ふと会長がそう言った。
「気に入ってる……?」
「あぁ。そんな風に登校するのも、教室まで行くのも不宮が初めてだ」
「へー……」
イマイチ信じらんないな。
「今は気まずいだろうからしばらくは遠ざけてやる。収まったら言ってくれ」
会長は配慮の言葉を並べて、マキアートに手をつけた。私もフラペチーノに手をつけ飲む。なんとなく、今までより苦い気がした。
そして結局一度も話すことはなく、体育祭がやってきてしまった。
「やばい!先輩たちみんなグラウンドだ」
私は急いで靴を履き替え、グラウンドへ向かう。
ドンッ
「わっ!」
「きゃっ」
急いでいたのか、誰かにぶつかってしまった。
「あ、す、すみません!」
上履きの色的に先輩だ!
「いいのいいの。それより、君も怪我はない?」
「はい。大丈夫です」
頭が揺れるたびにポニーテールが揺れてる…。じゃなくて!
「急いでますんで、失礼します!」
「あ、待って」
な、なんだ?弁償でもさせられるのか?
「あなたの気持ちは大切にね。あと…回線は新しいのを買ったって見崎会長に伝えといてくれる?」
「?わかり…ました」
変な先輩だったな。なんかどこかで聞いたことある声だったし。私はそう思いながらグラウンドへ向かった。
「不宮、本部待機でいいのか?」
「はい……先生とも距離が取れそうなので」
私は涼しいテントの下で待機しながら会長と話す。放送は避けられたけど、騎馬は全員だったからな。
「あ、そろそろ一種目目始まるな」
「本当ですね!」
私と見崎会長は本部から第一種目を見守る。
「会長は何の種目出るんですか?」
「私は台風の目だ」
「え、同じです!」
「もしかしたら同じレーンかもな」
「ですね!」
会長と同じ種目なんて……嬉しい。
「あ、若葉」
「ユズ!?」
どうして本部まで?
「これ、若葉に渡したくて」
ユズはそう言ってスマホを見せる。そこには私と瀬田先生の話している姿が映っていた。
「ユズ、これ……!?」
「しぃー…最近一緒にいないから何かあったのかなって。若葉は何か我慢してるように見えるし」
ユズは昔から勘が鋭い。
「これさ…ちゃんと見てほしいの。若葉のこと、ちゃんと応援してるから」
ユズは一つ一つ言葉を紡ぐようにそれだけ言って、応援席に戻ってしまった。
「ツーショットか…」
見崎会長は写真を覗き込む。
「不宮、すごく幸せそうだな」
確かに先生と話す私は笑顔だけども…。
「それに瀬田先生も…………。本当に心の底から、なんだな」
少し意味深なことを言う先輩。
「あぁ、すまない。今のは忘れてくれていい」
はぁ………?
「それよりもそろそろ台風の目の召集がかかるから、行くぞ」
「あっ、はい!」
私たちはテニスコートに向かう。
「じゃ、私はこっちだから」
「はい!頑張りましょうね」
私もクラスメイトと合流をする。
「若葉、遅い~」
「ごめんて」
うん、いつも通りだ。
「それでは次は台風の目です」
そのアナウンスで私たちは入場する。
「よーい、パァンッ」
結果から言えば、負けた。3位で。でもまぁ、ちゃんとバトンを繋ぐことができたからいいのだが。
「不宮、騎馬戦の審判行くぞ」
「はいっ!」
私は先輩と集合場所へ向かう。
「あ、来たか」
あ、瀬田先生だ。
「落ちたらこれを鳴らして」
「はーい」
音のなる物を受け取る。
「見崎はあっち、不宮は……あそこな」
指さされたのはあまり人がこなさそうな端っこ。
「ふふっ…」
見崎会長は突然笑い出す。
「ど、どうしました?」
「なんや、見崎」
「いや、何でもない。それじゃ、全員配置につけ」
その合図でみんなが散らばる。私も場所は向かう。
パァンッ
騎馬戦が始まった。みんなつかみ合ってく。やっぱ中央が1番の激戦区か…。と思ったら青組がこちらに黄色組を追い込んでいる。
「おいっ、そこどけぇ!」
こっちにダッシュしてくる騎馬の人が私に向かって言う。
「わっ!」
私はかわすが…
「黄色の騎馬が落ちたー!」
黄色の帽子を被った人が曲がった拍子にこちらに落ちてきた。あ、終わった………。私は動けずに固まっていた。
「何やっとん!?」
グイッ
不意に腕を引かれ、ギリギリで私は騎馬との衝突を避けれた。
「ん…………」
あれ?目の前真っ暗だ。
「大丈夫?」
いきなり日の光が差し込み、ピントが合う。
「せ、先生!?」
瀬田先生が騎馬を背に私のことを抱きしめてくれていた。
「なんで逃げとかんの?近くに配置したからよかったけど」
え、えぇ!?
