蒼穹の魔剣士 ~異世界で生まれ変わったら、最強の魔剣士になった理由~

神無月

文字の大きさ
上 下
35 / 49
第一章

第30話

しおりを挟む
 
「……君が噂に聞く『ソルジャー』か。仲間が逃走する時間を稼ぐつもりだろうが、そうはいかないよ」

「……」

「私は騎士だ。民を守る義務がある。異変に気付いた他の騎士たちもこちらに合流するだろう」

「……───?」

「だから君たちのような輩がこの王都で───なにっ!?」

 面が良いと何を言っても様になるなぁと思いながら、ハクバの芝居がかった口上でどこまで引き延ばせるかと待っていたら、上に気配を感じた。

 空を見上げた瞬間、突如ハクバと彼の間に降ってきたのは女の子。

 舞い降りたのではなく、隕石のように衝撃音と共に降ったきたのだ。

 すさまじいエネルギーに地面は耐えきれるはずもなく、無残に破壊され砕けた石畳がこちらにまで飛んできた上、余波の影響かこちらの足元までひび割れている。

 ミツキよりも強いと確信せざるを得なかった。

 そして先ほどまで対峙した彼女とは魔力量、魔力の使い方、気配の隠し方、そのすべてが一線を画していることも。

 晴れた土煙から見えてくる、魔剣士学校の制服を着た少女、

 長い黒髪が星の光のように儚く煌めいているこの少女は間違いなく───

「───強い」

 ハクバと僕の思考が一致した。

「何者だ……?」

「わたしたち……わたしは───」

 ハクバは問うが、中心に立つ少女はこちらを気にするように首を半分向ける。

「───………」

 わずかに動く口が少女の逡巡として伝わるが、言葉を紡ぐことはない。

「仲間じゃないのか……?」

「………」

 少女は沈黙を保ちながら前を向き、ハクバは胡乱げな眼差しで少女を見る。

「どちらにせよ武器は……ないみたいだな。おとなしくこちらに来なさい。君も逮捕する」

「………」

 そういうハクバの指示に従い、近づいていく少女。

「君はファーストか?まったく、修繕費用がいくらかかると思ってるんだ。いくらなんでもこういうことは───」

 少女はハクバの隣に立ち、ハクバは手元から拘束具を取り出そうとしている。

 言葉から察するにハクバは制服を着ていることから魔剣士学校の生徒が自主的なパトロール、騎士団の真似事だろうと思い込んでいるのだろう。

 だが僕は知っている。

 こんな少女、魔剣士学校にはいないことを。

「───なにっ!?……ぐあぁ!!」

 直後、ハクバが空中に浮き地面に倒れこむ。

「き、きみ!なにをするんだ!」

 当然ハクバもすぐに立ち上がり、剣を抜こうとするが………

「あ?ない……剣が……賜った剣が………」

 何度も腰に手を叩くが先ほどまであったはずの鞘に収まっていた剣が鞘ごとなくなっている。

 見事な手つきだ。

「どこに……どこだ!!!どこに───」

 周囲を見渡し、マントを翻しながらハクバはやっと目にする。

「───なぜ貴様が持っている?」

 ハクバが探していた剣を少女はその手に持っていたことを。

「いい剣ね、大事になさい。あなたにピッタリだから」

「なにを……あっ!」

 少女は天高く放ると、ハクバは落とさないように掴まえに行く。

 無事その腕に抱え、

「くっ、傷は!?」

 鞘から抜く。

 良し今だ。

「ない……良かった……はっ……!?」

 だが気づいたときにはもう遅く、突如飛来してきた少女は消え、それに乗じ僕もとんずらした。

「なんだったんだ………」

 ハクバは合流してきた騎士たちに指示を割り振る素振りを見せ、それぞれが散開していく。

「彼に残されたのは困惑と始末書の山だった」

 僕は彼を見下ろしながらそう思った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...