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聡と悠の過去
悪夢からの目覚め
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案の定、嫌な予感は的中した。
真夜中まで勉強をしていた聡の耳に子供の泣き声が聞こえてきた。悠の声だ。急いで玄関から外に出ると寝巻きの父が悠を抱き抱えている。
泣きじゃくっている悠は、父にしがみついて何か仕切りに呟いているが、内容は全く聞き取れない。
「落ち着きなさい。もう怖く無いから」
父は悠の背中をポンポン叩くと、やっと悠は落ち着いた。しかし、聡の存在に気づくとまた泣き出し、聡に抱っこを強請った。
父は聡に悠を渡すと「足を洗ってあげなさい」と言って、暗闇に消えていった。
よく見ると悠は裸足で何も履いていない。
聡は急いで自身の部屋に悠を運んで、足を拭いてあげた。未だに泣きじゃくっている悠に、先程弓月からもらったお菓子を食べさせる。
「あまい…」
「全部食べていいよ」
「本当?」
「本当だよ。でも歯はしっかり磨くんだよ」
「うん!」
弓月との約束を破ることになるが、悠の恐怖を取り除くことのが大事だったので、悠にお菓子を全部あげた。
しかし、時折悠が聡の口までお菓子を運んでくれるので、口を開けて2人でお菓子を食べた。
お菓子を食べて泣き止んだ悠は、しっかり歯を磨いて聡のベッドに潜り込んだ。頭を撫でながら悠が寝るのを見守るが、電気を消そうとすると怖がってまた泣き出してしまった。
「怖いから消さないで…」
悠は普段は暗くても寝れている。やはり様子がおかしい…しかし、ここで何があったのか聞くのも悠に良くない。そもそも大方祖父が何かしたのは察しがつくから聞く必要もない。巻き込まれて可哀想な悠と、今も恐らく被害を受けている弓月を思うとやるせ無い気持ちが込み上げてきた。
「おじいちゃんが…」
「言わなくていいよ。明日は一緒に遊ぼう。悠の行きたいところ全部行ってあげる」
「本当?」
その約束に安心したのか聡が答える前に悠は眠りに落ちた。そんな悠を抱きしめながら聡も眠りに落ちた。
◼️
聡の父、光弥は日本家屋の離れの前で佇んでいた。鍵を無理やり壊された扉の様子を見て、中で起こっている惨事がありありと予測できた。
案の定、襖か何かを壊す大きな音が響くと、悠の泣き声が聞こえてきた。
しばらくすると、悠が裸足のまま外に出てきた。自身の顔を見ると泣き出して駆け寄ってきた。
「うわぁあああん」
悠を抱き抱えると元きた道を戻りながら、泣いている悠が泣き止むように背中を叩いたりしてあやしていた。
あの人は今夜は洋館の愛人のところに行くはずだと安心していたが、やはり弓月の元に行っていたのか。悠が生まれてから暴力的なことは収まったかと思っていたが所詮は獣のような奴だ、一刻も早く助けに行ってあげようと思っていると、目の前に息を切らして飛んできた聡が現れた。聡が現れるとせっかく落ち着いた悠はそちらがいいとぐずり出した。望み通り聡に悠を渡すと日本家屋の離れの方へと向きを変え、弓月の元へ向かった。
◼️
聡と悠の祖父の一は、唐突に押しかけてきた。鍵が掛かっていたことに激怒した一は無理矢理
鍵を壊して扉を開けた。