「とりあえず救護テント行くからしっかり掴まっとき」
先生はそう言って私のことをお姫様抱っこしてくれた。
「え?あの瀬田先生が姫様抱っこ!?」
「あの生徒何者!?」
「瀬田ちゃんが!?」
ざわめく会場。
「不宮さん!どうしたの!?」
あ、入学した頃に手当してくれた保健の先生。
「騎馬と当たりそうになったんで、お願いします」
「わ、分かった」
あ、先生そのまま行っちゃった。お礼もできてないのに。
「またお姫様抱っこされちゃって…」
あはは…。
「とりあえずここでゆっくりしてなさい。もう種目は出ないでしょう?」
「はい…」
大人しく椅子に座る。
「続きまして、教員による借り物競走です」
へぇ、借り物競走なんてあるんだ。
「ほら、瀬田先生の応援でもしたら?」
「はい………」
あ、いたいた。5番手か…。
「スタートっ」
見崎会長の合図で始まる。どの先生も生徒を連れてったり、物を借りたりと…とにかく盛り上がった。次は瀬田先生の番だ。お題箱に向かうと紙を引き、少しづつ動き始める。
「何引いたんだろ」
と思ったら一直線にこちらへくる。
「先生、若葉借りてくわ」
「はいはい…ただし抱っこして来なさいよ」
そんな会話を見せられ、私はひょいっとまた抱えられた。その瞬間にまたざわつく会場。
「せ、先生!お題って?」
「内緒」
んー。病人とか?テントにいる人なのかな?
「見崎、これお題」
「ふむ。認めよう」
え、本当に何のお題?
「2位は青組だ~!」
私たちだ。
「気になるお題は~?」
ペラッ
見崎会長は紙をカメラに見せる。
「好きな人や」
瀬田先生は大きな声でそう言う。
「え、えぇ!?私が!?」
頭追いつかないって。ほら、会場がめちゃくちゃ混乱に陥ってるし!
「若葉、これが僕の気持ち。こないだ保留した返事。あのときは若葉に拒否されるのが怖くて言えんかった、ごめん。…若葉さん、僕と付き合って下さい!」
え………。
「だから言ったろ?」
会長はドヤ顔で私を見る。
「僕が彼氏じゃ嫌?」
優しく瀬田先生は私に問いかける。
『あなたの好きという気持ちは大切にね』
朝会った、不思議な先輩に言われたことを思い出す。
「嫌なんかじゃないです。私もずっと……」
好きでした。
「最終レーンに突入だぁ」
あ、次の人たち来ちゃう。
「それじゃ、また帰りに会おな」
「はいっ」
私はまた本部に送り届けられた。
「待った?」
「いえ、今来たとこです」
一緒に帰れることが嬉しい。
「これからは堂々とイチャつけられるな」
「はぁ?何言って………」
「で、ずっと……なんや?」
「へ?」
「借り物競走の時の」
忘れてて欲しかった…。
「えと……その…」
「早く」
「う……あ、えーと」
「何や?」
恥ずかしい。
「ずっとす、す…きでし、た」
今絶対顔真っ赤だよ。
「そんな照れんといて、こっちも照れるから」
耐性がないのか、意外と照れる先生。
「えぇ、意外…」
「はぁ、かわええ」
ギュッ
不意に先生が手を握ってきた。私よりも大きくて温かい。けど、なぜか安心する。
「今度デートでも行く?」
「夏休みならいいですけど」
「じゃ、決定な」
「はやっ」
私たちは2人笑って帰路についた。
定例会で見崎会長が心配してくれた。
「はい。お陰様で」
瀬田先生はまだ来ていない。
「瀬田先生にも感謝したまえ。雨の中一番に探しにいったのは先生だからな」
「……はい」
「……………不宮、この後カフェにでも行かないか?」
「えっ?」
突然のお誘いにびっくりする。
「定例会始めよー」
先生が来た。
「はーい」
「…………」
気まずいなぁ。結局一度も瀬田先生と目を合わせることもなく、定例会は終わった。
「不宮、行くぞ」
「あ、はい」
見崎会長は私の腕を絡める。
「じゃ、おつ」
「お疲れ様でした」
挨拶をして生徒会室を去る。
