優秀リケジョは化学教師に溺愛される

りり

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一年生

4章 体育祭(前編)

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「おはよ」
「お、おはよーございまーす…」
昨日のことがあったからか、先生から目を逸らしてしまう。
「何目逸らしとんの?」
「あ、えと……虫がいたので」
「ふーん……?」
あからさますぎる誤魔化し方!
「そ、そういえば体育祭での生徒会の役割って何ですか?」
話題そらそ。
「放送と…騎馬戦の審判かな」
なるほど…そんなに多くはないな。
「これが一年の役割」
え?
「先輩は放送コードの準備とか線引き、それぞれの集合場所への誘導とかもある」
先輩たち…尊敬するわ。
「よく先輩の動きも見とき」
「は、はい!」
初めての体育祭なのにやることたくさんだ。
「じゃ、また放課後の会議で」
「はーい」
先生はそう言って裏裏道へ消えてった。
「ふぅ……」
緊張した。私も教室に向かう。
「だーかーら、若葉はそんなことしてないって!」
クラスの前からユズの怒鳴り声が聞こえる。
「ゆ、ユズ!?」
そこには3人の先輩。バッチリメイク決めてるし、髪もウェーブがかってる。
「あんたが不宮ってやつ?」
「え、あ…はい」
私に何の用だろう?
「ちょーどよかった。面貸しなぁ!」
私は腕を引っ張られる。
「若葉っ!」
必死にユズが片手を引いてくれるが3人の力に敵うわけもなく、私の手はユズの手から解け落ちるように離れる。そのままズルズル連れてこられたのは誰もいなさそうな倉庫。
「お前よぉ、これどーゆうこと?」
ポニーテールでピアスをしている金髪の先輩が声を荒げスマホを私の前に差し出す。見せられたのは私と瀬田先生が二人で帰ってる姿、昨日の帰りだ。
「え、いや……テストの丸つけ手伝ってて」
「嘘つけ!瀬田先生がお前なんかを目にかけるわけがない!色目でも使ったんでしょ?!」
えぇ……人の話聞かない人だなぁ。
「そうだぁ!そうだぁ!瀬田先生はみいちゃんのなんだからねぇ?」
次はゆるふわウェーブのピンク髪の先輩。
「みい先輩?」
誰?初対面すぎて分からん。
「わ、私のことよっ」
黒髪で清楚そうなのとは裏腹にインカラーに紫色を入れてる先輩だ。
「いーい!去年から瀬田先生は私のことが好きなの!その……よく目合うし、名前だってよく呼ばれる。それにねっ…インカラー可愛いって言ってくれたんだから」
はぁ………とんだ迷惑だ。
「それ以上てめぇが瀬田先生に近づいたらあーしらが許さんってわけ」
「次近づいたらぁ、2度と学校これないよーにしちゃうかもよぉ?」
怖。私は空を見上げる。
「風良好。気圧はどんどん低下していく……」
「あ?なんだこいつ」
「遺言はそれくらいでいいのぉ?」
私の場所は……うん、倉庫に押し入られてるから多分当たらない。
「みさき、のの、やってしまいなさいっ」
ピシャッ
「ビンゴ」
光った。と同時に
バチバチッ
「ひゃっ」
「きゃっ」
「いやぁっ」
近くの木に落雷した。そう、気圧の変化や雲の厚さから雷雨が発生することを予想した。雷が落ちたことは予想外で雨が降ればラッキーだと思ったんだけど…。
「二人とも、逃げるわよ!」
「ちっ、命拾いしたな」
「これぇ、かけちゃうねぇ?」
カチャッ
あ、鍵かけられた。オワタ。
「まぁ、すぐに止まないと思うけど」
小さな窓から外を見る。困ったなぁ。別に窓を壊すことに抵抗はないけど…。

同刻 職員室にて ユズside
「あのっ、助けてください!若葉が!」
私は若葉が3人の先輩に連れて行かれたことを担任に話そうとするけど、担任は職員室にはいなかった。このままじゃ、若葉がどうなるか分かんないよ……。
「不宮がどうした?」
あ…瀬田先生だ。
「せんせ、若葉がぁぁぁぁ!」
安心したのか瀬田先生の元へ駆け寄り、泣き出してしまう私。
「ど、どうしたん!?」
ダメだ、話せそうにない。
「不宮、3人の先輩に連れてかれた」
突如背後から声がした。
「見崎!」
見崎……って会長じゃん。人の考えてることわかるっていう。
「あってる?」
「はいっ!」
ピンク髪の人と黒髪でインカラー紫の人と、ポニーテールの人ですぅ。
「なるほど…成宮、桃川、美月…か」
先輩は私の考えを読み取って、思い当たる人物をあげてくれた。
「君は教室に戻って大丈夫だ。あとは私たちがどうにかする」
先輩はそう言って、瀬田先生と外へ向かおうとする。
「まっ…て」
「まだ何かあるん?」
「若葉のこと、お願いします」
私には祈ることしかできない。
「任せとき」
先生はそう笑っていうと、足早に雷雨でぐちゃぐちゃな外へ行ってしまった。若葉、無事でいて………。

