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朝
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いつからだろう。
彼女ばかりをその目に映してしまう、そんな自分に気が付いたのは……。
優しく微笑む彼女の瞳が、私だけを映すことを願ってしまった。
その恋が叶うことはないのに……。
まだ肌寒さの残る4月初旬。
コツコツ、とローファーの乾いた靴音が空気を震わせる。
すぅ……と大きく息を吸った。
スコーンと抜けるような晴れ空の中、朝の冷たい空気が肺いっぱいに満ちていく。
今日は入学式だ。
本来であれば在校生は休みであるが、彼女は生徒会役員として、入学式の準備を手伝うことになっていた。
まだ朝早いためか、通学路には、緑が丘高校の制服を着た人は見当たらない。
自宅から高校までは歩いて片道15分程度。
毎日2時間以上かけて通学している生徒もざらにいる。
朝遅くまで寝ていられる、という理由だけで選んだ高校だったが、我ながらかなり良い選択をしたかもしれない。
学校の雰囲気もいいし、制服もかわいい。
偏差値もまぁまぁ高く、難関大学への進学実績もある。
そして何より……トイレがきれい!
生徒会に立候補したのも部活動に入ってないからという単純な理由だったが、活動報告に書けるし、将来の役に立つだろう。
そういえば、今日の入学式の流れをまだ確認していなかった。
ポケットからスマホを取り出した。
「おはよう、みく。」
後ろから聞こえたその声に、みくは思わず足を止めて振り返る。
「おはよう、葵。」
葵は、みくと同じく生徒会の生徒だ。
ショートの茶髪の髪にぱっちりとした目、天真爛漫という言葉が当てはまる明るい性格だった。
「みく、新入生の中に一人すっごいイケメンの子がいるんだって!」
知ってた?とぱっちりした目をキラキラさせながら葵は尋ねる。
「知らなかった。って言うか葵、それどこ情報?」
「えーっと、小宮。」
小宮とは、生徒会顧問の先生である。
「受験の時に見たんだとさ。」
「それじゃあ、入学してるかどうかわからないじゃん。」
みくはあきれてため息をつく。
「あ、たしかに!」
「ねね、それよりさー……」
「ん?なになに。」
彼女たちの快活な声が青空に溶けていった。
彼女ばかりをその目に映してしまう、そんな自分に気が付いたのは……。
優しく微笑む彼女の瞳が、私だけを映すことを願ってしまった。
その恋が叶うことはないのに……。
まだ肌寒さの残る4月初旬。
コツコツ、とローファーの乾いた靴音が空気を震わせる。
すぅ……と大きく息を吸った。
スコーンと抜けるような晴れ空の中、朝の冷たい空気が肺いっぱいに満ちていく。
今日は入学式だ。
本来であれば在校生は休みであるが、彼女は生徒会役員として、入学式の準備を手伝うことになっていた。
まだ朝早いためか、通学路には、緑が丘高校の制服を着た人は見当たらない。
自宅から高校までは歩いて片道15分程度。
毎日2時間以上かけて通学している生徒もざらにいる。
朝遅くまで寝ていられる、という理由だけで選んだ高校だったが、我ながらかなり良い選択をしたかもしれない。
学校の雰囲気もいいし、制服もかわいい。
偏差値もまぁまぁ高く、難関大学への進学実績もある。
そして何より……トイレがきれい!
生徒会に立候補したのも部活動に入ってないからという単純な理由だったが、活動報告に書けるし、将来の役に立つだろう。
そういえば、今日の入学式の流れをまだ確認していなかった。
ポケットからスマホを取り出した。
「おはよう、みく。」
後ろから聞こえたその声に、みくは思わず足を止めて振り返る。
「おはよう、葵。」
葵は、みくと同じく生徒会の生徒だ。
ショートの茶髪の髪にぱっちりとした目、天真爛漫という言葉が当てはまる明るい性格だった。
「みく、新入生の中に一人すっごいイケメンの子がいるんだって!」
知ってた?とぱっちりした目をキラキラさせながら葵は尋ねる。
「知らなかった。って言うか葵、それどこ情報?」
「えーっと、小宮。」
小宮とは、生徒会顧問の先生である。
「受験の時に見たんだとさ。」
「それじゃあ、入学してるかどうかわからないじゃん。」
みくはあきれてため息をつく。
「あ、たしかに!」
「ねね、それよりさー……」
「ん?なになに。」
彼女たちの快活な声が青空に溶けていった。
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