扉を破壊する音に気がついた弓月は急いで玄関へ向かった。
「どうしたのですか?今日こちらには来ないと」
弓月の出迎えの言葉にも苛ついたのか一は弓月の首を絞めるように壁に押し付けた。
「黙れ…早く脚を開け…」
普通の人間なら狼狽えただろうが、弓月は毅然とした態度で一を睨みつけた。
「ここでは嫌です…奥の部屋の悠が起きてきたら…二階の寝間に床は用意してあります」
弓月の返答にさらに眉間の皺を深くした一は本格的に首を強く絞め始めた。苦痛の表情を浮かべる弓月に満足したのか手を離すと弓月は床に崩れ落ちた。
「なんだ…起きたのか…丁度いい見られてると締まりがいいからな。そこで見ていろ」
一の声にハッとした弓月は、奥の部屋の方を見ると泣きそうな顔の悠が廊下に立っていた。
「悠!!今すぐ外に出ていきなさい!!」
「口答えするなと言っているだろう!!」
一は弓月を襖に向かって叩きつけると襖は大破してしまい、悠が泣き出した。
「うるさいな…黙らせるか…」
悠に向かって一が向きを変えた時、弓月は咄嗟に帯を解き、着ていた寝巻きを広げ一の前に立ちはだかった。
「悠…早く外に出て聡さんのところへ」
先程は動揺して大きい声で言ってしまったが、落ち着いた声で諭せば悠は泣きながら外に出て行った。一安心した弓月は目の前のαの前で寝巻きを床に落とした。一糸纏わぬ姿で自身の腕を摩り上目遣いで見上げると、一は無言で弓月の身体を頭からつま先まで舐めるように見つめた。一が手を出す前にヒラリとその手をかわして二階の寝間に襖を閉めて閉じこもる。やがて階段を上がる足音が聞こえた。そして、その音は襖の前で止まった。
「開けろ…」
「つっかえなんてしてないですよ…開いてるから…はやく…きてぇ…」
先程は乱暴に玄関を壊して開けた一は、今度は静かに襖を開けた。そこには月明かりに照らされた弓月の裸体が布団の上にあった。しかし後ろを向いて座っているせいで肝心の箇所は何一つ見えない。苛ついた一は自分の寝巻きの帯を解きながら弓月の腕を荒々しく縛り上げた。
「痛い…まだ…何も準備できておりませんのに…お酒は?…せっかく用意してたのに…」
「来いと言ったのはお前だろう…酒はいらない…」
答えた一は月明かりだけでこの裸体を見るのは惜しい気がしたので、仕方なく自分で行燈に灯を入れた。すると弓月の妖艶な裸体が行燈の赤い光に照らされてさらに淫美に光った。女の身体では無いのに何故こうも蠱惑的なのか…一は解せない様子で弓月を布団に乱暴に放り投げた。
「…あの女…顔だけで何も良く無い。今度捨ててこよう。お前も親子諸共捨てられたくなければ…きちんと俺を満足させろ」
底冷えする声で呟かれて弓月はゾクっとした。
しかし、こんな状態じゃ濡れるわけもなく酒を溢して誤魔化そうと思ったが、それすらも阻まれてしまった。そもそも腕を縛られているからどうすることもできない…襲ってくる痛みを覚悟しながら振り返って一の目を見ると、ギラギラした瞳と目が合った。瞬間アナルに反り返るほど硬く勃起した凶器のようなペニスを押し付けられ後ろから挿入された。
「あぁああーーーっ!」
あまりの痛さに弓月は叫びに近い声をあげた。
一は腕を縛られた弓月をもののように扱いながら中を突きまくった。乱暴に挿入されたアナルは赤く腫れ上がり行為の酷さを表している。