若葉視点
はー。雷雨止まないなぁ。心なしか雨漏りしてるし。これは失敗だった。古いから仕方ないんだけどね。
「さむっ」
ワイシャツはおそらく下着が透けるくらい濡れてる。早く誰か来ないかな…。
「ーみー!」
「どーだー」
なんか声する。
「ふーや!」
「わかー!」
段々と近くなる。
「不宮ー!」
「若葉っ!」
この声って……
ガラッ
ドアが開いた。
「不宮っ!」
「若葉!!」
見崎会長と瀬田先生だ。
「大丈夫か?」
先生たち、なんで歪んでんの?
「やばー!ねーが!」
「ーかば!しっーり!」
私の意識は完全に闇に飲まれていった。

見崎視点
「先生、これはやばい。家に電話だ!」
「若葉の家、共働きだから誰もおらん」
不宮は古小屋にいた。雨漏りをしてたから濡れてて、熱も出していた。
「じゃあ、先生の家に運べばいいだろ?」
「え!?」
「近いだろ?」
知ってる、徒歩10分ってことを。
「でも授業!」
「いいから、はい」
私はさっき呼んでたタクシーに二人を押し込む。
「はい、お願いしまーす」
住所を伝えればもう安心。
「見崎、覚えてろ」
そう言われたが、何もないことはよく分かってる。
「頼んだぞ。貴重な役員だからな」
「わかっとるよ!」
タクシーはそのまま出発してしまった。
「お大事にー」
私は見送った後に放送室へ向かい
「2年の成宮、桃川、美月は直ちに見崎の元まで来い」
さて、どんな風に処分しようか。

若葉視点
「ん………」
あれ、私小屋で倒れて…見崎会長と瀬田先生がいて…。
「ここどこ?」
少し硬めのベッドにシンプルな部屋。
「お、起きた?」
「先生!?」
え、なんで先生がいんの!?
「色々あって僕ん家に来たんやけど…。あ、熱はどうや」
「えと…37.4です」
「まだ休んどき。これお粥だから食べれそうだったら食べて」
「ありがとうございます」
ありがたく頂く…あ、美味しい
「じゃなくって!」
危ない。ペースが完全に乱れた。
「ちょ、どういうことですか!?」
「あー、話せば長いんやけど……」
ふむふむ…
「なるほど……」
後日見崎会長には感謝しなきゃな。
「若葉」
ギュッ
「ひゃっ!せ、先生!?」
瀬田先生がいきなり抱きついてきた。
「無事でよかった……」
先生はそう呟く。まぁ、心配だったよね。
「先生…………」
腕の中あったかい。
「若葉?」
「………」
「寝ちゃったか」
私は再び夢の世界へ誘われた。

「あ……」
次に目を覚ますと時計は午後10時を指していた。
「おはよ…ってゆうても夜やけど」
「おはよう、ございます」
「家に連絡しとこうか?」
「今日は両親とも出張なので大丈夫です」
一人だし。
「熱はー」
コツンッ
先生と私のおでこがぶつかる。
「平熱くらいかな…一応測って」
私はドキドキしたまま体温計を受け取る。また風邪がぶり返したらどうするんだろう。
「36.8です」
すっかり治った。
「よかった」
安心する先生をよそに、今日はどうしようかと迷う私。
「あの、先生」
「なに?」
「先生って今日はどこで寝るんですか?」
「え、あー…床?」
やっぱりベッドって今私が寝てるのだけだよね……。
「あの、私床で寝ますので!先生は」
私は立ち上がるが
「それこそだめやろ!?」
瀬田先生はそれを阻止するように私の肩を掴む。
ドサッ
「あ……」
「………ッ」
私は瀬田先生に押し倒されるようにしてベッドに倒れてしまった。
「ご、ごめん。すぐどくから」
「やだ………」
私は先生の手を掴む。
「先生と一緒に寝たい…」
腕に頬を擦り付ける。
「~ッ」
だめかなぁ?
「それ、僕以外にはしちゃいかんよ?」
「えっ?」
グイッ
瀬田先生は思い切り私に体を近づける。
「男はみんな獣やからな」
ゾクッ
耳元でそう言われる。
「じゃ、おやすみ」
先生は何事もなかったように私を抱きしめるとすぐに寝息を立ててしまった。
「へ……………?」
私だけが顔を赤らめながら先生の腕の中で眠りについた。

「おはよ」
「お、おおおおはようございます」
目の前に先生の顔。
「慌てすぎ、朝から元気そうでよかったわ」
笑う先生を横目に私は髪をとかす。
「…………………」
瀬田先生は私のことをじっと見つめてくる。
「せ、先生?どうかしました?」
「いや……新妻ってこんな感じなんかなって思って」
に、新妻!?
「な、何言って……」
「まぁ、彼女おらんけど」
そこかいっ!
「もうっ!そんなこと言ってるから勘違いされちゃうんですぅ」
だから先輩にも呼び出されるし。
「ダメなん?」
「ダメですっ!先生がそんな風に勘違いされて困るのは私ですよ!?」
それに、私よりいい人がたくさんいるだろうし。
「そか…」
「勘違いさせないためにも、私にはしばらく近づかないでください」
先生のため、先生のため。
「それは違くない?僕が好きで一緒におるのに」
「だーかーら、それが勘違いの一歩です!私なんかよりももっといい人とか、生徒だっているんだから……私、先生の彼女じゃないし…………」
そう、優秀なのは私だけじゃない。
「だから、もうやめにしましょ…」
ホントは嫌だ。でもね、先生のこと想ってるんだよ?
「……返事は保留で」
「え?」
いや、は?
「なんでですか!?信じらんないっ!もう話しかけないでくださいっ」
私はさっさと支度をすると学校に一人で向かった。
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