「会長、いきなりなんですか?」
カフェへ向かう途中の大通りでそう尋ねる。
「瀬田先生と何かあっただろ?」
「へっ!?」
やべ、変な声出た。
「べ、別に何も……」
「不宮、全部お見通しだが」
あ、そっか先輩分かっちゃうんだ。
「実は………」
私は昨日から今日にかけてのことを話した。
「へー…あの瀬田先生がね」
意外そうな顔で会長は頷く。
「不宮はどうしたいんだ?」
「私、ですか?」
私は……。
「仲良くしていたいです。でも、そのせいで周りの人から先生が色々言われるのは嫌なんです」
「なるほどな……」
巻き込むくらいならいっそ……。
「先生はそんなこと思ってないと思う。むしろそういう風に見られたいんじゃないか?」
「それってどういう……」
「ほら、着いたぞ」
あ、ホントだ。
「何飲みます?」
「私はキャラメルマキアート。不宮は?」
「抹茶フラペチーノですかね。お気に入りなんで」
「そうか」
私たち二人は飲み物を購入すると席についた。
「瀬田先生も不宮のこと気に入ってるんだ。多めに見てやってくれ」
ふと会長がそう言った。
「気に入ってる……?」
「あぁ。そんな風に登校するのも、教室まで行くのも不宮が初めてだ」
「へー……」
イマイチ信じらんないな。
「今は気まずいだろうからしばらくは遠ざけてやる。収まったら言ってくれ」
会長は配慮の言葉を並べて、マキアートに手をつけた。私もフラペチーノに手をつけ飲む。なんとなく、今までより苦い気がした。
そして結局一度も話すことはなく、体育祭がやってきてしまった。
「やばい!先輩たちみんなグラウンドだ」
私は急いで靴を履き替え、グラウンドへ向かう。
ドンッ
「わっ!」
「きゃっ」
急いでいたのか、誰かにぶつかってしまった。
「あ、す、すみません!」
上履きの色的に先輩だ!
「いいのいいの。それより、君も怪我はない?」
「はい。大丈夫です」
頭が揺れるたびにポニーテールが揺れてる…。じゃなくて!
「急いでますんで、失礼します!」
「あ、待って」
な、なんだ?弁償でもさせられるのか?
「あなたの気持ちは大切にね。あと…回線は新しいのを買ったって見崎会長に伝えといてくれる?」
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変な先輩だったな。なんかどこかで聞いたことある声だったし。私はそう思いながらグラウンドへ向かった。
「不宮、本部待機でいいのか?」
「はい……先生とも距離が取れそうなので」
私は涼しいテントの下で待機しながら会長と話す。放送は避けられたけど、騎馬は全員だったからな。
「あ、そろそろ一種目目始まるな」
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「会長は何の種目出るんですか?」
「私は台風の目だ」
「え、同じです!」
「もしかしたら同じレーンかもな」
「ですね!」
会長と同じ種目なんて……嬉しい。
「あ、若葉」
「ユズ!?」
どうして本部まで?
「これ、若葉に渡したくて」
ユズはそう言ってスマホを見せる。そこには私と瀬田先生の話している姿が映っていた。
「ユズ、これ……!?」
「しぃー…最近一緒にいないから何かあったのかなって。若葉は何か我慢してるように見えるし」
ユズは昔から勘が鋭い。
「これさ…ちゃんと見てほしいの。若葉のこと、ちゃんと応援してるから」
ユズは一つ一つ言葉を紡ぐようにそれだけ言って、応援席に戻ってしまった。
「ツーショットか…」
見崎会長は写真を覗き込む。
「不宮、すごく幸せそうだな」
確かに先生と話す私は笑顔だけども…。
「それに瀬田先生も…………。本当に心の底から、なんだな」
少し意味深なことを言う先輩。
「あぁ、すまない。今のは忘れてくれていい」
はぁ………?