「痛い!!あっアン!!アぁああ!だめぇ!!あぁあん!ァアアん!!」
「痛い方が好きだろう?口答えするな」
弓月のことなど関係なく自分の快楽を得るだけの激しい挿入に弓月は涙を流した。痛いだけのはずなのに身体は徐々に快楽を掬い取り、時折激しく前立腺を突かれることで弓月はだんだんとアナルの中のペニスを締め付けてしまう。
「――くっ、なんていやらしい奴だ…」
「あっ!やっん…っ!そこダ…めぇ…あぁああーーーっ!」
激しく収縮するアナルに刺激された中のペニスはさらに質量増して弓月を苦しめる。酷い、痛い…せめて発情期なら、ただ快楽だけを貪って、乱暴な律動にも耐えることができるのに、涙が止めどなく溢れて弓月の頬を伝落ちる。すると、襖が静かに開いて一人の人物が入ってくる。
「なんだ…邪魔しにきたのか?」
「まさか…」
入ってきたのは光弥だった。光弥は手にお茶を持っていた。独特のお茶の香りが弓月の元まで届いてきた。不思議な香りのせいか目を蕩けさせた弓月に、光弥はお茶を口に含んで口移しで飲ませた。
「ちょっと暑いかもしれないけど…我慢してね」
それは、特殊なジャスミンティーで、有名なブランドの缶に入って外見だけ偽装しているが、中身は華井家が独自に作っているΩの発情期を促す作用と媚薬の作用があるジャスミンティーだった。弓月は紅茶を飲むと案の定、恍惚とした表情になりΩの発情期のフェロモンを撒き散らした。
「あんっ…んっ…」
「この方が具合が良いと思いまして…後はご自由に私はただ見てますので」
「見てるだけね…」
腕を縛られて自由に動けない弓月は、健気に頬や口を使って光弥の股を探るが、一が律動を再開したせいで喘ぐことしか出来なくなってしまった。しかし、先程の痛みにただただ涙を流していた時とは違い身体を震わせうっとりした表情を見せていた。完全に発情した弓月の耳や口内を愛撫しながら光弥は一に犯される弓月の腕の帯を解いてあげた。
「可哀想に…こんな跡になるまで縛らなくても…首も絞めたんですか?」
「父親に口答えするつもりか…見てるだけなんじゃなかったのか?」
「何もしてませんが?」
一はあからさまに苛つきながら弓月の髪を掴んでガンガンと腰を穿つ。弓月は自由になった手で縋るように光弥の腕を掴む。尻だけを高く上げ獣のように腰を振る一のペニスを苦しそうに味わっているが、もう痛さは感じられず、それどころずっと気持ちがいいようでずっとイキ続けている。感じ過ぎてアナルが常に収縮しているおかげで一を満足させることはできているようだが、自由になった手で光弥の腕を掴んでいるのが気に食わない一はペニスを一旦抜くと、弓月を膝立ちにさせて自身と向かい合わせた。
「弓月…欲しいだろう?自分で入れて動いてみろ」
言われた弓月は、片腕を一に抱きつくように肩に乗せ、もう片方の腕は狂気のようなペニスを掴んでアナルに添えるとゆっくりと腰を落とした。そして腰を上下に自身で動かし、一のペニスを堪能し始めた。
「あっ!ひっ!アッあッあんッあんッアあッ」
「チッ…遅いな」
ゆるい弓月の動きでは満足できなくなった一は高速で入口から奥まで激しく突き上げた。
「ああぁっはげしぃ!!っあんっ!!!いっちゃう!!あっ!!ひっんっ!!あっ、出るっ」
プシャァアア!!!!
