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≪再び、すべてが変わる──≫
すべてが変わる、前の話
しおりを挟む大地に漫然と佇む巨大な建物。
今は不動を保っているが、移動するときには轟音を轟かせ大陸を這うという。
『移動要塞ラプター』
その頂上の部屋からは眼下に広がる王都を隅々まで見渡せる。
今日は空は青く、雲も少ない。
いい天気だ
「やっとここまで来れたね」
隣に立って来る少女はしみじみと言う。
「…………」
サクか……
チラリと右を見る。
懐かしい
それは僕も昔に来ていた制服。
隣に立つ少女はかつて王国にあった魔剣士学校の制服を纏っている。
少女、サクの長い黒髪は濡れたように光を反射し絹糸のような美しさがあるとかなんとか。
「わたしたちに科した自由とクラウスの選択、その結末はどう?」
「…………」
「そういえばその格好の時には『メビウス』だったね」
「………」
濃い紺を基調として空色の線が入った、腿にまで伸びるフード付きのジャケット。
ルーズな服装のため全体の体格が不明瞭。
それに加え、顔を隠すためのヘルメット。
やっぱり完全に不審者だ
「メビウス、あなたはこの先に何を望むの?」
「……───」
わからない
「そう………あなたがそう望むなら、わたしたちはそうするまで」
「………」
………うん?
「わたしは、あなたの隣にいる」
そういうと僕を見つめてくる気配を感じ、右を向く。
ガラスのような煌めきの中に深紫の瞳。
それに顔を隠した僕が映っている。
しばし見つめあう。
すると視線を剥がしたのは少女が先に破顔したから。
「行きましょうか。センタン技研都市に」
少女は声音に楽しそうな感情を乗せて言う。
すると振り返りふわりと長い髪を舞わせ、扉に向かい部屋を後にする。
それを見送ってから、眺めがいい景色を見ようと前を向くと───
「───彼女はどうやらなにもわかってないようですね。クラウス」
いつの間にか僕の左に立つ少女がいた。
サクとは対照的に、肩口に揃えられた白い髪は濡れたように光を反射し絹糸のような美しさがあるとかなんとか。
「無理に褒めようとして使いまわさなくてもいいんですよ、ちなみに私は赤い瞳ですから」
「…………」
たまに彼女……アステシアは心の中を見透かしたようなことを言ってくる。怖い。
まぁそんなことより、僕の作った制服はアステシアにも良く似合っている。
とても、良い。
「あなたの趣味に合わせられているのならいいのですが……それにしてもあっという間でしたね」
「…………」
僕はここに来るまでを回想する───
「───過去回想ですね。わかります」
ちょっと静かに
「はい」
あれは僕が初めてこの世界に来た時の話だ───
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