「それよりもそろそろ台風の目の召集がかかるから、行くぞ」
「あっ、はい!」
私たちはテニスコートに向かう。
「じゃ、私はこっちだから」
「はい!頑張りましょうね」
私もクラスメイトと合流をする。
「若葉、遅い~」
「ごめんて」
うん、いつも通りだ。
「それでは次は台風の目です」
そのアナウンスで私たちは入場する。
「よーい、パァンッ」
結果から言えば、負けた。3位で。でもまぁ、ちゃんとバトンを繋ぐことができたからいいのだが。
「不宮、騎馬戦の審判行くぞ」
「はいっ!」
私は先輩と集合場所へ向かう。
「あ、来たか」
あ、瀬田先生だ。
「落ちたらこれを鳴らして」
「はーい」
音のなる物を受け取る。
「見崎はあっち、不宮は……あそこな」
指さされたのはあまり人がこなさそうな端っこ。
「ふふっ…」
見崎会長は突然笑い出す。
「ど、どうしました?」
「なんや、見崎」
「いや、何でもない。それじゃ、全員配置につけ」
その合図でみんなが散らばる。私も場所は向かう。
パァンッ
騎馬戦が始まった。みんなつかみ合ってく。やっぱ中央が1番の激戦区か…。と思ったら青組がこちらに黄色組を追い込んでいる。
「おいっ、そこどけぇ!」
こっちにダッシュしてくる騎馬の人が私に向かって言う。
「わっ!」
私はかわすが…
「黄色の騎馬が落ちたー!」
黄色の帽子を被った人が曲がった拍子にこちらに落ちてきた。あ、終わった………。私は動けずに固まっていた。
「何やっとん!?」
グイッ
不意に腕を引かれ、ギリギリで私は騎馬との衝突を避けれた。
「ん…………」
あれ?目の前真っ暗だ。
「大丈夫?」
いきなり日の光が差し込み、ピントが合う。
「せ、先生!?」
瀬田先生が騎馬を背に私のことを抱きしめてくれていた。
「なんで逃げとかんの?近くに配置したからよかったけど」
え、えぇ!?
「とりあえず救護テント行くからしっかり掴まっとき」
先生はそう言って私のことをお姫様抱っこしてくれた。
「え?あの瀬田先生が姫様抱っこ!?」
「あの生徒何者!?」
「瀬田ちゃんが!?」
ざわめく会場。
「不宮さん!どうしたの!?」
あ、入学した頃に手当してくれた保健の先生。
「騎馬と当たりそうになったんで、お願いします」
「わ、分かった」
あ、先生そのまま行っちゃった。お礼もできてないのに。
「またお姫様抱っこされちゃって…」
あはは…。
「とりあえずここでゆっくりしてなさい。もう種目は出ないでしょう?」
「はい…」
大人しく椅子に座る。
「続きまして、教員による借り物競走です」
へぇ、借り物競走なんてあるんだ。
「ほら、瀬田先生の応援でもしたら?」
「はい………」
あ、いたいた。5番手か…。
「スタートっ」
見崎会長の合図で始まる。どの先生も生徒を連れてったり、物を借りたりと…とにかく盛り上がった。次は瀬田先生の番だ。お題箱に向かうと紙を引き、少しづつ動き始める。
「何引いたんだろ」
と思ったら一直線にこちらへくる。
「先生、若葉借りてくわ」
「はいはい…ただし抱っこして来なさいよ」
そんな会話を見せられ、私はひょいっとまた抱えられた。その瞬間にまたざわつく会場。
「せ、先生!お題って?」
「内緒」
んー。病人とか?テントにいる人なのかな?
「見崎、これお題」
「ふむ。認めよう」
え、本当に何のお題?
「2位は青組だ~!」
私たちだ。
「気になるお題は~?」
ペラッ
見崎会長は紙をカメラに見せる。
「好きな人や」
瀬田先生は大きな声でそう言う。
「え、えぇ!?私が!?」
頭追いつかないって。ほら、会場がめちゃくちゃ混乱に陥ってるし!
「若葉、これが僕の気持ち。こないだ保留した返事。あのときは若葉に拒否されるのが怖くて言えんかった、ごめん。…若葉さん、僕と付き合って下さい!」
え………。
「だから言ったろ?」
会長はドヤ顔で私を見る。
「僕が彼氏じゃ嫌?」
優しく瀬田先生は私に問いかける。
『あなたの好きという気持ちは大切にね』
朝会った、不思議な先輩に言われたことを思い出す。
「嫌なんかじゃないです。私もずっと……」
好きでした。
「最終レーンに突入だぁ」
あ、次の人たち来ちゃう。
「それじゃ、また帰りに会おな」
「はいっ」
私はまた本部に送り届けられた。
「待った?」
「いえ、今来たとこです」
一緒に帰れることが嬉しい。
「これからは堂々とイチャつけられるな」
「はぁ?何言って………」
「で、ずっと……なんや?」
「へ?」
「借り物競走の時の」
忘れてて欲しかった…。
「えと……その…」
「早く」
「う……あ、えーと」
「何や?」
恥ずかしい。
「ずっとす、す…きでし、た」
今絶対顔真っ赤だよ。
「そんな照れんといて、こっちも照れるから」
耐性がないのか、意外と照れる先生。
「えぇ、意外…」
「はぁ、かわええ」
ギュッ
不意に先生が手を握ってきた。私よりも大きくて温かい。けど、なぜか安心する。
「今度デートでも行く?」
「夏休みならいいですけど」
「じゃ、決定な」
「はやっ」
私たちは2人笑って帰路についた。
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