弓月は、ペニスでは無くアナルから潮吹き出し、ぐったりとした身体を一に預けた。
「何休んでるんだ。動け」
「いまぁ…むりぃ…あっ、あぁ…アンッ、…あぁ…」
動かなくても身体が痙攣して、常にアナルは刺激されていて絶頂し続けている。今、弓月が自ら動くことなど出来はしない。そんな弓月を一は布団に押し倒す。
「あんっ…んっ…」
正常位になると、一は弓月の足を限界まで割り開きアナルの中を暴力的に穿った。アナルの中が一の凶器的なペニスで満たされ圧迫される。
弓月は与えられる快楽に恐怖を感じ、一に助けを求めるように手を伸ばす。
「一様…口が寂しぃ…あぁ…アンッ、…あぁ…」
「黙れ」
弓月が強請ると、一は弓月の唇を塞いだ。一は舌を捩じ込むと、粘膜を蹂躙し弓月に休ませる間を与えないほど口内を味わった。
弓月は獣のような一の舌に自身の舌をねっとり絡ませた。充足感と多幸感を覚えた弓月は腕も脚も一の身体に絡ませて強く密着した。自身の肌で触れ合ってないところなど無いかのように密着し合った二人は、お互いびくびくと身体を震わせ絶頂した。しかし、一のペニスはまだ萎える気配は無く弓月の身体をまた揺さぶり始めた。弓月は恍惚とした表情で新たな刺激を享受し始めた。弓月の淫らな表情は一の行為が激しくなるほど強くなり、最初は光弥に縋っていた腕は今は一の背中に絡まり離さない。そんな二人を光弥は静かに傍観していた。
◼️
悠は目覚ますと、隣に兄がいないことに気がついた。寝起きで気怠い身体を持ち上げると朝食の味噌汁のいい匂いがしてくる。眠い目を擦りながら匂いのする方へ歩き出す。昨日寝る前にお兄ちゃんは行きたいところ全部一緒に行ってくれるって約束した…行きたいところはいっぱいある。公園の池に杜若が咲いていたのと、軽鴨の赤ちゃんが泳いでいるのも伝えたかった。料理を作る背中に声をかけながら昨晩した約束を呟く。
「お兄ちゃん…今日…行きたいところ全部…一緒に」
「…どうした悠?まだ寝ぼけているのか?」
悠は目の前の景色にハッとした。そこは、質素なキッチンと2人掛けの粗末なテーブルがある狭いアパートの一室で、そんな部屋に不釣り合いな人が味噌汁を作っていた。
「あぁ…夢だったんだ…」
だんだん頭が明確になっていく。覚醒と共にそれは発情期の終わりも示していた。
嫌だ…終わりたくない…発情期の熱に浮かされて求めていただけだと思いたいのに、冷静な頭でもこの人が欲しいと思ってしまう。
なぜか、涙がポロポロと溢れ落ちる。ダメなのに、求めてしまうこの人を。泣き出した悠の涙を拭う指から優しさを感じてしまう。酷い人なのに…優しさを感じてしまう。涙を拭う手に自身の手を添える。すると、額に軽くキスをされる。2人はしばらくお互いの存在を確かめ合うように寄り添っていた。
真夜中まで勉強をしていた聡の耳に子供の泣き声が聞こえてきた。悠の声だ。急いで玄関から外に出ると寝巻きの父が悠を抱き抱えている。
泣きじゃくっている悠は、父にしがみついて何か仕切りに呟いているが、内容は全く聞き取れない。
「落ち着きなさい。もう怖く無いから」
父は悠の背中をポンポン叩くと、やっと悠は落ち着いた。しかし、聡の存在に気づくとまた泣き出し、聡に抱っこを強請った。
父は聡に悠を渡すと「足を洗ってあげなさい」と言って、暗闇に消えていった。
よく見ると悠は裸足で何も履いていない。
聡は急いで自身の部屋に悠を運んで、足を拭いてあげた。未だに泣きじゃくっている悠に、先程弓月からもらったお菓子を食べさせる。
「あまい…」
「全部食べていいよ」
「本当?」
「本当だよ。でも歯はしっかり磨くんだよ」
「うん!」
弓月との約束を破ることになるが、悠の恐怖を取り除くことのが大事だったので、悠にお菓子を全部あげた。
しかし、時折悠が聡の口までお菓子を運んでくれるので、口を開けて2人でお菓子を食べた。
お菓子を食べて泣き止んだ悠は、しっかり歯を磨いて聡のベッドに潜り込んだ。頭を撫でながら悠が寝るのを見守るが、電気を消そうとすると怖がってまた泣き出してしまった。
「怖いから消さないで…」
悠は普段は暗くても寝れている。やはり様子がおかしい…しかし、ここで何があったのか聞くのも悠に良くない。そもそも大方祖父が何かしたのは察しがつくから聞く必要もない。巻き込まれて可哀想な悠と、今も恐らく被害を受けている弓月を思うとやるせ無い気持ちが込み上げてきた。
「おじいちゃんが…」
「言わなくていいよ。明日は一緒に遊ぼう。悠の行きたいところ全部行ってあげる」
「本当?」
その約束に安心したのか聡が答える前に悠は眠りに落ちた。そんな悠を抱きしめながら聡も眠りに落ちた。
◼️
聡の父、光弥は日本家屋の離れの前で佇んでいた。鍵を無理やり壊された扉の様子を見て、中で起こっている惨事がありありと予測できた。
案の定、襖か何かを壊す大きな音が響くと、悠の泣き声が聞こえてきた。
しばらくすると、悠が裸足のまま外に出てきた。自身の顔を見ると泣き出して駆け寄ってきた。
「うわぁあああん」
悠を抱き抱えると元きた道を戻りながら、泣いている悠が泣き止むように背中を叩いたりしてあやしていた。
あの人は今夜は洋館の愛人のところに行くはずだと安心していたが、やはり弓月の元に行っていたのか。悠が生まれてから暴力的なことは収まったかと思っていたが所詮は獣のような奴だ、一刻も早く助けに行ってあげようと思っていると、目の前に息を切らして飛んできた聡が現れた。聡が現れるとせっかく落ち着いた悠はそちらがいいとぐずり出した。望み通り聡に悠を渡すと日本家屋の離れの方へと向きを変え、弓月の元へ向かった。
◼️
聡と悠の祖父の一は、唐突に押しかけてきた。鍵が掛かっていたことに激怒した一は無理矢理
鍵を壊して扉を開けた。
扉を破壊する音に気がついた弓月は急いで玄関へ向かった。
「どうしたのですか?今日こちらには来ないと」
弓月の出迎えの言葉にも苛ついたのか一は弓月の首を絞めるように壁に押し付けた。
「黙れ…早く脚を開け…」
普通の人間なら狼狽えただろうが、弓月は毅然とした態度で一を睨みつけた。
「ここでは嫌です…奥の部屋の悠が起きてきたら…二階の寝間に床は用意してあります」
弓月の返答にさらに眉間の皺を深くした一は本格的に首を強く絞め始めた。苦痛の表情を浮かべる弓月に満足したのか手を離すと弓月は床に崩れ落ちた。
「なんだ…起きたのか…丁度いい見られてると締まりがいいからな。そこで見ていろ」
一の声にハッとした弓月は、奥の部屋の方を見ると泣きそうな顔の悠が廊下に立っていた。
「悠!!今すぐ外に出ていきなさい!!」
「口答えするなと言っているだろう!!」
一は弓月を襖に向かって叩きつけると襖は大破してしまい、悠が泣き出した。
「うるさいな…黙らせるか…」
悠に向かって一が向きを変えた時、弓月は咄嗟に帯を解き、着ていた寝巻きを広げ一の前に立ちはだかった。
「悠…早く外に出て聡さんのところへ」
先程は動揺して大きい声で言ってしまったが、落ち着いた声で諭せば悠は泣きながら外に出て行った。一安心した弓月は目の前のαの前で寝巻きを床に落とした。一糸纏わぬ姿で自身の腕を摩り上目遣いで見上げると、一は無言で弓月の身体を頭からつま先まで舐めるように見つめた。一が手を出す前にヒラリとその手をかわして二階の寝間に襖を閉めて閉じこもる。やがて階段を上がる足音が聞こえた。そして、その音は襖の前で止まった。
「開けろ…」
「つっかえなんてしてないですよ…開いてるから…はやく…きてぇ…」
先程は乱暴に玄関を壊して開けた一は、今度は静かに襖を開けた。そこには月明かりに照らされた弓月の裸体が布団の上にあった。しかし後ろを向いて座っているせいで肝心の箇所は何一つ見えない。苛ついた一は自分の寝巻きの帯を解きながら弓月の腕を荒々しく縛り上げた。
「痛い…まだ…何も準備できておりませんのに…お酒は?…せっかく用意してたのに…」
「来いと言ったのはお前だろう…酒はいらない…」
答えた一は月明かりだけでこの裸体を見るのは惜しい気がしたので、仕方なく自分で行燈に灯を入れた。すると弓月の妖艶な裸体が行燈の赤い光に照らされてさらに淫美に光った。女の身体では無いのに何故こうも蠱惑的なのか…一は解せない様子で弓月を布団に乱暴に放り投げた。
「…あの女…顔だけで何も良く無い。今度捨ててこよう。お前も親子諸共捨てられたくなければ…きちんと俺を満足させろ」
底冷えする声で呟かれて弓月はゾクっとした。
しかし、こんな状態じゃ濡れるわけもなく酒を溢して誤魔化そうと思ったが、それすらも阻まれてしまった。そもそも腕を縛られているからどうすることもできない…襲ってくる痛みを覚悟しながら振り返って一の目を見ると、ギラギラした瞳と目が合った。瞬間アナルに反り返るほど硬く勃起した凶器のようなペニスを押し付けられ後ろから挿入された。
「あぁああーーーっ!」
あまりの痛さに弓月は叫びに近い声をあげた。
一は腕を縛られた弓月をもののように扱いながら中を突きまくった。乱暴に挿入されたアナルは赤く腫れ上がり行為の酷さを表している。
「痛い!!あっアン!!アぁああ!だめぇ!!あぁあん!ァアアん!!」
「痛い方が好きだろう?口答えするな」
弓月のことなど関係なく自分の快楽を得るだけの激しい挿入に弓月は涙を流した。痛いだけのはずなのに身体は徐々に快楽を掬い取り、時折激しく前立腺を突かれることで弓月はだんだんとアナルの中のペニスを締め付けてしまう。
「――くっ、なんていやらしい奴だ…」
「あっ!やっん…っ!そこダ…めぇ…あぁああーーーっ!」
激しく収縮するアナルに刺激された中のペニスはさらに質量増して弓月を苦しめる。酷い、痛い…せめて発情期なら、ただ快楽だけを貪って、乱暴な律動にも耐えることができるのに、涙が止めどなく溢れて弓月の頬を伝落ちる。すると、襖が静かに開いて一人の人物が入ってくる。
「なんだ…邪魔しにきたのか?」
「まさか…」
入ってきたのは光弥だった。光弥は手にお茶を持っていた。独特のお茶の香りが弓月の元まで届いてきた。不思議な香りのせいか目を蕩けさせた弓月に、光弥はお茶を口に含んで口移しで飲ませた。
「ちょっと暑いかもしれないけど…我慢してね」
それは、特殊なジャスミンティーで、有名なブランドの缶に入って外見だけ偽装しているが、中身は華井家が独自に作っているΩの発情期を促す作用と媚薬の作用があるジャスミンティーだった。弓月は紅茶を飲むと案の定、恍惚とした表情になりΩの発情期のフェロモンを撒き散らした。
「あんっ…んっ…」
「この方が具合が良いと思いまして…後はご自由に私はただ見てますので」
「見てるだけね…」
腕を縛られて自由に動けない弓月は、健気に頬や口を使って光弥の股を探るが、一が律動を再開したせいで喘ぐことしか出来なくなってしまった。しかし、先程の痛みにただただ涙を流していた時とは違い身体を震わせうっとりした表情を見せていた。完全に発情した弓月の耳や口内を愛撫しながら光弥は一に犯される弓月の腕の帯を解いてあげた。
「可哀想に…こんな跡になるまで縛らなくても…首も絞めたんですか?」
「父親に口答えするつもりか…見てるだけなんじゃなかったのか?」
「何もしてませんが?」
一はあからさまに苛つきながら弓月の髪を掴んでガンガンと腰を穿つ。弓月は自由になった手で縋るように光弥の腕を掴む。尻だけを高く上げ獣のように腰を振る一のペニスを苦しそうに味わっているが、もう痛さは感じられず、それどころずっと気持ちがいいようでずっとイキ続けている。感じ過ぎてアナルが常に収縮しているおかげで一を満足させることはできているようだが、自由になった手で光弥の腕を掴んでいるのが気に食わない一はペニスを一旦抜くと、弓月を膝立ちにさせて自身と向かい合わせた。
「弓月…欲しいだろう?自分で入れて動いてみろ」
言われた弓月は、片腕を一に抱きつくように肩に乗せ、もう片方の腕は狂気のようなペニスを掴んでアナルに添えるとゆっくりと腰を落とした。そして腰を上下に自身で動かし、一のペニスを堪能し始めた。
「あっ!ひっ!アッあッあんッあんッアあッ」
「チッ…遅いな」
ゆるい弓月の動きでは満足できなくなった一は高速で入口から奥まで激しく突き上げた。
「ああぁっはげしぃ!!っあんっ!!!いっちゃう!!あっ!!ひっんっ!!あっ、出るっ」
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弓月は、ペニスでは無くアナルから潮吹き出し、ぐったりとした身体を一に預けた。
「何休んでるんだ。動け」
「いまぁ…むりぃ…あっ、あぁ…アンッ、…あぁ…」
動かなくても身体が痙攣して、常にアナルは刺激されていて絶頂し続けている。今、弓月が自ら動くことなど出来はしない。そんな弓月を一は布団に押し倒す。
「あんっ…んっ…」
正常位になると、一は弓月の足を限界まで割り開きアナルの中を暴力的に穿った。アナルの中が一の凶器的なペニスで満たされ圧迫される。
弓月は与えられる快楽に恐怖を感じ、一に助けを求めるように手を伸ばす。
「一様…口が寂しぃ…あぁ…アンッ、…あぁ…」
「黙れ」
弓月が強請ると、一は弓月の唇を塞いだ。一は舌を捩じ込むと、粘膜を蹂躙し弓月に休ませる間を与えないほど口内を味わった。
弓月は獣のような一の舌に自身の舌をねっとり絡ませた。充足感と多幸感を覚えた弓月は腕も脚も一の身体に絡ませて強く密着した。自身の肌で触れ合ってないところなど無いかのように密着し合った二人は、お互いびくびくと身体を震わせ絶頂した。しかし、一のペニスはまだ萎える気配は無く弓月の身体をまた揺さぶり始めた。弓月は恍惚とした表情で新たな刺激を享受し始めた。弓月の淫らな表情は一の行為が激しくなるほど強くなり、最初は光弥に縋っていた腕は今は一の背中に絡まり離さない。そんな二人を光弥は静かに傍観していた。
◼️
悠は目覚ますと、隣に兄がいないことに気がついた。寝起きで気怠い身体を持ち上げると朝食の味噌汁のいい匂いがしてくる。眠い目を擦りながら匂いのする方へ歩き出す。昨日寝る前にお兄ちゃんは行きたいところ全部一緒に行ってくれるって約束した…行きたいところはいっぱいある。公園の池に杜若が咲いていたのと、軽鴨の赤ちゃんが泳いでいるのも伝えたかった。料理を作る背中に声をかけながら昨晩した約束を呟く。
「お兄ちゃん…今日…行きたいところ全部…一緒に」
「…どうした悠?まだ寝ぼけているのか?」
悠は目の前の景色にハッとした。そこは、質素なキッチンと2人掛けの粗末なテーブルがある狭いアパートの一室で、そんな部屋に不釣り合いな人が味噌汁を作っていた。
「あぁ…夢だったんだ…」
だんだん頭が明確になっていく。覚醒と共にそれは発情期の終わりも示していた。
嫌だ…終わりたくない…発情期の熱に浮かされて求めていただけだと思いたいのに、冷静な頭でもこの人が欲しいと思ってしまう。
なぜか、涙がポロポロと溢れ落ちる。ダメなのに、求めてしまうこの人を。泣き出した悠の涙を拭う指から優しさを感じてしまう。酷い人なのに…優しさを感じてしまう。涙を拭う手に自身の手を添える。すると、額に軽くキスをされる。2人はしばらくお互いの存在を確かめ合うように寄り添っていた。
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